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破綻寸前ギルドを追放冒険者のゴミ拾い能力が救います  作者: shiyushiyu


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2/29

第1ゴミ拾い 追放された記憶

「まずは新しくギルドの名前を決めないとですね」


 イリが、かつてはかなり巨大なギルドだったであろう町を案内しながら言う。


「え? 今まで通りの名前じゃダメなの?」


 キョトンとアドが訊くと、イリは首を左右にブンブン振った。


「ギルドに所属する冒険者が一瞬でも居なくなれば、もうそのギルドは潰れたと言ってもいいと思います」


 それに。と顔を伏せる。


「せっかくなら新しくスタートしたいですから」


 その言い方にはどこか、ギルドの過去を思い出したくない雰囲気があった。


 アドもこれから所属するギルドの過去のことを深く知ろうとは思わなかったし、自分もパーティーを追放された過去をほじくり返されたくない。


 自分が追放されたあの屈辱な日の事は今でも思い出す――


 ●


「おめでとうアド! これで晴れて一人前の冒険者だね」


 この世界では、12歳になると自分の将来を左右する能力付与の儀式をギルドによって行われる。


 とあるギルドに所属する小さな村で、アドもその儀式を受けた。


 同じ村出身の女の子がアドに屈託ない笑顔を見せる。


 アドの能力がどんなものなのか楽しみで仕方ない様子だ。


 この村には、アドと同い年の子供が全員で5人いる。


 みんなで、12歳になったら能力を付与してもらって冒険に出ようと幼い頃から約束していたのだ。


 しかしアドが手に入れた能力は――ゴミ拾い――


 誰が考えてもくそみたいな能力であるのは明白だった。


「だ。大丈夫だよ。きっとチート能力なんだよ」


 最初の女の子が他のみんなにそう言って、なんとか同じパーティ―にアドを招き入れた。


 しかし――


「そっち行ったぞアド!」


 男の子が叫ぶがアドに使えるスキルは何一つない。


 腰に刺した短剣でこっちに走って来るライオンを迎え撃とうとするが、ライオンに対して短剣なんて無謀としか言いようがない。


「障壁」


 1人の女の子が呪文を唱えると、アドとライオンの間に見えない壁が出現して、ライオンの突撃を防いだ。


 そのまま最初の男の子がライオンを倒した。


「やった」


 アドがライオンに近づこうとすると、他の4人が同時に叫ぶ。


「近づくな!」


「離れて!」


「近寄らないで!」


「だめ!」


 アドのゴミ拾い能力に使えるスキルはない。


 しかし特性がたくさんあることが判明している。


 1つ。どんなゴミでも入手可能。というよりも強制的に入手してしまう。


 そして、手に入れたゴミは、誰にも譲渡できず捨てることも売ることもできない。


 つまり、アドはゴミを永遠に自分で持っているという謎の能力を持っているのだ。


 レアアイテムを偶然手に入れた時も、アドが強制的にそれを手に入れてしまい誰にも渡せない上に自分で使うこともできずに困り果てたことがあった。


「ホントに仕えねーな」


 夕飯時、リーダーの少年がアドを見て言う。


「そんなこと言うもんじゃないわ」


 最初の女の子は、今でも庇ってくれるが他の人がアドを足手まといと感じていることは分かっている。


 むしろアド自身も、自分が役立たずだと自覚している。


 何度このパーティーを抜けようと考えたことか。


 自分には冒険者は向いていない。


 他の職業に就いた方がいい。


 しかし、この特性のせいで何にも仕事はできない。


 消去法で冒険者をするしかなかった。


『俺だって、好き好んでこんな能力になったわけじゃないのに……』


 通常、パーティーの中で戦闘経験が浅い者がいる場合には、荷物持ちやマッピングをするという雑用作業がある。


 しかし、アドの場合はその特性で仲間の荷物を持つことはできず、マッピングしても誰にもそのマップを教えられないため雑用すらできなかった。


 ご飯の時も自分だけ別の席。


 同じパーティ―なのに疎外感が溢れてくる。


「大丈夫だよ。いつかきっとスキルツリーが発現するよ」


 最初の女の子はそう言って、何度も元気づけてくれた。


 所属するギルドが管理するダンジョンの1つ――深水のダンジョン――


「今回はこのダンジョンを踏破しようと思う」


 リーダーの少年が言う。


 危険度はやや優しいのレベル2だ。


 初心者冒険者が次にステップアップするのに、ちょうどいい難易度と言えるだろう。


「アド。分かってると思うけど」


 リーダーがアドに向かって言う。


「ちょっと。変なこと言わないの」


 それを女の子が遮る。


 恐らく、足は引っ張るな。とかそんなことを言おうとしたのだろう。


「ま。何かのスキルが発現するかもしれないし、今回はマッピングを頼むわ」


 頭の後ろをポリポリ掻きながらリーダーが言う。


「分かった!」


 満面の笑みでアドはそう答え、パーティーの先頭を意気揚々と歩き出した。


 深水のダンジョンは、その名の通り水関係のダンジョンだった。


 出現するモンスターも水属性ばかリで、雷系統の呪文を覚えた魔導士がいるこのパーティーにはうってつけのダンジョンと言える。


「えーとここを右?」


 ただし、中は迷路のように複雑な構造になっていて、今だにアドたちは1階層から抜け出せていない。


「ねぇ。ここさっき通らなかった?」


「おい! 後ろからモンスターだぞ!」


 同じところを何度もぐるぐる回った挙句、何度もモンスターに遭遇していた。


 パーティーの誰もがアドがわざと迷っていると考えたのも無理はない。


 その日の野営時、アドが寝た頃に全員がひそひそ話をする。


「絶対おかしいって」


 魔導士の女が眉をひそめる。


「アドがそんなことするわけないよ」


 相変わらず女の子はアドを庇うが、その自信はもうかなり薄れている。


「でもなぁー。いくら迷路のようになっているとはいえ、こんなにも迷うか?」


 最後尾を歩く格闘家の男はアドを既に疑っていた。


「道中に開けられた宝箱がいくつもあった」


 リーダーが言うが、それは他のパーティ―が開けた物の可能性が高い。


 この程度のダンジョンならば、他の冒険者が何度も出入りしているだろう。


 しかし、全員疲労困憊で誰かのせいにしたいのだ。


「とにかく!」


 カタン。とスープカップの中にスプーンを投げながら魔導士が声を荒げる。


「明日も迷うようなら私もう我慢できないから!」


「悪いが俺もだ。マッピングすらできない奴、仲間に入れておくメリットないだろ」


 格闘家も同意した。


「これが現実だ。受け入れろ」


 自分以外のメンバーが信用していないのだ。自分1人が守ったってどうにもならないだろう。


 こくん。と女の子も頷く。


「見つけた――」


 ようやくアドが2階層へ向かう階段を見つけた時には、パーティー全員が疲労困憊で限界を迎えていた。


「今回はここまでにしておこう」


 ダンジョンには、階層から階層へ移動する場所に、階層主と呼ばれる通常よりも強いモンスターが現れることがある。


 こんな状況で戦えるわけがない。とリーダーが判断したのだ。


「ところでアド」


 リーダーが言いにくそうに声をかける。


「ずっと気づかないフリをしてたんだが、そのバッグ。かなりパンパンになってきたな。中身を見せてくれないか?」


 アドの特性で、手に入れた物を譲渡することはできないが見せることはできる。


 バッグの中から出てきた物は基本ガラクタだった。


 いくつかレアアイテムはあったが、どれも全員が知っているアドが偶然手に入れてしまったものばかり。


 ところが――


 今回のダンジョン遠征で手に入れたアイテムに関しては、アドは誰にも伝えていなかった。


 それは、全員がアドを遠ざけていたからという理由もあるが、アドが自分からコミュニケーションを取るのと控えていたというのもある。


「これって」


 いつもアドを庇ってくれていた女の子が驚く。


 無理もない。アドのバッグから出てきたアイテムの中に、希少アイテム黄水晶があったのだから。


「売ったらいくらになるか分からんぞ」


 格闘家が興奮する。


「何で黙ってた?」


 リーダーが問い詰める。


「え。いや。黙っていたわけじゃなくて」


 黄水晶に関しては、アドは本当に身に覚えがなかった。


 おそらく、道中のどっかの壁に埋まっていて、アドが通ったことで能力の特性が発動したのだろう。


「こんなのがあるなんて今初めて知ったんだ」


「アド……独り占めしようとしたの?」


 庇ってくれてた女の子が疑いの目を向ける。


「前にもあったよね? 帰還の書を勝手に手に入れちゃったこと。あの時もスキルのせいとか言ってたけど本当なんだよね?」


 全員疲れている上に、イライラもしている。


 誰かのせいにしたいし、誰か悪者を1人作りたい気持ちが心のどこかに生まれている。


「も。もちろん――」


 歯切れの悪い返事をしてしまった。


 この日から、アドと他の4人の溝は埋まらないものになってしまった。


 全員アドと喋らなくなり、アドのことを呼ばなきゃいけない時は、


「ねぇ」


 とか


「おい」


と名前すら呼ばなくなった。


「あいつまだ付いてくるのかな?」


 いつも庇ってくれてた女の子が、声を潜めもせずに言う。


「ただ飯ぐらいだろ? 放っておけよ」


 リーダーはそう言うが、格闘家はもう我慢の限界だったのだろう。


「いい加減にしろ!」


 声を荒げる。


「俺たちはこれからB級冒険者を目指すんだろ? 足手まといがいたらいつまで経ってもC級のままだ! あいつをパーティーから追放しないなら俺が出ていくぜ」


 格闘家は本気だった。


「……」


 リーダーがアドを見る。


「嘘だよね? 冗談だよね?」


 アドは冷や汗が止まらなかった。


 こんなところでパーティーから外されるなんて思ってもみなかったからだ。


 ダンジョンの中だここは。


 まだ1階層とはいえ、たったの1人になったら生き残れる保証はない。


「悪いな。お前は追放だ」


 それだけ言われて他のメンバーはアドに背を向ける。


「待ってよ! 荷物持ちでもマッピングでも何でもするから待ってよ! おいて行かないで!」


「うるせぇ!」


 ドゴォ!


 格闘家のパンチが炸裂する。


「何でもするなら、モンスターの囮にでもなってみろよクズが」


 フラフラボロボロになりながらダンジョンの外に出ると、既にパーティーから追放されたお達しがギルドに伝わっていた。


 そしてこのギルドは、お金にならない冒険者にとことん冷たかった。


「あなたをギルドから追放します」


 こうしてアドは、露頭に迷う寸前に現在のギルド長と出会ったのだった。


 ●


「聞いてますか?」


 イリが声をかけてアドは我に返る。


「あ。ごめん。なんだっけ?」


「ですから、私たちの名前をとってアイギルドでどうですか?」


 もう。と頬を膨らませながらイリが言う。


「いいんじゃないかな?」


 それからアドは、自分の能力について話し、大事な物は自分の傍に置かないようにイリに注意した。


「ここのダンジョンって難しいの?」


 アドが訊ねると、イリは黙って頷いた。


「危険度悪魔級でレベル不明の難関ダンジョンです。誰も踏破したことがありません」


 その分、中で採れるアイテムは貴重な物が多いらしい。


「まずは、俺がこのダンジョンに挑むか他のギルドのダンジョンに挑ませてもらうしかないね」


 アドが腕をまくるが、他のダンジョンに挑むにはお金が必要で、アドの特性でお金は支払えないので、強制的にこのダンジョンに挑むしかなかった。


 早速お先真っ暗な予感しかしない2人であった。


ゴミ拾い

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