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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
“死神斬鬼”を語る
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第94話 ムソウの過去―皆に祝われる―

 家が燃えていくのを見て、ひとしきり泣いた後、俺は馬を走らせ、村へと帰った。辺りは雪も積もりはじめ、本格的に暗くなる前に帰ろうと思っていたのだが、村へと帰ってきたころには辺りは薄暗くなっていた。


「う~……一気に寒くなってきたな……」

「あ、ザンキさん。おかえりなさい。お風呂沸いていますけど、入られますか?」


 俺が凍えながら帰ると、夕飯の準備をしていた、ナツメがそう言ったので、俺は先に風呂に入ることにした。その前に今によると、囲炉裏に火を入れて皆がくつろいでいた。


「お~、ザンキ、帰って来たか。寒くなかったか?」

「いや、急に寒くなってきたからな……。先に風呂、入らせてもらうよ」


 俺はタカナリ達にそう言って、風呂場へと向かう。いつものように、ツバキがついてこようとしたので、首根っこを掴んで、追い出しておいた。


 風呂場へとつき、着物を脱いでいく。やはり、少し焦げ臭いか……。あと、至る所にすすもついているみたいだ。よく、落とさねえとな……。


 そう思って、風呂に入る前に、よく体を拭いて、中へと入った。


「あ~、気持ちいいなあ~♨」


 体の芯まで冷えていたので、若干熱いと感じたが、すぐ慣れる。やはり冬場の風呂はいつにもまして気持ちがいい。ふと、外を見ると、まだ雪が降っている。う~ん……出発は少し待った方が良いのか? 後で、タカナリに相談してみよう。


 あ、それから、俺達が向かうのは山だったな。ちょっと装備を考えた方が良いのかも知れない。最悪、トウガの皮を剥いで……って、ないな……。アキラが大変なことになりそうだ。


 さて、風呂から出た後は皆と晩飯だ。また、バカ騒ぎするんだろうな、と思って、今へと向かうと、予想以上の展開になった。


「よ~う! ザンキ! 誕生日おめでとう!」

「……あ?」


 居間へと向かうとハルマサが開口一番そう言って、俺は首を傾げる。誕生日? 俺の?なんで、俺が知らないことをこいつは知ってるんだ?と思った。


 まあ、座れよ、と言うハルマサの言葉に従い、俺は取りあえず座る。おお、今日の飯は豪華だな。安備ではあまり食うこともない魚のお造りや、鳥の丸焼きなどもあるみたいだな。だが、いまいちわからねえ。誕生日ってなんだよ。


 困惑していると、タカナリが笑いながら口を開く。


「どうじゃ? 驚いたかの?」

「いや……状況を教えてくれ……」


 俺がそう言うと、タカナリは不思議そうな顔をして俺を見てくる。


「なんじゃ? ザンキ殿は知らなかったのか?」

「何のことだ?」

「今日は、エンヤがお前と出会った日じゃ。あ奴は、ザンキ殿の誕生日が分からなかったから会った日にしといた、と言っていたが……」


 いや、初耳だ。あいつ、人の誕生日を勝手に作りやがって。闘鬼神に居た時はそういうの全く感じなかったぞ……。捨て子だった俺は、基本的に年が変わったら、一つ歳をとるという考え方だったからな。誕生日って言われても……。


 そう思っていると、ハルマサが、酒瓶を俺に向けて、ニカっと笑う。


「まあ、タカナリがそう言ってんだからよ! 今日がお前の誕生日だ! しっかり祝わせてもらうぜ!」


 そう言って、俺の盃に酒を注ごうとした。仕方ない……。祝われてやるか。俺はそう思い、ハルマサから酒瓶を奪い取る。そして、口をつけてごくごくと飲み始めた。


「お、おい……ザンキ……?」


 皆は口をポカンと開けてその様子を見ている。


「……ぷはぁ~~~」


 空になった酒瓶をドンっと置いて、タカナリを見る。


「俺を祝うにしちゃ酒が足りねえな……樽ごと持ってこい!」


 俺がそう言うと、皆は固まるが、横から、パチパチと拍手が聞こえる。


「ザンキ……すごい……それから……おめでと」


 拍手の主はツバキだった。ツバキはジッと俺を見て、そう言う。すると、黙って固まっていた皆も手を叩いて、笑い出した。


「はっはっはっは! すげえな、ザンキ! おいっ! 酒樽持って来いって!」

「無茶を言うな、ハルマサ。老体をもう少しいたわれ」

「よ~し! じゃあ、ハルマサ、お前が取って来い!」


 ハルマサは、えぇ~、と言いながら、しぶしぶ蔵の方に向かった。


「おめでとうございます、ザンキ様」

「おう、トウヤ、ありがとう!」

「ザンキさん、おめでとうございます。今日は腕によりをかけてこれらを作らせていただきましたよ」

「ナツメ、すまないな。魚も捌けるとは驚いたぞ」

「ありがとうございます。魚の方は、トウヤさんが取り寄せました」

「そうか……トウヤ、手間をかけたな」

「いえいえ、お喜び頂けて幸いです」

「ザンキ! おめでとう!」

「おお、アキラ、ありがとう」

「へへ! ……で、何歳になったんだ?」

「今年で37だな……」

「へ~! 若い見た目してんな!」


 などと言いながら、皆は俺の誕生日を祝ってくれた。俺は嬉しくなり、飯を食い始める。おお、魚の刺身というのは久しぶりに食ったが、やはり、美味いものだな。いつも川魚を焼いたものや干物ばかりだったから、こういうのはやはり嬉しいものだ。

 鳥の丸焼きにも、箸をつけてみる。これも美味い。何の鳥かと聞いたら、キジとのことだった。鶏よりも歯ごたえがあるが、俺はどちらかというとこういう野性味があった方が好きだからな。ナツメには感謝だ。


 ふと、タカナリを見ると、微笑まし気にこちらを見ている。


「どうした? タカナリ」

「いやな……旧知の者を祝えるということはこの時世、やはりいいものじゃ、と思ってな……」


 タカナリはそう言って、ニコリと笑った。確かにな。タカナリくらいの年齢になっていると、昔からの知り合いというものはもう、少ないだろう。タカナリも俺を祝えてやはり、嬉しいみたいだ。


 と、ここで、ハルマサが酒樽を抱えて戻ってきた。


「はあ……はあ……。ほら、ご所望の品をお持ちしたぞ!」


 ハルマサはそう言って樽を割り、ひしゃくで酒を掬った。俺はそれを受け取り、自分の盃と、もう一つの盃に入れる。そして、それをタカナリに渡した。不思議そうな顔をするタカナリに俺は、


「俺もだ。長年、付き合いがある者に祝われて幸せだ。……今日が俺とエンヤが出会った日なら、どっか草葉の陰から俺らのことを見ているだろう。あいつがうらやましがるくらい飲んでやろうぜ」


 と言った。タカナリは目を見開き、フッと笑う。


「そうじゃな……。ザンキ殿、おめでとう」

「ああ」


 俺とタカナリは乾杯し、酒をグイっと呑んだ。


 それからは、皆で飯を食いながら語り合った。俺とタカナリが闘鬼神のことを話すと、皆、エンヤに対しては怖がり、エイシンの苦労話などをすると、笑っていた。他の仲間たちについても話してやり、皆は口々に、


「ザンキさんのお仲間って大変だったんですね」


 と、言っていた。良かったな。お前らのことを心配する人間が出来たぞ……。


 そして、話題はタカナリとエンヤの関係に入っていくと、ナツメが、実はタカナリはエンヤのことが好きだったのでは? と聞くと、タカナリは慌てたように、違う! と言っていた。エイシンほどの洞察力は俺にはまだないが、クロだな、と思った。

 しかし、エンヤの好みが、エンヤより強く、優しく賢い女だって俺が言うと、タカナリはズンッと肩を落とし、


「そんなの居るわけがない……」


 と、ぼそっと呟いた。すると、隣でツバキが、居るとしたらサヤ、と言うと、ますますタカナリは肩を落とす。


「サヤ殿が……まさか……」


 とか、聞こえてくる。ああ、そういやこのおっさん、サヤをかなり可愛がっていたな。エンヤが依頼の報酬を受け取りに行くとき、サヤも一緒に行くと、何故か報酬が増えていたり、綺麗な着物を持っていたり……。俺達が何故だ? と聞くと、サヤも不思議そうな顔をして、


「領主様に貰ったんだけど……」


 と、言っていた。すると、エンヤがニヤニヤしながら、


「タカナリはな、サヤにぞっこんなんだよ。あいつは結婚してなくて、子供とか居ねえからな。しかし、助かるぜ。サヤが一緒に居れば、報酬をまけるようなことも減ったし、おまけでいろいろ貰えるからな!」


 と、嬉しそうに言っていた。貰ったものは無論、全てサヤのものになっていたのだが、俺はサヤが喜ぶものを渡しているタカナリに、ガキの頃はサヤが、そいつに嫁げばいいのに、とか思っていたが、しばらく経つと、段々と絶対負けるものか!と思うようになっていった。


 そのことを落ち込んでいるタカナリに話すと、タカナリは、エンヤめ……と、少し嬉しそうな顔をして、また、飯を食い始めた。俺達はその様子を見て笑う。……やっぱり、好きだったんだな……。


 さらに、宴の席は続く。俺が今日、家を燃やしたことを伝えると、こともあろうに酔っぱらったハルマサがそれを、祝いの花火と言いやがった。すこし、イラっとしたが、ハルマサがそう言って笑っていると、皆は一斉にハルマサを殴る。

 あのトウヤでさえも、ハルマサを思いっきり叩いていた。しばらくすると、ハルマサは気絶し、その場で倒れていた。


「もう! ハルマサさんには困ったものですね!」

「トウヤ……怒るとこ……初めて……見た」

「そりゃ、怒りますよ! あんなこと言うなんて!」

「トウヤ……落ち着いて……怖い」


 ツバキは俺の影に隠れて、トウヤに怯えている。あ、すみません、というトウヤを見ながら、俺はツバキの頭を撫でてやった。とりあえず、俺は気にしていない、と皆に伝え、気絶しているハルマサを抱えて、縁側に寝かせた。

 う~ん……やはりまだ雪が降っているな。風邪でも引いたら大変だな。俺は風が家に入らないようにしっかり戸を閉めた。これで、大丈夫だなと思い、また、飯の前に座る。


「やっぱり、まだ寒いな……」

「う、うむ……そうじゃ……な……」


 俺の問いにタカナリがたどたどしく返事した。ん? なんだ? 何があったのかな。皆は外の方を見ている。どこかに隙間があるのか、風がヒューヒューと音を立てて吹いているのが分かる。ああ、外の天気が心配なんだな……。


「このままの天候だと、少し、出発が遅くなるか?」

「大……丈夫じゃと……思うが……」


 タカナリはまだ、外の天気が気になるようだ。俺にそう言って、外の様子をうかがっている。


 俺が、皆に心配すんな、と言って、取りあえず、皆を安心させ、宴会を再開させた。しかし、いまだに外の様子をちらちらとうかがっている者も居る。せっかく俺を祝う宴なんだ。皆、もう少し楽しもうぜ……?


 さて、飯を食っていると、ツバキが俺の袖を引っ張った。見ると、ツバキは桐で出来た箱を抱えていた。


「ん? なんだ、それ」

「誕生日……祝いの……品」


 ツバキはそう言って、箱を俺に渡す。俺は目を見開く。そんなもんまで用意していたとはな。少し、驚いたが、ありがたく、俺はそれを受け取った。


「ありがとう、ツバキ。……開けて良いか?」


 俺がそう聞くと、ツバキはコクっと頷く。そして、箱を開けた。中には腕輪が入っていた。その腕輪には、ボロボロの衣を纏った、鬼のガイコツのようなものが大きな刀を構えているような絵が彫られていた。ガイコツの周りにはぐるっと龍が円を描いている。


 ……俺が唖然としていると、ツバキがそわそわしながら聞いてくる。


「ザンキ……描いたら……こうなった……嬉しい?」


 ツバキは何か期待するような目で俺を見ている。……正直なところ複雑だ。俺を描いたらこうなったってどういうことだよ。

 ああ、前にトウガに噛まれたときにツバキ、何かしていたが、ひょっとしてこれか? 絵は微妙だが、ものをくれること自体は嬉しいからな。返答に困っていると、ツバキはさらに口を開く。


「ザンキに……渡すの……嬉しくて……皆の分も……作った」


 ……え? と思い、皆に視線を向ける。すると、皆袖を少し上げてニコッと笑っていた。そこには銀色に輝く腕輪がはめられている。……ああ、皆は気に入って付けているんだ。俺はツバキの頭を撫でて、


「ありがとう。大切にするよ」


 と言った。ツバキは嬉しそうにニコッと笑って、つけて欲しい、と言った。俺は言われた通りにはめてみる。大きさはぴったりだった。こうやってつけてみるとやはり嬉しいな……。


「……ツバキが作ってくれた腕輪、これがこの部隊の仲間の絆であることの証明だな」


 タカナリは嬉しそうに呟く。俺も、そうだな、と思い頷いた。仲間の証か……。そう考えると、いいな、これ。ただ、部隊の紋章が俺っていうのは流石に可笑しいな。


 そう思って笑っていると、次にトウヤが大きな箱を持って俺の前に出してくる。


「僕たちからはこれを……。頭領とナツメさんが是非、と。……ちなみにこれは僕が作りました」


 トウヤの言葉を聞き、箱を開ける。そこに入っていたのは胴当て、にしては少し小さいが、腹部を護るものだった。


「ザンキさんはこれからも無茶ばかりしそうですからね、私達は防具を、と思いました」

「あまり大きいと動きづらくなると思ってな。そのくらいの大きさにしてみたが、どうじゃ?」


 ナツメとタカナリはそう言って、笑っている。ナツメは俺の体が心配みたいだ。確かに俺の体は傷だらけだからな。医者としては心配になるみたいだな。二人の言葉を聞いて、おもむろに胴当てをつけてみる。おお、軽いな。

 そして、俺が動けるように色々なところで形を変えている。流石、トウヤだな。これなら今までと同じように戦えそうだ……。


「ありがとう、皆。これつけて、次からの闘いもこなしてみせるからな」


 俺は皆に素直に感謝する。皆は嬉しそうに頷いた。


「俺からはこれだ! トウガの毛を使った!」


 そう言って、アキラは俺に何か毛束をくれる。アキラによるとそれは付け毛だという。ツバキの時と一緒でいまいち嬉しいものというものではない。何せ、あの狼の毛を使っているらしいからな。

 だが、ここまできて受け取らないのも悪いと思い、受け取った付け毛を頭につけてみる。

 それを見て、皆は良く似合っている、と言ってくれた。ならいいや、と思い、アキラの頭を撫でた。


「ありがとう、アキラ。返り血浴びねえように気をつけねえとな」

「わっ! ザンキに撫でられるの嬉しいけど、言ってることはすごく怖いぞ!」


 アキラはそう言って、俺の手を振りほどく。ツバキが横で、勿体ない、とか呟くのが聞こえ、俺はさらに笑った。


 誕生日会はその後も続いていった。俺がツバキ以外の者を撫でるのを見た、ナツメが撫でてください、と言ったので撫でてやると、何故か顔を真っ赤にし、もういいです、と呟いたり、俺がカンナに渡すはずだった、小太刀を持って色々と説明をしていると、トウヤの目が輝きだしたり、外で吠えているトウガに怒鳴ったら、アキラが涙目で、やめてくれよ~、と言ったり、タカナリと酒を飲み明かしたり、ツバキの要望にすべて応えたり、雪の降る外に置き去りにしたハルマサが戻ってきて、俺にギャンギャン言ってきたのを死神の鬼迫で黙らせると、皆が大笑いしたりと、宴会は盛り上がっていった。


 その後、布団に入り寝る準備をする。今日は、泣いて、笑った日だったな、と、振り返っていた。こんな日は、俺が闘鬼神を抜けた時以来久しぶりだな、と思い、眠りにつく。


 さあ、今度から玄李の国との闘いが待っている。また一つ、歳をくったんだ。気を引き締めて行くか!


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