美奈子ちゃんの憂鬱 可愛いと綺麗とヤキモチと
ある晩のことだ。
「……それで?」
水瀬の膝の上に座った日菜子が、まるでおねだりするように瞳を閉じた。
「……んっ」
そっと重ねられる唇の感触。
肌と肌の触れ合いにすぎないはずなのに、どうしてこうも嬉しいんだろう。
日菜子は、そんな泣きたいほどの幸福感をもたらしてくれる感触に全てを委ねる。
「……それで、ですね?」
唇を離した水瀬が言う。
肌に感じるほど近い水瀬の顔。
その吐息ですら抱きしめたいほど愛おしい。
きゅっ。
水瀬の服を掴む日菜子の手に、無意識に力がこめられる。
「……ルシフェルの事なんですけど」
「ルシフェルの?」
日菜子は、少しだけ心証を悪くした。
ルシフェルは水瀬家の養女、水瀬にとっては姉になる。
それはわかる。
わかった上でも、日菜子の“女”としての何かが、この場で水瀬が他の女の名を口にすることを許そうとしない。
日菜子は、それでも―――
(悠理が、“私に”相談に来てくれた)
それで納得することにした。
納得出来るだけ、自分は成長した。
日菜子はそう思う。
それがわからない水瀬は、日菜子にとって、意外なことを言った。
「秋篠博雅君―――ご存じでしたよね?」
「……秋篠宮家の三男坊ですね?ルシフェルとはかなりの仲と聞きましたが?」
日菜子は、博雅の堂々とした体躯と、ゴツくて男臭い顔立ちを思い出した。
心根の優しい男というのが、日菜子の博雅から受けた印象だ。
「はい。その……彼を巡って」
「?」
「―――ルシフェルにライバルが出来まして」
「は……い?」
●一週間ほど前 水瀬邸
「……」
「……」
男臭いゴツイ顔立ちの博雅が無言でこちらを見つめている。
睨んでいる。
その方が正しいほど、じっとりとした視線を浴びる水瀬は眉をひそめた。
「……どうしたの?」
「だから」
「……デートするんでしょ?」
「……そうだ」
ヘンな話だ。
水瀬は首を傾げた。
ルシフェルと博雅がデートする。
それを事前に博雅が話してきたのは、初デートの時位だ。
すでに毎週のようにデートする二人なのに、今回に限って一々、何故僕に言う?
「……まさかと思うけど」
水瀬は、その答えを思いついた。
「ルシフェル以外の女の子が相手―――とか?」
「……そうだ」
「……」
「……」
数十秒、ぽかんとした目で博雅を見た水瀬は、
―――ちょっと待ってて。
そう言い残して席を立った。
「……お待たせ」
戻ってきたのは数分後。
どんよりとした表情の水瀬の手には、巨大な包丁が握られていた。
「ちょっ!?」
ギラリと光るその刀身から放たれる殺気に、博雅は思わず後ずさってしまった。
さすがに身の危険を感じた博雅が慌てて怒鳴る。
「落ち着けっ!俺はマグロじゃないっ!」
「大丈夫―――クマやイノシシの解体はやったことが」
「誰を解体するつもりかっ!大体、俺はルシフェルと別れるつもりはないっ!」
「―――それ、言い逃れのつもり?」
水瀬は訪中の切れ味を試すように刃先を見つめながら、
「姉をキズモノにされて黙っているつもりは、僕にはないよ?」
「だからっ!」
博雅は、酒の入った杯をあおった。
「―――ふうっ。この前、校外清掃やったの、知っているか?」
「僕、熱出して休んだけどね」
「……福井先生は“水瀬は生理痛がひどくて休む”と言っていたぞ?“あいつやっぱり!”って、かなり騒ぎになったんだが?」
「それで?」
「―――さぼったな?」
「だから、それで?」
「俺はその時、神林の辺りでゴミ捨てで歩き回っていた。そうしたら、中等部の女の子達に助けを求められた。“友達が不良共に囲まれている”とな」
「ふむ」
水瀬は博雅の杯に酒を注ぎながら頷いた。
「それで?」
「不良共2、3人叩きのめしてゴミ箱の中に放り込んでやった。そしたら、助けた相手を見て驚いた。―――お前、高円寺家は知っているな?」
「……」
水瀬はしばらく考えた後、記憶にたどり着いた。
「侯爵家だったね。確かあそこの一人娘が中等部にいた」
「そう。その高円寺家の娘だったんだ」
「成る程?」
水瀬は自分の杯を空けた。
「それで、博雅君。その総領娘に惚れられたわけだ」
「惚れられたかどうかはわからんが……」
博雅は杯をあおった。
「とにかく、それ以来、やれお弁当だなんだのと……」
「そこまで困るとは……そんなにブスだっけ?その娘さん」
「いや?」
博雅は首を横に振った。
「かなりカワイイ娘だ」
「―――ふうん?」
カワイイ。
水瀬は、博雅から初めてそんな言葉を聞いた気がした。
ルシフェルに対する評価は“美しい”とか“綺麗”だ。
水瀬は、博雅からその言葉を勝ち取った女の子に興味を持った。
「どんな子?」
「面倒見はいいし、弁当もうまいし、会話も楽しいし、俺とは趣味も合うし、親同士のつきあいもあるし……」
「それ……新しいオンナが出来たって、自慢しに来たの?」
「だからっ!」
博雅は頭を抱えた。
「俺はどうしたらいいんだ!?彼女の出来が良すぎて、交際を断る口実がないんだっ!」
「二股」
「俺はルシフェルが好きなんだっ!」
博雅は勢い余ったのか、立ち上がって怒鳴った。
「俺にはルシフェルがいればいいっ!それにウソはないっ!しかも、明日は彼女と一緒にデートなんだ!」
「まぁ、落ち着いてよ」
「これがどうやって!?」
「もう一杯どうぞ?」
「……」
無言で座った博雅は、杯を一気にあおると、すがるような視線を水瀬に向けた。
「―――どうにかならんのか?」
●翌日 葉月駅前ロータリー付近
「……」
「……」
駅前ロータリーの噴水前に立つ博雅を、物陰から睨み付けているのはルシフェルだ。
その横では、彼女にボコボコにされた水瀬が自分相手に治癒魔法の展開に忙しい。
「水瀬君」
ジーパンにジャケットを羽織っただけというラフな格好のルシフェルは、視線を博雅にむけたまま訊ねた。
「狙撃部隊の配置は?」
「ないよ」
「砲撃支援は?」
「言っておくけど、航空支援も艦砲支援もないからね」
「単独でやるしかないの?」
「……あのね?一体、誰と何するつもりなの?」
「だから」
「最近、瀬戸さんとキャラ被りつつあるね。ルシフェ」
「私はあそこまで過激じゃない」
「全く……てんで自分を知らないんだから……あっ」
そのとき、博雅の前に現れたのは、髪をポニーテールにまとめた活発そうな印象のある女の子だ。
季節にあわせた暖色系のワンピースがよく似合っている。
「へえ?」
思わず治癒魔法をかける手を止めた。
きびきびとした元気のいい動作。滑舌のいい、よく通る声。女の子らしい愛らしい動作。 そして何より―――
―――私は、この人が好きです。
その小柄な体からは、そんなオーラが放たれている。
本当にカワイイ。
その理由は、間違いなく、彼女が恋をしているからだ。
「これじゃ、博雅君が断れないのも無理はないな」
水瀬は、男としてそう思う。
はにかむような笑顔で答える博雅との初々しい対比は、水瀬のように色恋沙汰に鈍くても、悪くない相手だと思わせる程、似合うのだ。
「うん。元気な妹系ってキャラだね」
「……」
「ああいう子って、一緒にいれば楽しいだろうね」
「……」
「退屈しないっていうか……る、ルシフェ!?」
ブンッ!
いつの間に抜いたのか、霊刃がルシフェルの手の中で光っていた。
「や、やめっ!?」
「離してっ!」
「何するつもりなの!」
「一々、聞く必要があるの!?」
水瀬は、ちらりと博雅達を見た。
まだこちらに気づいていない。
「もうっ!」
シュンッ
水瀬の舌打ちだけを残して、水瀬とルシフェルの姿が消えた。
色恋沙汰は人を狂わせる。
それは、わかっている。
実際に間近で経験した、好いた惚れたで身を滅ぼした者の数は、水瀬自身、両手の指ではとても足りない。
その恐ろしさは、水瀬の恋愛感では、その素晴らしさの先に来る。
ただ―――
「離してっ!」
「だからっ!」
いくら何でも、その狂った相手が姉というのは、本気で勘弁してほしいというのが、水瀬の偽りのない本音だ。
「一般人相手に何するつもりなのっ!大人げないっ!」
真っ白に塗られた5メートル四方の部屋の中で暴れるルシフェルを羽交い締めにする水瀬が珍しく姉を叱っていた。
一方、叱られた姉は、
「水瀬君に言われたくないっ!」
水瀬をふりほどいて怒鳴った。
「ここどこっ!?」
「監獄の中だよ。僕専用の」
「監獄っ!?」
「別名“テレポートホイホイ”。テレポートは一方通行しか出来ないから、誰かに開けてもらうしかない」
「ならっ!」
「また話は終わってないからぁっ!」
チュドォォォォンッ!!
凄まじい爆発音が室内に響き渡ったのは、その瞬間だった。
「ごちそうさまでした。先輩!」
ファミレスから出た博雅にぺこんと頭を下げると、ポニーテールが慌てて後を追うように大きく揺れる。
その可愛さに、博雅の顔が緩んだ。
「美味しかったかい?」
「はいっ!」
女の子―――名を高円寺舞という。
クリッとした丸くて大きな目が感動気味に潤んでいた。
「お友達には聞いていたんですが、あんな大きいパフェは初めてですっ!」
「そうか」
博雅は嬉しげに頷いた。
「家族と一緒だと、こういう店はなかなか―――ね」
舞は頷いた。
「いつもお料理の広告見るたびに、おいしそうだなぁと思ってもお父様やお母様と一緒だと入れなくて……」
「念願がかなったかな?」
「はいっ!」
零れそうな程の笑みと共に、舞は再び頷いた。
「ルシフェのばかぁっ!」
水瀬がついに怒鳴った。
「壁に魔力反射加工がかけられているから危ないって言おうとしたのにぃっ!」
「さっさと言って!」
「いいんですか?」
映画館の中で舞は心配そうな顔になった。
「あの……もっと、大人の映画でも」
「でも、見たいんだろ?」
「……はい」
博雅達の周りは親子連ればかり。
少なくとも、カップルは博雅達だけだ。
タイトルは“大映まんが祭り”
とてもデートで見る内容でもない。
―――選択、間違えた。
ションボリする舞に、博雅は言った。
「さ、始まってしまうよ?」
「えっ?」
「俺達だって、きっと見れば楽しめるだろ?」
「はいっ!」
舞は小走りに博雅の後を追いながら、そっと言った。
「あの―――先輩?」
「ん?」
「―――手を、握ってもいいですか?」
メキッ!
暗い館内にそんな音が響いた。
「ルシフェぇ……」
小声で言ったのは水瀬だ。
「やめなよぉ……子供が泣くからぁ……」
ルシフェの手が握る通路の手すりは、半ば握りつぶされていた。
「お願いだから、警察に通報される前に逃げようよぉ……」
「何……あれ」
ルシフェルは、そんな水瀬の声にまるで頓着していない。
スクリーンを前に、観客達に混じって楽しむ博雅達がいるだけだ。
「ずっと手を握って―――あんなに楽しそうに」
「ううっ……これ、僕も見たかったのにぃ……」
楽しげな笑いの響く中、水瀬に引きずられるように、ルシフェルはその場を離れた。
「―――飲み物、買ってくるから」
水瀬は、ルシフェルをソファーに座らせると、“絶対、その場を動かないでね!”と念を押して席を離れた。
―――ハァッ
思わず出たため息に、ルシフェル自身が驚いた。
―――私、何やってるんだろう。
そう思うと、自分自身が情けなくて仕方ない。
博雅君が好き。
それにウソはない。
博雅君も、自分を好きでいてくれる。
それも、信じている。
だけど―――
目をつむると、楽しげにしているあの二人の姿ばかりが浮かんでくる。
―――博雅君は、私と一緒にいる時、本当に楽しいんだろうか。
そんな、疑問と共に。
「―――はい」
不意にかけられた、そんな声にルシフェルは目を開けた。
「どうぞ?」
目の前で軽く振られる缶ジュース。
それを持つのは―――
「ちょっと、いいですか?」
舞だった。
「それで?」
日菜子が訊ねた。
「どうなったのですか?」
「それが―――」
水瀬は肩をすくめた。
「二人で、妙に楽しそうに話をしてまして」
「博雅様は?」
「途中で寝ていたそうです。実は、途中で彼女が抜け出したの、今でも気づいていないそうで」
「……はぁ」
「とにかく、別れ際に舞ちゃんは言ったそうです」
「……何と?」
日菜子はそっと水瀬の胸の中に顔を埋める。
そっと髪を梳く水瀬の手が心地良い。
「私にあるのは生まれだけです。華族の出自位しか、私はあなたに勝てるものはありません。つまり、女として何一つ勝てていません。けど、私は博雅先輩が好きです。ただ、その想いだけは絶対に負けません―――そう、言ったそうです」
「……」
「……そんな話です」
「……悠理は」
「はい?」
「そんな女の子は、嫌いですか?」
「……」
「生まれしか誇るものはない。ただ、そんな事しか、自分の優れている所と口にしなければならない―――そんな、女の子は」
「ルシフェルは」
水瀬は言った。
「こう言い返していました―――“あなたは私のライバルです。正々堂々、勝負しましょう”」
「……そうですか」
「―――日菜子?」
クイッ。
水瀬は日菜子のあごにそっと手を向けると、顔を自分に向けさせた。
だが、日菜子は水瀬と視線を合わせることを拒んだ。
「どうしたの?」
「……質問に、答えてもらっていません」
「あの言葉は、勇気だと思います」
水瀬は日菜子の形のいいあごの感触を楽しむように指を軽く動かした。
「何もないと一笑に付されるかもれしない。相手は美貌をたたえられるあのルシフェです。それでも、他に何もないよりマシ。逃げ回らずに正々堂々と言った辺りはたいしたものです」
そっと、水瀬は日菜子の頬に口づけすると、その耳元で囁いた。
「内心、生まれを楯にしたのは、何もないよりむしろ惨めだったんじゃないですか?」
「―――それを、私に言いますか?」
「日菜子だから、わかってもらえるかと思いまして」
「……」
「博雅君、今でも実はちょっと落ち込んでいるんです」
「……今でも?」
日菜子は、その言葉にひっかかった。
「どういうことです?」
「舞ちゃん、実は今度、親の仕事の関係で、京都に転校になりまして」
「……えっ?」
「あのデート、舞ちゃんにとっては、転校前の記念だったんです。デートすること自体が、精一杯の冒険というか、勇気だったんですよ。
それを乗り越えたら、もう恐いものはなかった。
博雅君も、舞ちゃんの転校知ってから、“もっと何か出来たんじゃないか”って、ずっと悩んじゃって」
僕はよくやったと思いますけどね。と、水瀬はそう小さく笑った。
「……」
「日菜子は、どう思います?舞ちゃんのこと」
「とても仲良く出来そうです」
日菜子はそう言って笑った。
「同じスタートラインに立つ戦友みたいです♪」
それは、日菜子の本音だ。
生まれ以外、何もない。
―――私だって、あの容姿には……
日菜子は、ライバルと認める女性達を思い出して唇をかみしめた。
「それで?ルシフェルは?」
「それが―――」
水瀬は天を仰ぎ見た。
舞はルシフェルにある意味凄まじい楔を刺して東京を去った。
―――絶対に、博雅先輩を色仕掛けで奪るようなマネだけはしないで下さいね?
元からマジメで律儀な性格のルシフェルだ。
その申し出に同意して以来―――
「その……欲求不満が溜まっているらしくて」
「……」
欲求不満。
その意味は、さすがに日菜子にもわかる。
わかってしまう。
だから、
「あの……殿下?どうしたらいいと思います?」
そんなこと聞かれても困る。
「知りませんっ!」
日菜子は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「そんなところまでシンパシーを感じさせないで下さいっ!」
「え?えっ?」
「わ、私だって!」
日菜子は両手で水瀬の顔に触れると、その唇を重ねた。
「―――んっ」
水瀬が驚いたほど深く、長いキスに、脳天がしびれそうになる。
水瀬から唇を離した日菜子は、泣きそうな顔で言った。
「私だって、いろいろ……そのっ!」
「えっ?」
「えっ!?じゃなくてもうっ!」
日菜子はじれたように言った。
「私だって、今、お尻に何が当たっているか位、わかりますっ!」
「―――っっ!!」
今度は水瀬が赤面する番だった。
たまらず天井を仰ぎ見てしまう。
「……」
「……」
「……反省、しましたか?」
「……はい」
「よろしい♪」
日菜子は言った。
「もう少し……こっち方面は……その……待って下さいね」
「……舞ちゃんの件と、どっちが先ですか?」
「答えは一つです」
日菜子は言った。
「あなたの甲斐性次第です」
「……女の子のじゃなくてですか?」
「……」
日菜子は、じっ。と、自分の好きな相手を見つめた。
どうしてこうも鈍いのか、理由が分からない。
落胆するより呆れるしかない。
「悠理?」
「はい?」
「今回の件、一番、辛いのは、誰だと思っていますか?」
「……」
うーんっ。と水瀬は唸った後、自分を指さした。
で、殿下っ!?
おしおきですっ!
室内に、そんな声が響いた。
●翌日 明光学園
「成る程?」
放課後、水瀬は美奈子に舞のことを話した。
「好きな人との思い出が欲しかったのね。舞さんは」
「思い出?」
「そう。だって、もう二度と出会うことも出来るかわからない。もう一度、再会しても、その時、好きで居続けているかわからない。なら、今、この瞬間、自分が博雅君を好きだったんだって、後でいつでも思い出せる思い出があってもいいでしょう?」
「……そういうものなの?」
「私も、経験があるから」
美奈子は遠くを見つめるように、窓の外に視線を向けた。
「博雅君、良いコトしたし、ルシフェルさんにもいい刺激になったんじゃない?」
「ふぅん?」
水瀬は、思い出したように手を叩いた。
「それで、ある人にね?」
「うん」
「これを桜井さんに見せて反省させてもらってこいって言われて?」
「反省させて……もらう?」
美奈子は首を傾げた。
「それ、日本語ヘン」
「そう思うけど―――これ」
水瀬は、そう言って、襟元を美奈子に見せた。
それは一種の内出血。
日菜子が水瀬の首筋につけた口づけの跡。
俗に言うキスマークだ。
「……」
ピシッ
凍り付いた空気に、水瀬は、よくわからないけど地雷を踏んだことだけは自覚した。
そして―――
●夜 宮中
「水瀬は?」
「本日は入院です。集中治療室から出られません」
「……少し、やりすぎたかしら?」
日菜子はタマの背中を撫でながら呟いた。
「女心に鈍いからです……天罰ですよね?タマ?」
ニャア。
タマのその泣き声に、日菜子は嬉しそうに頷くだけだった。
少し前に「月夜茶会」用にUPした作品です。
そろそろ、一年戦争じゃなくて、短編書きたいですが……何書こうか迷っています。
「こういうの書いて!」というのがあれば、教えてください。
可能な限り応じます……多分。