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機概騎士ノワール  作者: 木ノ本 光
ノースシティ編
7/10

オーラル村への道中

先ずは依頼を出した村まで行くための足を手に入れなければいけない。

幸い、ここノースシティは『冒険者の街』と言われるだけあって運送業は発展している。そこかしこに荷馬車が止まっている。

どの荷馬車もそう変わらないだろうが、初めての冒険なのだから気持ちよく乗りたい。

と、黒い毛並みが美しい馬が目に止まった。

その隣で機概の整備をしている女に近づき、


「こんにちは、オーラル村まで行きたいんですが、いくらですか?」


女は整備の手を止め、顔を傾けながら


「7000イリだよ。」


…足りない。ユーリから貰ったのは3500イリだけだ。

そんな僕を見て女は


「…君、その指輪をしてるってことは機概を変形させられるんだろう?これを直してくれたら乗せてあげるよ。ほら、図面だよ。」


渡された図面には、馬の脚に装着する機概の構造が細かく書かれている。ありがたい。金を使わずに馬車に乗れるならばやらない手はない。

3日間ぶっ続けで機概の変形についてユーリに叩き込まれた僕なら、出来るはずだ。

機概に手を触れ、馬を強化する為の概念を与えていく。

金の骨格の関節部分を茶色と青のコアで繋いでいく。この作業を4回行い、機概変形は完了した。


「…お疲れ様。後ろに乗りな。」


そう言うと、女は馬車の前方に座った。


「はい、ありがとうございます。」


馬車の扉となっている布をよけると、人間はいなかったが、その代わりに動物が3匹いた。

マックスうさぎが1匹、タンバリンゴリラが2匹だ。

3匹とも鎖や鉄格子に囚われていない。首輪をしているだけだ。


「…こ、これって危なくないですよね?」


「はっはっは、 その首輪をしている限り安心さ。最近王都から支給された最新式なのさ。」


王都にはすごい技術があるらしい。今の僕ではどんな仕組みなのかすら分からないな。

いつかは行ってみたいと願望を抱き、心が躍った。


そうこうしているうちに馬車は門をくぐり、街の外に出た。

女は後ろを振り返り、


「さあ、飛ばすわよ!」


と、言った瞬間、馬の脚が急速に動き出した。馬車もそれに引っ張られて走り出す。ユーリの馬車の5倍くらいの速さで、外の景色が変わって行く。


「これって!、馬は大丈夫なんですか!?」

風の音に負けないよう、大声で聞く。


「馬の構造自体を強化する機概だから、馬に悪影響はないらしいわ!この子の身体に無理をさせてるわけじゃないわ!」


それを聞いて安心した。到着するまで一眠りさせてもらおう。



……数時間が経ち、馬の足音も緩やかになってきた頃、

ノエルは目を覚ました。


「そろそろですね。」


女はチラリとノエルを見て、


「そうね、貴方の冒険もそろそろ始まるわよ。」


そうだ、僕は今から冒険者として依頼を受けに行くんだ。気を引き締めないとな。今回の依頼のおさらいでもしておくか。

依頼書を鞄から取り出し、前に拡げる。


今回の依頼は、『オーラル村の近くの洞窟に巣食うヒューマピッグの討伐(ランクD)』、だ。

洞窟ならフラクル村にもあったし何となく分かっている。ヒューマピッグは攻撃力はある程度高いがスピードは遅く、攻撃も単調。剣術に覚えがあれば討伐は難しくない。

剣術はユーリの訓練を受けてからそれまでの成果が一気に発揮されたのか、ユーリに言わせるとランクB相当らしい。

ならば、今回の依頼は余裕で達成できるだろう。


「さあ、着いたわよ。」


「ありがとうございました。最後になりましたが、僕の名前はノエルといいます。お名前をお伺いしても…?」


「ふふ、いつ聞かれるのかと思ってたわよ。私はセナよ。この先に用事があるから帰りに拾ってあげるわ。依頼、頑張ってね。」


そう言うと、セナは馬を走らせ、瞬く間に彼方へ去っていった。

側から見るとまるで星みたいだな…。

…さて、先ずは依頼者に洞窟まで案内してもらうとするか…。

依頼者の名前はオージー、この村の村長か。


村を歩きながら、オージーの家を聞く。


「こんにちは、オージーさんの家はどこにあるか分かりますか?冒険者ギルドからの依頼の件で来たのですが。」


「ああ、冒険者かい?オージーさんだったらこの道をまっすぐ行って右を曲がったら赤い屋根の家があるから、そこがオージーさんの家だよ。…気をつけなよ。」


と、話しかけた17歳くらいの男はニヤリと笑いながら言った。


気をつけなよ、と言う言葉に少し引っかかるがこちらは依頼された身だ。特に何も無いだろう。とにかく行ってみるか。


「ありがとう!」


と言い、ノエルは走り出した。

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