何があった?
「さて、君の部屋にも案内したし、荷物も置いたな。
気になっていることを聞かせてもらおう。」
「…はい。」
ユーリ・カノッサは燃えるように鮮やかな赤色の布に金と黒の装飾が施された椅子に腰掛け、尋ねた。
「まず、君の名前は?」
「ノエルです。」
「…ふむ。君の父君か母君はどこにいるのか分かるか?名前のわかる大人はいるか?」
「父さんはノア、母さんはエマ。学校から帰ったら家が無くなってて…、っ」
口が重い。頭がぼんやりする。
「父さんが刺せって言って刺して暗くなって…」
「あ、あれ、?思い出せない、」
ユーリは何かを探るような目をして、後ろに控えていた使用人に小声で指示しているようだ。
「怪しい人物とか見なかったか?」
怪しい人物…?
…あ、いた。あいつは何かおかしかった。
あの坊主の格好をした行者。
「怪しい行者がいた。あいつが怪しい。」
「…ふむ。もしかしたら東方機概協会かもしれんな。この大陸の東に位置する島国、ザパーグの国教だ。最近島から出てきてこちらの大陸で布教やら何やらを行っているらしい。」
学校の授業で聞いたことのある国だ。
憎むべき相手が見つかると体の内側から何か黒い、怒りのような感情が込み上げてきた。
「…どうすれば捕まえられる?」
ユーリを睨むような目つきで、内側に殺意を隠しながら聞く。
「…ふむ。捕まえようにも証言は君1人だし、先ほど届いた知らせによると君を拾った地の周辺では誰1人として保護することができなかった。」
僕以外にいなかった…?
カイは…?学校のみんなや村のみんなはどこにいったんだ!?
だめだ、落ち着け…、
父さんは死なないと言った、いつか会えるはずだ。
ユーリは続けて頬杖をつきながら言った。
「つまり、騎士団は動かせない。君が自分で調査するか私を頼るしかないな。」
「…僕が捕まえる。ユーリさん、助けてください。お願いします。」
頭を下げた。
ユーリは僕の頭をつつきながら、
「任せなさい。」
と言った。