38 恋のラフレシア
さてはて、そんなこんなで童貞王のなった彼は、普通の予備校生だったわけだけれども、強いて違うところがあるとすりゃ、“ちょっぴり男に興味がある”ってな点で、そんな彼は急な便意を催して、とある某有名公園(ハッテン場)を全力疾走していたのであーった!
「ん? あれは……」
そして、目撃したのはベンチに座ったツナギ着たウホッ的な良い男……ではなかーった!!
柴犬、超日本猿、スズメとハトの中間生物であり、その希少価値ゆえに世界三大珍味に数えられ、人間共に密猟の対象にされている雉の3匹を鎖に繋ぎ、中空で「えいやっさぁ!」と振り回している中年男性こと、塵太郎なのであーーった!!
「こ、この者、イカれておりますな! ドゥフドゥフw」
「我々を鬼ヶ島の鬼と知っての狼藉でござるかァ!?」
よく見りゃ、相対しているのは鬼ヶ島のメンバーのオタクたちであーーる!!
「うるせぇー! こちとら二日酔いで頭ァ、ガンガンしてんだよぉ!!」
昔の回旋塔(支柱の先端から円錐状に鎖がぶら下がり、円形の鉄輪を支えており、この鉄輪にぶら下がって回転させて遊ぶ遊具。遠心力で吹っ飛ぶ子供が多かったので、現在は危険遊具として見かけなくなった)のごとく、大回転する3匹を左手で上手にコントロールしつつ、右手でワンカップの迎え酒を呷る!
「テメェらが鬼だってんなら好都合だ! 全員、ブッ飛ばしてやる! いけ! ピ○チュウ! 10万課金だ(昨日パチスロに突っ込んだ額)!!」
某なんとかマスターのように塵太郎は指示を出すが、自分が振り回していた3匹をぶつけるだけなんだから、そんな命令なんて意味さえねぇー!!
詳しい描写はもはやいらないだろう!
超高速で飛来するアニマルどもをぶつけられ、その場でブッ倒される鬼ども!
「は、はわわわ……」
当然、その場に居合わせた童貞王も“関係者(本人が望まないにもかかわらず)”だったので、同じような目に遭わされんじゃねぇかと、便意も引っ込んじまったわけであーーる!!
「あーん? オメェもかぁ!?」
ぐったりした3匹を引き摺り、塵太郎は童貞王に気付いて近づいて来る!
「む、無関係ですぅ〜」
尻もちをつき、半泣きで弁明する童貞王。
鬼じゃないのに鬼の形相をしていた塵太郎は、急に「ん?」と意表を突かれたお顔になる。
「え?」
「ウホッ! いい女!!」
道端で巨乳美女を見つけた一般男性のごとく、塵太郎は頬を上気させてニコッと笑った。そして股引きからゴソゴソとブツ”を取り出す(公然わいせつ罪)!
「ヤラないか?」
初対面の相手にそんなえげつねぇー誘い文句を言う塵太郎! そこに痺れもしないし憧れない!! 単なるヤベーヤツであーる!!
「あ、ぼ、僕は……」
「……“僕”?」
100年の恋も醒めたかのように、塵太郎の顔に絶望が浮かぶ。それはキャバクラに貢ぐだけ貢いで、つい先だって音信不通になり、店に行ったら推しの娘が辞めていた時と同じような感覚に近いものがあった!!
「……なんだ。男か」
そう! もはや説明はいるまい! 塵太郎は見た目だけで、童貞王を女だと思い込んだのであーる!
気絶している3匹を引きずりながら、倒れている鬼どもをわざわざ踏みつけて立ち去る塵太郎。
その哀愁漂う丸まった背中を、童貞王は少女漫画のお目々キラキラヒロインのごとく見やっていた。もちろん背景には薔薇だか百合だか彼岸花だかラフレシアだかわかんねぇー花が咲き誇っている!!!
「こ、こんな情熱的なアプローチはじめて……」
悲劇! まさに悲劇!! まさしく悲劇!!!
なにがどーして好きになる要素があったかわからねぇーが、童貞王は塵太郎に惚れてしまったのであーーる!!
──恋の訪れはいつも唐突で……──




