第6ゴミ拾い 穏風のダンジョン第1層 草原の間
穏風のダンジョン第1層。草原の間――
出現するモンスターは、草食モンスターばかりで危険度は無いに等しい。
こちらから攻撃を仕掛けても、モンスターの方が逃げる。
しかし、だからこそ戦いの基礎を学びたい冒険者にはうってつけの場所でもある。
ドドという大きな牛型のモンスターにいたっては、多くの素材を入手できてそのどれもが食糧品として名高い。
ただし、すぐに逃げられる上にあくまでも食糧にしかならないため、積極的に狩る冒険者は皆無である。
そんなモンスターをアドはひたすら狙った。
狙いは、逃げるモンスターをしっかりと倒しきる方法を身に着けることと、稀にモンスターが落とすドロップアイテムだ。
ドドの場合、ドドの角とドドの牙を落とす。
どういうわけか、倒した時に牙と角だけ消えたり折れたりしてしまうのだが、稀にドロップアイテムとしてその場に残り続ける。
他に、食用としてドドの肉やドドカルビ、ドドロースなどがあり、武器の素材としてドドの骨を剥ぎ取れる。
個体がでかければでかいだけ、多くの素材を剥ぎ取れるのでいいお金稼ぎになるのだ。
加えて、アドのスキルによって無駄に多く入手したドドの骨は、帰還の書という特殊でレアなアイテムに変換させておく。
開くと、自分が登録しているギルドに瞬時に帰還できる書物だ。
使い捨てではあるものの、アドのスキルがあればそこも問題はない。
そして分かったことは、アドのスキルは使えば使うほどレベルが上がるということだ。
最初は、拾ったゴミをランダムなアイテムに変換させる能力だったが、次第にゴミを勝手にに拾わなくなり、入手したゴミや素材その他もろもろの物から好きなアイテムに変換できるようになってきた。
『ふぅ。自分自身が成長するだけじゃなくて、能力も一緒に成長することで難関ダンジョンを攻略していくんだな……』
額の汗をぬぐいながら、ドドをしっかりと剥ぎ終え、次の獲物を見据えた。
●
アドが見つめる先にいるのは、ドドと比べると小柄だが稀に攻撃を仕掛けてくるサイのようなモンスターだ。
その名を、土角という。
一般的には、近づいても攻撃を仕掛けなければ大人しく、触らせてまでくれるモンスターだ。
しかし、攻撃を仕掛けてきた敵に対しては、鼻についた大きな角で攻撃をしてくる。
とれる素材もたかが知れているため、基本は攻撃を加えないのがセオリーだ。
しかし、アドは戦闘の練習として敢えて攻撃を加えることにした。
倒して得られる素材は、草食獣の骨のみ。
ドロップアイテムとして土角の鼻角を入手できるが、そこまで価値があるわけでもない。
攻撃をするだけ損なモンスターに向かって、短剣で一太刀いれる。
「ぐおぉ!」
怒りの声を上げて、こちらに突進してくる。
『あの角で攻撃をされたら、ベテランの冒険者でも痛いじゃすまないんじゃないか?』
そんな考えが頭をよぎる。
そのまま、木の盾を前に出すがそれで防げるとは思えない。
「いってぇー!」
案の定、木の盾は破壊されアドは後ろの大岩に叩きつけられた。
幸いにも、角が体に刺さることはなかったが、土角は連撃しようとこちらに突進の姿勢を見せる。
『やっぱりな』
アドのこのやっぱりな。は、いくら便利なアイテムを持っていても決してダンジョンは攻略できないということが再認識できた意味だ。
アドのスキルはあくまでもダンジョン攻略を楽にしてくれる程度である。
そもそも、便利アイテムでダンジョンを攻略できるのであれば、お金があるパーティーならどんなダンジョンでも攻略できてしまう。
『ちゃんとモンスターを倒せるようになってこそ、この能力はその真価を発揮する』
このアドの考えは正しい。
どんな能力でも、使い勝手のいい点と悪い点が存在する。
そして、どんな能力も本人の経験値が足らなければその真価は発揮されない。
しっかりと基礎を学び、実践を積み、着実にダンジョンを攻略することで、自分のスキルの真の力を引き出せるのだ。
「ダンジョン攻略に近道は無いってか!」
先ほど手に入れたドドの骨を長刀に変換して、突進してくる土角に真っすぐ向ける。
「おっも!」
土角の突進力は想像以上に強かった。
真っすぐ構えた長刀は折れ、土角の頭部がアドにぶつかる。
角が当たっていれば突き刺さっていただろう。
そのままアドは遠くへ飛ばされる。
一瞬息が止まる。
「うっ」
思わず声も漏れる。
強いモンスターだったり、難易度の高いダンジョンだったならば、連撃されたり他のモンスターに攻撃をされていたかもしれない。
『モンスターの攻撃は受け止めるんじゃなくて、躱すのが正解なのか』
痛みに顔をしかめながら、戦い方を少しずつ覚えていく。
剣に刺された土角はその場で倒れていた。
『こりゃあ厳しいな……』
自分の傷具合を見て、アドはダンジョンの入り口に戻って行った。
駆け出しの冒険者が、最も簡単なダンジョンをすぐに攻略できるほど、世の中は甘くなかったのであった。
ゴミ拾い




