降伏
特に書くことがなくなってきた
上陸軍司令部・臨時設営テント。
第一軍、第二軍、第三軍――計30万が同時展開する前線を、巨大な戦況図が覆っていた。
幕僚たちが慌ただしく動く中、通信卓の前で異常が起きた。
通信兵「司令官殿! 緊急受信、識別信号……敵司令部からです!」
上陸軍総責任者・安東中将がゆっくりと顔を上げた。
安東中将「敵の反撃か? 状況を報告せよ。」
通信兵「い、いえ……降伏信号です。[第12方面軍司令・ダラグ少将、全戦闘行為停止。全面降伏の意志あり]と!」
幕僚たちの手が止まる。
前線の喧騒とは対照的に、司令部は静寂に包まれた。
作戦参謀「降伏……? 完全にか?」
通信兵「はい。複数周波数、複数回の確認信号。誤信の可能性は極めて低いと思われます!」
安東中将は戦況図に歩み寄り、潰れた前線部をじっと見つめた。
そこは海軍のミサイル攻撃を受けた地域――まさに、戦線が消えた地帯だった。
安東中将「……海軍の一斉射撃が、よほど効いたか。」
副官「第一軍、第二軍とも前進を続けていますが……そもそも交戦そのものがありません。
第三軍も背後を塞ぎましたが、こちらも敵影ゼロです。」
幕僚同士が視線を交わす。
砲兵参謀「……つまり、我々陸軍はまだ戦闘を開始してすらいないということに?」
副官「前線に到達する前に、海軍が決着をつけてしまった形ですね。」
安東中将は短く息を吐き、現実を受け入れるように静かに頷いた。
安東中将「……勝因を取り違えてはならん。
今回の主役は、我々ではない。海軍だ。」
そこへ別の通信兵が駆け込む。
通信兵「司令! 敵司令部から追加信号!
白旗掲揚の上、降伏代表を派遣し、正式な投降手続きを行いたいとのことです!」
幕僚がざわつき、誰かが小声で言う。
幕僚A「……交戦ゼロで敵軍司令部が降伏とは……前代未聞ですな。」
安東中将は迷いなく命令を下した。
安東中将「全軍へ通達。[攻撃行動を一時停止。ただし警戒態勢は維持せよ。] 降伏代表の受け入れ準備に入れ。」
通信兵「了解!」
安東中将「あわせて海軍へ伝えろ。
[敵第12方面軍、全面降伏の意志を確認。海軍の作戦は完全に成功した]と。」
伝令たちが走り出す。
安東中将「……陸軍の損害はゼロ。
だが、この後の海岸線の防衛兵器の建設、後方整理はすべて我々の仕事になる。手を抜くな。」
テントの外で、白旗を掲げた一団がゆっくりと近づいてくる。
安東中将は静かに立ち上がった。
安東中将「戦闘は海軍が終わらせた。だが、戦争を終わらすのはいつも我々だ。」
そう言い残し、降伏代表を迎えるため前線へ向かった。
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