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彼と私の物語  作者: 雨の日
カリネキア国の話

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13/24

アリア・ダーリンガム


アリア・ダーリンガムはダーリンガム伯爵家の長女である。以下略。


アリアには幾つもの前世の記憶があった。一つを除き全て朧気な記憶は今世のアリアの人格を作るうえで、あまり影響はなかったが。一つだけ。“一番最初の私”と認識している記憶だけは、頭の中心でアリアという人格に影響を与えていた。


一番最初のアリアも、アリアと言う名前だった。最初のアリアは盲目で、クソみたいな親に育てられ碌でもない人生を歩んで意味もなく死んでいった。今のアリアはそう認識している。そんな碌でもない人生の中で数年あった幸せな記憶、ジャックとのささやかで温かい愛の記憶。何処か達観したような人生観を持ってしまった今のアリアの心にも刻まれたその感情は、今世もジャックを見つけたいと思う理由として充分なものだった。


今世に生まれ得た知識と朧気になっている記憶たちの知識を合わせて分かったこと。

今のアリアの住むカリネキア国はジャックとアリアがいた国と同じであるということ。

2人が暮らした“魔物の森”は、今も名前を同じく存在し、しかしあの頃よりも魔物の影響を強く受けた忌み地となっていること。

そして、異形の化け物と呼ばれていたジャックは、恐らく結合双生児であったという事。

ゴツゴツとした頬に目が4つ。鼻と口は一つずつ。しかし首の後ろに瘤のような膨らみがあり、そこには鼻と口が付いていた。後ろの口はジャックの意思とは関係なく時々アリアの頬をペロリと舐めていたと記憶している。両腕の付け根にも棒状の突起があったが、あれもジャックの片割れの腕の一部だったのだろう。

盲目のアリアは何とも思っていなかった様だが、明らかに異型。なぜ生きて産まれてこれたのか何事もなく育ったのかが不思議なくらいに。


これはあくまで仮説だが、ジャックは片割れと共に強い魔力を有していた為、生きることが出来たのではないか。

アリアと出会う前、ジャックは魔術師に育てられ力の制御を教えて貰ったと言っていた。しかし魔術を使用して生活していた様子は感じられなかった。

おそらく彼の魔力は全て、生命維持の為に身体を巡る事で消費されていた。

普通の魔力量では不可能でも、2人分の強い魔力なら可能性はある。

そうして、アリアとジャックは出会う事が出来たのだろう。



ふぅ、とアリアは息を吐いた。

息抜きにと前世の記憶に想いを巡らせていたが、そろそろ課題に向き合わなければいけない。


“魔物とは何か”

ギルバートはそう問うてきた。野生生物とベースを同じくし、始めは目が4つある事だけしか違いがない。成長と共に姿を禍々しく変えていく、、、。

アリアは今まで対峙した魔物の姿と、資料で学んだ知識を思い浮かべる。


というか、何故ギルバートはアリアに魔物の生態を考えさせるのか。それは、アリアの求めているものに関係しているのだろうか…


「アリア〜!見たわよさっき!麗しのギルバート様にオデコをツンってされてたでしょ!?」

1人思考の波に呑まれそうになっていたアリアの背中に温かく柔らかな感触。友人のエリーが後ろから抱きついてきたのだ。


「エリー、ツンなんて可愛いものじゃないわ。ベシッとやられたのよ」

そう言ってアリアはまだ少し赤いオデコを見せる。

「ホントにギルバート様って素敵よね!スラリと高い背に長い手足。爽やかなルックスにセクシーなお声!ほんとアリアが羨ましいわぁ〜」

「ねぇ、聞いてる?ビシッとされたのよ。見てオデコ赤いでしょ。私まだちょっと痛みで涙目でしょ!?」

「あんなに素敵なのに、何でギルバート様って未だに婚約者いないのかしら。恋の噂は時々聞くけれど、特定のお相手はいないのよね?アリア何か知ってる?えっ、もしかしてアリアが婚約者候補なのかしら!?」

「あれ、私エリーと話してるよね?何で会話のキャッチボール出来てないのかしら、私さっきのデコピンで脳みそダメージ食らったのかしら。エリーと見間違えて壁に話しかけてるのかしら」

「いやん、ちゃんと聞いてるわアリア。オデコにビシッとされたのね。赤くなっちゃって可哀想に、、、エリーちゃんが治してあげるわ」

そう言ってエリーがアリアのオデコに手をかざす。

「消えたわよ。痛みもないでしょ?」

得意げに聞くエリーに、頷きありがとうと言った。


13歳になり入学したカリネキア魔術専門学校。強い魔力を持ち、魔術を使いこなす為の学び舎。16歳になったアリアは、勉学に励む傍らギルバート・ダウンバードに師事し、最強に次ぐ魔術師となるべく鍛錬を重ねていた。

アリアは朧気な前世たちの記憶に影響はあまり受けてないと思っていますが、悪態つく時の口の悪さは確実に影響受けてますね、コレ。

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