第9ゴミ拾い シャラ
アドの肋骨が完治すると、アドの露店はピタリとなくなった。
次第に村を訪れる人の数も減少し、村長は何度もイリにもう一度露店を開くよう依頼をしていた。
「私に言われても困ります」
困惑するイリをよそにアドは意気揚々とダンジョン探索に向かって行った。
看護師の知り合い、シャラを仲間に加えて。
シャラの能力は付加価値。
自分が習得した付加価値をパーティーに付与できる力だ。
一見便利でいい能力に思えるが、能力が発展していない現在は、付与できる付加価値を選ぶことはできない上に、マイナスの付加価値を多く習得してしまっている。
「一度でもダメージを受けたら、ダメージ倍増の付加価値を習得しちゃうのかー。やっぱり能力って一長一短だね」
ダメージ倍増の付加価値を付与されたアドがシャラに言う。
「ホントにすみません。マイナスの付加価値しかなくて……」
シャラがしょんぼりするが、アドはそこまで気にしていなかった。
「俺だってスキルを手に入れるまでにかなり苦労したもん。誰でも最初から強い人なんていないさ」
アドがにこりと微笑みながら手を差し伸べる。
「あ。ありがとうございます……」
恥ずかしそうにシャラがアドの手を取る。
「アド君は土角を倒したんですよね?」
「倒したっていうか運が良かっただけだよ」
ポリポリとアドが頭の後ろを掻く。
あまりにも偶然のことなので、それを褒められると逆に恥ずかしかった。
●
「そっちだ!」
「分かりました」
アドとシャラはダンジョンの浅瀬で修行をしていた。
2人の実力では、この初級のダンジョンですら攻略するのは不可能だと分かったからだ。
主な原因は、シャラがマイナスの効果をアドに付与してしまうからであるが、それを差し引いても実力が乏しい。
「ギリギリ頑張れば攻略できるかもしれないけど、それだと意味ないもんね」
とは、アドの言葉である。
ギリギリでこのダンジョンを攻略しても、他のダンジョンは攻略できない。ということだ。
そこで今、1階層に出現するモンスターの中で一番動きが速い、小さなウサギ型のモンスターを狩っている。
はやい動きに慣れるのが目的だ。
即兎と呼ばれるモンスターは、その名の通り危険を察知するとすぐに逃げてしまう。
得られるアイテムも少ないので、積極的に狩る冒険者はいない。
土角と同じような立ち位置のモンスターである。
「はぁ!」
アドが正面から即兎を追いかけ、逃げる先を読んでそこへシャラが先回りして隠れる。
そのまま飛び出して即兎を短剣で倒す。
2人の連携も上手くいき始めていた。
しかし、シャラのスキルが全然発現しないのが不安要素であった。
「スキルツリーも現れない?」
即兎から、草食獣の骨を剥ぎ取りながらアドが訊ねる。
「そうですね。全く現れないのでどうすればいいのか見当もつきません。アドくんもスキルツリーは全て埋まっているのですか?」
「いや。俺のスキルツリーは肝心な部分が隠れてて何をすればいいのか分からない感じかな。何かのアイテムを作ればいいことは分かるんだけど……」
ここのところ、引っ込み思案なシャラはアドとイリに対してだけは普通に接するようになっていた。
仲良くなれば普通に話せるタイプだと、看護師が言っていたがその通りのようだ。
暫く2人の能力には成長がなかったが、2人の連携はしっかりとしてきた。
当初は1回だけのパーティ―だったはずが、いつの間にかシャラは一緒のパーティ―となり、イリが管理するアイギルドに所属することとなっていた。
そして、他のところでも異変が現れていた――




