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最終話 どうせ誰も読んでねぇんだから、なに書いてもいい!

最後だけを読むなんて無しよ♡



ちゃんと『畜生転移』、『畜生転移2』、『畜生転移3』のおよそ総計10万文字!



そして、この『シン畜生転移』のおよそ総計10万文字!



計20万文字を読まないと、この最終話の味わい深い、酷い二日酔いのような不快感はきちんと味わえないと思います(ここまで読むだけでも不快だったとかはなしで)♡


ちゃんと読んでくれた方だけ、以下の最終話へどーぞ♡





1名様、入られましたぁ〜♡





↓↓↓↓↓

──そう! シン畜生転移の“シン”とはこのことだったのであーーった!!!──



「……つ、ついに書き終えたぞ」


 私は最後の文章を書き終え、万年筆を机の上にコトリと置いた。


「ハブゥー!!」


 涙、鼻水、唾液といったありとあらゆる液という液が、全身から迸るほどに私は感動に打ち震えていた。


「て、天才すぎる! 自分の天才性に驚嘆せざるを得ない!!」


 10万文字にも及ぶ『シン畜生転移』の原稿を見やり、私はブルブルと震える。


「これを投稿したら、小説家になろう界隈で伝説となってしまうほどの名作だ! 公表するのは時期を見てだな! 見誤ってはいかん! 慎重に検討に検討して、検討を加速させた上で、検討を重ねねばな!」


 万年筆で書いたが、すでにデータ化は済んでいる。データ化したのを万年筆で書いていたのだから当然だ。ワンクリックひとつで投稿はできてしまう。


「さて、一仕事を終えた。夢の印税生活は確定だ。老後の貯蓄2,000万もクリアしたとみていいだろう。…だがしかし、そのために世の中に激震を走らせてよいものか悩ましいな」


 私は窓辺に寄り、ブラインドをカシャッとさせて、高層ビルの下に蟻のように群がる哀れな民草を見やる。


 彼らは『シン畜生転移』を知らない。それどこらか、不朽の名作『畜生転移(1もしくは無印)』、『畜生転移2』、『畜生転移3』といった、世にすでに放たれているはずの作品に触れたこともないだろう。


「……なんとも憐れだ」


 涙がちょちょぎれてしまう。


「しかし、この『シン畜生転移』により、彼らは私という不世出の天才を知ることになるだろう。やはり、これは世に出さねばならない。作者の一時のエゴで、この素敵で素晴らしすぎるアンビリーバブルな作品が世に羽ばたくのを妨げてはならんのだ!」


 私は自分の使命感を再確認し、グッと拳を握りしめた。



 チンポーン!



 その時、部屋のチャイムが鳴った。


「む? 来たか」


 そうだった。


 作品完成祝いに呼んだんだったな。


 湧き上がる興奮を抑え切れず、私は入口へと向かう。


「遅かったな。待ちわびたぞ」


「ちゃーす。デリ子でぇーす」


「……」


 扉を開くと、そこにはセイウチかトドの亜種のナニカがいた。


「……チェンジで」


 私はそっと扉を閉じようとすると、その“モンスター”は足の先を隙間に挟んで邪魔してくる。


「なにをする?」


「…オジサン。これでチェンジ6回目っしょ?」


 ガムをクッチャクッチャさせながら喋るな。


「だって! サイトの写真と違うじゃん! AI画像かよ!! 実物は横幅5倍増しじゃん!」


「アンタも、アーシの予想より5倍髪薄いじゃん」


「いいだろ! こっちは客だぞ! 写真、別人じゃん! 騙された! 詐欺だろ! これ!!」


「ウダウダ言ってねぇーで入れて。アーシをキャンセルしたら、次は怖い人が来っから」


「お、脅す気か!?」


「人聞きの悪いこと言わんといて」


「いいから、交通費は払うから帰ってくれい!」


「ゴッゲェーー!!!」


「!?」


 突如として、軍鶏の如く哭き叫ぶデリ子!


「寒いー!!」


「さ、寒い!? その脂肪量で!? ニーク・ミート(ヒー○・テックのこと)着てるじゃないか!」


「脂肪はすぐ冷たくなるのぉ!! タヒぬー! ホテルの廊下で凍タヒするぅー!!」


「そんなことあるか! 叫ぶのをやめろ! 人が来る!!」


「…なら入れて」


「…そ、それは」


「タヒ、ヌゥ!!! ヒト頃スィィーー!!」


 な、なんて女だ!


「わ、分かった! 分かったから入れ!!」


 背に腹は代えられないと、私は肉饅頭…もしくは、ボンレスハムを部屋に招き入れた。


「ふーん。いい部屋じゃーん」


 エコノミーの部屋だぞ。どこも同じだ。


「よし! ヤるか」


「やらん! 服を脱ぐな!」


 ベッドにダイブしようとしたデリ子を止める。壊れたら弁償させられる。


「じゃあ、なんで呼んだのよ?」


「いや、むしろ、なんでこの流れでそうなると思ったわけ?」


「仕事だしぃ〜。こっちもプロだからぁ、ヤることはきっちりヤらないとぉだしぃ〜」


 “ヤる”が、“()る”にしか聞こえない。


「…もういい。なにもしなくて。適当にくつろいで時間を潰して、そのまま帰ってくれ」


「そこはプロとしてのプライドがぁ〜」


「プロなら客の望みを聞き届けてくれよ! せっかくのおめでたい気分が台無しだ!」


「おめでた? 赤ちゃんでも産まれたの?」


「産まれてたらデリヘルなんて呼ぶか! 常識で考えろ! 常識で!」


「6回もチェンジする人に常識とか言われたくないんですけどォ〜」


 本当に逐一ムカツク女だ!


「ん? これは…もしかして原稿?」


「こ、コラ! 勝手に触れるな!」


 あろうことか、デリ子はデリカシーなく、私の神聖な領域(単なる机)に闖入した!!


「もしかして小説家なのぉ?」


「…フン。違うとも言い難いが、むしろ近い将来には、文豪と呼ばれるのは間違いない存在ではある」

 

 そうだ。お前とは立場が違うんだ。


「だから、こら! なにをする!」


 私はデリ子から原稿を引ったくった。


「えー、すごーい! 読みたーい!」


「なんだ? 知性の“ち”の欠片もなさそうな顔して興味があるのか?」


「はぁん? かなり失礼じゃね? ってか、アーシも『小説家になろう』で書いてるんだしね」


「なに? まさかの執筆者だったのか…」


 こんな最悪の出会いでなければ、書き友になるところだが、逆に私のテンションはだだ下がりになる。


「うん。一応、受賞して書籍化もしてるよ。まだ1巻しか出てないけどぉー」


「へ、へー。な、なかなかやるね…」


「だから、いいから見せて」


 デリ子は私から小説を奪い返した。




──およそ6時間半後……




「つまんない」


「……え?」


「おもしろくない。全部」


「は!? そ、そんな馬鹿なことがあるか!!」


「いや、これさ。読者を楽しませようと思って書いてるぅ?」


「え、そ、そりゃ当然」


「これ、ちゃんと評価されてるの?」


「う、ぐ…。そ、それは…」


 デリ子はため息をつくと、スマフォを魔女の爪かっていうほどにデコりすぎたネイルで叩き始める。


「まず、この『畜生転移(1もしくは無印)〜柴犬が最強武器の大魔神のふぐり玉と呼ばれるモーニングスターで異世界無双する件〜』っての、2021年11月10日に完結して、累計PVが2,952…ブクマ6件、感想4件、レビュー1件(2023年11月20日時点)」


 デリ子は再度、ため息をつく。


「コメディ調の小説は人気でにくいけど、それにしても奇をてらい過ぎてこれじゃダメねぇ。読者に『あとで読むかもしれないからブクマしとこ』とすら思われなかったわけだからして」


「……」


「で、まあこれはこれとして、問題は次からよ。『畜生転移2 〜唸れ! 必殺の疾風怒濤波! 猿三郎と巨乳美人教師サクラがエチエチ大冒険する件〜』…っての、2022年5月21日に完結して、累計PVが1,302…ブクマ1件、感想6件、レビュー1件(2023年11月20日時点)」


「か、感想が2件も増えてるじゃないか!」


「そうね。でも、PVとブクマは絶望的じゃないの」


「……」


「もう見たくもないけど、『畜生転移3 〜悪徳霊場の悪役令嬢キジシロッティがスケベッティに百合展開な学園ライフする件〜』は2022年11月15日に完結。累計PVが1,593…ブクマ1件、感想2件、レビュー0件(2023年11月20日時点)」


「……」


「はー。もう『シン畜生転移』を出してもどうなるかわかるでしょ? 学習能力ないの?」


「そ、そんなのやってみなきゃ…」


「あのね。1を読まない人は、2も3も読まないの。流行りネタをぶち込んで、新風いれたつもりなんだろうけど、全然意味なしてないから。なにこのタイトル?」


「で、でも長い説明風のタイトルが主流だって…」


「はー。それに下ネタオンリーに振り切れば、読者がクスッとしてくれるとでも? それ、半ば呆れられてるだけだから。それに終わりのネタがいつも一緒。こんな投げっぱなしジャーマンするくらいなら最初から書くなよ!!」


「うっ…」


「ヤケクソになって、『どうせ誰も読んでねぇんだから、なに書いてもいい!』とか開き直って書いてるだけでしょ!」


「ううっ…」


「ただただ読者が置いてけぼり…いや、相手にもされてないのに、それが前衛的な作品だとか思い込んでアーティスト気取ってんじゃないわよ! アンタは小説を書く資格もない、底辺中の底辺以下よ!! ゴミ以下のチンカスよ!!」


「ひ、ひーーん!!!」


 私は泣いた。


「泣きたいのはこっちよ! 20万文字! 文庫本にして1〜2冊分、普通の読書速度で6時間半も掛けて読んだアーシの時間を返して欲しいくらいだわ!! 6時間ありゃ、90分コースの客を4人は取れて、8万は稼いでたわよ!!」


「ヂギジョウッ!! 言いたい放題いいやがって!! 待ち時間とチャンジ&キャンセルも勘定しろォ!!」


 私は涙と鼻水でグッチャグッチャになって叫んだ。


「チギジョウッ!! 畜生転移なだけに、ヂギジョー!! どぉーせ、俺はニートで、親の脛かじって、親の金でホテルにデリヘル呼んで、書いた小説のダメ出しされる様な、そんなダメダメなヤツなんだよォォォ!! こんなものォォォ!!」


 私は原稿を奪い取ると、窓を開けて投げ捨てようとした。


「バカァン!!」


 それをデリ子が止め、思いっきりほっぺを平手打ちされる。


 吹っ飛ばされ、壁に激突し、蝶○にビンタされたんじゃないかという、月○方正の様な顔でその場で私は崩れ落ちた。


「そうやってすぐに投げ出すからダメなんだろ! 玄関先ですぐチェンジする! そういう曲がった根性だから、いつまでも素人童貞!! 理想ばっか高くなって、誰にも相手にされないんだわさぁ!!」


「う、ううっ…。書籍化した奴になぁにが分るってんだ!!」


「分かる!!」


「……え?」


 私はデリ子を見やった。彼女は泣いていた。


 出荷される養豚のように……


「アーシだってすぐに芽が出たわけじゃない! 旦那に逃げられ、保育園に行く小さな子供抱え、パチスロとホスト通いで借金抱え、仕事でも今日みたいにチャンジは日所茶飯事! キャンセル、すっぽかし、罵詈雑言に堪えながら、こうやってそれでも仕事をして、その合間、合間に書いた小説がようやく陽の目を見ることとなったの!」


「な、なんだって…」


「そう! なんで頑張れるか、頑張れたのか…アンタに分かる?」


「ど、どうして…なんだ? そんなになってまで、小説を書いたのは?」


「“愛”があったから……」


「!!!」


「小説は、そんな不幸のズンドコ節にあって、落ち目にあったアーシに勇気をくれた! アーシもそんな小説が書きたくて、自分の体験を…楽しかったことも、悲しかったことも、辛かったことも包み隠さず小説にしたの。それも“愛”を込めて…」


「あ、“愛”…」


「アンタの作品は確かにつまらない。けれど、負けなんかじゃないわ。“愛”…アンタの小説にそれはある? 読者に対する“愛”を忘れてるんじゃない? それが欠けていただけ!」


「た、確かに…。そうだ! 私は自分のことだけ考えていた。自分さえ愉しければそれでいいと。でも、それは違うってことだね」


「そうよ。作者の気持ち次第。読者の気持ちになるの。これは画竜点睛の足りない一点! それだけで、『シン畜生転移』の素晴らしさが読者に伝わるハズよ!」


 私は目から鱗が落ちた気がした(よく見たらコンタクトだった)。


 デリ子のお陰で、この『シン畜生転移』に欠けていたなにかが埋まる!


「私は読者を“愛”している!!」


 そう。それだけで充分だった。


 そしてデリ子も愛した。


 ちゃんと6時間半分の88,000円も支払った。


 人間も小説も見た目なんかどうだっていい。


 著しく禿げたニートだからなんだってんだ。


 激しく肥った風俗嬢だからなんだってんだ。


 畜生すぎて誰も読まないからなんだってんだ。


 “愛”。必要なのは“愛”だけだったんだ──




♡♡♡



 

 そして、私は単なるニートから一児の父となった。


「パパー。小遣いー」


「はいはい」


「チェッ。万札1枚かよ。シケてんな」


 金髪で眉なし、襟足の長い、コンマ1ミリも可愛くないクソガキだ。


「現金じゃなくてタッチ決済で買えばいいでしょー」


「わかってないな、ママ。ナマ金のこのニオイがたまんねぇんだよ」


 クソガキはクンクンと万札を嗅ぐ。正直ブン殴ってやりたいが、愛する我が子だ。


「もうこのコったら。誰に似たのかしら」


 オメェーだろと言いたかったが、愛する我が妻だ。


 そう。いまデリ子は私の横に居るのだった。 


 ブー○キャンプか、コ○リズムか、ライ○ップか、ピラミッドパワーか、激ヤバダイエットの薬が効いたのか知らんが、痩せに痩せて北欧系の美女となっていた。


「そんなことよりも、アナタ。ここの文章おかしくない?」


「ああ、ホントだ。直さないと…」


 私は植毛したてのフッサフサの毛をかきあげる。


 いま彼女と、これから書籍化する私の校正作業を行っていたのだ。


「まさか、『シン畜生転移』の読者の中に、あのイー○ン・マスクとコネがある人と、ビ○・ゲイツの親族がいるなんて思いもしなかったわね」


「フフフ、まさに事実は小説より奇なりだね」


「これでアナタも売れっ子の有名作家ね」


「ああ。君も1個200円の卵を購入する、東京で85階建てのタワマン住みの専業主婦になったしな」


「ウフフ♡ 電動で扉の閉まるランボルギーニを忘れてるわよ♡ 交通系電子マネーは常に10万は入れてあるわ♡」


 そうだ。人気がでなくたって“金”の力があればなんでもできる。


 そう! 世の中はやっぱり“金”なのだーー!!!




☆☆☆




 さて、素晴らしい終わりに読者諸兄は感涙に咽び泣いているに違いないが、ここで念の為に保険というか、蛇足というか、もう1個ばっかし後のエピソードを追加しておこう。


 

 これは超地球から人類がいなくなった遥か未来のお話だ!!


 荒廃した超地球に降り立った、超高度文明のうんももす星人たち!


 彼らは廃墟となった通信施設のサーバーの残骸を漁っていた!


「隊長。駄目ですね。かつて、ここで繁栄していた“人間”に関するデータは全部壊れています」


「そうか…。我々ほどではないにしても、そこそこな知的生命体だったのだろう。もし、その実態が少しでもわかれば歴史的価値は計り知れんのだがな」


「た、隊長! ひとつだけデータが残っていました!」


「な、なに? 復元できるか!?」


「はい! やってみます…内容は……」


「早くしろ! なにが遺されていたんだ!?」


「『畜生転移シリーズ』…ど、どうやら物語形式の媒体にした情報のようです!」


 隊長は「イエス!」とガッツポーズを取る。


「きっとこれは人間の実態に迫るレポートに違いない! すぐさま超宇宙銀河連邦に送り、情報共有した上で総力をあげて解読するんだ!!」


 こうして、猫五郎の物語は超宇宙を股にハメて拡がり、人類の正史として超宇宙全土に広まることと相成ったのであーーる!!!




 ありがとう! 畜生たち!




 ありがとう! 宇宙船・地球号! 




 そして、ありがとう!




 最後まで読んでくれた人よ!




 特に最高評価をつけてくれた読者たちよ!

 


 

 だからこそ、読了後には、家族や友達100人以上に勧めないと、きっととてつもない不幸がやってくるに違いないと言っておこう!!

 



 畜生転移は永遠に不滅なのであーーーーるッッッ!!!!






──♡お♡し♡ま♡い♡──

余談ですが、この最終話の文字数は6,666文字でした♡


信じるか信じないかは、あなた次第♡

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