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2と4の境界線  作者: 折葉こずえ
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真実4

 翌朝、目を覚ますとアオイはまだ僕の腕の中で寝ていた。時計を見ると午前8時になろうとしている。彼女を起こさない様にゆっくりベッドから抜け出しフロントへ電話をして洋食の朝食を2人分注文する。

 シャワーを浴び歯を磨き洗顔をして部屋に戻るもアオイはまだ眠っていた。

 可哀そうだとは思いつつもアオイを揺すって起こす。


「アオイ、もう8時だよ」

「うーん……もうちょっと寝たい……」

「朝食頼んだから。それに今日アオイの家に行くんでしょ?」

 そう言うとようやくむっくり起き上がり髪を手櫛で梳く。まだぼーっとした彼女の髪を撫でてやり、「おはよ」と言って額にキスをした。彼女は嬉しそうに微笑み僕に抱き着いてくる。


「ほら、そろそろ起きよう? もうすぐ食事が届くよ?」

「喉、渇いた」

「水でいい?」

「うん……ありがと」

 僕はウォーターサーバーからグラスに水を注いでやりアオイに手渡す。

 彼女は両手でそれを受け取るとぐびぐびと喉を鳴らしながら飲んだ。


「もういい?」

 彼女からグラスを受け取り頭を撫でてやる。

「うん……」

「ほら、もうすぐ朝食がくるよ。ベーコンエッグとトーストとサラダが付いてるんだって」

 そう言うともう一度額にキスをした。


 カーテンを開け2人で朝食を取った。ラブホテルと言う事を除けば何気ない穏やかな朝だった。


 今思えば、これがアオイと迎えた僕の一番の朝だったかもしれない。僕たちの未来に何も不安は無かった。このまま2人でゆっくりすごして行くものだと疑わなかった。知らぬが仏と言うけれど、人間、知らなければ良かったと思う事が多々ある。些細な事から大きな事まで。それでも今日僕が知る事になる真実は僕の人生の中でも一番の衝撃だっただろう。

 運命の悪戯か、こうなる運命だったのかは判らない。だけれど、一番知りたくなかった真実だった。意図せずにパンドーラの箱を開けてしまうのだ。



 運ばれてきた朝食を2人で並んで食べた。


「意外に美味しいね」

「うん、ちゃんと厨房で作っているんだろうね」

「ウチは冷凍?」

「いや、ウチもちゃんと厨房で作っている筈だよ」

「そっか……今日も暑いかな……」

 それは僕に訊ねたと言うよりも何気ない一言だったのだろう。


「ごちそうさまでした」

 アオイが両手を合わせる。僕は彼女の口の回りに付いている卵の黄身をナプキンで拭ってやり、

「顔洗っておいで」と言った。


 水色のTシャツに昨日と同じデニムのミニスカートを穿いた彼女が、

「準備オッケー」と言ってリュックを背負う。髪は梳かしたけれど相変わらずノーメイクの彼女はやっぱり中学生に見える。


「忘れ物ない?」

「ん……忘れ物」と言って口を尖らせた。僕は軽くキスをしてやり彼女の後頭部に手を当て、

「じゃあ行こうか」と言って促した。


 ホテルまでタクシーを呼びつけ、そのまま寒河江に向かう。彼女の家に行く前に寒河江市内を散策しようと言う事になった。それは僕の提案で、アオイが育った街や遊んだ公園、広場などを見たかったから。その間アオイは母親とメールでやり取りをしていた。


「今日行くって伝えてあるの?」

「うん、お昼ごろ着くってメールしておいた」

「僕の事、なんて伝えてあるの?」

「バイト先の先輩だって」

 普通、バイト先の先輩と一泊で旅行し、さらに自宅へ連れて行くだろうか。彼女の母親もそれを鵜呑みにしてそれだけの関係だとは思わないだろう。正直に付き合っていると話した方が良いのではないだろうか。


「付き合ってるって言わなくていいの?」

「どっちでもいいよ。どうせ付き合ってるって思ってるよ」

「そっか」


 30分程でアオイがタクシーを止めた。


 寒河江駅前は僕がストリートビューで見た通りだった。人の姿は殆ど見えない。平日の朝や夕方ならもう少し賑わっているのだろうか。周りにはお情け程度の飲食店。寂しい……そう言う感想しか出てこない。


「買い物はどこでするの? 服とか」

「この辺りでは買えないから山形まで出るの」

「なるほど」

 山形へ出る。斬新な表現だと思った。買い物へ行く最大都市が山形と言う事に切なくなった。そりゃ東京に憧れる訳だ。東京へ帰ったらもっと東京を案内してあげよう。


 その後歩いて西寒河江と言う駅まで来た。そこで彼女が通った高校に案内してもらった。ここで元カレと出会い恋をした。考えなくてもいい事を考えてしまい、ここへ来た事を後悔した。モヤモヤしたものが広がり不愉快になった。

 彼女に失礼だと思い、

「もう行こう」と言ってその場を去った。

 その後、彼女が通った小学校に行った。お盆休みの為か、プールに通う児童もおらずここも寂しい印象だった。


 そして彼女の家へ歩いて向かった。



 彼女の家は寒河江駅ではなくどちらかと言えば西寒河江駅の近くの県営住宅だった。コンクリートの3階建ての建物で結構古そうだ。回りは田んぼと住宅が混在しているようだけれど、建てられている一軒家の住宅は比較的どれも新しいもので、最近建てられた事が覗える。新しいと言う事はここへ引っ越してきているのだろうけれど、この辺りにどんな仕事があるのだろう。店もなければ大きな会社のビルなども見えない。ここへ越してくる理由が僕には解らないでいた。

  

 昨日、山形駅で買っておいた菓子折りの袋を僕が持ち彼女へ家へ向かう。建物の2階へ上がりある一室の前でインターホンを押した。


 そしてその女性と会う事になる。




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