訓練の始まり
翌日朝早く
『ドバアアァーーン!!!』
聞いたことがないほどの鼓膜があと一振動で破れるくらいの騒音と共に、目を覚ます。
「うるさい!」
「さっさと起きろよ、訓練の時間だぞ」
目を擦り、顔を上げるとユーリが何やら金と青の部品が組み合わさった大砲のようなものを手に、扉に寄りかかっている。
クイっと顎を後ろにしたユーリの言うように部屋を出た。
広間にある机の上には2つのパンと肉、スープとサラダがあった。
「食べたら訓練だぞ。早く食べたまえ。」
言われるがまま食事にありついた。うまい。
パンとサラダはさして味は変わらないが、肉はあまり食べられないので、たくさんお代わりした。
スープは母さんの方が美味しかった。
この後は昨日の夜言ってた「地獄」と言われる訓練が始まるらしい。
…楽しみだ。
「さあ、食べたな。訓練だ!地下に行こう。」
屋敷の裏にある地面についた扉をユーリが手で触れると、ガチャガチャと扉が変形し、地下に続く階段が現れた。
ユーリの後について階段を降りると、さっき見た大砲や橋を造り出した物質に似た材質の指輪、腕輪、手袋、ネックレスなどの装飾品が並んだ部屋があった。
「早速だが、機概は知っているだろう?」
「はい、直接見るのは初めてだけど教科書で見たことがあります。確か、この大陸で古くから採掘される物質で既存の概念とは異なる概念が込められていて、限られた人によって形を変えることが出来る不思議な物質だとか。…合ってますか?」
「…ふむ。よく知ってるね、最近の教育は素晴らしいね。」
(…限られた人間にしか扱えないことは知らないはずだがな、)
「まあ、私の見解では君もこの機概を扱えるはずだ。君は強い心、概念を持っているようだからね。」
「は、はあ…。分かりました。やってみます。」
手渡された指輪を右手の人差し指にはめ、願う。
あいつの…あの坊主の体を真っ二つに出来るような、鋭く、重く、最強の剣を思い描く。
「構造を把握しろ、それを頭で一つ一つ組み立てて行くんだ。」
だんだんと柄、鍔が形成されて行く。柄は薄暗い金色、鍔は真ん中に青い炎の様なコアの周りを柄と同じ色の金の鋼が形を成して行く。
そのうち金の芯の周りを薄い青の刃が鋭く囲む様に、剣身が形成されて行く。
…できた。
チラリとユーリの方を見ると、口元をニヤリとさせ、
「…ふむ。」
と言った。
「…ペースを上げるか。」
地獄の訓練が始まろうとしていた。