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ブラック企業の空に  作者: 山木 拓
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2017年12月の出来事

 二ヶ月ほど過ぎた頃、堀口くんは営業成績が完全に止まっていた。いくら数を回っても、日数をかけても、新規を獲得できなかった。よくよく考えれば当然かもしれない。彼が序盤に回っていたエリアは地価が高く、賃貸でも家賃が高い物件が多い。要するにお金に余裕がある人が多く、そして資産運用への興味がある人も少なくはなかった。となると、それ以外のエリアでは上手く行かなくなる可能性が高い。それを彼は、もっと回れば獲得できるはずと解決策を結論付けてしまい、体力の消耗を激しくしていくばかりだった。会社も早朝に来てはいるが、書類上のミスも増えて怒られることも多くなっていた。

 対し、木下は少しづつ成績を伸ばしていった。過去に訪問した顧客のもとに赴き、本格的に資産の運用に関して説明して獲得をしたり、興味のある方であればその場で獲得したり。ジワジワと、という表現がピッタリだった。もともとそんなに数を回っていたなかったので、長期的にも同じペースを維持出来ていた。

 木下は、こんなことを藤田に話したらしい。

「AVって最初から最後まで全部エロいシーンじゃないことが多いじゃないですか。無駄にストーリーがあったり、よく分かんないインタビューがあったり。あれは見てる人を没入させるには絶対必要なんだと思うんですよね。」

 本人曰く、彼の営業の仕方はこれに基づいているらしい。最初から慌てる必要はない、みたいなことを言いたいのはなんとなくわかるが、何もAVの撮影で例えなくても。私はそう思った。

 新人の二人は、最終的には同じ回数怒られていたかもしれない。だがしかし、低い成績を安定的にこなす木下には謎の信頼が生まれていた。ほっといてもある程度の結果を残す。周りがそう認識したのかもしれない。もしこの状態を最初から狙っていたのなら大したものだ。とはいえ課長は、これを良くは思っていなかったが。だが宮本さんは、これが木下のスタイルなんだな、と納得はしてくれていた。


 堀口くんはある日会社を休み、その翌週本社へ異動となっていた。

 その日の夕方外回りを終えて帰ってくると、机には缶コーヒーが置いてあった。最初は何故おかれているのか分からなかったが、そういえば賭けをしていたのを思い出した。私はなんとなく、その缶コーヒーを木下の机に置いておきたくなった。そして自分の分も、自販機へ買いに行った。

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