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青空坂上 3条線 ~ハツネとくるみの連絡帳~  作者: 中村千歳
3条2丁目 ハツネちゃんが生まれた日
22/69

3条2丁目-4

 解離性同一性障害。通称、多重人格障害。

 今の私の状況を理解しようとして、行き着いた障害の名前。

 この障害を知ったのは、高校生のときだったかな。


 元々私は、星野胡桃だった。子供のときから、星野胡桃、通称くるみちゃんとして育ってきた。

 くるみちゃんは、歌が好きだった。自分が歌うことで、周りの人が笑顔になるのが好きだった。それで、歌を習い始めたんだ。

 新しい歌を覚えて、それを歌う。それを聞いた人が、すごいね、上手だねって言ってくれる。それで良かったんだ。


 金井本かないもと中学に上がった頃から、レッスンの内容がちょっと高度になってきた。

 くるみちゃんはバラードが好きだったんだけど、色々な歌い方を覚えてみようってことで、新しいジャンルの歌を習うようになった。

 そして、中学3年の7月2日、北川公会堂きたがわこうかいどうで行われた発表会。ロック調の「Ready-Set-Go!」を歌ったんだ。


 「Ready-Set-Go!」を、歌えなかったんだ。


 原因は、くるみちゃんにもよく分からなかった。

 でも、何かしらの精神的な問題があったんじゃないかな。


 「Ready-Set-Go!」は、ロック調の歌。くるみちゃんが好きだったのは、バラード調の歌。

 あまり好きじゃないロックを覚えようとして、なかなかうまく歌えなくて。周りの大人たちは、頑張ればできる、たくさん練習すればできるって言ってくれたけど、好きじゃないものをたくさん練習しても、練習自体が苦痛だったんだよね。

 練習を重ねていくうちに、くるみちゃんの精神状態が少しずつ壊れていって。


 発表会のステージに立ってみると、全く声が出なくなっていた。


 伴奏がそのまま進行して、くるみちゃんは声が出なくて。

 周りの大人たちがざわつき始めて。

「大丈夫、くるみちゃんなら絶対歌える。練習を思い出して」

 そんなことを言われても、くるみちゃんは声を出すことができなくて。


 そんなことをしていたら、

 ハツネちゃんが出てきて、歌い始めたんだ。


 これが、ハツネちゃんが生まれた瞬間。

 そして、くるみちゃんが歌えなくなった瞬間。


 ちょっとだけトラブルがあったけど、発表会は、問題なく終了した。表向きはそういうことになってるんだよね。


 親にも同級生にも、歌の先生にも言っていないこと。

 あの時「Ready-Set-Go!」を歌ったのは、子供の頃から歌を習っていたくるみちゃんじゃなくて、突然出てきた交代人格のハツネちゃんなんだ。

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