目が覚めて
目が覚めると、目の前に知らない男が座っていた。
「…どなたですか?」
「やっと起きたか。私の名はユーリ・カノッサだ。道で倒れていた君を我が馬車に招き入れてやった者の名だ。覚えておくが良い。」
「道で?倒れてた?」
…そうだ、僕は父さんを剣で刺して、でも刺した後の記憶がないぞ…、
そんなことよりも、
父さんは?、母さんは?
混乱している僕を見てユーリが
「どうした?というか、君の家はどこだい?この近くに村があるはずなのだが見つからなくてね」
締め付けられる心臓を抑えながら、
「僕はどのくらい眠っていましたか?」
「3分くらいだな」
「…この近くに村はありません。」
「……ふむ…もし良かったら我が屋敷に招待するが、どうだい?」
何かを汲み取ったのか、ユーリ・カノッサは言った。
「…ありがとうございます。」
それ以上言葉に出すと壊れてしまうくらい、温かいものを感じた。ユーリも、それ以上は何も聞かなかった。
数時間が過ぎ、ユーリが
「着いたぞ。」
と、僕の肩をつついた。
そこには、今までに見たことのないほど巨大な石で作られた壁があった。
「こ、これは何ですか、?」
ユーリは苦笑しながら、
「壁だね。街を囲っているんだ。因みにここはノースシティという。」
少しムッとしながら、
「それぐらい聞いたことあります。」
「…ふむ。まあ、とにかく街に入ろう。」
ユウリの馬車は検問を受ける行商人や旅人を追い越し、門をくぐった。
「さあ、びっくりしたまえ!」
ぶわぁ! っと、空気が変わった感覚ののちすぐに腹を空かせる香ばしい肉の香りと、鼻をつく臭いの煙が目の前を覆った。
目に入る全てが今まで目にしてきたものより光を放って見える。
「…すごい。」
率直な感想を言うと、ユーリが
「はは、今度は当たったよ、初めに何を言うか。私の家はこの街の中央区だから、馬車に乗りながら街を楽しみたまえ。」
あちこちに見慣れぬ物や店があったが、特に本屋と防具屋が多く、目についた。
そんな僕を見つめながら、ユーリは黙って座っていた。
そんなことをしているうちに、馬は足を止め、
「着いたぞ。」
そう言いながら、ユーリは僕の手をつついた。
「…大きいですね。本当に僕なんかが入ってもいいんですか?」
「私が招待したんだ。当然入ってもいいだろう。」
ユーリが門を通ろうとすると、門がまるでバネが縮む時のように脇によけ、門と屋敷の間にある池の上に幾つかの薄暗い金色の鋼のような板が組み合わさり、橋がかかった。
「さあ、入りたまえ。」
恐る恐る橋を渡り、荘厳な扉をくぐり、屋敷に入った。