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なろうラジオ大賞6参加作品たち

3歳の娘が「わたし、かんらんしゃあれるぎぃなの」と言い出したので観覧車に乗せてみた。

「わたし、かんらんしゃあれるぎぃなの!」

「観覧車アレルギー?」


 初斗はつとは、3歳の娘ミツキの言葉に首を傾げた。

 医者を生業としているが、医学書で観覧車アレルギーなる文言を読んだことがない。


 何を言っているのか全く理解できなかった。

 意味がわからないながらも、ミツキは観覧車に乗りたいんじゃないかなと考えた。


「ミツキは観覧車に乗りたいんですか?」


 と尋ねると、ミツキは元気よくうなずいた。


「うん、かんらんしゃあれるぎぃなの!」


 その言葉を聞いて、初斗は思わず笑ってしまう。

「明日はお休みだから、ママと三人で行ってみようか」

「わぁい!」


 そんなわけで、家族3人で横浜にあるショッピングモールの観覧車に乗ることとなった。


 モール到着すると、ミツキは興奮気味に観覧車の前で飛び跳ね、「かんらんしゃあれるぎぃ!」と何度も繰り返す。まわりのお客さんもクスクス笑ってミツキを見ている。

 ネルも「そうそう、観覧車に乗りたいんだね」と言い、家族でチケットを買った。


 観覧車に乗り込むと、ミツキは向かいのネルの膝に座って聞いてくる。


「パパ。かんらんしゃのると、くしゃみ、でる?」

「出ないよ。観覧車で病気になる人はいない」


 ミツキは首を傾げる。


「でも、おとなりのおじいちゃ、かんらんしゃあれるぎぃっていってた」


 初斗は一瞬驚いたが、ネルが思い出したように言った。

「ああ、お隣の蜻一(せいいち)おじいちゃんが『寒暖差アレルギーでこの時期は辛いなぁ』って言っていたよ。ミツキには寒暖差が観覧車って聞こえてたんだね」



 観覧車が一周して地上に降り立つと、ミツキは満足げに「かんらんしゃあれるぎぃ、たのしかった!」と元気よく言った。


 家族三人で歩きながら、ミツキはまた「かんらんしゃあれるぎぃ」と繰り返していた。


 隣家の前では、蜻一がテーブルセットを出して水タバコのフルーツフレーバーを嗜んでいた。


 ミツキはフルーツの香りがもくもくしているところにかけて行く。


「おじいちゃーん。かんらんしゃあれるぎぃ、かんらんしゃにのるとでないんだって」


 蜻一はにっこりと笑い、「観覧車アレルギーは大変じゃなあ。でも、ミツキちゃんは元気そうで何よりじゃ」とミツキの勘違いに合わせてくれる。


「蜻一さん、アレルギーがお辛いなら漢方を処方するので、いつでも来院してくださいね」


 初斗はネルと共にミツキの手を引いて玄関の扉を開けた。



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― 新着の感想 ―
ああ、これは初斗さんも首を傾げますわな。 なるほど、まさかのアレの聞き間違いですか。 でも世の中には愛アレルギーや青アレルギーなんてものもあるんで観覧車アレルギーなんてのもあるかもしれませんね。
とってもかわいい勘違い(*´▽`*) 寒暖差アレルギー自分もほっこりしました。 かんらんしゃあれるぎぃ、 乗ったら本当に治ったらいいのですが。 蜻一さんも思わずにっこりですねv
2024/12/13 16:02 退会済み
管理
なるほど、「かんらんしゃあれるぎぃ」とはそう言う事だったのですか。 実に微笑ましい聞き間違えで癒されます。 そして3歳の若さで「アレルギー」を語彙として駆使している辺りは、さすがは医療従事者の身内です…
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