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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
“死神斬鬼”を語る
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第83話 ムソウの過去―改めて自己紹介をする―

 さて、取りあえず、見舞いの品を受け取った俺は皆を帰らせた。村長もそれについていく。


「元気になったら、また顔を見せてくれ」


 という村長の言葉に俺が頷くと、他の皆は喜んで、絶対ですよ~! とか言っている。……ああ、今度こそ、約束は守る。


 そして、部屋の中には俺とタカナリ達しか居なくなった。すると、ここでハルマサが目を覚ます。ハルマサはぼーっと俺達を見た後、目を見開き、ツバキにギャーギャー言っている。

ツバキは耳を抑えて、俺の陰に隠れた。俺は取りあえず、ハルマサをなだめて、座らせる。


 皆が俺の顔を見る中、俺も皆の方に向き直った。


「……さて、ハルマサとは先ほど話し、彼の許しは得た」


 俺はそう切り出し、皆を見た。皆は何のことかわからないという表情だ。ハルマサだけがニカっと笑っている。


 そして、


「今まで迷惑をかけた……。

だが、これからもお前たちに迷惑をかけていこうと思う。……まあ、なんと言うか……よろしく頼む!」


 俺はそう言って、皆に頭を下げながら言った。皆は笑って、口々によろしくと言ってくれた。そして、タカナリが俺の肩をポンっと叩いた。


「私からも改めて……ザンキ殿、よろしく頼む」


 そう言って、拳を突き出した。何のことかわからないという目で見ていると、タカナリは笑う。


「エンヤが教えてくれた。何か誓いや、約束をするときはその者と拳を合わせるのだと……昔、奴が闘鬼神を立上げ、私の依頼をこなす傭兵になると言ったときにもやったのだ……」


 ……未だにエンヤとタカナリの関係がよくわからない。だが、このやり方は確かに俺も嫌いじゃない。エンヤらしくていいじゃないかと思い、


「なるほどな……任せろ、タカナリ」


 俺はタカナリの拳に己の拳を突き合わせた。タカナリは目を閉じて微笑む。


「無間を手にし、闘う様……黒衣に身を包み、長い髪に返り血を浴びる様、今のお主を見ていると、あ奴を思い出してしまうのお」

「アイツは俺の……“親”……だからな」


 タカナリは俺の言葉を聞いて頷き、エンヤを懐かしんでいる。俺もアイツを懐かしんだ。すると、ポンっとハルマサが手を叩く。


「さて! それじゃ、改めて、皆それぞれ自己紹介だ!」


 ハルマサがそう言うと、皆はハルマサを呆れたように見つめる。


「えー……もういいだろ?」


 アキラは頭を掻きながら、ハルマサにそう言った。他の皆もアキラに同意なのか、頷いた。ハルマサはがっくりと項垂れている。だが、俺は皆に言った。


「……いや、是非頼む」


 俺がそう言うと、皆はこちらを振り向く。俺は続けて、


「俺は今まで、お前たちのことを知ろうとしなかった。……俺は死に場所を求めていたからな。そんなの……どうでも良いと思っていた。……だが、今は違う。仲間となったお前たちのこと、もっと知りたい。……良ければ……教えてくれないか?」


 俺はそう言って、頭を下げる。皆は目を見開き、俺のことを見ている。ふと、俺の袖を引っ張る感覚があった。見ると、それはツバキだった。ツバキは俺の目をジッと見ている。


「ツバキ……斥候……侵入……暗殺……陽動……できる……いろんな武器術……得意」


 ツバキは俺にそう言った。自分なりに自己紹介をしたみたいだ。しかし、何故片言なのだろうか。俺が斬られたときのああいうのは、感情が高ぶった時にしかできないのかもしれないな。まあ、言いたいことは伝わるし、困ることはないか……。

 前から多芸だとは思っていたが、本当に多芸だな。この部隊の肝はやはり、ツバキの動きに重きを置いているようだ。

 ただ、戦場においては、やはりまだ、前に出て戦えるほどの力は持っていない。そこは、俺達が頑張らないといけないな。

 もう、こないだみたいなことは起こさせない。俺はツバキの頭を撫でた。


「ああ、頼りにしてるぞ、ツバキ。……これからも頼む」


 ツバキは俺の手を持ち、コクっと頷いた。


 それを見た、アキラが手を上げる。


「ハイッ! 次は、俺だな! 俺はアキラ。動物の扱いは任せろ! 馬、犬はもちろん、最近は鷹や牛、後は猿とかも操れるようになってきた。今は虫や蛇も出来るんじゃないかって練習してるが……まあ、よろしく!」


 アキラはそう言って、ニカっと笑う。乗り気じゃなかった割にはノリノリだな。しかも、コイツも、結構多芸だな。これなら、奇襲とかも出来そうだな。俺も人間相手には強いが、毒虫や毒蛇が襲ってくるのはさすがにまいるもんな。あまり、アキラが戦場に出ることは無いが、そういうのも操れるようになって、そんな奴らと戦えるのは何となく面白そうだと思い、頷いた。


「おう、アキラ、よろしく。操れるようになったら、活躍の場は広がりそうだな。期待してるぞ」


 俺がそう言うと、アキラは、おうっ! と言って、またニカっと笑った。う~ん……普通の奴だったら、初見でアキラのことを女だと分かる奴は居ないだろうな。威勢が良い分、トウヤよりも男らしく感じる……。エンヤも小さいときはこんなだったのだろうかと、可笑しな気持ちになった。


 次にトウヤが俺の方に向き直った。


「僕は、先ほども説明したように、この村……いえ国一番の腕を持っていた鍛冶職人、トウキの息子、トウヤと申します。皆さんの扱う武具から、日常で使う道具の修理、修復はお任せください。また、何か必要な物資があればお申しつけください。きっちり用意します」


 トウヤは、そう言って俺に頭を下げた。トウヤの親父……そんなにすげえ奴だったのか。ああ、本当にこいつにはカンナの友達になって欲しかったな……。俺は頭を上げるトウヤに、


「ああ、これからは、出来れば無間の手入れも頼む。……父親に負けねえようにな」


 と言った。誰でも息子には自分を越えて欲しいという気持ちはあるはずだ。……俺の言葉に、トウヤは、はい!と頷いた。


「……では」


 次に声を上げたのはナツメだ。俺はナツメの方を見る。


「私はナツメ、この中では一番長く頭領の元におります。医術や薬の知識に長け、皆さんのけがを治したりするのが主な仕事です。

……また、諜報活動も偶にしますが……ちなみに、前は遊郭にて働かされておりましたのでこんな格好をしております……お嫌いですか?」


 ナツメはニコッと笑う。俺は若干寒気を感じた。微妙な顔をしてタカナリを見ると、タカナリも微妙な顔をして俺を見ている。薬……遊郭……こいつの諜報活動、何となく察したぞ……。


「あ、ああ……別に嫌いじゃない。俺もこんななりだ、人の格好なんていちいち気にしてない……。

あんたの医術、いつも助けてもらってる。出来るだけ、怪我はもうしないし、させない。だが、万一の時は頼むな」


 ナツメはハイと言って頷いた。美人なのは美人だが、仲間じゃなかったらあまり近づきたくない部類の人間だ。俺は、多分、この女のことは苦手だな……。


 そして、俺は最後にハルマサを見た。ハルマサは頷いて、俺を見る。


「俺は、ハルマサ。昔、あんたら闘鬼神に助けられた村に居た。あんたらに憧れて強くなり、自身がついた後、反乱軍に参加した。

そして、タカナリに出会い、この部隊を率いてる。……そうだな、何と言うか、今は憧れていた奴と共に闘うことが出来て嬉しく思っている。

今度は俺がアンタを助けたいと思う。よろしくな!」


 ハルマサはそう言って、俺に手を出した。俺はフッと笑い、その手を掴む。


「ああ、よろしくな。……だが、作戦は、お前は立てるなよ。お前は強いが、そっちのほうは弱いみたいだからな」


 俺がそう言うと、皆、笑った。ハルマサも、このやろ~とか言いながら笑っている。

 ハルマサは確かに頭は悪い。戦場でも、俺が居る所為か、そこまで目立った活躍はしていない。それでも、強いことは変わりないがな。

 ただ、ハルマサの強さ、良い所は、先ほど、俺に見せてくれた器の大きさと、あの時、俺を止めるために見せた、気概の強さだ。そして、場を盛り上げようとする心。

 その心意気があるおかげで、俺も戻れたし、この先もコイツについて行きたい、コイツと一緒に行きたいと思うようになっている。

 その部分だけは、大したものだと笑っていた。


「さて、これで皆の紹介は終わったか……ありがとう、これで俺も皆のことを――」

「……ザンキ」


 話が一段落し、俺がまとめていると、ツバキが俺を呼んだ。


「ん? なんだ、ツバキ」

「ザンキ……自己紹介……してない……頭領も……してない」


 ツバキは俺とタカナリを指さして、不満そうにした。タカナリは慌てて口を開く。


「わ、私もするのか!?必要か!?」

「あと、俺もだ。俺も……した方が良いのか?」


 タカナリの言葉に続けて、俺も聞いてみた。すると、皆は笑顔で俺達の方を見ている。


「当然だろ、ザンキもタカナリも俺達の仲間だし……

大体、タカナリに関しては元領主ってこと以外はほとんど知らないからな。正直、ザンキを連れてくるまでは、それすらも疑ってた」


 ハルマサはそう言って、腕を組む。タカナリはグググ……と黙った。まあ、見てくれがあれだからな。それは玄李の者達を欺くためと、本人は言っていたが、どうやら、味方にまでそう思われていたらしい。正直、俺も初見は誰だと思っていたからな。

俺は、ため息をつき、タカナリと顔を見合わせる。


「……仕方ないか」

「……ああ、そうじゃな」


 そして、俺達は頷きあって皆の方を見た。


「では、まず私からじゃ。私は今までずっと言っているように、元安備の国領主、タカナリじゃ。七年前の事件から逃れ、地下に潜みながらゆっくりと力を蓄え、二年前にこの反乱軍を結成した。

……目的は玄李から安備を取り戻すこと。それから……これはもう達成してしまったが、ザンキ殿を探し出すことじゃった。

……私は多くの者に贖罪をしたい。皆、協力してくれ……!」


 タカナリはそう言って、頭を下げる。皆はそれを見て、頷いた。俺はタカナリの肩を叩き、


「任せろ。俺が、俺達が必ず、あんたをまた、“名君”と皆から崇められるようにしてやる!」


 と、言った。タカナリは笑って、ありがとうと俺に言った。

 昔も今も、コイツには世話になりっぱなしだ。それに、心配もかけ続けた。タカナリは俺達に贖罪したいと言っていたが、俺はタカナリから受けた恩に報わなければならない。昔、タカナリに手を貸していた、アイツの為にも……な。


「さて、最後に俺だな」


 俺がそう言うと、皆は俺の顔を見た。


「……俺は……って名前ないんだよな。もともと捨て子だったし、育ての親はアイツだし。周りから“ガキ”だの“斬鬼”だのと呼ばれていたから、俺ももういいやと思ってザンキと名乗ってる。ただまあ、正直言うと、そう名乗ったことは一度もないんだがな」


 皆は手を叩いて、笑った。タカナリはそうなのか!? という目で俺を見ている。初めて会ったときに、エンヤがそう言ってなかったっけ? ……まあいい。


「さて、小さなころから傭兵稼業、初陣は……確か十歳のころだったか、その日から毎日のように闘っていた。その途上、サヤという女に出会い、十八のころに結婚、その後、カンナが生まれた。

だが、タカナリ……いや、皆と同様、七年前のあの日、全てを喪い、俺はまた、ただの人斬りに戻っていった……。

そんな中で、お前たちに会った。そして、俺を救ってくれた。だから、今度こそ、俺は護りたいものを必ず護り通したい。勝手な、俺のわがままなんだが……改めてこれからもよろしく頼む! “死神斬鬼”と呼ばれる俺の力、存分に奮ってやる!!!」


 俺がそう言うと、皆頷いた。こう名乗るのも、初めてなんだよな……。俺は笑い、改めてハルマサの部隊に正式に加わったことを実感した。


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