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ブラック企業の空に  作者: 山木 拓
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2019年11月の出来事

 皮張りのソファーに座った支店長は、私の退職願を持ってしばらく黙っていた。封筒を開きもせず、そこに書かれている『退職願』の文字をじっと見つめている。そして意味もなく裏面を2回ほど確認した後、ついに口を開いた。


「転職先は決まったのか?」


 私が退職願を渡すと、決まってそう言ってきた。


「…いや、決まってないです。」


 嘘をつけない人間だった私は、そう答えるしかできなかった。


「だったらやはりコレは受け取れないな。辞めるにせよ続けるにせよ、ひとりの人間として俺はお前を放っておけないんだ。決してお前の人生の邪魔をしたい訳ではない。俺は、お前のためを思って言ってるんだからな。」


 そう言って、支店長は退職願を机において、私の方へ滑らせた。


「わかりました。ありがとうございます、失礼します。」


 その退職願を、私は置いて帰った。




 私はきっと、この会社から旅立つ様に脱出する人間の目をしていたのだろう。

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