3条5丁目-4
多重人格は、後天性の病気。くるみちゃんも、生まれた時から多重人格だったわけじゃないんだ。
ハツネちゃんが生まれたときのことを、くるみちゃんが教えてくれた。
5年前の7月2日、くるみちゃんは中3、ハツネちゃんはまだいなかった。
小学生の頃から歌を習っていたのは、くるみちゃん。
バラード調の歌が好きだったんだけど、中3の発表会のとき、新しい歌い方にも挑戦しようってことで、ロック調の「Ready-Set-Go!」という曲を歌うことになった。
歌うことになったんだけど、歌えなかった。
舞台上であたふたしていたら、突然ハツネちゃんの人格が現れて、代わりに歌ってくれたんだって。
これが、ハツネちゃんが生まれた瞬間。
そして、くるみちゃんが歌えなくなった瞬間。
「今回の「約束の歌」は、私がまた歌えるようになりたいと思って作った歌なんだ。大好きなあいにゃんと一緒なら、ちゃんと歌えるかなって思ったんだけど……」
あいにゃんと一緒っていうのが、逆にプレッシャーになっちゃったみたい。
収録場所が、5年前の発表会があった北川公会堂の近くっていうのも、ちょっと影響してたらしい。
北川下駅で飛び降りたのは、ハツネちゃんの中にいるくるみちゃん。
収録できなかった罪悪感と責任感で、理由はないけどなんとなく飛び降りたくなった。
ハツネちゃんの人格は出てなかったから、ハツネちゃんは自分が飛び降りたのを知らなかった。
「以上が、ハツネちゃんとくるみちゃんの真実です」
正直に言うと、まだよく分からない。
お姉ちゃんは、どのくらい理解できた?
「同一人物と言われれば同一人物だけど、別人と言われれば別人。さっきハツネがそう言ってたんだよな」
ハツネちゃんとくるみちゃんは、同じ体の中にいる交代人格。
同一人物と言われれば同一人物だけど、別人と言われれば別人。
なんとなく、その言葉の意味が分かった気がする。




