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おつまみ決定戦なので

 

  今日も変わらず寒い日が続く。この前ほどの寒さではないが、夕方から夜にかけては身震いするような寒さ。こたつが欲しい。


  相変わらず目を覚まさないエアコンさんに見守られ今日も冷たい食卓を囲む、時刻は23時。


  「今晩こそ、ビールのおつまみ最強選手権だ。」

 

  火がつくんじゃねぇかってくらい電気ストーブにくっついた椿が宣言する。そんなことより寒い。


  こんな時間に押しかけてくる迷惑な女がこの日めずらしく晩酌のアテを自分で用意してきた。ほとんどスーパーだけど…


  パックの寿司、唐揚げ、イカリング、ナッツ、枝豆、肉じゃが、おでん、天ぷら、ポテチ…

  本日はこんなラインナップでお送りするらしい。


  「……こんなに買ってきてどーすんだよ。」

  「だから、おつまみ最強決定戦。」

  「え?それやるなら事前に連絡しろよ。ポトフ作ったのにいらんの?」

  「いる。」

  「絶対残すじゃん。」

  「こんなの明日でも食べればいいんだし…」


  ルンルンで勝手に台所の鍋からポトフを持ってくる。あとビールも。


  「寒いから熱燗しよーぜ?」

  「え?ハルから日本酒なんて珍しいね。でも今日はビールなんだ。ビールって決めてたの。いただきます。」


  あぁ…これ俺残飯処理刺せられるパターン……


  「ハルって寿司食べれないんだっけ?」

  「うん。」


  枝豆食べよ。


  「刺身もだよねー…じゃあこれは私用か……あ、ハル覚えてる?昔2人で回転寿司行ったじゃん?」

  「いつ?」

  「高校の頃。ほら、私にまだ彼氏がいた頃……ハルとお寿司食べに行ったら凄い嫌な顔されたやつ……」

  「へー。まぁ…されるだろうな?」

  「あれさ、なんでハル来たんだっけ?」

  「え?試験期間で部活なくて暇だからって連れてかれたんだよ……俺、回転寿司にメロンとかプリンとかあるの初めて知った。」

  「だからといって食べないよね?ん…お寿司とか久しぶり。」

  「何が好き?」

  「イカ。」

  「イカ好きよねあんた…天ぷらもイカ好きだし。あ!高校と言えば駅の前にあった天ぷら屋!」

  「よく食べたねー。思えば高校生の財布には厳しい値段だけど……」

  「天丼1200円!返せ。」

  「うわ…いつの話よ……」

  「いつもクソもあるか。あの時明日返すって言って返さなかったし……1200円だぞ1200円。まさかなかったことにする気かてめー?」

  「ハル、ウニ好きでしょ?はい。」

  「スーパーのウニで誤魔化すな。」


  この枝豆あんまり美味しくない。冷凍だしな……


  「じゃあイクラもあげる。」

  「そのウニとイクラでも1200円ならんだろ……」

  「みみっちいよ、ハル。」

  「みみっちくない。1200円だぞ?下手したら人が死ぬ額。」

  「イカリング、べちゃべちゃ。」


  どれ……パックに半額シールが貼ってある。閉店間際のやつ。

  イカリングも唐揚げも衣がべちゃべちゃ。しかもチンしてねーし!


  「ハル、天つゆ持ってきて?」

  「天つゆより温めろよ!揚げもん冷たいまま食うとか意味わかんねー。どこの部族の方ですか?」

  「面倒臭いもん。固くなりそうだし……冷たくても美味しいよ?」

  「べちゃべちゃ。」

  「しょうがない。ん!ポトフ美味……」

  「……おでんまで冷めてるだと?いつ買ったんだこれ……」

  「ん?おでんも?えーおでんは温かいのがいいな……チンしたらいいかな?」


  椿がおでんを持って台所へ……

  その間に肉じゃがを頂戴する。肉じゃがもひえてる。ていうか大体冷えてる……

 

  椿って家に帰る時は自分で料理するんだろうか?いっつもこんな感じでなんか買うのかな?

  栄養バランスが心配になる。


  「危ねー、玉子破裂させるとこだった……」

  「おい。」

  「セーフセーフ、途中で気づいて穴開けた。」

  「やめてくれよ大事に使ってんだからあのオーブンレンジ。」

  「高いもんね。熱っ!!」


  おでんで1番人気な具ってなんだろう?やっぱり大根とか玉子?

  椿は割と糸こんにゃくが好きみたいだ。きっとヘルシーで触感が楽しいからだろう。鍋で豆腐食ってる方がかっこいいって思ってるやつの心理。そーいうやつは肉を食いそびれるのだ。俺?焼き豆腐一択。


  「ハル、大根食べる?」

  「それよりお前ポトフ残すなよ?」

  「おかわりいい?」

  「もう食ったの!?」


  早すぎだろ。結構な量入れてたぞ?ダ○ソンかよ……


  「……お惣菜残すなよ?」

  「私の朝とお昼になるからへーき。」

  「やめとけ。せめて寿司は片付けろ。そういや電車動いてた?今日も遅延だか運休だかでよー……」

 

  台所から「動いてたよー」との椿の声。ほんとにおかわりしてきやがった。


  「……動いてた?時間通り?」

  「ん。」

  「電車間に合ったん?」

  「駅着いて大きい方してたら終電逃した。終電は時間通り来てたよ?」

  「なんか前もそのパターンあったよな?会社でしてこいよ……」

  「……なんかさ、最近はもういいかなって……自宅に帰るのも着替え持ってくるのと掃除と郵便の確認くらいしか意義を感じないし、正直間に合おうが合うまいがもうこの家に直帰していいんじゃないかと……」

  「ふざけんなてめぇ。」

  「今日も一応顔出しとくかー的な感覚で駅行っただけだし……おかげでトイレも急かされずのんびりできたよ。」

  「舐めてんの?俺毎朝5時半起きだよ?冗談じゃないよ?」

  「羨ましい。朝の強さ分けて欲しい。」


  だめだ。こいつここを実家くらいに思ってる。ビール2本目。


  「ハル、結局どれが1番美味しい?ビールに合う?」

  「おでん。お前は?」

  「ポトフ!」


  満面の笑顔でそんなこと言われたら小言を言う気が削がれていく。2杯目ももう空になりかけてる。


  ……こいつこんなに食ったっけ?

  なんか最近増えてないか?ビール腹に溜まるのに……どうした?


  「……太るぞ?」

  「!?」

  「あ、もう太ったんだっけ?」

  「!?」




 ※




  --今までテレビの存在意義というものを正直そこまで感じてなかった。

  こんなのただの公共放送受信料発生機だと思ってた。

  しかし最近は鬼滅○刃とかを主に琴葉が観始めたので以前より観る機会が増えた…気がする。

  気がするけど実際にはラジオ感覚でつけているパターンも多くて真面目に観なくても賑やかしでテレビつけとくか的なことは多かった。


  そんな感じで今もテレビをつけた。琴葉が起きたら悪いから音量絞って。

  こんな時間でも番組をやっている。テレビってのは大変だよな。なんかゴミ屋敷特集やってる。


  「家さ、親共働きだろ?……だろって知らんか。」

  「お父さん弁護士だっけ?」

  「弁護士はお袋……親父は教師。稼ぎがあんのにずっとこんなボロ屋に住んでさー…まぁそんなことはいいんだけど。」

  「私は好きだよこの家。」

  「あっそ。俺も好き…で、共働きだったから家にいない時よ、昔ね?小学生とかの頃。まだ琴葉も居なかったしこの家で土日とか一人で留守番するじゃん?怖いじゃん。そーいう時テレビ何となくつけてたよな?分かる?」

  「無音が寂しい的な?」

  「そー。用はないけどとりあえずテレビつけとくか的な……でな?ポ○モン、昔やってたんだよアニメ。よく観てた。」

  「今もやってんじゃないの?」

  「観らんから知らん。」

  「えー、私達が小学生の頃ってなんだろ?赤青?」

  「なわけあるか。もっと前だろそれ。てか赤青ってアニメシリーズじゃなくてね?最初のゲームソフト?かなんかだろ?」

  「詳しいね。」

  「いや詳しくない…ん?赤緑じゃない?赤がリザ○ドンで緑がフシ○バナだろ?」

  「やったの?」

  「やってねーって…えっとねー。俺が観てたのはダイヤモ○ド&パールかな?映画観に行ったもんな……」

  「へー……」

  「知ってる?デ○アルガVSパ○キアVSダ○クライ。」

  「知るわけない。」

  「ポ○モン舐めるなよ?映画凄かったぞ?なんかねー……塔みたいなすごい綺麗な建物が出てきたの覚えてる。」

  「ハルってポ○モン好きなんだ……初耳。」

  「アニメ観てただけだけど……」

  「カードとかやってないの?」

  「やってない。」

  「なんかさー、Y○hooニュースかなんかでたまに記事とか見かけるんだけど、ああいうトレーディングカード?っていうの?高いんでしょ?」

  「知らん。」

  「私調べたよ。遊○王とか?むかーしのカードうん100万ってするってさ。1番高いの知ってる?10億だよ!?」

  「ステンレスカ○ス・ソルジャーだろ?たしか9億何千万……」

  「知ってんじゃん。」

  「いいよなぁ……ああいうのって、全く興味ないけど憧れる。カードにじゃなくてなんかコレクションしてることに……」


  ちょうどゴミ屋敷特集で物を捨てられないおっさんが出てる。

  ビニール袋いっぱいの王冠がコレクションだそうだ。そういえばド○えもんに王冠コレクションって話があったな……


  「コレクションって困るよね……その、例えば旦那がやってたりとかしたら。」

  「俺なんか昔切手少しだけ集めてた気が……」

  「出た!定番だよね。」

  「見返り美人とか月に雁とか……持ってなかったけど…」

  「私ねー、小学生の頃メモ帳集めてた。キテ○ちゃんのとか……」


  いかにも女子っぽい。女って文房具とか好きよな……


  「ハルは今なんか欲しいものとかない?」

  「ない。」

  「趣味とかもないもんねー…なんかつくれば?」

  「酒、飯。」

  「食道楽だねぇ。」


  趣味に使う金も時間もないし。


  「椿は?まだ走ってんの?自転車買った?」

  「走って……ない。自転車も買ってない。」

  「やはり三日坊主……」

  「時間ないし。今度走ろう。」

  「1人で走れ。」

  「自転車買って。」

  「てめーで買え。」

  「高くて買えないんだよぉ。自転車で買い物行きたい……」

  「お前の方が稼ぎあるだろ?」


  なんて、ごちゃごちゃ言ってたら階段を降りてくる音がした。居間から揃って顔をだすと、危なっかしい足取りでポテチを抱いた琴葉がやっきた。


  「柚姉…おかえり。」

  「ただいま。どうしたの?うるさかった?」


  ふるふると首を横に振ってトイレに歩いていく。ポテチを抱いたまま。


  「琴葉、ポテチ置いて。」

  「ん…あげる。」


  受けっとポテチが俺の腕の中でだらりと体を垂らしてる。されるがまま。寝てたのか目をしぱしぱしてる。琴葉に起こされたようだ。


  「猫ってさー、なんでいい匂いするんだろうね?」

  「…フェロモン?」

  「まじか。やるなーポテチ。彼女できた?」


  最近ポテチはずっと琴葉と寝てる。今日も琴葉の部屋にトコトコ着いて行ってた。

  すっかり琴葉のお兄さんなポテチ君。俺たちの間で丸くなって目を閉じる。


  「猫って見た目よりずっと細いよね…お風呂入れた時びっくりした。」

  「こいつはデブ猫だけどな。」


  トイレを済ましたら琴葉が戻ってきた。居間に。


  「琴葉もう寝り。明日起きられないよ?」

  「…ん?」

  「琴葉ちゃん目覚めちゃった?」


  寝ぼけ眼のままおもむろに唐揚げに手が伸びる。小腹が空いたのかな?


  「…つめたい。」

  「あら、歯磨きしなよ?」

  「兄ちゃんまたお酒飲んでる。」

  「怒られた。お兄ちゃんお酒飲まないと生きていけないの。」

  「酔っ払い。」


  なかなか辛辣。


  「さて、そろそろ寝ようかね。琴葉も、ポテチ待ってるよ?」


  ポテチのでっぷりした体を持ち上げて琴葉を立たせる。完全に目を覚ます前に寝かせなければ……


  「…兄ちゃんも柚姉も、寝よ?」

  「うん寝ようね。」

  「一緒に寝よ?」


  ……ん?


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