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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
“死神斬鬼”を語る
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第85話 ムソウの過去―ツバキの過去を知る―

「ザンキ……頭領……大丈夫?」


 俺とタカナリを心配してか、ずっと無言だったことを気にしてか、ツバキがそう言った。


「ああ、大丈夫だ、ツバキ」

「わざわざ、すまないな」


 俺とタカナリは涙を拭う。今更ながら、大の男二人が男泣きだ。少々恥ずかしくなり、二人で顔を見合わせて笑った。


「ん……大丈夫なら……良い」


 ツバキは俺とタカナリにそう言って、頷く。


 タカナリから聞かされたエンヤの話は、俺の想像以上に面白かった。タカナリとエンヤの関係……よく考えれば、今まで気になっていたけど、何故か聞けなかったものだったからな。

だが、聞いてよかった。やはり親のことを知りたいと思うのは子として当たり前だもんな。


「……さて、では私はそろそろお暇しようかの……」


 タカナリはそう言って、よっこらせと立ち上がる。しばらく見ない間に、本当に爺さんになってしまったな。とても、エンヤと闘った男とは思えねえ。……どこかで嘘ついてんじゃねえだろうか。


 俺がそう思ってるうちにタカナリは部屋を出ていってしまった。部屋の中にはツバキと俺しかいない……。


 ツバキは俺のことをジッと見ている。……何だろうな。こいつのことは本当にわからない。

いや、主に隠密や、忍をしているのだからそこは良いのだけども。妙にきまずくなるから嫌だな……。

こいつが俺のことを信頼してくれているのはわかる。俺が斬られたとき誰よりも泣いていたのはこいつだからな……。ツバキはなおも俺を見ている。俺はたまらなくなり、ツバキの方を向いた。


「……なんだ、どうした?」

「ザンキのこと……見てる」

「いや、だからどうしてだ?」

「ザンキのこと……護りたい」


思ったよりも、予想以上の答えが返ってきた。俺を護りたい? 冗談だろ。俺、こいつより遥かに年上だぞ……。


「護りたいって……お前はまだ子供だろう。俺がお前を護ってやるから、そこは気にするなって」


 俺がそう言うと、ツバキは少し不満げになり、俯いた。何をそんなに落ち込むことがあるのだろうと思っていると、ツバキが口を開く。


「約束……したから……」

「約束?」


 ツバキの言葉を不思議に思い、そう返すと、ツバキは顔を上げ、俺の目をまっすぐに見た。


「私……約束した……小さいころ……サヤと……」

「……何だって?」


 俺は思わずツバキに聞き返す。突然出た名前に驚いた。


「お前、今なんて言った?」

「小さいころ……サヤと……約束した……ザンキを護るって……」


 俺は目を見開いた。ツバキはずっと俺のことを見ている。サヤと約束? 何のことだ?そもそもこいつとサヤの接点が分からない。どういうことだと聞く俺にツバキはサヤとの関係を語り出す。


 ◇◇◇


 ツバキはタカナリの言っていたように、幼い頃ひどい経験をして、肉体の成長は止まり、今の様に感情を出せない様になってしまっているという。そのひどい経験というのが、夜盗に家を襲われ、目の前で家族を殺されたことらしい。

だが、ツバキは殺されず、一人攫われたという。見た目が可愛らしいからな。その辺の価値もあると思われたのだろう。その後、ツバキを連れ去った盗賊により、見世物小屋に売られたという。


 しかし、売られた先の見世物小屋の奴らというのが出来た奴らで、ツバキの境遇を知ると、悲しみ、哀れみ、ツバキを悪いようにはしなかったという。というのも、小屋で働く者達のほとんどが、その盗賊により家族を喪ったり、ツバキと同じく攫われたりしていたからだ。

そして、ツバキは他の者と共に、何かをするわけでもなく、他の者の手伝いや雑用をして過ごしていたのだという。


 だが、ツバキは自分でも何かできることはないかと考え、密かに仲間たちの稽古を覗いていた。その結果が今のツバキの武器術や、火薬の扱いとかにつながっていったという。


 仲間たちの武芸を学んで、上達していくうちに、ツバキも見世物小屋で、衆人環視の前で、武芸を披露するようになっていったという。簡単な綱渡りから、馬術、クナイや鎖分銅などの武器術などだ。小さな女の子が、男の大人顔負けの芸をするということで、ツバキたちの小屋は盛況だったという。


 そして、ツバキたちの小屋がちょうど俺の住んでいた家の近くで営業をしていた時、ツバキはサヤに会ったという。


 ……ここまで、話を聞いても、そんな話聞いたことないなあ。まあ、俺は一日のほとんどは仕事でいろんなところに行っていたからな。正直、民衆の間で流行っているものには疎かったな。

その辺には敏感のサヤが言ってくれないとわからないことの方が多かった。……アイツ、俺に内緒にしていたのか? ひょっとして……まあいい。話を進めよう。


 さて、いつものように、ツバキが客の前で芸をすると、ひと際大きな声で歓声を上げている者が居た。


「キャ~っ! すごい! かっこいい~~~!!!」


 ツバキがそいつの方を見ると、黒髪で目鼻も整っている綺麗な女性だったという。だが、言動の所為で大人なのか、子供なのかよくわからない感じだっという。……うん、間違いなくサヤだな。言動でわかる……。

 サヤはツバキが何かするたびに、お~! とかキャ~! と大きな声で言っていたので、正直、五月蠅かったらしい。

 そして、綱渡りの最中も、他の者達が黙って見守る中、サヤだけ、手を胸の前で組み、頑張れ、頑張れと呟いているのが聞こえてくる。正直なところ、静かにして欲しいものだったが、ツバキは無視しようと綱渡りを再開しようとするが、


「あっ……」


 ツバキは足を踏み外し、落ちていく。周りの者が叫んだり、仲間たちが慌てているのが見えた。

だが、その中の一人が、素早くツバキの落ちる所に駆けていき、ツバキを受け止めた。その衝撃で、そいつはドスンとしりもちをつく


「あ痛たたたた……あ! だいじょうぶ!?」


 ツバキが顔を上げると、目の前にはサヤの心配する顔があったという。ツバキは目を見開き、サヤにコクっと頷いた。サヤはそれを見てニコッと笑う。


「良かったあああ~~~……もう、小さい女の子が、あんなあぶないことしたらいけませんよ!」


 サヤは子供を諭すような口調でそう言って、ツバキの頭を撫でる。急に恥ずかしくなったツバキは、サヤの手を払い小屋の中へと走っていった。


 その後、サヤに礼を言う小屋の仲間たちや、謝罪するサヤの声が聞こえて来た。物陰に隠れてその様子を見ていると、周囲の観客たちもサヤのことを心配している。


「サヤちゃんこそ大丈夫かい?」

「あれくらい、平気だよ~。よくカンナが木から落ちてくるのを受け止めることもあるからね~」

「ああ、なるほどな……ってあれ? 今日は一人かい?」

「うん。カンナはエイシンさんと稽古中だよ!」

「あのおっかない旦那さんは?」

「おっかなくなんかないよ~。ザンキく……主人は仕事だよ~。早く帰ってご飯の用意しなくちゃ!」

「……相変わらず熱々だねえ~」

「よく働く旦那さんも居ることだし、金の心配もなさそうだな」

「そうだね、じゃあ今日からサヤちゃんにうちの魚まけるのはやめとこうかね」

「うちの野菜も普通に売ろうかな~?」

「ああっ! 皆のいじわる~~~!!!」


 サヤと周囲の人間はそんなことを話しながら楽しそうに騒いでいたという。ツバキは何となく、あの人あれで結婚もしていて子供も居るんだ……意外だ、と思ったという。

そして、しばらくすると、サヤや観客たちは小屋から離れていき、誰も居なくなって少し寂しくなったツバキは、今日の失敗のこともあり、落ち込んでいた。

すると、仲間たちから少し外の空気を吸って来いと言われて、ツバキは小屋を出て、街を流れる川のそばに座って、川を泳ぐ魚を見ていた。


 すると、背後から声をかけられる。


「お、お前はあの見世物小屋で働いているガキだな?」


 ツバキは驚き振り返ると、そこには人相の悪い男が三人ほどいた。


「へっへっへ……一人でこんなところでなにしてるのかなあ?」


 男の一人が腰に下げていた小刀を抜き、ツバキに詰め寄る。


「まあ、何をしているかとかどうでもいい。俺達も幸運だな。こんな金の成る木が一人でここに居るとは俺達も運がいい」


 もう一人もそう言いながら、ツバキに詰め寄ってくる。


「ッ……」


 攫われる! と思い、武器を手に取ろうとしたツバキだったが、あいにくその時は何も持っていなかった。


 そして、男の一人がツバキの腕をガシッと掴み、ツバキを連れ去ろうとする。ツバキはその場でじたばたとして、男の腕を振り払おうとするが、やはり子供と大人の力の差はどうしようもできなかった。


「じたばたするんじゃねえ! 来い!!!」


 男はそう言って、グイっとツバキを引っ張る。ああ、もうダメだとツバキが思ったその時、


「こら~~~!!! あなた達、何やってるの!?」


 と、大声で叫ぶ女の声が聞こえた。男たちとツバキは声のした方を見る。そこには男たちをキッと睨むサヤの姿があった。


「なんだ、てめえは?」

「なんだ、じゃないでしょ? その子をどうするつもりなの!?」

「どうだっていいだろ!!! ……それよりも、だ」


 二人の男が、サヤに近づきジロジロとサヤを舐めまわすように見ていた。


「むぅ……なに?」

「こいつはかなりの上玉だな……よし、お前も俺達について来い!」


 そう言って、一人の男がサヤの腕を掴む。


 だが、サヤは上手いことそれを抜け出し、掴んできた腕を男の背中に回す。


「痛てててて!!!」

「いきなり、何すんの!」


 サヤはそう言って、目の前の男を解放した。


「てめえ、このアマ舐めやがって!」

「この場で黙らせてやる!」


 男に人はそう言って小刀をサヤに向けて振り上げた。危ない! と思ったツバキの目の前で、信じられないことが起こる。


 サヤは男二人の攻撃を身を屈めて躱すと、男たちを投げ飛ばし、川へと落とした。


「うわっ! た、たすけてくれ~!!!」


 男二人はがぼがぼと溺れながら、下流の方へと流れていく。サヤは、ふう~と息を吐いて、茫然とその光景を見ていたツバキと、ツバキの腕を掴んでいる男の方を見た。


「さ! その子を解放しなさい!」


 サヤは男を指差してそう言った。だが、男はサヤを睨み返し、


「て、てめえ! なんなんだ!!!」


 と、震える声で言った。ツバキの腕を掴んでいる手も汗でびっしょりだ。ツバキは気持ち悪いと思いながらも、好機だと思っていた。すると、サヤが口を開いた。


「私? ただの主婦だけど……」

「ふざけんじゃねえ!!! そんなに強い主婦が居るか!?」

「ま、そんなことどうでも良いからさ、さっさとその子を解放しなさいよ……でないと……」


 サヤはそう言いながら、手にしていた籠の中をゴソゴソとする。そして、手にしたのは一個のジャガイモだった。


「は~、ようやく安くしてもらったのに……もったいないなあ~。ザンキ君、私の肉じゃが好きなのに……」


 サヤは何やらぶつぶつと独り言を言っている。そんなサヤを見て、男が震えながら笑い出す。


「ハ、ハハハハ! なんだそれは!? それで何する気――」

「え~い!!!」


 サヤは手にしていたジャガイモを大きく振りかぶって、笑っている男の顔に投げつけた。


 ジャガイモは見事に男の鼻っ柱に直撃し、ギャッと言って、男の力が一瞬抜けた。ツバキはその隙に、汗で滑りやすくなっていた男の手を振りほどき、サヤの元へと駆けていく。


「あ、大丈夫? ……って私、貴女に大丈夫? しか聞いてないね~」

「……」


 サヤは笑いながらそう言うが、ツバキはサヤの顔を見て、コクっと頷いた。サヤは、よしっと言って、ツバキの頭を撫でて、ぎゅっと抱き締める。


 すると、ここで我に返った男が小刀を振り上げ、サヤたちに突っ込んでくる。


「このアマ~!!! 舐めやがって! ぶっ殺してやる~!!!」


 男は激しく怒っているみたいだ。サヤはツバキに向けていた笑顔から、真面目な顔になり、男の前に立つ。


「に……逃げて!」


 ツバキはサヤを心配して、そう言うが、サヤはツバキの方をチラッとみて、ニコッと笑った。


「このアマ~~~!!!」


 サヤに男の凶刃が迫る。だが、サヤは男の腕をいなし、懐に潜り込むと、男を一本背負いで投げ飛ばした。


「エイシンさん直伝だよ!」


 男は地面に叩きつけられ、白目をむいて倒れている。ツバキは倒れている男と、着物を直しながら、今日の晩御飯どうしよう、とか言っているサヤをただただ茫然と見ていた。


 ……しばらくすると、騒ぎを聞きつけたこの街の兵士がやってきた。最初、そいつらは目の前の光景に驚くも、サヤの姿を見ると、妙に納得した顔になって、サヤと何か話していたらしい。

そして、男が捕縛された後、その兵士たちも居なくなり、その場にはサヤとツバキだけとなった。


「……」


 ツバキはサヤをずっと見ていた。どこか間抜けっぽいのに、あんなに強いなんてと一種の憧れのような気持ちを抱いていたという。


 ふと、サヤがその視線にチラッと気づいたみたいだ。その後、川辺に座って手にしていた籠をごそごそし始めた。

そして、その中から、桃を二つ取り出した。サヤは微笑みながらツバキに手招きする。何だろうと思いツバキはサヤの横に座った。


「はい、これあげる!」


 サヤはそう言って、手にしていた二つのうち一つの桃をツバキに差し出した。


「も……もらえない……」


 ツバキはしどろもどろになりながら桃を拒否するが、サヤはツバキの手を取って、ポンとその桃をツバキの手に置いた。


「遠慮しないの! ……さっきの綱渡りのお詫び!」


 そう言って、サヤは桃を食べ始める。美味しいよ~と言うサヤに観念して、ツバキも桃を食べ始めた。


「ん……甘い……」


 ツバキはそう言って嬉しそうに桃を食べ始める。その様子をサヤはにこやかに微笑みながら見ていた。


 ……しばらく、ツバキとサヤは二人でずっとおしゃべりをしていたという。ツバキが行ったことのある場所の話や、最近出来るようになった技の話をするとサヤはその度に手を叩いて楽しそうに聞いていたという。

サヤも、カンナやエイシン、俺とのことを話していたという。ツバキも俺のことは噂で知っていたらしく、本当にサヤの夫が俺だと知ったときはすごく驚いていたらしい。


 そうやって二人は夕方近くまで話していた。ふと、サヤが口を開く。


「でもさあ、ツバキちゃんはどうして強くなりたいって思っているの?」


 サヤがそう尋ねるとツバキはしばらく黙り込んでしまう。強くなること……なんでだろう。見世物小屋で働きたいから? でも他にやりようがあるし……。

私を見世物小屋に売った奴らへの復讐? どこの誰かもわからないのに? ……武芸を学ぶのは嫌いじゃなかった。好きだからやっていたことだ。何のためにとか関係ない。好きだからやっていることだ。サヤにそう伝えると、サヤは、そっか~……と言って、空を見上げた。

そして、しばらく考え込むと。サヤはツバキの方を向く。


「でも……単に強くなるだけだと虚しくない?」

「……?」


 サヤの言葉が一瞬理解できなかったツバキは不思議そうにサヤを見る。サヤは自分の言いたいことが伝わっていないと思い、コホンと咳払いしてツバキに言った。


「このまま強くなっても何か目的とかないと強くなったって自分で達成感とか実感がわかないと思うんだ」

「強くなる……目的?」

「そう。例えば……ザンキ君は私やカンナを護りたいって言ってた。私達を護りたいからザンキ君は強くなっていったんだと思う。

……ただ、強くなるんじゃなくて、強くなって自分が何をしたいのか考えたらもっと強くなると思うよ」


 ツバキはサヤの言葉を聞いて、少し考え込む。護りたい人か……でも、自分にはもう家族も居ないしな……。


 あ、そうだと思い、ツバキはサヤを見る。サヤは首を傾げてツバキを見た。


「な、何?」

「……サヤを」


 ボソッとツバキは口を開く。サヤはよく聞き取れなかったのか、もう一度ツバキに聞いてみた。すると、ツバキはサヤをまっすぐ見る。


「強くなる……目的……サヤを……護る」


 ツバキがそう言うと、サヤは何やら慌て始める。


「わ、私を!? いや、でも……なあ~」

「サヤ……初めて……友達……だから……」


 慌てるサヤにツバキはそう言うと、サヤはハッとし、う~んと考える。


「……あのね、私はもうザンキ君に守ってもらってるから……もう……充分なの……」

「でも……」


 それでも自分のことを護りたいというツバキにサヤは困ったな~と呟く。しかし、手をポンっと叩いて、ツバキに言った。


「あ、じゃあさ! ツバキちゃんはザンキ君を護って!」


 ツバキはサヤの言葉を聞いて目を見開く。あの“死神斬鬼”を護る? 誰かが護る必要なんてないだろうと思ったからだ。


「ザンキ強い……護る必要……ない……私は――」

「でもね、ツバキちゃん」


 ツバキの言葉を遮って、サヤが口を開いた。そして、サヤは自分の思いを語り始める。


「時々ね、ザンキ君、すごい大けがをして帰ってくることがあるの。肩を矢で射られたり、背中を斬られたり……私の心配をよそにね。

でもザンキ君は大したことないって言って、いつも笑ってるんだ。私、本当に心配なの。いつかザンキ君が死んじゃうんじゃないかって……

だからね、ザンキ君を護ってくれる人がいたらなあ、って思ってたの! 私を護ってくれてるザンキ君を護るってことは私を護るってことになるからね、ツバキちゃんの願いも叶えられるよ!」


 サヤは最後にニッコリと笑ってそう言った。いや、その理屈はおかしいだろうと思っていたが、サヤの満面の笑みを見て固まってしまう。


「でも……私じゃ……力不足……ザンキを護るなんて……」

「だから、これからもっともっと強くなるんだよ! いつかザンキ君があなたのことを頼りに思うってくらいにさ!」


 ツバキは考える。強くなって、あの斬鬼の隣で一緒に闘う自分の姿を一瞬想像する。ツバキはハッとして、空を見上げた。

そして、思った。それも悪くない。目的も無しに強くなるよりはその方が面白そうだと。その結果、サヤを護れるのならその方が良いかなと……。


「わかった……私強くなる……ザンキを護れるくらい……サヤを護れるように……」


 ツバキはサヤをまっすぐ見てそう言った。サヤはうん! と頷いて小指を出した。


「じゃあ、約束ね!」

「……うん」


 そして、ツバキはサヤと約束を結ぶ。いつか強くなって、ザンキと共に闘えるようになることを、その時決意した……。


 ◇◇◇


「……その後も……何度か……サヤと会っていた……いつも……いろいろ……お話しして……ご飯も一緒に食べて……楽しかった」


 ツバキは俺を見ながらサヤとの関係について語っている。俺の知らない間にそんなことがあったとは全く知らなかったな。にしても、サヤ……男三人を投げ飛ばすくらいになっていたとはな。

エイシンめ、俺が居ない間にサヤにいろいろと教えているというのは何度か聞いたことがあったが、護身術まで教えてくれていたとはな……。なんとなく、エイシンに感謝した。


「サヤは時々……エイシンさんと……カンナを……連れてくるようになった」

「……は?」


 ぽつりと言ったツバキの言葉に俺は驚く。まさか、サヤだけじゃなくてカンナとも会ったことあるなんてな。まあ、同い年くらいだからな。カンナも嬉しかったと思うが……。


「カンナは……私が芸をすると……サヤと同じように……楽しんでいた……私はそれが……嬉しかった」


 ツバキはカンナのことを思い出すようにそう語った。やるなあ、カンナ。意外とあいつモテていたりしたのかな……。

しかし、俺は家族のことなんでこんなに知らないんだろうと、考えていると、それを見たツバキがボソッと言った。


「サヤ……言ってた……お小遣いの……無駄遣い……ザンキにバレると……説教」


 ……ああ、なるほど。俺に怒られると思って、皆に口止めしたうえで、自分も黙っていたのか。別にそのくらい良いよ……というか、俺も誘って欲しかったぞ、サヤ。俺はふと、サヤのことがおかしくなって笑ってしまった。


 だが、ツバキは少し落ち込んだように、また語り始める。


「でも……あの日……カンナの誕生日から……皆私に……会いに来なくなった……また家族で来るからねって……サヤは言っていたのに……けど後で知った……皆死んだって……ザンキも……サヤも……カンナも……私が護りたかったもの……護れなかったって……私はまた……強くなる目的を見失ってた」


 ツバキの言葉に俺は目を見開きながら、さらにツバキの話を聞く。


「それから何年か……タカナリが私を……反乱軍に入れてくれた……私の力を……役立ててくれないかって……私は強くなった……実感がただ欲しくて……反乱軍に入った……そんな折に……ザンキが生きているって……知った……

そして……タカナリが……ザンキを……連れてきた時……改めて決心した……今度こそ……ザンキを護るって……私の友達の……家族を護るって」


 ツバキはまっすぐと俺を見てそう言った。俺はツバキをジッと眺めている。この子は……まだ小さいのにそんなことを思いながら生きて来たのか……。なのに俺はときたら、自分だけが辛いと感じ、この子の優しさを今までないがしろにしてきたんだな……。


 俺はツバキの頭に手を置いた。


「ツバキ……ありがとう。俺と、俺の家族を大事に思ってくれて。……そして、お前の思いも分かった。……改めて聞くが……お前は俺のこと護りたいんだな?」


 俺がそう言うと、ツバキはコクっと頷く。


「……安心して良いんだな?」

「ザンキが私達を護る……私がザンキを護る……誰も死なない……だから安心して……」


 俺の問いかけにツバキは笑ってそう答えた。俺は頷き、ツバキを自分の方に寄せて抱きしめる。


「……わかった。……お前のこと、頼りにしてる」


 俺がそう言うと、ツバキも俺を抱きしめた。俺の家族のことを長い間思ってくれた礼と、一人ぼっちにさせた詫びだ。少し傷が痛むが、まあいい。妻以外の他の女を抱き締めるなんてな。……だが、ツバキなら、サヤは許してくれるだろう、カンナもエイシンも納得してくれるだろう。俺はそう思いながら、ツバキを抱きしめていた。


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