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第6話 国家反逆罪!?

 

「国家反逆罪? 一体如何いう事でしょうか? 全く身に覚えのない事ですわ」


  騎士団が乱入した時よりも更に大広間が騒めく。それはそうだろう、学園の卒業生であり騎士団に所属をしている元婚約者のエリック・フェレッタ侯爵子息が私を糾弾したからだ。

 私は混乱しながらも、無実であることを伝える。本来であれば一番の味方となる婚約者が、側に居て心強い筈である。しかし生憎と、その元相手は私を謂れのない罪を突きつけている張本人である。

  無実であることは、私自身が証明をしなければならない。そして一刻も早くこの状況を終わらせ、トムを観察し癒されたいのだ。


「白々しい真似を……。現にプライマー家から売りに出された品々が、違法魔法道具であったのは調べがついている!」


  正規の魔法道具は、魔力の使用量が規定に基づき調節されている。しかし違法魔法道具は、魔力の調節が施されていない。魔法の効果を増幅させるが、その分使用者への負担が大きいのだ。急激な魔力の使用は、健康や生命さえ脅かす。

 それ故に、違法魔法道具の製造販売は国家反逆罪である。


「それは全て以前、エリック・フェレッタ侯爵子息から頂いた品々です。不要になりましたので、売りに出しました。贈り主をお疑いになれた方がよろしいのでは?」

「騎士団に所属する侯爵子息である。この私が国民を害する違法魔法道具に関わるわけがないだろう!?」


 違法魔法道具の出所を口にすれば、周囲からは困惑した声が上がる。私の言葉に焦ったように元婚約者は声を張り上げた。詭弁と自身を擁護する言葉に溜息を吐きたくなる。


「それこそ一介の学生である私が違法魔法道具に触れる機会などありません」


 私は違法魔法道具に関わっている時間など無いのだ。違法魔法道具を作るには時間とお金が掛かるらしい。そんな時間があれば、私はトムの観察をしていたいのだ。本心を隠しながらも、私には無理であることを口にする。


「チッ……相変わらず可愛げのない奴だ」


 私の反論が予想外だったのか、元婚約者は顔を歪めると行儀悪く舌打ちした。騎士団に属する者としての自覚と品位がない。加えてこの場で私に可愛げがあるか如何かは関係ないだろう。私は眉をひそめる。


「そもそも、この立ち入りは正式な手続きを踏んだものなのですか? 逮捕状はありますか? 騎士団長の許可はお有りですか?」

「う、五月蝿い! だがプライマー家から違法魔法道具が発見された。これが動かぬ証拠だ!」


 そう諸悪の根源はこの元婚約者である。違法魔法道具が混じっていたのならば、贈り主が一番怪しいのだ。己の罪を押し付けるために私を糾弾しに来たのだろう。そうなればこの場は元婚約者の独断専行である。正式な礼状がないのならば従う必要もない。


「違法魔法道具に関わることが重罪であることを理解しております。万が一にもそのような物を所持していたとしても、商会を呼び売る筈がありません。私の家よりも、ご自分をご心配した方が宜しいのでは?」

「……っ、この国家反逆罪の罪人が!!」


 私の追求に怒りを露にした元婚約者は、額に青筋を浮かべると腕を振り上げた。他の騎士団員は焦り止めようとしているが、私に振り下ろされる方が早いだろう。顔を合わせて会話をするのは二度目だが、本当にこの男と結婚などしなくて良かった。

 避けることは可能だが、正式な礼状もなく令嬢を殴ったとなれば、元婚約者の華々しい人生の汚点を残すだろう。それも一興だ。私は襲ってくるであろう、衝撃と痛みに耐える為に目を瞑った。


「そこまでだ。これ以上の暴挙は私が許さないよ」


 予想していた衝撃も痛みも無く、代りに優しい風が頬を撫でた。不思議に思い瞼を上げると、私を庇うようにトム・ロマイが立っていた。

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