表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/45

美味しいチョコ作るので

 

  「じゃぁ行ってくるね。」

  「いってらっしゃい!」

  「にゃあ…」


  9時くらいに目を覚ましたら玄関でハルと琴葉ちゃん達の声が聞こえた。出かけるみたい。


  2月の13日、日曜日。

  まだまだ布団から出るのが億劫な朝。肌寒さに身震いしながら決死の覚悟で布団から這い出す。今日休みで良かった。


  「あ、柚姉おはよー!」

  「おはよぅ……お兄ちゃんは?」

  「兄ちゃんどっか行った、ね?ポテチ。」


  私の体温の残ったベッドの中にポテチがふてぶてしく乗り込んだ。我が物顔で布団を占領、二度寝の夢は絶たれた。


  「朝ごはん、柚姉と食べてって……○○屋のパンあるよ。」

  「わーい。クロワッサンあるかな〜?」



  そういや久しぶりに赤い縁の眼鏡に戻しました。黒縁メガネ、飽きた。


  いつの間にか布団から出てきたポテチの餌皿にご飯を盛って、琴葉ちゃんと朝ごはん。大好きなパン屋のパンが並んだご機嫌な朝食だ。山盛りキャベツより魅力的。


  まだ温かくて出来たてだ。朝買ってきてくれたのかな?


  「クロワッサン多めだ……ハル分かってる……」

  「分かってる!んん〜〜。」

  「あ、琴葉ちゃんメロンパン、クリーム入ったやつ。あげる。」

  「メロンパン!!」


  甘くて美味しい菓子パン達…久しぶりの休日を祝福してくれているようです……朝から幸せ。

  ただのクロワッサンの甘さにすら幸せを感じられる。人間極限まで追い込まれたなら何気ない本当の幸せってやつが見えるようになるもんです。

  ほら、このチョコチップが舌の上で溶けるだけで……


  …………あ。


  明日、バレンタインか……




 ※




  --朝食を終えて思い出したようにスーパーへ。

  案の定菓子コーナーにはチョコレートが所狭しと並んでる。やたら高級感のあるパッケージのチョコ達が視線を誘う。正直自分で食べたい。


  ……バレンタイン、毎年あげてる。けど、最近周りが変なことばっかり言うもんだからなんだか用意するのも変な気分だ。


  「琴葉ちゃん、どれ食べたい?」


  帽子にサングラスにコートに手袋。真冬と真夏のコラボレーションみたいな完全防備琴葉ちゃん。繋いだ手が手袋でもふもふ。


  「……柚姉、“てづくりちょこ”作りたい。」

  「……ん?」

  「教えて?」


  ……おぉー。琴葉ちゃん、気になる男子でも出来たのかい?


  「チョコ作りたいんだ。誰にあげるの?」

  「兄ちゃん。」


  なんだ……


  …………手作りか。

  チョコとか毎年市販品…それもチ○コボール1個とかだった時もあるような……そもそも、バレンタインというイベントをあまり重要視してなかった。


  作るのも楽しそうだな……

  でも、変に気合い入れて用意したと思われるのも恥ずかし……


  いや、琴葉ちゃんのついでだから?


  「お姉ちゃんチョコ作ったことないけど……一緒にやってみようか?」

  「んだ!」




 ※




  「ただいまー。」

  「ただいまぁぁー!!」

  「…にゃぁあ。」


  琴葉ちゃん曰く、ハルは夕方まで帰ってこないとか。

  こっそりチョコを作るのには絶好ではないか?やっぱり、折角手作りするならサプライズ感出したいし?


  ……チョコ作ったことないって言ったけど、記憶を辿ると学生時代彼氏に作ってあげたような……気がする。

  人並みに女の子な自分の記憶を辿りながら、当時を再現する。


  「火を使うのは姉ちゃんがやるからね?」

  「はい!」

  「琴葉ちゃん、どんなのが作りたい?」

  「……ポテチの形!!」

  「……猫型かぁ。選んで。」


  買ってきたチョコ用の型をいくつか並べる。こんなに買ってどうしよう……


  琴葉ちゃん、一際大きな猫の顔と肉球の型をチョイス。


  「柚姉は?」

  「姉ちゃんはね…クッキーに挟んでみようかなと……」

  「おぉぉぉー。」

  「琴葉ちゃんと、兄ちゃんの分ね。」

  「……琴葉も作る。」

  「やってみようか。」


  今回はネットの記事を参考にしつつ、過去の記憶を辿りながら。


  まず下準備、アルミバットにキッチンペーパーを敷きます。

  で、チョコを溶かす。


  「テンパリングだ。」

  「てんぱりんぐ?」


  小鍋にお水を張って沸騰させる。その間、買ってきた市販の板チョコを包丁で細かく刻んでいく。

  これであってるよね……?


  硬いチョコを細かく切っていくのを琴葉ちゃんが興味津々で見つめている。この工程は包丁が危ないので私がやる。


  「琴葉ちゃん、そっちの赤い箱のチョコ出して。」

  「う!」


  その箱は生チョコ。ちょっと良い奴。そっちも細かくしてから別に用意したお湯の張った鍋に浮かべた耐熱容器に生チョコをぶち込む。生チョコは柔らかいから刻まなくていいのかな?


  「なんで切るの?」

  「溶けやすくする為?よく分かんないけど……」

  「ドロドロになってるよ?」

  「これを型に流し込んだら猫のチョコになるの。」

  「……ほぇぇ。」


  固形のチョコが溶けていくのを興味津々に眺めている琴葉ちゃんをよそに、クッキー生地を作る。


  ボウルの中に無塩バターと砂糖と溶き卵、薄力粉、ココアパウダーとか入れてかき混ぜる。あってるっけ?


  「姉ちゃん!溶けた!!」


  順番ミスったかも……先にこっちやってれば良かった。


  ちゃんと完全に溶けたのを確認してから鍋の中の容器を取り出す。

 

  「猫さんのは型に流したらほぼ完成。はい。火傷しないようにね?」

  「う!」

 

  板チョコのやつを琴葉ちゃんに渡して、琴葉ちゃんがアルミバットの上の型に流し込んでいく。


  「なるべく空気が入らないようにね……空気が入ると割れちゃうかもだから。」

  「う?」

  「敷き詰めていく感じ……」

  「姉ちゃん!なんか変だ!ドロドロが固まってる!!」


  まとまって流れていくチョコの流れが楽しいのか、目をキラキラさせながらチョコを流し込んでいく。その上からしゃもじでチョコをならしていく。しゃもじしか無かった。


  「じゃあ、冷やします。」

  「んだ!」

 

  チョコ入りの型の乗ったアルミバットを慎重に冷蔵庫へ運んでいく。まぁ…3、4時間冷やせば固まるかな?ハルが帰ってくる前に固まるといいけど……


  これ、作ったやつどうしようか?

  バレンタイン明日だし、でも冷蔵庫入れてたらバレるよね?


  ……ま、いっか。


  生チョコの方はもう一方のアルミバット(キッチンシート無し)に平たく伸ばす。後で適当な形に切る。これ、高い生チョコにしなくて良かった。


  んで、クッキー生地を琴葉ちゃんがかき混ぜる。すごい勢いでかき混ぜるもんだから相当飛び散った。


  何をしてるのかと気になったポテチが偵察にやってくる。ポテチに見守られる中進む作業。


  出来上がった生地。この時点で美味しそうなのか味見しようとする琴葉ちゃん。お腹壊したらアレなので突っ込もうとすふ指を止めつつ、それをひとまとめにしてラッブで包む。


  「冷蔵庫で2時間くらい寝かせます。今から待つ時間です。」

  「ポテチ、待つんだって。」

  「……にゃ。」




  時計を見たら10時50分。

  待つ間やることないし、少し早いけど昼ごはんの支度をする。


  冷蔵庫を覗いたらうどん麺とネギくらいしか無かったからうどん。適当に出汁とって麺茹でてぶち込む。なんとも質素で寂しいうどんが完成だ。


  「琴葉ちゃん、クラスの男の子とかにチョコあげないの?」

  「んーん、あげない。」

  「そっか……琴葉ちゃんにはまだ好きな子とか居ないのか……」


  ん?うどん美味。我ながらよくできた。シンプルな鰹出汁がいい感じですな……


  「猫のチョコ、足の形のやつは柚姉にあげるね!」

  「ん?私の?ありがとー。」

  「へへ…ポテチのは無いよ?ポテチ、チョコ食べれないもん。」


  隣で寝転がるポテチにわざわざ言ってやる琴葉ちゃん。分かってますよと言わんばかりにポテチがぷいっとそっぽ向いた。


  「柚姉は兄ちゃんにしかあげないの?」

  「……うん。」

  「兄ちゃん以外の人に、あげちゃダメだよ。」

  「……ん?」

  「兄ちゃん、ガッカリするよ。」

  「どうして?」


  尋ねたら琴葉ちゃんがぷくーっと膨れて見せる。


  「バレンタインは好きな人にチョコあげる日だよ!!」


  ………………んん?

  琴葉ちゃん?琴葉ちゃんまでそんな話を!?


  「……まぁ、友チョコとかあるからね?うん。好きにも色んな形があるんだよ?」

 

  ん?待って?兄ちゃんがガッカリする?それはどー言うことですか?ハル以外の人にあげたらどうしてハルがガッカリなの?


  「…………琴葉ちゃん、お兄ちゃんはお姉ちゃんからのチョコ、欲しいかな?」


  ……ヒヨった。


  「兄ちゃん、姉ちゃん好きだもんね。」

  「………………………………………………。」


  これ以上はやめておこうって気分です。小学三年生の発言を真剣に捉えてたら変だもの。



  さて、うどんを食べ終えて片付けしてたらいい感じに時間経った。


  寝かせておいた生地を取り出してめん棒で薄く伸ばす。

  ちょうどいい大きさに切り分けたそれをまた冷蔵庫で30分ほど寝かせるらしいです……


  ……待ち時間が長いって。


 

  「……チョコって寝坊助さんだね。」

  「ね?」


  可愛い琴葉ちゃんを膝に乗せてアニメでも観よう。ちょうどアニメ1本観終わるくらいの時間だし。


  「柚姉、兄ちゃん好き?」


  おいおい突然なんだい?


  「……好きだよ?」

 

  一応、嘘偽りない気持ちで琴葉ちゃんに答えて笑う。琴葉ちゃんは膝の上で何故かむーっとしていた。なぜ?


  「……そういうことじゃないもん。」

  「え?」

  「兄ちゃんにちゃんと好きって言ってあげてね?」


  ……………………?????


  琴葉ちゃん……どうした急に?今日はなんか変。私が変なこと色々詮索したから?


  なんかポテチまでこっち見てる!!


  「デ…デコレーション用のチョコペン溶かそっか!!そろそろいいだろうし!?」

  「……むー、姉ちゃん…」

  「おいで!!」



  さて、ここでポイントらしい。取り出す前にオーブンレンジを180℃の設定しておくんだとか。温めておくらしい。


  10分程度余熱で温めておいたなら天板生地を乗せて170℃に落としたオーブンで15分程度焼く。


  「味見!姉ちゃん味見は?」

  「出来たらねー。」

  「上手に焼けるかな?」

  「焼けるといいね。」

  「兄ちゃん喜ぶかな?」

  「……っ、どうかな?」


  冷やしといた生チョコと猫のチョコもいい感じです。

  伸ばしといた生チョコをクッキーに合う大きさに切って、湯煎で溶かしたチョコペンも用意する。


  大体13分くらいで生地が焼きあがった。

  味見したいとせがむ琴葉ちゃんを宥めつつ粗熱をとったらクッキーに生チョコを挟む。

 

  「……クッキーに何描こうかな。」

  「柚姉!琴葉にも描かせて!!」

  「じゃあ…半分琴葉ちゃんのね?半分姉ちゃんの……」


  ……チョコのデコレーションなんて初めて。細かく描くのは結構難しくて結局ブサイクになっちゃった。

  ……ま、いっか。

  結構楽しいかもしれない、これ。


  デコレーションが済んだら生チョコクッキー完成。

  猫のチョコは型から出せばもう完成。ちゃんと中も固まってた。


  「完成ー!」

  「やたーっ!」


  きゃっきゃっと飛び跳ねる琴葉ちゃん。時間かかったけど作って良かったかな?


  「姉ちゃん、食べよ!」

  「ん?もう食べる?…じゃあ、はい、こっちは琴葉ちゃんの分ね?」


  バレンタインは明日だけど、まぁいいか。

  琴葉ちゃん用のチョコクッキーを琴葉ちゃんに渡す。居間に持って行って2人で食べてみる。


  「はい!柚姉の!!」

  「ありがとう…いただくね?」


  琴葉ちゃんの肉球チョコ。ピンクのチョコペンで肉球が描いてある。案外上手い、私より上手く描けてる気がする……

 

  「いただきます。」

  「ポテチ、ポテチのはないんだよ?」

  「にゃ……」


  琴葉ちゃんからのチョコレート……

  まぁ市販の板チョコの味ですね。チョコペンのイチゴ味が下のチョコより甘くて美味しい。

  まぁ言ってしまえば市販のチョコ溶かしただけだから味は間違いない。


  「どう琴葉ちゃん。上手く出来たかな?」


  さて、私のチョコの味は…?


  「ん〜〜〜!!」

  「美味しい?」

  「美味しー!」


  すごい飛び跳ねてる……

  なんだろ……自分の作ったもののリアクションがこんなにいいと嬉しいな。

  ハルが入院してる時ご飯作ったけど、ここまでのリアクションは無かったよ?

  もしやお菓子作りの才能が…?


  ……まぁ、私のも市販のチョコ、クッキーの挟んだだけか……


  「柚姉も食べて!!」

  「ん……ありがと……どれ。」


  ……おぉ、クッキー上手く焼けてるじゃん。流石高いオーブンレンジですな。

 

  「…ん、美味しい。」

  「ねー!」

  「…にゃ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ