第21ゴミ拾い 少女と国王
「落ちろ……落ちろ……落ちろ……」
クマのぬいぐるみに足を触れられた衛兵が呟きながら、足を洗っている。
よく見れば血が出ている。
「気の毒だがあいつはもうだめだ」
風呂の外で他の衛兵が喋っている。
「俺はまだ平気だ! 頼む! 助けてくれ! この忌々しい痣さえ消えれば……」
しかし男が通常の日常を送れる日が来ることはなかった。
男は収監され、そのうち殺されることになるだろう……
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「顔をあげよ」
国王が少女に向かって言う。
少女は礼儀を欠かさずに国王に首を垂れていた。
「我が国、ギルドのために心血を注ぐ気持ちにはなったか?」
「それよりもボクのけいちゃん返してよ」
国王に少女は食ってかかる。
「正直驚いておる。まさか呪いのぬいぐるみまで作れてしまうとはな」
「ぬいぐるみじゃなくてけいちゃん。それに呪いじゃないって何度も言わせないでよ」
「いいや」
少女の言葉を国王が否定する。
「お主の能力は呪いだ。触れた者に呪いの痣をつけ、その者が死んだ時に操る呪いの力だ」
「違う!」
思わず少女が叫ぶ。
すぐさまに、周囲の衛兵が長い槍を使って少女を押さえつけた。
「ぬいぐるみは預かっておる。あのぬいぐるみにも呪いの力が宿っているとは驚きだ」
衛兵に押さえつけられ、無理やりに土下座のような恰好をさせられている少女を見下ろし、国王が冷徹に言い放つ。
「なぜ言わなかった?」
「捨てられると思ったから」
小さな少女の呟きを国王は聞き逃さなかった。
これが少女の弱みになると感じていたからだ。
「1つ。あのぬいぐるみを返す条件をやろう」
その言葉に少女は顔を上げる。
「寂静村が裏切った。特に思うことはないが最近我がギルドに吉報がない。裏切者への見せしめに寂静村を壊滅させてこい」
「ボクのお友達を使っていいならすぐに壊滅できるさ」
くるりと背を向けて少女はその場を去った。
「ぬいぐるみを焼き払え」
周囲の衛兵にそっと国王が言い放った。
●
少女は、今まで入手した死体のことをお友達と呼んでいた。
自作のクマのぬいぐるみは特にお気に入りでけいちゃんと呼んでいた。
他の死体が喋らないのに対して、なぜかぬいぐるみはしゃべることで少女は特に気に入り、唯一心が許せる仲となっていた。
少女は今まで手に入れた全ての死体と共に寂静村へと侵攻した。
正に、死体の軍隊であった。
それを見た国王は嬉々として喜び、何としても少女の力を我が物にしたいとも思っていた。
それ故に、少女が国に忠誠を誓っていないことが歯がゆかった。
「能力を奪ったりする力の持ち主はまだ見つからぬか?」
1人の衛兵に言うが、そんな都合のいい力があるはずも見つかるはずも――
「凄いですアドくん」
階層主と戦いながらシャラが驚く。
ゴミを10万拾ったことで、アドには新しいスキルが発現していた。
リユース。ゴミを好きなスキルに変換できる力だ。
スキルレベルが低い今では、低レベルのスキルだったり自分が知っているスキルにしか変換できないが、レベルが上がればどんなスキルをも手に入れられる。
国王が欲する力である。
皮肉にも、国王が欲する力が壊滅させられようとする寂静村にあったのであった。




