表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/45

キスなんて気にしないので

 

  11月11日、木曜日。

  世間じゃポッ〇ーの日だなんだ言ってるけど、世のサラリーマン、キャリアウーマンの皆々様はそんなこと言ってられない。

  うちの会社は年末にかけて忙しくなる。その兆候は11月の時点で既に現れ始めていた。

  ノルマは厳しくなるしミーティングばっかだし書類の山は減らないし下っ端が忙しなく動き回るのに比例しておじさんは仕事しないし……


  ただいいもん。

  私にはそんなことどうだっていいんだ。憂鬱な年末が近づいても私の気持ちは穏やかです。なんたって今日は特別な日だから。


  11月11日は私、椿柚がこの世に生を受けた日……誕生日です。


  誕生日ではしゃぐ歳でもないけど、やっぱりいくつになっても誕生日は特別な日。


  なので今日はなるべく嫌な思いせずに、こそこそと、それなりに仕事を片付けてさっさとあがってハルとお酒でも……


  「椿。先月全然数字取れてないよね?」


  ……社会というのは厳しいもので、何事も結果を比べられる競争社会においては、私のように上に媚びるのが苦手な人はとことん叩かれるのです。


  課長の怒号がオフィスに響く。課長の油っこい顔を眺めながら丸くなる私。そんな私を一瞥しながら黙々とキーボードを叩く私より成績の低い尾城(おじろ)さん。


  「最近早退も多いし……」


  いや早退じゃないです。てかそれでも定時過ぎてます。居候先の家主が足折ってるんですごめんなさい。

  というか課長の中ではクソみたいな残業してようやく定時なの?だったらあなたは毎日早退だっ!!


  「なに?仕事に気合い入ってないんじゃない?」

  「…はい、すみません。」


  うっせー総務課の久瀬(くぜ)さんへのセクハラ報告すっぞ?


  「男でもできた?まさかねぇ。」


  ……あ?

  全く営業成績関係ないじゃん。しかもまさかねぇってなんなの?


  ……あれ?私誕生日……



  「椿さん、13時から村上さんのとこ行ってくんない?」

  「へ?私担当じゃないですけど……」

  「お願い、俺時間なくて……」

  「いや私も時間……」

  「椿さん最近早いじゃんあがるの。たまには残業してよ。」


  ……は?

  残業ってしなきゃいけないのそもそも。ノルマでもあんの?

  あれ?……今日誕生日……


  「先輩ぃぃ。資料なくしましたぁぁ。」

  「え?なんの……?」

  「14時からの会議の……私コピー頼まれててぇ……」

  「えっ!?」

  「どーしましょ…」

  「りっちゃん、最後に見たのいつ?」

  「探してください一緒に。お願いします。」

  「だからいつ?」

  「椿さんっ!!何してるの?もう時間よ!?行くわよっ!!」

  「すみませんっ!すぐ準備……」

  「あれ先輩?」

  「椿さんっ!!もうこれだからあなたは……もっとシャキシャキしてちょうだいっ!!」


  ……?


  「椿はさ、彼氏とか居るの?」

  「いないですよー。」

  「えー?勿体ねー。けっこー可愛いのにね?」

  「やめてくださいよ。」

  「えー?作ればいいのに。なに?気になるヤツでもいんの?」

  「いません。」

  「ホント勿体ねー…ケツとか胸とかいー感じなのに……」

  「……は?」


  …………?


  「ごめん椿さん、これ急ぎでっ!」


  「ちょっと銀行行ってきて!椿さんっ!」


  「椿さーん。この間のさー…」


  「まだできてないっ!?何をやっとるんだ君はっ!!!!」


  …………………………………………。



  「……おつかれ。」

  「あ、宮さんお疲れ様です。」


  休憩スペースで死んでたら宮さんがコーヒーくれた。あ…ホットだ。冷たいのが良かった……


  「なんか今日慌ただしいよな?」

  「……そッスね。」

  「なんだよ?辛気臭ぇな。課長に言われたの気にしてんのか?気にすんなよお前より数字取れてない奴いっぱいいるぞ?」

  「……そッスね。」

  「大体商品がわりーよな?」

  「……そッスね。」

  「あ?あれか?岡に押し付けられた村上のジジイ、またセクハラされた?」

  「あ、ケツ触られました。」

  「一人暮らしで溜まってんだよ。まぁ客だかんな…」

  「え?お客さんならお尻触っていいんですか?私もコンビニのバイトのお尻触っていいのかな……?」

  「なに?そんな忙しかった?今日?」

  「忙し“かった”じゃなくて現在進行形で忙しいです……今日も残業確定……」

  「おぉ…おつかれ……あ、てかさ、ケツで思い出したけどお前エレベーターでケツ触られたことあるんだって?」

  「いつの話ですかそれ…言いましたっけ宮さんに。」

  「お局が言ってた。」

  「……話しましたっけあの鬼婆に……」

  「私もあるぞ?部長から。」

  「えぇぇぇっ!?どんだけ命知らずですか…」

  「お前私の事なんだと思ってる?」

  「元レディース総長。」

  「お前こそいつの話だよそれ……仲間だな?」

  「嫌ですそんな仲間……」

  「触られる内が華よ。そんだけ私らのケツが魅力的ってことさ。」

  「……知り合いからもそんなこと言われました。殺していいですか?」




 ※




  なにがポッ〇ーの日だふざけんな。


  「ただいまぁ。」


  例によって終電を逃し合鍵を使って中に入る。いつ帰ってきてもこの家は玄関の明かりがついてる。癒し。


  靴をチンたら脱いでたら奥からハルが出てきた。

  ハルの脚はこの前完治したようで、今日から仕事にも出たみたい。おめでたいですなぁ。


  「……おかえり。」

  「飲むぞっ!!」

  「うっせっ!琴葉寝てんだよ!」


  ハルに頭を叩かれた。ひどい。今日は優しくしてくれなきゃやだ。



  「--なんで誕生日に朝から怒られて仕事押し付けられてセクハラ受けて後輩の尻拭いもしてお局にガミガミ言われてこんな時間まで残業してっ!もうヤダ辞める!!」

  「あれ?もう酔ってる?」


  居間にふて寝して叫んだらハルが夕飯を持ってきてくれるシステム。床が板張りで後頭部がゴリゴリして痛い。


  何やらスパイシーな匂いがする。起き上がったら皮なしソーセージみたいなのが皿に盛られてた。


  「これは?」

  「ミティティ。ルーマニア料理。ひき肉を丸くして焼いたヤツ。」

  「……おー、ビール合いそう。」


  次に運ばれてきたのはなんかソース(?)に絡まった肉がご飯とか目玉焼きとかと一緒に盛られてる。


  「ロコモコ?」

  「どこが?全然違うけど?これはトキトゥーラって煮込み料理。ルーマニアの。」

  「なんでそんなルーマニア攻め?」

  「ヴィレッジの動画観たから。」


  すぐ影響されるな…今度やらせてあげよう。


  缶ビール開けて1口飲んでから肉巻きみたいなのに手を伸ばす。

  香辛料いっぱい入ってるのかスパイシーだ。美味い。

  次になんとかって言う煮込み。

  コロッと角切りにされた肉が入ってる。半熟の目玉焼きが美味しい。目玉焼きの感想はいいよ。

  付け合せのピクルスはなんの付け合せだろ?私ピクルス苦手なんだよな…


  「……そういえば気になること言ってたけど……」

  「ん?」

  「誕生日なん?今日……」


  ご機嫌で料理を楽しんでた私の手が止まる。止まるさそりゃ。お風呂上がりで火照った体がさらにヒートアップ。


  「知らなかったの?」

  「うん。」

  「何年の付き合いよ?」

  「だってなんにも言わないもん。」


  え?いやいや毎年言ってますけど?そりゃ当日とかだけど……

  去年テレフォンカードくれたじゃん?何あれ誕生日プレゼントちゃうんかい!いや…誕生日プレゼントがテレフォンカードって……


  「……サイテー。」

  「ハイハイ。」

  「ひどい。私たち親友以上恋人未満の固い絆で結ばれてると思ってたのに……」

  「もう酔ったのか?」

  「サイテーサイテーっ!!今日は嫌なこといっぱいあったけど1番サイテーっ!!」


  いやまじでショックなんスけど?去年言ったじゃん!!忘れないじゃん!!

  てことはアレか?琴葉ちゃんも忘れてる…?


  てかさ、どこ行くのあんた?ねぇ。逃げるな。


  呆れ顔で台所から戻ってきたハルの手には大きなシャンパンボトルが握られてた。しかもリボン付き。あれ?


  「覚えてますよ?はい。お誕生日おめでとう。」

  「……。」

  「あとね、琴葉からもプレゼントあるぞ?お前帰ってこないから寝ちゃったけど……」

  「……。」

  「なに?」

  「ハルってなんだかんだ私の事好きよね?」

  「頭かち割るよ?」




 ※




  このミティなんとかって凄い美味しい。好き……


  「シャンパン飲まんの?折角買ったのに…いいやつ。」

  「いいやつってなに?」

  「モエ・エ・シャンドン。」

  「わぉ。でもこの料理に合う?」

  「合うだろ…多分。俺シャンパンとか普段飲まんし知らん。」

  「今日はビールがいいなぁ。」

  「明日にはありません。」


  拗ねちゃった。ごめんね。でも嬉しいよ。ありがと。


  「あとこれ、琴葉から。」


  ハルが手渡してきたのは手描きのイラスト。色鉛筆で描いてる。私の顔だ。

 

  「…え?上手。」


  真っ先に正直な感想が飛び出した。琴葉ちゃんの描く絵ってクレヨンとかでぐちゃっとしたやんちゃで可愛いイメージがあった。

  知らなかった。いつの間にこんな上手になったの?成長感じて感動。


  「あとこれも。小遣いで買ったって。」

  「あははっ、蒲〇さん太郎。こんなに?わー…明日お礼言わなきゃなぁ……」


  なんか嬉しいなぁ…琴葉ちゃん去年もプレゼントくれたんだよな……


  「ところで今日はデザートもあるんだが…」

  「まだ食べ終わってない。」


  私の食事スピードを無視してハルが脇のコンビニ袋から見覚えのあるパッケージを取り出す。

  まぁ、予想はついてた……


  「今日はポッ〇ーの日ってことで。」

  「11月11日だもんね。ところでなんで今日がポッ〇ーの日なの?」

  「11月で11日だから。1が4つだぞ?ポッ〇ーにしか見えない。」

  「棒状だから?」

  「うん。」

  「プリ〇ツの日で良くない?」

  「うん。」

  「プリ〇ツの日ってないのかな?」


  ポッキーを1本齧る私の疑問にハルが素早くスマホで検索をかける。

 

  どうでもいいけどスマホって便利よね。ポケットにパソコン持ち歩いてるようなものだもんね。

  そういえば昔電子辞書に憧れたなぁ…私が高校生になる頃には全く必要なかったけど。


  「…11月11日はポッ〇ー&プリ〇ツの日。」

  「あるじゃん。今日なんだ。ポッ〇ーばっかり印象に残ってたけど。なんか影薄いねプリ〇ツ。」

  「プリッ〇さんの悪口やめろ。俺はポッ〇ーよりプリッ〇派だぞ。」

  「なんでポッ〇ー買ってきたん?」

  「ポッ〇ーの日だから…」

  「誰が決めたんだろ。ネット民?な〇j?」

  「な訳あるか。グ〇コだよ。」

  「ポッ〇ーとプリッ〇って同じ会社?」

  「当たり前だろ?」

  「ふーん。ビールとは合わないねポッ〇ー……」


  今日は甘いものの気分じゃない。それよりこのミティなんとかホント美味しい。


  「これ好き。また作って。」

  「気が向いたら…グ〇コと言えばグ〇コ・森永事件って知ってる?」

  「知らん人のが少ないでしょ…私昔その事件wikiで調べててさ、『江崎グ〇コ社長を誘拐して』って一文読んでさ、グ〇コの社長の名前江崎グ〇コさんなのかと思った。」

  「違うの?」

  「グ〇コなんて名前いる?」

  「グ〇コの社長って名前何?」

  「調べて。」


  てめーで調べろって言いながらまた検索。


  「江崎勝〇って書いてる。」

  「その人が創ったんだ。」

  「いや、創業者はその人のおじいちゃんじゃない?たしか……」

  「そーなん?」

  「たしか……」


  ハルってなんでそんな断片的な知識しかないの?社長の名前知らんのに……


  「グ〇コ事件って未解決事件だよね?時効っていつ?」

  「2000年。」

  「私らが産まれたら辺か…へぇ……」

  「産まれたと言えばあなた今日で何歳になるの?」

  「21歳。」

  「言い方が違う。」

  「拳の人?私よく知らんのよ。なんかハイスペックな大学生らしいじゃん?京大だっけ?」

  「それ、ガセらしい。」


  そうなんだ。私あの人よく知らない。あれって2017年だっけ?




 ※




  「ところで今日誕生日なんですけど…」

  「聞いた。」

  「ケーキとかないんスか?」

  「俺ケーキ嫌い。」


  ハルはケーキが嫌いみたい。スポンジ系がダメだからね。


  まぁそこまでは図々しいか。

  晩酌のお供もあらかた片付いてもしかしたらな〜なんて期待したけど、今年はなかった。

  高校生の頃フルーツタルトみたいのを用意してくれたことあったけど……


  まぁ、シャンパン買ってくれたみたいだし、ちゃんと覚えててくれただけで十分。


  ……思えば社会人になってからろくに地元に帰ってないのもあって誕生日なんて祝われることなくなった。

  学生の頃は友達とかとカラオケでお祝いしたり、帰ったら家に準備がしてあったけど……


  まぁいい歳な訳だし、いい加減そういうのも卒業よね?パーッとお祝いって歳でもないわ。


  でも思い返せばハルと琴葉ちゃんだけは、毎年欠かさずなにかしてくれる。


  本当に…居心地のいい家。

  ハルと仲良くなれて良かった。


  「……ポッ〇ーゲームって知ってるか?」


  なんて感慨に耽ってたらスマホに視線を落としたハルが突然なにかほざき出した。


  「知ってるけどそりゃ……」

  「経験は?」

  「そんなスイートな思い出ない。あ、でもミサミサと中学の頃やった…あれ?高校生?」

  「誰ミサミサ。デス〇ート?」

  「中学ん時からの友達……だった人。」


  高3の頃にはお互い進路が忙しくて疎遠になっちゃった。それまではたまに地元から福岡まで会いに来てくれてたんだけどなぁ…


  ああ、友達に囲まれた私の青春…輝いてた。


  「………………楽しいのかなこれ。」


  おっとどうした?


  「……何?やりたいの?」

  「え?やってくれんの?」

 

  おっと酔ってますね。


  「このポッ〇ー職場の知り合いから貰ったんだけど…これで遊んでくださいって。」

  「遊ぶ?」


  遊ぶの?食べてじゃなくて?さては合コン脳だなそいつ。合コン脳?


  「やってみるか。人生経験として。」

  「……誰と誰が?」


  ハルがちらりと私を見た。


  あれ?やっぱり酔ってる?ハル飲んでないけど?

  もしかしてキスしたいのかなぁ?私と?WaT?

  ハルの口から飛び出るわけのない提案、この人この手の冗談言わないけど…

  彼女出来なさすぎて飢えてんの?


  ……えぇ〜?


  ホントどうした?

  ぶっちゃけハルとなら間接キスくらいならできるってか全然気にしないけど…


  唇同士をガッチャンコでしょ?ハルと?というかまじで真意が分からない。


  「……まじでどうしたの?疲れてる?疲労困憊?キャラじゃないよ?」

  「『愛してるゲーム』とかいうふざけたゲームやらされてその上フラれたから。腹いせ。」


  あれ何日前の話ですかね?てか根に持ってた!?


  「恥ずかしい思いさせた挙句に俺の気持ちを踏みにじったから。今度は君の番なのだよ。」

  「踏みにじったっ!?あれ本気の愛してるだったの!?」


  なんだって?どうしよう私!!


  「な訳あるかっ!調子に乗るなよ?勝ったはずなのにからかわれたから勝った気がしないの!!」

  「え?でも恥ずかしい思いしたんでしょ?負けじゃね?」

  「恥ずかしがっても笑ったり照れたりしなかったらセーフだろ?てか先にお前のが照れてたし……」


  さぁ!とハルがポッ〇ーの箱を私に向けてきた。

  ハルさん。それ自分も恥ずかしくない?自爆してない?折れたり口離したりしたら負けだよ?しちゃうぞ?まじでしちゃうぞ?いいのか?


  彼は理解しているのだろうか。このゲームの意味を。理解した上での自爆特攻なのか?それとも理解してないのか?私が先に折れるとタカをくくってるのか?


  ……うーん。

  ハルとチューか…どうなんでしょうか?そういう関係でもないのに……


  ……まぁゲームならいいか。


  「じゃあやろうか。逃げたら負けだからね?負けたら罰ゲームね?」

  「馬鹿か。冗談に決まってんだろ?」


  ポッ〇ーに伸ばした私の手をハルが叩く。慌ててポッ〇ーの箱を引っ込めた。


  「え?しないの?」

  「したいの!?」

  「いいよ別に。」


  醸す余裕。全く意識してませんアピール。そうすることでへし折れるハルの自尊心。プライド。


  どこまで本気か知らんが…君の復讐は返り討ちなのだ。

  挑発に乗ってきたハルがゲームを敢行しても、ぶっちゃけっ!まぁハルとならキスしてもいいやっ!!ゲームという前提でね?


  さぁくそ雑魚メンタル。どうする?


  「ん〜?本気じゃなかったん?なんだなんだ?かまって欲しくて強がっただけかね?ん?前回は散々くそ雑魚メンタルとか言ってくれてたけど?自分から誘っといて照れてるんですか?ん?ん?」

  「じゃあやるか。」


  煽りすぎた。


  ハルが勇んでポッ〇ーを1本箱から抜き取ってきた。あれ?


  「俺チョコ好きじゃないからクッキーの方からね。お前頭から食え。口離したら負けね?」


  ……あれ?


  「…はよ咥えんかい。どうした?照れてるのかね?くそ雑魚メンタル。」


  ……あれ??



  --ポッ〇ーゲームとはっ!


  2人の人が向かい合ってポッ〇ーの両端を咥えて、食べ進めて行くゲーム!

  そのままポッ〇ーを折らずに食べ進めたらお互いの唇が触れるのは必然っ!!つまりそういうゲームなのである!

  ルールとしては2人でやる場合先に口を離した方が負け。

 

  愛してるゲーム同様考えたやつは脳内が相当おめでたいやつに違いない。下心しか感じない。


  前回の愛してるゲーム同様合コン等の鉄板。メンタルを試されるゲームだ。あと折らないように食べるの地味にムズい。

  テクニックと鋼のメンタルを求められる愛してるゲームより高度なゲームになる。


  前回愛してるゲームで先制で派手に照れて撃沈した私の雪辱戦!!



  腹を括ったプライドをかけた闘いの幕が上がる。

  ハルって私相手だと結構煽り耐性ない上に負けず嫌い。高校生の頃は同級生にからかわれたりしてもムキになったりしなかったのに……


  私の煽りに乗ってきたハルが差し出すポッ〇ーに応じる。煽った側としては逃げられない。ポッ〇ーの頭(頭ってどっち?)を咥えた。


  ポッ〇ーって短いんだな。


  すぐ近くにハルの顔。

  間近で見たら肌白くてすべすべしてて髪の毛つやつやでまつ毛長くて……


  ……顔が女だから女の子とやってる気分。


  あれ?恥ずかしさが半減した。

  そうさ、ハルが男の子って意識するからいけないんだ。女子となら恥ずかしくないもん。


  「んじゃ、スタート。」


  言いにくそうにハルが言ってゲームが始まる。


  離したら負け。かと言ってそのまま行ったらチューしちゃう……

  いやいいよ。別にいいよ?中学生ですか?平気ですよ?恥ずかしくないもんチューなんて。だって友達とゲームしてるだけだもん。


  ……琴葉ちゃん起きてきたらどうしよう。


  口を器用に動かしながら舌の上に乗ったポッ〇ーを逃がさないように食べ進む。

  少しずつ少しずつ……お互いがポッ〇ーを折ってしまわないように無言で息を合わせつつ……


  ……あ、ハルいい匂い。お風呂上がりだからかな?

  うーんこうして見るとやっぱり女子にしか……


  ……近い。

  近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い近いっ!!


  唇が近い。息遣いがっ!!やばいっ!!あと何センチ?もう鼻先くっつきそうだよ!?5センチくらい!?


  するのか!?私は、ハルと!?


  やばいぞやばいぞやばいぞやばいぞやばいぞやばいぞやばいぞやばいぞやばいぞやばいぞやばいぞっ!!


  耐えろ。ここで逃げるな!私は負けない。 愛してるゲームの雪辱を晴らすん--


  「んんんんんんんんんんっ!!!!」

  「…あ。」


  首をグリンと曲げてポッ〇ーをへし折った。


  やっぱり無理ですごめんなさい。愛してるゲームとか比じゃないから。知り合い同士でやるものじゃないから。


  ……無理ってのは恥ずかしいから無理ってことね?気持ち的に嫌とか生理的に無理とかでは……

  ん?なんの言い訳?


  「…罰ゲームね。」

  「え?」

  「お前が言い出したんじゃん。てか、やはりくそ雑魚メンタルはお前だったな。ふん。雑魚め。なぁぁに意識してるんですかあぁ?恥ずかしぃぃ。」

  「…………いや違うし。たまたま折れただけだし。てか、ハルの方こそ残念そうですね?したかった?キスしたかった?あ〜ごめんなさいね気づかなくて。てか友達にポッ〇ーゲームとか私だからいいようなものだからね?引かれるから気をつけ--」

  「死ね。」


  眼鏡を奪われた。視界が一気に曇る。ほんとに目が悪いからやめて。


  「ちょっと!!返して!!」

  「やだ。ポテチのトイレに埋める。」

  「あ、ごめんなさい嘘です今の冗談私が悪かったですホントすみませんでした全然引かないです嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!」

  「さよなら眼鏡。」

  「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」



  --まぁ、ハルも終始ただのおふざけでやってたんだよね?

  それにしてもなんで愛してるゲームとか言い出したんだろ?あの日の私……


  まぁ……楽しい誕生日でしたっ!!終わりっ!!



  ……眼鏡は無事だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ