第18ゴミ拾い 傷塞
台地が裂けた場所に1人の男が立つ。
どんな能力を使えばここまでの被害が及ぶのか、この男には到底想像もつかなかった。
しかしそれでもおおよその能力は分かるやもしれない。
そんな淡い期待で調査をしていた。
『ここに木々は生えていなかった。植物を自在に操る力? いや。木を生やす能力か?』
――ガサッ。
物音に即座に男は反応し、物音がした方へ刃物を投げる。
クナイ。と呼ばれる先の尖った飛び道具だ。
皮膚が厚いモンスターに対しては、大した効果はないが対人となると別だ。
「貴様何者だ?」
クナイを盾で防いだ男が、調査していた男に問う。
よく見れば、盾で防いだ男は全身を白銀の鎧で包んでいた。
これではクナイが当たったとしても意味なかっただろう。
『この男、花晴のギルドの者だな? 肺追の遺体を回収しに来たか……』
調査していた男は即座に鎧の男の正体を見破った。
調査していた男は、全身黒ずくめの身軽な軽装で口元まで服で覆っている。
一部の冒険者が、忍び装束と呼ぶ服装だ。
「メリダのギルドの諜報員か!」
鎧の男が身の丈程ある巨剣を振り上げる。
ドサッ。
辺りに鈍い音が鳴り響いた。
●
メリダのギルドの諜報員と、花晴のギルドに所属している男が台地が裂けた場所で戦闘を開始した頃、アドとシャラは土角と対峙していた。
今しがた、アドの短剣で攻撃を仕掛けたところだ。
シャラの付加価値の能力によって、アドにはダメージ倍増付与というスキルが自動的に使われてしまっている。
受ける痛みが倍増するスキルだ。
土角は狙いをアドに定めているが、そこにシャラがいることも認識している。
鼻息が荒いことから怒っていることも伺える。
「こっちだ!」
アドが短剣とアルミの盾を打ち鳴らして挑発する。
土角の注意を引き付けるつもりだ。
アルミの盾も短剣もアドのスキル、リサイクルで入手したものだが寂静村でも購入が可能な初期装備だ。
シャラも同じものを装備している。
だからだろう。
それは偶然に起こった。
土角がアドに突進すると見せかけてシャラに狙いを定めた。
そのままシャラに突っ込むが、遠い分シャラには盾を掲げる余裕があった。
もちろんその盾で土角の角を防げるわけはない。
盾は破壊され、シャラは大きなダメージを受けた。
横っ腹がえぐれていたのだ。
アドが急いでポーションを使用する。同時に薬草を傷口に当てる。
どちらも傷の治りを早める効果がある。
「うおぉぉぉー!」
仲間がやられたことでアドは怒りに身を任せて、渾身の力で土角へと向かっていく。
土角は壁に角が刺さって動けないでいる。
そのまま短剣で何度も切りつけて土角を倒す。
「シャラ!」
肩で息をしながらシャラの元へと駆け寄ると、驚いたことにシャラの傷口が塞がっていた。
いくらポーションを飲ませて、消毒作用のある薬草を傷口に塗ったからってこんなに早く効果があるとは思えない。
「スキルが発現しました」
シャラが力なく微笑む。
傷を治すことで、傷塞というスキルが発現し自動的に発動したのだ。
できた傷を塞ぐ付加価値だ。
「かなり便利じゃないか!」
アドが嬉しさのあまりピョンピョン
飛び跳ねる。
土角の攻略法も見いだせた。壁に角を突き刺せばいい。
今日の収穫は大きかった。
あとはシャラの血が戻れば再び冒険できる。
アドはスキル収納を使って、お弁当を出した。
別空間にアイテムをしまっておけるスキル、収納。
その数に際限はあるが、アドの成長と共に収納数はどんどん上がり、収納できる種類も増えていた。
当初はゴミだけだったのから、今では変換したアイテムと自分で作った何かなら収納できる。
少しでも手を加えていればいいので、購入したお弁当に何かを詰めるだけで問題ない。
今回のはイリが作ってくれたお弁当の具材を自分で詰めた。
「おいしいよ。シャラも食べない?」
「私はいいです。傷口が傷んで食欲がわきません」
横になったままシャラが答える。
2人はいよいよ階層主へと挑む。




