日常に忍び寄るもの
僕の名はノエル
9歳だ。
毎日特に好きでもないが、父から剣の稽古をさせられてる。
「はあ、、 今日は怒られないかな」
こんなことを言ってるから分かるだろうが、僕は弱い。
と言うより父が手を抜きすぎないのが問題だと思う。
さあ、今日も殴られに行きますか!
と言いつつも一矢報いたい気持ちを胸にベッドから出て1階の父に
「おはようございます!」
と気持ちの良いご挨拶を一つ。
「、、おはよう。」
いつもの仏頂面の奥に闘志と優しさ(?)を滲み出してる父の姿を確認。
心臓がキュッとなる。
そんな時は母さんが作ってくれたコーンスープをゆっくりとすする。じんわりと体に染み渡り、力が湧いてくる。
「美味しかった、ごちそうさまでした」
「ん〜、」
いつもの気のない返事の母。
父はいつの間にか庭で剣を構えている。一切動いていないが、本人が言うには動く準備をしているらしい。
「いざ尋常に参らん!」
村に伝わる会戦の言葉を口に、家を飛び出し襲いかかる。
、、、スッ…―――
おはよう
とまあ、こんな感じで僕はいつも半刻ほどたってからもう一回起きることになる。
どうにかこのループから脱出したい。
どうすれば、、
ブツブツと独り言を言いながら学校に行く道中、1人の行者がいた。フードを深く被っているため、顔はよく見えない。
「やあ、坊ちゃん。ここら辺でノア・フラクルという男はいないかな?」
「フラクルっていうのは分からないけどノアなら、僕の父さんだよ。ここまっすぐ行ったら家があるよ。」
「やっとか、、」
なんだ?知り合いか?
「お友達なの?父さんと」
「まあね、古い知り合いさ。 とにかく、ありがとう」
そういうと、男は乗っていた馬を置いて道を歩いて行った。
少し気になるが、学校もあるのでついて行くわけにもいかない。
僕は走って学校に向かった。
学校に着くと、もうすでに生徒の大半が揃っている。
とは言っても一つの村の子供を集めた程度のこの学校には十数人の生徒しかいない。
と、後ろから肩を組まれた。
「よう、ノエル。 おはよう」
「おはよう、カイ。今日も遅いな。」
こいつは僕の家の畑の隣の隣に住んでる。
いつも学校に着く時間はほとんど同じだが、不思議と僕が少しだけ早く着く。
以前尋ねたときは偶然だと言われたが、僕は内心ではカイが何かを隠しているような気がする。
そんなことを考えているうちに1限、2限、3限と早いような遅いような時間は流れた。
数時間が経ち、学校が終わった。
学校に来る時に出会った男が気になる。
今日は走って帰るか。
家に着いた。
と言うより、家が、無い。 燃えかすが散らばっている。
よく分からない。
あったものが、無い___
なんで?あったよな、僕の家_______
父さんと母さんは?
「と、父さ _ んぐッ、」
後ろから口を塞がれた。そのままものすごい速さでその場から連れて行かれた。
「静かにしろ」
「突然だが、俺を刺せ」
と、黒い短剣を渡し、目を合わせる父。
そう言えば、目を見て話すなんて久しぶりだな、というか父さんの瞳って黒だったっけ、ん?刺せってなんだ?
…だめだ、思考が追いつかない。
「死んじゃうよ」
やっとのことで言葉が出た。
「死なないから、、 今は時間がなくて説明できないが後で必ず話す。約束だ。」
あの強い父さんのことだ。それに今まで父さんの言うことに逆らってうまく行ったことはない。
しかし、まだ躊躇する僕の手を握り、父さんは自分の胸を、
刺した。