第28ゴミ拾い ダンジョンの嘆き
「よーし! それじゃドンファが再出現する1週間が経ったことだし、ドンファを再び倒しに行くぞー」
アドが元気よく言う。
ザクロを仲間に迎え入れ、アドたちの体調も全快になったところで、改めて穏風のダンジョンへ向かうことにした。
穏風のダンジョンの、1階層の階層主であるドンファの出現頻度は倒されてから1週間である。
ランダム要素がなく、頻度もそこまで高くないのでレベルは1になっている。
それでもこのパーティーにとっては簡単なダンジョンとは言えない。
ザクロは戦闘能力で言えばずば抜けているが、集団で戦ったことがない。
アドとシャラはついこの間ようやくドンファを辛うじて倒した程度。
うまくパーティーとして機能しなければ攻略するのは困難だ。
「目的はドンファだから、道中のモンスターは無視する」
アドの言うとおり、1階層の草原の間のモンスターはこちらが攻撃を仕掛けなければ襲ってくることはない。
「道中のアイテムはどうしますか?」
シャラが問うが、草原の間にあるアイテムは薬草くらいだ。
「道中にある分は入手していくけど、不必要には取らなくていいと思う」
今現在の目的は素材集めではなく、ドンファだ。
隣でイリも頷いている。
「ギルドの復興もそこまで急いでるわけではないので、まずはダンジョン攻略を目指してください」
「あ。そうだ」
ダンジョンへ向かおうと立ち上がったアドが、足を止めた。
「イリには、俺たちがダンジョンから戻るまでに頼みがあるんだ」
「何ですか? 私にできることでしたら何でもしますよ!」
久しぶりに頼られているようで、イリは喜んでいる。
「ドンファを倒したら、また露店を開こうと思うんだ。イリがメインで店主を務めることになると思うけど、その準備と手伝ってくれる人を探しておいてほしい」
アドの言葉を聞いて、イリは笑顔ではいっ。と返事をした。
●
穏風のダンジョン1階層、草原の間――
近くにあった薬草を入手した瞬間に、アドの能力が更に成長した。
スキル、ドロー。近くのアイテムや素材、宝などを自動で入手する力だ。
目に見えなくても手に入れることができるので、利便性が高い。
「このスキルがあれば、薬草を簡単に入手できちゃうね」
幸先いいとアドは思っていた。
しかし、そう簡単にはいかないのがダンジョンであった。
ダンジョンの嘆き――
ダンジョンに起こる不思議な現象の1つである。
モンスターが大量に現れ、その全てのモンスターが獰猛になる。
「ダンジョンの……嘆き……」
周囲を土角に囲まれてアドが絶句する。
更にはドドと即兎も集まって来る。
「モンスターが大量に発生して獰猛になる上に、現れたモンスターは強化されているらしいから気を付けてくれ」
と、アドは言うがどう気を付ければいいのか皆目不明である。
「ボクのおもちゃで倒すよ」
ザクロがずいっと前に出ると、能力、死霊で操るべく兵士の死体たちがどこからともなく現れた。
兵士の死体は、まるで意志があるかのように周囲のモンスターに襲いかかる。
「すげぇな……反則級の能力なんじゃないか?」
「ボクは最強だからね」
ふふん。とザクロが笑う。
ふと、ザクロはけいちゃん以外の前で笑ったのは初めてなのに気がついた。
「ねぇアド」
「ん?」
「今度けいちゃん作るの手伝ってよね」
なんだか、少し恥ずかしくなったザクロは、お礼を言う代わりにそんな言葉を口にしたのであった。
●
周囲に集まったモンスターは、その数を確実に減らしつつあった。
主な功労者はザクロであることは言うまでもないが、意外にもシャラの戦闘センスがここで光っている。
アドと2人きりの頃は、どうしても自分がアドのサポート役としてモンスターからも目立ってしまっていた。
しかし、新たにザクロが仲間に加わったことにより、ザクロもアドも戦いの主役となり得る上にどちらもサポートの主役になり得る。
つまり、自分が門モンスターの意識から外れることが多くなるのである。
『モンスターの意識が外れた私がやるべきこと! それは1つ!」
そう。シャラが考えているように、モンスターから意識が外れているということは自由に動けるということである。
この戦法で今まで苦戦していた土角をも倒せるようになっていた。
嬉しいことに、土角の鼻角をいくつもゲットしていた。
「こんなにドロップアイテムが手に入ったのは、ダンジョンの嘆きのおかげだね」
周囲のモンスターがいなくなり、アドが楽観視する。
事実、土角の鼻角は土角のドロップアイテムであり、確実に手に入れられるものではない。
その上、土角の鼻角は様々な用途があるので、需要が高い。
食糧になるモンスターの肉もたくさん手に入り、ダンジョンの嘆きが起きた割にはリターンの方が大きかった。
これはザクロの加入が大きいだろう。
しかし――
ダンジョンの嘆きは1回で終わるとは限らない……
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ダンジョンは得てして複数回嘆く――
「くそっ!」
先ほどまで余裕の表情を見せていたアドは、額に汗をかいていた。
幾度の戦闘で疲れが見えてきた。
「いい感じのアイテムとかないのー?」
ザクロもひーひー言っている。
「ボクは体力には自信がないんだよー」
ふぇーん。と泣きじゃくる。
「とにかく突っ走ろう!」
出入口にさえ戻れば体力なんて簡単に回復できる。
目の前にいるモンスターを無視して出入口まで突っ走ることにした。
アドたちはまだ、ダンジョンの恐怖を知らなかった……




