第7ゴミ拾い 仲間1人目
「全治1ヶ月……」
イリが両肩をプルプル震えさせる。
「いや。でもさ。もう少しで第1階層は攻略できそうだったんだよ」
そんなイリの様子を見て、アドが慌てて言い訳をする。
「そもそも、烈火のダンジョンを簡単に踏破できたのに何故! 穏風のダンジョンは踏破できないんですか!」
病室にも関わらずイリが大声をあげる。
個室なのが幸いだ。
「いやだからさ。攻略できたのは、モンスターから姿を隠していたからであって、ちゃんとした攻略じゃないんだって」
もう何度もした説明をアドがするがイリの怒りは収まらない。
かに思えた――
「ほんとにもう……」
イリの両目から涙が零れる。
「無事でよかったです」
そのまま肋骨が折れているアドの胸にもたれかかり、おんおん泣き始めてしまった。
イリが泣き止んだのは、それから30分後であった。
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「取り乱してすみませんでした」
まだ目が赤いが、一応は落ち着いたようだ。
「俺の方こそごめん。たった2人だけのギルドだもんね。もっとちゃんと説明もするし成長もするよ」
素直にアドが頭を下げる。
スキルが発現してからというもの、その能力に頼り切っていたことは事実であり、堂々と自慢までしてきた。他の冒険者から羨ましがられるような能力だったこともあり、自分は強いと勘違いしていた部分はあった。
「正直、もう少しやれると思ったから、この傷は戒めだね」
笑うと痛みが走るので、ひきつりながらアドが笑う。
「それで。これからどうするんですか?」
肋骨が治るまでダンジョンには挑めない。
その間のことをイリが訊ねる。
「うーん。考えていたんだけど、この村で商売できないかなぁ?」
「商売ですか? 申請さえすればできると思いますけど?」
「ホント? よかったぁー」
思わずアドがイリの両手を握る。
「え? アド……さん……」
イリが照れて両頬を赤く染めたのを見て、アドも慌てて手を放す。
「あ。ごめん……」
気まずい空気が2人を包んだ。
「そ。それじゃあ商売ができるように申請してきますね」
その空気から逃げ出すようにイリは病室を後にした。
「いや~若いね」
そんな様子をニヤニヤと見ていた看護師が声を掛けてくる。
●
「いいねぇー。青春だねー」
恥ずかしがるアドを後目に、看護師のニヤニヤは止まらない。
「私が若い頃はもっと強引だったけど、あーゆーのもありだねぇ」
「そんなんじゃないですよ」
アドがぶすっとして言うが、看護師は聞いてもいない。
「ところで君。ダンジョンに1人で長期間潜ってたんだって?」
急に真面目な表情で語りかけてきて、アドは思わず背筋を伸ばした。
「仕事柄、人の死にはよく直面するけどいい気はしない。君みたいに若い子が死ぬのはもっといい気がしない。なんで1人なんだい? 仲間は?」
「えっと……」
本当のことを言い淀んでいると、看護師は何かを察したようだ。
「確かにずっと2人きりでイチャイチャしたい気持ちは分かるけど。彼女を安心させるためにも仲間を連れてダンジョンに行きなさい。命を粗末にするんじゃない」
ピシャリと看護師が言うが、どうやら勘違いをしているようだ。
「え? ちょっと勘違いしてま」
「私の知り合いを紹介してやろう。便利な能力を持っているしちょっと人見知りだからパーティーを組む人がいないんだ。ちょうどいい」
勘違いをアドが訂正しようとするも、それを遮って看護師がどんどん話しを進める。
どうやらこの看護師。人の話しを聞かないようだ。
こうして看護師に強引に勧められるまま、アドは看護師の知り合いに会いに行くことになった。




