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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
“死神斬鬼”を語る
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第98話 ムソウの過去―敵陣に潜入する―

 数日後、次の作戦が決まったので俺達は砦を出る。ここからそう離れては居ないところに、集落があるらしい。その集落の制圧と、そこを治めている「夜」の部隊壊滅が目的だ。そう言えば、あいつらって何人いるんだっけ? 夜の指揮官それぞれは、王の十本指って言っていたくらいだから十人か。

 それぞれがどのくらいの兵力を持っているのかは不明だな。ただ、ケンゴが五百ほど与えられていて、その上で兵力自慢してきたくらいだから、これから先当たる奴らは、そこまでの規模ではないかもしれない。最終的に闘うことになるであろうメッキは別だが。


 奴は恐らく玄李の領主の元に居るだろう。今頃、本拠地周辺の守りを固めているか、昔みたく大群で俺に仕掛けて来るか……。

 それは無いか。こちらにはゴウキもエイキもいるから、そんな余裕はないだろう。となれば、今回の俺達の目的地の集落もそこまで大きな規模ではないな……。


 俺はそう考えて、タツイエに進言する。


「タツイエ殿、今回は先に俺とツバキで集落に潜入しようと思う」

「何故だ?」

「集落に居る兵力がどのくらいかわからないからな。まず敵情を知るために俺とツバキで先行して集落の状態を把握した方が良いだろう」


 俺がそう言うと、タツイエは腕を組み少しばかり考え込む。そして、頷き、


「……分かった。だが、こないだのような無理はするなよ」


 と言って、俺の頼みを聞いてくれた。まあ、こちらの兵力も前回よりも大きく二百ほどであるが、用心に越したことはない。


 だが、もう一つ、この戦いで重要なことがある。集落には敵兵ではない一般の住民たちもきっといるはずだ。前も言ったが、玄李の国の状況はあまりよろしくない。安備に亡命してくる奴も多いくらいだからな。

 出来れば、そんな住民たちは斬りたくない……。その辺りはタツイエに任せるかな。


 さて、そうやって俺達の作戦が決まっていき、俺は後方で待機するタツイエやアキラたちと潜入の支度を始める。こういう時、ツバキは少し顔を変え、普通の町娘のような格好をする。

 さて、俺はどうしようか、と考えていると、まず、ツバキが無間、鎧、腕輪を取り上げる。


「何すんだ?」

「……目立つ」


 だよな……。鎧と腕輪は何とかなるにしても、無間は目立つから俺だってすぐに分かるな。だが、いざというときどうするんだと聞いたら、アキラが横から、ザンキは素手でも大丈夫だろ、と呆れたように言ってくる。

 頼りにされているのはありがたいが、なかなか複雑な気持ちになり、ツバキの言葉に従った。


 その後、着物も脱がされ、すこし痛んだ着物と普通の刀を渡された。


「ふむ……これならザンキ殿とは気づかれまいな。……なかなか似合っているぞ」

「どういう意味だ?」


 傷んだ着物が似合うとはどういう了見なんだろうか……。まあ、良い。普通の刀を用意してくれただけでも良しとしよう。それに、確かにこれなら、誰も俺のことを“死神斬鬼”とは思うまいな。とりあえず俺は納得して、ツバキと共に集落を目指した。うぅ……普通の刀を持つのは久しぶりだから、慣れないな……。無間が恋しい……。


 ◇◇◇


 その後、およそ一日かけて俺とツバキは目的地である集落に到着した。途中、特に変わった様子はなかった。敵も居なければ罠もない。……いいのか? これで。何と言うか、玄李は時々馬鹿なところがあって少し頭を抱える。こんな奴らに国を墜とされたと思うと、なんか複雑な気持ちになってくるな……。


 今までの道程に多少の疑問は残りつつも、俺達は集落の中に入ろうとした。だが、見張りっぽい奴に止められる。


「待て、そこの二人、止まれ」


 そいつは人相の悪い男だった。ああ、こいつも「夜」の奴なんだろうな、と思い、取りあえず男の言うとおりにして、立ち止まる。


「はい、何か?」

「ここらじゃ見かけねえ顔だな。この村には何の用だ?」


 男の問いかけに少し困る。やばいな……そんなの考えていなかった。一応は旅をしている親子の振りをして、なんて思っていたが、よく考えると、それにしたって荷物が少ないよな……。

 何と言ってごまかそうかと考えて頭を捻っていると、横に居たツバキが口を開く。


「あのねー、私達、親子で旅をしているんだけど、途中荷物を盗まれちゃって、困ってたの。そしたらこの村を見つけて、助けてもらおうと思ったのー」


 ツバキはニコニコしながら流暢に、男にそう言った。俺は横でいつもとは雰囲気がガラッと違うツバキに若干驚きつつも、気取られてはいけないと思い、黙る。すると、ツバキの言葉を聞いた男は、


「そうか、そうか。大変だったな~。よし、村に入れてやるけど騒ぎは起こすなよ~」


 と、笑顔でツバキに言って、俺達を村の中に入れてくれる。去り際に、気をつけてなーと、ツバキに手を振ると、ツバキもありがとーとか言いながら、にぱっと笑って男に手を振り、いつもの無表情になって、俺の方を見た。


「……疲れる」

「あ、ああ……。だが、おかげで助かった」

「……ん……役立てたなら……良い」

「お前……いつもさっきの感じで過ごしてみた方が良いんじゃないか?」

「……疲れる」


 そうか……。ならいいや。俺はツバキの頭を撫でて、村の中に入っていく。


 村の様子はいたって普通だが、民家のところどころが傷んでいるようだ。冬なんだし、直せばいいものを、と思い、村の中を歩いていく。村人は……居ないのか? 誰にも会わないな。


「ふむ……人の気配がしないな」

「……ん……兵士たちも居ない」


 そう言えばそうだな。村人はおろか、ここに居るという「夜」の兵士たちも居ない。だが、見張りが居た以上はここに人が住んでいるということは間違いないはずだ。そう思い、目についた民家の戸を叩く。


 ……が、反応はない。どこかに出かけているのか? などと思っていると、馬を走らせる音が聞こえてくる。


「ん? 何だ?」


 音のする方を見ると、武装した男たちがこちらに向かってきていた。男たちは俺達を取り囲み、槍を向けてくる。


「見ない顔だな。この村の者ではなさそうだ。何者だ?」


 先頭に居た男が俺を睨みつけながらそう言った。俺はその場に跪き、男を見上げる。


「ええ、私共は親子で旅をしておりまして……」

「旅……とな? そんな恰好でか?」


 男は俺達の格好を見ながら不審そうな顔をした。すると、横からツバキが先ほどの調子で口を開く。


「あのねー、いろいろ持っていたんだけどねー、盗まれちゃったのー。私のお気に入りの杖も持って行っちゃったの……」


 ツバキはそう言って目に涙を浮かべ、ガクッと俯く。……おいおい、どこでそんな芸当、覚えたんだよ……。流石だなあ……。しかし、それを見た兵士は首を傾げている。


「ふむ……盗まれた、か。この辺りに夜盗などは居ないと思っていたのだがな……」


 げ、そうだったのか。見張りの男がすんなり通してくれたから大丈夫だと安心していた。あいつは単純に……言い方は悪いが、ツバキの色香に惑わされたみたいだな。

 さて、困ったな。どうしようか……。そう思っているとツバキはなおも口を開いた。


「盗んでいった男の人、怖かったよ~。大きな刀を背中に背負っていて、真っ黒な着物を着て……。言うこと聞かないと私を食うぞ、って脅してきちゃって……」


 ツバキは涙をぽろぽろと流しながら兵士に訴えた。すると、兵士はハッとし、懐から何かを取り出す。


「お嬢ちゃん! それってこんな奴だったか?」


 兵士は取り出したものをツバキに見せる。俺も顔を上げてみてみると、それは人相書きだった。黒い着物を着て、背中に大きな刀を背負っている。目は吊り上がり、口は大きく裂けてそこから牙が何本も生えている鬼の形相をした男の似顔絵。その下には、「死神斬鬼」と書かれていた。


 ……えぇ……俺、玄李ではこんなふうに見られているのか? この人相書きで果たして俺を捕まえられるかいささか不安になる。

 というか、目の前に俺が居て、捕まえられていない時点で駄目じゃねえか……。何とも複雑な思いでいると、ツバキは大きく頷いている。


「そうだよ! このおじさんだよ! すっごく怖かったんだから~!」

「嬢ちゃん、こいつどこに行ったか分かるか?」

「えっとねー、わかんないけど、こーなってところに行かないととか、ぶつぶつ言っていたような……」

「こーな……興那か! 嬢ちゃん! ありがとう! きっと捕まえてみせるからな! ……よし、てめえら!早速サクモ様に報告だ!」


 兵士はそう言って、馬を走らせ村の奥へと消えていった。


 俺はその様子を見て、額の汗を拭う。


「ふう……ツバキ、よくやったぞ」

「あの人相書き……似てない……」


 ツバキはそう言って、残念そうに俺を見た。俺は、似ていないのはある意味いいことだとツバキに伝える。出回っている人相書きが本人と違えば違うほど、俺が見つかる可能性は下がるからな。

 そして、ツバキの言葉を本気で鵜呑みにするのならば、連中は興那に俺が行ったと思い、その方角に兵を展開するだろう。まあ、この辺りの警戒も若干強くなるかも知れないから、油断はできないがな……。


 連中の会話の中で気になるものがあったな。確か、報告相手の名前、サクモって言ったか? ここの指揮官らしいが調べておく必要があるか……。


「さて、取りあえず奴らが向かった先に行ってみるか?」

「んー……私は……村の調査……してみる……」


 ツバキの言葉に分かったと頷き、俺はひとまず兵士たちが向かった場所を目指した。夕方にはまたこの辺りで合流すると約束をして、ツバキと分かれた。


 さて、俺は奴らの向かった先に歩いていくが、ツバキと別れた途端に急に不安になってきた。敵地でツバキを一人にしたことじゃない。俺が一人になったことに、だ。

 こういうの慣れてないんだよ……。もし、また声をかけられたりしたらうまくごまかせるかな? ……つい、うっかり斬らないように努力はしよう。


 にしてもまだ、それっぽいものは見えてこないな。未だ畑と民家がまばらに存在する程度だ。だが、人は居ない。妙だな……。

 そう思っていると、村の端に着いたみたいだ。そこは神社のようなものがあるらしく、長い階段が続いていた。ひとまずそれを登り、上にたどり着く。着いた場所は神社ではないようだ。ただただ広場になっているだけである。何もないがちょうど良いか、と思い、上から村の様子を見てみた。……お? 会わなかったってだけで村人たちは居るみたいだな。何人か村の中央の広場に集まっているようだ。……あ、集団の中心にツバキが居る。ちゃんとやってんな……。


 それにひきかえ、俺はというと、まだ大したものを入手していないな。さて、困ったと今度は違う方を見る。すると村の中でひときわ大きな屋敷が目に入った。蔵もあり、馬小屋のようなものも見える。あそこか……? と思い、俺は階段を下りて、その屋敷の方に向かった。

 どうやら、道を一本間違えていたらしい。一つため息をついて、道を歩いていく。すると、先ほどまでとは違って何人かの村人とすれ違うようになっていく。皆、ジロジロと俺の方を見ていたが、ツバキの言うように、旅をしていると説明すると、ほっとした様子で何人かは話しかけてくる。


「この村にはどうして?」

「ああ。近くでザンキとかいう奴にものを盗られてな。困っていたらこの村が見えたからひとまず避難してきたと言うわけだ」


 などと言って、村人たちに説明した。自分を引き合いにごまかすというのは何と言うか微妙な気持ちがしたが、村人たちはハッとした様子になり、そうか、と納得しているようだったので問題はない。


 さて、そうやっているうちに目的の大きな屋敷にたどり着いた。門の前には見張りが居る。こりゃ簡単には入れられそうにないな。さて、どうするか、と考えていると見張りの者達の声が聞こえる。


「おい、今日も納めた税が少なかったって何人か斬ったとよ」

「うわあ~、またかよ。サクモさんも見せしめだっていうが、このまま村人を斬っていって何になるってんだ?」

「さあな。だが、俺達に与えられたものをどうするか、それは俺達の勝手だろう」


 などという会話が聞こえてくる。おいおい、自国の民をそんなにないがしろにしてるとはな。玄李の国力が落ちているという話は聞くが、こういうことも要因の一つかもしれない。

 まあ、「夜」って部隊は、元はならず者たちの寄せ集めみたいなものだから、その辺は仕方ないか……。ん? 待てよ……ひょっとしたら……。


 ……まあ、いいや。今思いついたことはタカナリやタツイエとも話してみよう。


 さて、と……。見張りの奴らはまだ何か話しているようだが、これ以上有力な情報はなさそうだな。空を見ると日が傾き始めている。ひとまずツバキと約束した場所に戻ろう。


 ……辺りが薄暗くなってきた頃、ツバキと分かれた場所に着く。ツバキは既に俺を待っていた。

 ……が、ツバキの周りには人が群がっている。そいつらはジッと俺を疑うような目で見ていた。


「おい、ツバキ。なんだ? この状況……」


 俺がそう言うと、村人はさらに眉間に皺を寄せて俺を睨む。


「こいつが……本当か?」

「まだわからねえがな……」


 などと聞こえてくる。訳が分からねえと思っているとツバキは口を開く。


「……ついてきて……ザンキ」


 ツバキの言葉に慌てる。おいおい、そう簡単に俺の名前を言って大丈夫なのか? ……まあ、良いか。いざとなりゃこの場にいる奴ら全員……などと考えるのは辞めておこう。取りあえずツバキ、そして村人たちについていく。


 向かった先はこの村の集会場となっている場所だった。中にもすでに何人か村人が居て、ジッと俺の方を見ている。そいつらに促されるまま、俺は白髪の爺さんの前に座った。皆が座ったことを確認すると、ツバキが口を開く。


「……連れてきた」

「ふむ……感謝する」


 ツバキの言葉に爺さんは頷き、俺の方を見る。


「お主が噂の“死神斬鬼”で間違いないのか?」


 爺さんの言葉に俺は驚き、身構える。俺の正体がバレていると思い、刀を抜こうとした。だが、ツバキが俺を止めた。


「……待って……ザンキ……取りあえず……皆の話を」

「話? どういうことだよ……」


 ツバキの言葉に首を傾げた。ひとまず刀を置いて、皆の話を聞く。


 俺の正面に居る白髪の爺さんはこの村の村長だと言った。村長は重々しく、口を開く。


「ザンキ殿……我々を助けては貰えないだろうか……?」

「助ける? 何のことだ?」


 村長は俺の言葉を返すように、説明してくる。


 先日、俺達の進軍に備えて、「夜」の指揮官、サクモがこの村にやってきて、ここら一帯を統治し始めたという。しかし、サクモは冬越えのために備えていた食料などを村人から奪い、そのまま独占、更には各個人の家に毎週のようにやってきてはものを奪っていくようになったという。

 逆らったものはことごとく斬り、現在この村ではサクモによる恐怖統治が行われているという。ちなみに、今朝俺達が村人にすれ違わなかったのは、税の徴収に怯え民家の中に身を潜めていたからだと言った。……どおりで。

 そこで、村人たちは密かに反乱を画策しているのだが、相手は「夜」。いくら何でも自分たちだけでは対抗できない、と色々考えを巡らせていた時、ツバキに出会う。ツバキは話を聞くと、自らの正体を暴露、この村に俺が来ていることを伝え、この状況になったという。


「……なるほど。大体の話は分かった」


 俺は村長たちの言葉に頷く。今日俺が屋敷の前で聞いた話とほぼ同じだな。俺の考えも当たっていたみたいだ。もちろん、この村を襲撃するというのは変わらない。村長たちが頼み込まなくても襲撃はするつもりだ。そのことを伝えると、村人たちの表情は明るくなる。そんな村人たちに俺は口を開いた。


「もちろん、俺達の指揮官にはこのことは伝えておく。「夜」を倒したとしても村人たちを悪くしないようにってな」

「感謝する」


 俺の言葉に皆は深く頭を下げる。つまり、今回の戦は制圧というよりは解放に近いか?闘鬼神だった時の闘いに近いから、俺にとっては慣れたものだな……。


 さて、それじゃあ、今度はこちらからいろいろと聞き出していこうか。


「では、村長。いくつか質問するが、答えてくれるか?」

「うむ。何なりと……」


 俺の申し出に頷く村長にいくつか質問する。


 まず、サクモって奴について。村長によれば、非常にがめつく金に汚い奴ということらしい。投獄された理由も横領とか武器の密売などだったらしく、そこまでの武力はない代わりに、無駄に知力はあり、どちらかと言えば莫大な財力で雇った屈強な傭兵たちをうまく操ることは「夜」の中でも随一だという。


 ……なら、個人では大した事なさそうだな。集団戦ともなれば話は別そうだが。気には留めておこう。


 さて、もう一つの質問。実はこれが一番重要なことなんだが。


「この村みたく、集落を統治する者、あるいは国自体に反旗を翻そうとしている者は玄李全体でどのくらいだ?」


 俺は村長にそう尋ねた。国を墜とす以上は、そこに住まう民たちについても考えなければならない。玄李の全ての民が、自国を思うものばかりなら、俺達はそれも相手にしないといけないからな。ただ、この村の連中も、どんどん増えている安備に亡命してくる奴らも居るし、ここは確認しないといけないと思った。

 村長はしばらく考え込み、口を開いた。


「うむ……国全体となれば定かではないが、今はほとんどの国民が玄李に反感を抱いておるだろうな」


 大方予想はしていたが、ほとんどの民となると話は別だ。少々、信じられず追及を続ける。


「そんなにか?」

「ああ。もともと玄李の領主はそこまで統治の能力は高くない。王都付近ならまだしも、ここらのような辺境の集落では昔から揉め事が多かったからな。

 さらに今では戦争だからと言って強制徴兵や、滅鬼の解放により領民からの反感はかなり大きいじゃろうな」


 なるほど……ここの領主については知っていたが、やはりというか、そんな中での滅鬼を解放するというやり方はやはり駄目だよな。さらには「夜」の奴らの傍若無人な統治の所為でさらに拍車がかかったってところだな。

 戦争に勝つためにやったことなのに、戦争に勝った後のことまでは気が回らなかったらしい。メッキをどうするつもりだったのだろうか……。また幽閉するつもりだったのかな。

 ……いや、無理だろうな。俺がメッキなら反乱軍を倒した後は本国の領主を殺し、国を手に入れようと反旗を翻す。……馬鹿だ、ここの領主。


「……じゃあ、俺達がこの国を墜とすのは?」

「わし含め、この村の者達にとっては何の問題もない。むしろそうしてくれ、という考えだ。その後、わしらの生活が豊かになるのであれば、何の言うこともない」


 俺の問いに、村長はそう言って、ニヤッと笑った。それなら、良いや。もう、何も考えずに敵を斬っていけるな。

 なんとなく、戦争だからとか、俺の個人的な復讐といって考えないようにしていたが、俺達が侵略者として玄李の民の目に映るのは嫌だったからな。少しばかり安心した……。


 さて、そう言うことなら、と思い、筆を持って来させ、一枚の紙を取り出す。周りが不思議そうに見ている中、そこにいろいろと書き込み、最後に名前と指印をして、村長に渡しておく。


「これは?」

「証文……というか誓約書だな。俺の名において、この村に対し高額な税収などをしたものは厳罰の対象になるという書状だ。俺達がこの村を解放し、国を墜とすまではとっておけ。もしここに書いてあることをないがしろにしたら、“死神斬鬼”が来るっていう脅しになるからな……」


 俺は最後にそう言った。こういうことで自分の名前が役立つならいいや、と若干複雑な気持ちになるが、信用を得るためにはやむを得ない。さらには、万が一この村の奴らが俺達に反旗を翻さないように釘を刺す意味もあるのだがな……。


 俺が書いた書状を受け取ると、村長並びに、村の奴らは俺に頭を下げる。


「かたじけない、ザンキ殿……」


 村の奴らの言葉を聞き、ひとまず安心する。そんな心配はないようだな。すると、俺の元にツバキが寄って嬉しそうな顔で俺を見てきた。そんなツバキの頭を撫でてやった。


 その後、今日の所はもう暗くなっているということで、村長の家に泊めてもらい、少なくとも四日以内には軍を引き連れ、この村を襲うということだけ伝えて、俺達は村を後にした……。


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