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彼と私の物語  作者: 雨の日
カリネキア国の話

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17/24

時が経つのは早いもので


カリネキア魔術専門学校での基礎知識とギルバートのスパルタ魔術教育を受けて早いもので3年。

アリアは16歳になっていた。


『では、魔物とは何だと思う?』

先ほどギルバートに出された課題をアリアは考える。

ギルバートとの戦闘訓練と同時に行われている魔物の実態を把握する講義。それは全て終わっているはずだ。

なのに、今になって魔物とは何か、など初期的な質問をされるとは。いや、初期的であるが、考えた事がなかった。

何か?と問われても、そういう生物だとしか思わなかったから。

我々が、知性を持った2足歩行の生物である様に。アレはそう生まれただけの生物だとしか。


「やぁ、アリア嬢。久しぶりだね。」

涼やかな声に顔をあげる。レインだ。

「レイン先生!お久しぶりです!研究機関のお仕事は落ち着いたのですか?」


討伐作戦を前に、レインが籍を置いている研究機関での魔物の生態研究は佳境を迎えていた。彼もここ半年、アリアの前に姿を現さなかったくらいだ。


「あぁ、聖剣がようやく完成した。今頃はギルバートの手に渡っているだろう。討伐までに魔力を馴染ませておかないとね」


聖剣を作る、なんておかしな響きだ。前世の記憶(ここではない異なった常識を持つ世界の記憶)を持つアリアは、そう思った。

しかし、この世界では違う。女神信仰なんてない、我々が魔物被害の犠牲になっているからって神様が異世界から勇者と聖剣を召喚してくれる訳では無い世界。


聖剣は作るものなのだ。

といっても、ありふれている訳でもない。研究機関の学者や研究員が数年かけて、魔物の生態を暴き、その弱点を突き止め、有効と思われる手を考えた。

トライアンドエラーを繰り返し、魔物の頂点、魔王に対抗しえる最高傑作として、1つの剣を作り出したのだ。

それを、聖剣、と我々は呼んでいる。


聖剣を持つものとしてギルバートの名があがったとき、異を唱えるものはいなかった。

カリネキア国王は、『勇者』とギルバートを呼称しようとしたが、当の本人に「ダセーからやめろ」

と一笑され決まり悪そうにしていたらしい。


「君の方は大丈夫なのかい?お父上は、納得されているのかな?」

「……努力していますが、なかなか…」


ダーリンガム伯爵家の長女が、魔術師として危険な魔物討伐作戦に参加しようとしている。

この3年で名実ともに最強に次ぐ魔術師として名を馳せたアリアだが、家族がそれに納得する訳ではない。

父は「ダメだ」の一点張り。母も「それは、貴方も参加しないといけないの?どうしても?」と逆にアリアを説得しようと試み続ける。兄も、下の弟妹だってそうだ。

だが、それを言えば一般の魔術師だってそうだ。魔王がいると思われる森への魔物討伐など、命の保証はない。笑顔で「いってらっしゃい」と見送れる家族がいるだろうか。


「説得しなくても、強行突破しますから」

アリアがそう言うと、レインは苦情したような笑顔でアリアの肩にポンと手を置いた。


「ギル先生に、魔物とは何か?と聞かれて、今まで考えた事がないな、と思っていました」

話を切り上げる様にアリアはレインに話しかける。

ここ数年の魔物研究速度は目を見張るものがあった。今まで不可侵の領域、生きる世界の違うもの、と触れられなかった分野であったのだ。


「なるほど、根源的な疑問だね。魔物とは何か、学者の間でも意見が分かれ結論の出ていない、永遠のテーマかもしれないね」

「え、答えはないんですか?」

「ないわけじゃない。仮説はいくつかあるし、これからも生まれるだろう。何を信じるかだ」

「何を…信じるか…?」

「魔物と聞いて、君はどんな姿を想像する?」


どんな姿…

訓練と称して、地方都市の魔物被害地へ向かいギルバートの代わりに魔物討伐をした時に見た姿。

野生生物とベースを同じくし、始めは目が4つある事だけしか違いがない。成長と共に姿を禍々しく変えていく。

それがアリアの中にある認識。


でも少し、ほんの少しだけ考えていた。考えが頭をよぎっては、ダメだと思考することを辞めていたこと。


始めは目が4つ。


ジャックも、目が4つだった。


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