表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/45

居酒屋で飲んだので

 

  家から15分位の最寄り駅の下にたこ焼き屋さんがある。そこでは酒も出してて居酒屋みたいな感じの店だ。

  俺はそこでたこ焼きをつまみにハイボールをたまに飲む。


  新年初仕事も何とか終わり俺はその店にふらっと立ち寄ってた。

  ただし、いつもなら1人だけど今日は相方が居た。


  「おー、広いね。意外と…もっと窮屈かと思ったよ。」


  隣で椿が白い息を吐いてる。白いワイシャツにタイトスカート、上に薄水色のコートを羽織ってる。手には仕事鞄。


  今日は午後休だったようだ。

  仕事中に連絡が来て、「暇だから飲もう」と誘われた。


  そして現在、2人で入店して席に着く。


  「……椿と外で飲むの…初めてかも。」

  「そーだっけ?」

  「てか、午後休だったなら昼飯で飲めばよかったじゃねーの。今まで何してたん?」


  俺の仕事終わりだから時刻は16時半過ぎ。

  椿とは駅で待ち合わせしてたが……


  「あ?午後休だって言ってんのに仕事が15時まで終わんなかったんだよ。」

 

  わー仕事が遅いですねー。口調どうした?

  つまりイライラしてると。今日はヤケ酒ですね?嫌だなぁ帰りたい。


  「おー、結構色々ある…てか、こんな店あるなら教えてくれればいいのに……」

  「知ってるかと思ってた。だって駅の下だし……」

  「駅そんなに来ないもん。」

  「……ですね。俺の家から会社近いからな。いい加減家賃取るぞ?」

  「やだ。ねー、何頼む?」

  「たこ焼きと、ハイボー……や、まずはビール。あと、たこ唐。」

  「ポテトもイイっすか?ハルさん。」

  「イイっすか?ってなに?まさか俺が払うの?」

  「……。」

  「誘ったのお前だよな?え?」

  「……割り勘で。」

  「帰るか?」


  5分ほどの口論の末割り勘になった。解せぬ。

  というか頼みすぎた。こんな時間に食べたら晩御飯食べれない。あと早く帰らないと、琴葉が待ってる。


  「……家で飲みゃいいのによ。」

  「たまには外でさ……あ〜そうだ。私来週実家帰るんだ。」

  「お、寂しくなるな。琴葉にはよろしく言っとく。」

  「違う、正月帰ってないから!戻ってきます!」

  「仕事は?」

  「休む。」


  新年早々よく午後休だの有給だの使えるな…うらやま。


  「そうか……帰んないって言ってなかった?」

  「うーん……ハルがうるさいから……」

  「俺のせいにすんな。まぁ…いいことだよ。顔見せてあげな。」

  「めんどい……父さんに会いたくない……」


  こいつ家族と何があったんだろう……まぁ、知ったこっちゃないが……


  「お待たせしましたー。」





 ※




  注文して15分後に最初のメニューが届いた。ビールの中ジョッキとたこ焼き。


  店員が戻っていくのを確認して椿がなにやら険しい顔をした。


  「……遅くない?」

  「混んでるからなー。こんなもんだろ。」

  「いや、遅い。」

  「たこ焼きは時間かかるんだよ。」

  「遅い!」


  2人してビールを流し込んでから、8個入りのたこ焼きを4つずつ取り皿に分ける。


  「……なんでたこ焼きってマヨネーズかけるんだろ。」

  「あ……マヨ抜きって言い忘れた。」


  たこ焼きを白く染める油の塊を前に椿と俺が固まる。俺たちたこ焼きにもお好み焼きにもマヨネーズをかけない派。


  「ま、いいや……」

  「ところでたこ焼きはどっち持ちですか?」

  「は?どっち?」

  「お金。」


  いや知らん。


  「割り勘だから……合計を2人で2で割って……」

  「いやどっち持ちですか?」

  「……メニューで分けんの?」

  「どっち?」

  「……じゃあお前。」

  「じゃあ1個ちょうだい。」


  こいつ……っ!


  「……俺今月誕生日だから。」

  「だからなんやねん。」

  「誕生日プレゼント。」

  「……いいよ。」

 

  いいんだ。


  「……たこ焼きってさ、誰が考えたんだろうね……熱っ!!」

  「遠藤って人……ラジオ焼きをアレンジして作ったんだって。」

  「……ラジオ焼き?」

  「ん〜……牛スジ肉の入ったたこ焼きみたいな?」

  「……おー、美味そう。作って。」

  「てめーで作れ。」

  「なんで大阪って美味しいものいっぱいあるのかな……」

  「台所だから…日本の……」

  「……。」


  なんですかその顔は?


  「お待たしましたー。唐揚げとフライドポテトです。」


  狭いテーブルに唐揚げとフライドポテトが盛られた皿がそれぞれ置かれる。ビールもなくなりそうなのでハイボールを注文。


  「……。」

  「……これはどっち持ち?」

  「ポテトはお前だろ?」

  「唐揚げいくら?」

  「……ひと皿320円。」

  「ポテトは400円……ハル、ポテト食べていーよ。」

  「黙れ。」


  そういえば最近唐揚げにレモンをかけるようになった。

  取り皿に唐揚げを取ってレモンをかける。椿は何もかけずにかぶりつく。


  「……椿、なんで唐揚げにはレモンをかけるんだろうか。」

  「あっさりするからじゃない?皿うどんにレモンかけるのと同じ理屈。」

  「……なるほど。」

  「フライドポテトはケチャップつける派?」

  「……塩味の効き具合による。」

  「私はつける派♪」

  「む?ここのポテト太いぞ?」

  「ハルは細いのが好き?まぁ、分かる。細いのが美味しそうだもんね?」

  「マ〇クのポテトが至高。」

  「あ!そういえばマ〇クのポテト、Sサイズしか売らないんだって!?ハル知ってた!?」

  「あれ年末までだろ?」

  「あれ?そうなん?」

  「今は普通通り売ってんじゃねーの?」

  「そっか……良かった。マ〇クのポテトなかったら死んでた。」

  「そんな食わんだろお前……売らなくなる訳じゃねーから?MとLは売ってたんだろ?」

  「……セットのポテトってサイズなんぼ?」

  「Mじゃね?」

  「……どうでもいいけどサイズのS、M、Lってスモール、ラージ、あとMってなに?」

  「ミディアム?」

  「あー……」

  「ほんとどうでもいいわ……」

  「いや……うちの後輩がね?スモール、ミニ、ラージって言っててさ……ぶっ!」


  なんか一人でツボってる。こいつの壺はたまによくわからん。


  「スモールもミニも同じだよね?面白……くくくっ!」

  「笑い方怖いっ!」

  「あはははははっ!あ……スモールもミニも小さいって意味だよね?どう使い分けるんだろ……」

  「知らん……」

  「えー?お馬鹿だなぁ……」

  「俺の英語3点の男。お前こそ訊く前に調べろ。」

 

  赤らんだ顔でスマホを取り出す椿。本当にしょうもない疑問だと思う。


  「……ミニ。あー、主に名詞に付くと……なるほど。ミニスカートとかね。スモールスカートとは言わないもんね。だって!」


  分かってんのか……?


  「……スモールは小さいって意味ある?」

  「……多分…ない!」


  俺らの会話、多分中学生レベル……




 ※




  しばらく飲んでたらようやく全ての注文が出揃った。

  その頃には程よくお酒も回って、なんだか眠くなってきた。

  眠い……


  「……ハル、ちょっと聞いて欲しいんだけど……って、あれ?」

  「……なに?」

  「ここで寝ないでね?まじで……」

  「……無理。」

  「ほら、たこのやわらか煮食べな?」

  「……うん。」


  美味い……


  「で?なんやねん。」

  「なんで関西弁?あー、まぁ半分寝ててもいいから聞いてよ。実は入社した時からお世話になってた先輩が会社辞めるんだけど……」

  「……。」

  「その人実家に帰るんだって……静岡らしいんだけど……」

  「……。」

  「静岡って言ったら富士山じゃん?でね、今日その人と谷川っていう……聞いてる?」

  「……ごめん、聞いてない。なんだって?」

  「聞けよ。」

  「半分寝てんだから聞けねーよ。大事な話か?どうでもいい話かと思ったぞ。」

  「大事な話。」

  「なに。」

  「え?また最初から?」

  「富士山は山梨県だと思う。」

  「聞いてんじゃん……」


  すっかり冷めてきたフライドポテトを口に入れる。塩気が舌に乗って味覚の刺激に眠気が少しだけ和らいだ。


  ……てか、今何時?


  「そう!でさ、谷川さんは山梨出身でね、その人と谷川さんと私で話してる時に富士山は何県にあるかと……」

  「揉めたわけだ。」

  「大喧嘩。」

 

  子供かよ。


  「まぁそれでね?その静岡の人にはお世話になったし退社前になにかさ……ほら。あげるじゃん?」

  「うん……」

  「でも谷川さんともよく仕事するわけよ。」

  「……うん。」

  「どっちの肩を持てばいい?」

  「子供かよ。」

  「当事者にとっては切実な問題。」

  「いや、富士山の話……」

  「だから切実な問題なんだよ。富士山は日本の象徴みたいなものだから……」

  「日本の象徴は天皇だろ?」

  「ところで富士山ってどっちだと思う?」

  「知るか。」


  どっちでもいいじゃん。県またいでるわけだからどっちとも言えるじゃん。

  日本の象徴だと誇れる県がふたつもあるなんて素敵じゃん?


  「……富士山かぁ。そういや初夢なに見た?お前……」

  「え?急だな……初夢……まだ見てないかも……ハルは?」

  「猿夢……」

  「見たらダメなやつじゃん…それ。」

  「なんで鷹とナスと富士山なんだろう……」

  「一富士二鷹三茄子ね……なんでだろーね?縁起良さそうだから?」

  「俺ナス嫌いなんだよねー……」

  「え?あ、そうだっけ?え〜…ナス美味しいのに……あんま食べないけど……」


  そんなことより今何時だよ。


  「そんなことより、どっちの味方したらいい?」

  「……げっ!?もう18時なるじゃん!?早く帰らんと……」

  「おーい……」

  「おい、帰るぞ?俺は帰る。」

  「え〜……」

  「家でも飲めるだろ?」

  「待って待って。せめてどっちの味方を……」

 

  知るか!調子に乗って飲みすぎた。フラフラする。


  「いや世話になったならなんかやれよ。それは別に肩を持ったことにならねーだろ。社交辞令みたいなものだ。」

  「だよねー。何がいいかな?ナス?」

  「知らん!勝手に考えろ!俺帰る。」

  「ハイハイ……今日晩御飯どうしよっか……入らないよね?」

  「……なんか今日来るみたいな口ぶり……」

  「え?家で飲み直すから……」

  「電車あるだろ!?」

  「……ハル、そんな酔ってて帰れるの?」


  椿に指摘される俺の千鳥足。財布を取り出す手元もはっきりしない。

  まずい……相当飲んだみたい。心臓がバクバク苦しい……きつ……


  「帰れますかー?」


  なにニヤニヤしてんだ。


  「……別に帰るのにお前がいようがいまいが……」

  「んー?」

  「……やめろうざったい。もう帰るなら帰るよ。はよ。」

  「よし帰ろう。」

  「……伝票押し付けてくんな。」


  財布も出さずに伝票を押し付けてくる椿が俺の指摘に「ちっ!」と分かりやすい舌打ちを返す。


  「……忘れたと思ったのに。」

  「忘れるか!……割り勘な?」

  「えーと、私がたこ焼きとポテトとやわらか煮とビールとハイボールと……」

  「……え?ダル。」


  てか、品物事に会計分けたら割り勘じゃなくね?

  いや……これも割り勘?割り勘の定義とは?


  「じゃあハルはビールとハイボールとたこ焼きとポテトと唐揚げとたこ唐とやわらか煮と--」

  「調子に乗んな。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ