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雇われ座敷童子、仕事内容を知らされる。

第二話です。

なんだかんだ言って続いてしまいました。

どうか最後までお付き合いくださいませ。

作者自身まだ学生ですので、至らぬ点も多々あるかと思いますが、何卒よろしくお願いします。


リクエストや質問等感想で受け付けております。

「いーやーでーす!」

「そんなこと仰らずに」

「いやです!無理!」

「できますできます。人間、やればなんとでもなるものですよ」

「人間じゃないですー!座敷童子ですー!とにかく無理です!!」

「そんなことはどうでもよいのですけれど」

「労働基準法違反で訴えますよー!!」

 サトさんが口の端をひくひくと引き攣らせている。

 心なしか困惑顔、というよりも呆れ顔。

 だけど、私だって引くわけにはいきません。

 いくらサトさんに呆れられようとも、サトさんの後ろに控えているメイド集団に黙殺されようとも!

「無理ったら無理!座敷童子に魔獣討伐だなんて、できっこありません!!」


 時は遡ること数分前。

 突如出現した黒い門。

 サトさんの無言の圧でいやいやそれを通ると、そこには森がありました。

 いや、どういうこと!?

 しかもなにか、遠くから聞いたことのない鳥の鳴き声が聞こえてくるような……。

 周りに生えている植物もニッポンでは見たことがありません。

 黒色をした彼岸花のようなものに、葉や茎が赤色で花が緑のカスミソウみたいな花。

 挙げ句の果てには、木の上にリンゴともブドウともつかないような摩訶不思議な形をした白い果物がなっているではありませんか。

 どう見ても、ニッポンの中ではありません。

 それどころか、地球のどこにも生息していなさそうな植物たちです。

 例えるならば、三代くらい前のご主人様が買い与えてくださった漫画に出てくるような花。

 それか、初めにつかえていたご主人様の奥様が気に入っていらっしゃったアニメに登場していたかもしれません。

 とにかく、現実にはあり得ないような草花たちでした。

「えっ……と、ここは?」

 混乱している私に、サトさんはなんてことないように微笑む。

「そうですね。異世界、とでも申しましょうか」

 とにかく、セレネ様の知っている世界ではございませんね。

 そう続けるサトさんをぼんやりと眺めながら、座標がないのはそのせいか、と思いました。

 こっちの世界の座標を伝えても、地球上の同じ座標に移動してしまうだけだから。

「では、お目通りといたしましょうか」

 サトさんが歩き出そうとした途端、背後に控えていたメイド集団の内の一人が彼女に耳打ちしました。

「外出中、ですか……珍しいこともあるものですね」

 物珍しげにつぶやいたサトさんは、こちらに向き直って口を開いた。

「では。先に仕事内容の説明といきましょうか」

「は、はい」

 え?

 こんな森の真っ只中で?

 今の今にもなにか動物が出てきそうですよ?

「セレネ様は、基本の召使業務。それに加えて___」

 はて。

 加えて、とは。

 大体の家事はこなせる自信がありますが、あまりややこしいことは苦手です。

 まあ、私にできることであればなんでも良いのですが。

「___魔物討伐をしてただきます」

「はい?」

 前言撤回。

 なんでもよくありません。

 大体なんですか、魔物討伐って!

 どこのRPGですか!?

 ゲームが壊滅的に下手くそで、毎回序盤で死んでしまうタイプの私には向いてない職業ですよ、サトさん!

「なんて?」

「ですから、魔物討伐です」

 ああ、本当に意味がわかりません。

「この世界には、変わった形の生物が存在しているの、知っていますよね」

「あ、はい。それは」

 周りに生えている植物を見れば、一目瞭然のことです。

「同様に、貴女が住んでいらっしゃった地域にはいない動物がたくさん生息しているんです。有名どころでいうと、ドラゴン、グリフォン、不死鳥等ですかね」

 もう信じられない世界すぎて頭がこんがらがりそうです。

 そういえば、二代目ご主人様のご子息が好んで読まれていた本にも同じようなことが書かれていましたね。

「この国には、ギルド、と言うものがありまして……簡単に言うと、勇者として登録をし、決められた依頼を受けて報酬をもらうと言うものなのですが。森に行って依頼を遂行するというのが基本ですので、当然森には魔物たちがおります」

 え?

 つまり、先ほどから時折聞こえてくる鳴き声は、もしやその魔物の?

 ただのBGM程度に思っていたのですが、途端に怖くなってきました。

「まあ、当たり前に凶暴ですので、トラブルが起きることもあります。そういう時にそれを統制し、魔物を討伐するのが討伐隊……バトラーの方々です」

 つまり、凶暴化しすぎてギルドの勇者に手に負えない魔物を討つのがバトラーとやらということですね。

 ああ、ややこしい!

「バトラーは、勇者様の中から優れた人々が選ばれ、集まります。そのバトラー集団の中でも別格の強さを誇るのが___」

「「「___我らがご主人様、シエリ様です」」」

「ほぇっ!?」

 沈黙を決め込んでいたメイド集団の皆様が、急に口を開きますた。

 かと思ったら、チアダンサーでもびっくりのシンクロっぷり。

「えと、それで、私がこれからつかえるのが……」 

「はい。そのシエリ様と言うことになります。セレネ様には、ギルドへの登録と戦場でシエリ様のサポート、時により共闘をしていただきます」

「はぁ」

 もう頭がパンクしそうです。

 情報量が多すぎて、一座敷童子には処理しきれませんよ、サトさん!

 そんな私の心の中を読み取ったように、サトさんは人好きのする笑みを浮かべた。

「つまり、セレネ様にはギルドへ登録していただき、魔物討伐をしていただきます」


 と、いうわけなのです。

 ですが、私に魔物とやらが討伐できるはずありません!

 どこのファンタジーなんですか!

「無理!無理です!」

「無理強いは致しませんけれども……」

 にっこり。

 はて、なんだか先ほどと違いサトさんの笑顔の裏に何やら黒いものが見えるような。

「前金、お受け取りになられましたよね?」

 選択肢、ないじゃないですか!

 やけに買取金額が高かったのも、このためですね!?

 私が抵抗することを考慮して!

「ああ、恨めしい!」

「なんとでも。では、行きましょうか」

「どこにですか!?」

 サトさんは満面の笑みを浮かべたまま言い放った。

「今度こそ、我らが最強のバトラー、兼ご主人様であるシエリ様のところにですよ」

 私はひくっと口の端を引き攣らせた。

閲覧ありがとうございました。

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