冒険者ギルドにて
「はあ、はあ、っく、」
バシッ!
剣が手から弾かれる。何回も何回も剣を握って、弾かれてを繰り返したせいか手のひらの皮は剥け、赤黒くなっている。
「もう、ユーリはいつも乱暴なのよ!可哀想に…」
薄い桃色の髪を靡かせ、女が小走りに近づいてくる。
両手にしている腕輪を合わせ、祈る様な姿勢をとると、白と金と薄い青が混じった機概がうっすらとした光と共にユーリの手を包み込む。
すると、みるみるうちに手の傷に薄皮が張って行く。
「ありがとう、ナタリーさん。」
「いいのよ〜、ユーリは学生の時も先生だった時も自分にも他人にも厳しすぎるって有名だったのよ〜、」
「…ふむ。そうだったのか…」
気のせいか少し落ち込んでいるユーリ。
自分としては厳しくても良い。むしろ自分の力を最大限伸ばしたい。そんな気持ちもある。最近は何故か身体も前より思うように動くし、頭もよく働く。
「僕は大丈夫なので、このまま厳しく、お願いします。」
「はっはっは、 良いだろう。君には機概を自由に操り独自の騎士団を持つことが出来る、機概騎士になる才能が大いにありそうだからな。厳しく行かせてもらうよ。」
その言葉を聞き、身体と心が奮い立った。
「うおおーー!!」
バシィン!!
午後からは冒険者ギルドに行き、掲示板に貼られた依頼書から冒険者ランクに合わせた依頼を受ける。
因みに冒険者とは、機概騎士団ならびに機概機関、機概騎士養成のための学校であるトーコウ学園から提供される機概武装を装備し、街や村を飛び交い、依頼を達成する者たちのことである。
彼らは機概の形を変化させることは出来ないが、武具の扱いに秀で、高い戦闘力を有する者も多い。
そんな中に身を置き、冒険者として高い地位に上り詰めることは今後あの男を探しに旅をするにあたって役に立つらしい。
因みに僕のランクは1番下から3番目、上から4番目のDランクだ。
機概を変形させられるだけである程度の実力は保証されるらしい。
まあ、何はともあれ初めての依頼を探そうか。
掲示板の前に立ち、依頼書に目を凝らす。
「うーむ、村の畑を荒らすグリズリーマグナムの退治、ノースウッズの林を占拠したカグヤモンキーの殲滅…、どれも怖そうだなぁ」
お、これなんか良さそうだぞ。
依頼書を一枚取り、受付に持っていき確認をもらう。
受付には女性のスタッフが2名、男性の受付が2名並んでいる。
女性の前には既にむさ苦しい冒険者たちによってまるでショーでも観るかのようにワイワイと列が出来ていた。
仕方なく、男性の受付さんの前に立ち、
「これ、お願いします。」
「はい、冒険者カードを見せていただけますか?」
カードを見せる。
「えっ、?…あ、申し訳ございません。ご年齢が9歳とのことですが、、」
「合ってますよ。よく言われるんですよ。大人びて見えるって。」
男性は苦笑いしながら、
「は、…はあ、申し訳ございません。9歳にはとても見えないので驚いてしまいました。おっしゃる通り、大人びて見えますね。でも、冒険者には年齢は関係ありませんからね、ランクは適正ランクですので、問題ありません。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
深々と頭を下げられ、こっちの受付に来て良かったと思った。
また会えるように頑張ろう。
その思いと共に冒険者ギルドを後にした。