第60話―マシロを護る為の闘いが始まる―
「――それでねー、その後ミリアンの家に行って、マリーさんたちと合流した後、残っていた敵を倒して、今、ここに居るの」
ミサキは話を終える。俺はその話をなるほどと、聞いていた。リンスの言っていたように、既に、屋敷に居た奴らは、ミサキが倒したようだ。殺してはいないらしい。体を痺れさせる魔法と、眠りの魔法をかけて、縄で縛り、放置しているそうだ。意外と、容赦ないな……。コイツ等に関しては、後で尋問などするために生かしているらしい。
まあ、その方が良いな。他の奴らは生きていないし、俺もこれからミリアンを滅ぼすわけだし、事の顛末を話す奴を確保しておいた方が今後の為か。
しかし、ミサキ達も作戦通りに動いてくれたようで助かった。ワイツ卿の家族も皆、無事みたいだし、後は一人娘とやらを救い、ミリアンを倒せば、今回は一件落着だ。
そんなことを思っていると、ワイツ卿がリンネから降りて、俺に近づいくる。そして、再び、頭を下げてきた。
「またしても迷惑をかけてしまったな……すまない」
「……いや、それはいい。俺はどうやら、そういう星のもとに生まれているようだからな」
俺に謝るワイツ卿にそう笑って返した。面倒ごとに巻き込まれるというのは、前の世界からも続いている。もう、慣れたものだ。
……この男は娘を取り返すためにここまで来たんだ。我が子を奪われる気持ち……それは俺にもよくわかる。そして、失う気持ち。それは耐えられないほどの怒りと悲しみと苦しさだ。
……ワイツ卿にはそんな思いはさせない。させたくない。俺はワイツ卿の肩に手を置いた。
「安心してくれ。アンタの娘はこの俺が死んでも必ず取り返す。
だから、アンタは死ぬな! ……娘にちゃんと、おかえりって言ってやるんだ。……
そして、奥さんに、二人でただいまって言ってやるんだ。……良いな?」
ワイツ卿は俺をまっすぐ見て、再度頭を下げた。
「ありがとう。ムソウ殿……」
「任せろ……」
ワイツ卿はそう言って、俺達の中心に入る。それを俺達は輪になって囲んだ。これで、敵を気にせず、作戦会議ができるな……。
それを上から見ていた、ミリアンが俺達に叫んだ。
「ハハハハハ! それで、ワイツを守っているつもりか!? こちらの兵力を見ろ! これではどうすることもできないよなあ!」
そう言って、手を上げるミリアン。すると、敵が一斉に攻めてきた。なるべく手短にしておこう。
「ミサキ、ワイツ卿にかけた魔法はどういうものだ?」
「ここに居る人たちの攻撃なら余裕で耐えられるよ~。ロウガンさんだと危ないけどね……」
「かたじけない、ミサキ様」
「なんで、安心してるの! ロウガンさんだと危ないって言ってるんだけど……」
「では、私が支部長を遠くに誘い込み、しばらく時間を稼ぎます。よろしいですか?」
「ああ、リンス。頼む」
「では、他の者達ですが……私は先ほどのハクビさんでしたっけ? 彼女の相手をいたします」
「大丈夫なのか? ツバキ」
「お任せください。ムソウ様。私の速さがすごいことはご存じでしょう?」
「フッ、わかった。任せるよ」
「私とリュウガンは、ワイツ卿を守りつつ、冒険者たちやスケルトン……あのガイコツどもの相手をするが、良いな? リュウガン」
「かしこまりました、師団長。あの胸の赤いところを狙うんでしたっけ?」
「ああ、そうだ。なんだかんだ、頼りにしてるぞ」
「了解です! ツバキも、気を付けるんだぞ!」
「フフッ、わかってますよ、リュウガン君。師団長の足を引っ張らないように」
「よし、では騎士の皆はそのように頼む」
「ムソウさん。私は妹達の相手をいたします。と言っても、動きを封じることくらいしかできそうにないですが……」
「いや、それでいい。……皆も倒す必要はないからな。いざとなれば、先ほどの奥の手を使う」
「りょ~か~い! それでね、ムソウさん。私はウィズ君とレイカちゃんの相手をするよ。弟子だからね!」
「そうか。では、そちらは師匠殿に任せるとするかな」
「うん!」
「……リンネ、お前は俺と一緒に来い。敵を減らしつつ、ミリアンに近づく。ただ、普通の人間は殺すなよ。わかったな?」
「クワン!」
「よし! では皆行くぞ!」
俺達はそんなやり取りをして、それぞれ動き始める。
俺はリンネに跨り、軍勢に突っ込んで行く。すると、やはり軍勢の中から、我先にとロウガンとハクビの二人が飛び出してきた。だが……
「ロウガンさん! いつもの稽古の時間ですよ!」
そう言いながら、俺の後ろからリンスが飛び出て、ロウガンを、気を纏った蹴りで吹っ飛ばした。……おい、すげえな。結構遠くまで吹っ飛んでいったぞ。流石、試験官殿だ……。
「ガガウッ!」
と、ふいに、ハクビの吠える声が聞こえる。げ! 狂人化しているじゃねえか! ハクビの爪が俺達に迫る……。
ガキンッ!
そこに、ツバキが割って入り、抜刀術で、ハクビの攻撃を止めた。……やはり速いな。ハクビの攻撃を防ぐなんて……。
「貴女の相手は私が勤めますよ」
そう言って、ツバキは、そのまま、空中で体を捻らせ、ハクビの頭に回し蹴りを叩き込み、吹っ飛ばす。
すげえ……意外と、ツバキの体術が馬鹿にできないくらい鮮やかだ。流石、サネマサの所の門下生か……。あれなら、狂人化したハクビでも相手にできそうだ。
「二人とも! 気をつけろよ!」
俺がそう言うと、二人は軽く、俺に手を振って、それぞれ闘い始める。
さらに先を急ぐ俺達。すると、横から、大きな火の塊と、風の塊のようなものがいくつも飛んできた。
「リンネ!」
「クワン!」
リンネは走る速さを上げ、軽やかな身のこなしで、それを躱していく。すると、俺達とその魔法の間に突然ミサキが現れて、その攻撃を防いだ。
どうやら、攻撃を仕掛けてきたのはウィズと、レイカらしい。
「はいは~い、お二人さん♪ “魔法帝”の修行、べりーまっくすはーどもーどだよ! ついてこれるかな?」
ミサキが手をかざすと、その前に、赤、青、緑、黄の魔法陣が現れた。そして、そこからそれぞれ、火炎弾、水流、風刃、岩の塊を連射している。
「四属大連撃~!」
ミサキの攻撃を、ウィズとレイカは、魔法でいなしたり、必死に躱したりしている。外れた攻撃は、ガイコツどもや、他の者達に当たったり、辺りを吹っ飛ばしていた
「おい、ミサキ! 無茶すんなよ!」
「無茶じゃないよ~! ちゃんと手加減してるんだからあ~!」
手加減? あれで?……って、よく見ると、攻撃が当たった奴らも、死んではいないみたいだ。だが、起き上がろうとしても、なかなか起き上がれないようだ。
まあ、生きているのなら、いいか。
「よ~し! ミサキ、その調子で頼むぞ!」
「はいは~い! リンネちゃんも頑張ってね~!」
「クワン!」
ミサキの言葉にリンネが大きく返事をした。そして、また走り出そうとしたが、今度は地面から木の蔓が生えてきて、俺達に襲ってくる。
だが、俺達に迫ってきた蔓は突如、俺の後方から現れた別の蔓によって、阻まれた。後ろを振り返ってみると、マリーが手をついている。再度、前方を見ると、そこにはリリーとエリーの二人が居た。
「二人とも! いい加減にしなさい! お姉ちゃん、怒ったからね!」
マリーは二人よりも多くの蔓を出して応戦する。すげえな。姉というだけで、ここまで違うものなのか……?
そして、三人は周囲を巻き込みながら、蔓による戦いを始める。やはり、マリーの方が若干分があるようだ。押している……。
「マリーさん! 心配はないみたいだな!?」
「ええ! ムソウさん! 私だけ姉妹で唯一、長老から魔法を教わっていたので!」
ほう……マリーの魔法の師匠はあの長老か。どうりで……。じゃあ、精霊人の中でも、指折りの実力になるのではないか? 他を知らないから何とも言えないが、マシロのギルドは、受付から強い奴らしい。酒場で泣いていたのが嘘のようだ。あれならば、何の心配もないな……。
俺は取りあえず二人をマリーに任せて、走っていく。
ふむ、それぞれの会敵は終わったな。コウカン達の方も大丈夫そうだ。なにせ、大体の敵は俺を狙ってきているからな。ワイツ卿の方に行くのは意外と少ない。
「さて、と。暴れるか? ……リンネ!」
「クワァァァァン!!!」
俺の問いかけにリンネは吠えて応えた。そうして、俺はリンネから飛び上がり、軍勢の中に突っこんで敵を斬ったり殴ったりしていく。
リンネも足や、牙、尻尾などを巧みに使い、ガイコツや呪われた者達を吹っ飛ばしている。
……ここまでの乱戦は久しぶりだ……というか、俺がここに来てからは初めてだな。
大きな軍勢を前に少人数で挑む集団戦。真に仲間を信じなければ勝てない戦いだ。皆は俺を信じて、ここまで来てくれた。ならば、俺も皆を信じて、ここはひとつ、派手に行こう。
俺は、全身に気を纏わせて周りに居る、ガイコツや呪われた冒険者、騎士たちに攻撃している。
どういう仕組みか知らないが、ガイコツは結構続々と出てくる。
しかし、どいつも一撃でやられるようなものだ。こちらは問題ない。だが、やはり問題なのは、どうやっても立ち上がってくる、呪われた者達だ。
強くなった呪いの影響で、まず、気絶をしない。これが面倒だ。死神の鬼迫を当てても、倒れず、こちらに向かってくる。それを一人一人、とりあえず吹っ飛ばしていくというのが俺の作業だ。
リンネは、ガイコツには爪や牙で攻撃したり、狐火を出して、燃やしたりしている。人間には幻術を使って、動きを封じたりしていた。一度に多くの人間を行動不能にしている……あいつ、俺より活躍してるな。だったら……
「リンネ! ここは任せた! そのまま、ガイコツどもを蹴散らしつつ、呪われた奴らの動きを封じていてくれ!」
「クワン!」
とりあえず、この場はリンネに任せて、俺は軍勢を押しのけつつ、櫓の元へと向かう。
櫓に近づいていくと、ミリアンが手を上げた。すると、近くで闘っていたウィズとレイカが俺に向けて、魔法を撃とうとしてくる。
「こら~! ししょーを無視するなあ~!」
すると、ミサキが地面に手を置いて、魔法を唱える。
「罰だよ! 二人とも! 奥義・しんりんかっせいか~!」
ミサキの気合と共に、地面から次々と木が生えてくる。精霊人の魔法みたいだ。だが、マリーのそれと比べると、圧倒的に多い。それに、見たことが無いような木だ。木はそのまま、ウィズとレイカに巻き付いていき、動きを封じる。
すると、木の枝からなにか光る粉のようなものが出てきた。その粉はウィズとレイカに降り注いでいく。
そして、粉を浴びた二人はガクッと全身の力を抜いて、動かなくなった。
「ふう……。いつもなら色んな追加効果を敵に与える技なんだけどね~。今回はかな~り薄めたミサキちゃん特製の薬で動きを封じるだけにとどめておくよ~」
ミサキは魔法回復薬を飲みながら、二人に近づいていく。そして、二人の頬に手を触れて、優しく微笑んだ。
「ウィズ君、レイカちゃん……帰ったら……ご飯、用意しておくね……」
そして、俺の方に近づいてくる。
「大丈夫なのか?」
「うん……で、私はこれからどうしよっか?」
ミサキに言われて、周囲を見る。リンネは俺の言うとおりにして、今度は広範囲にまとめて幻術を使っているようだ。多くの者達を一か所に集めている。
少し離れたところで闘っている、リンスとツバキも大丈夫なようだ。呪われたロウガンと、ハクビは、攻撃が大振りになっている。狂人化ハクビはもともとだがな。だから、ツバキもリンスも、簡単に攻撃をいなしたり、防いだりできているようだ。
ワイツ卿を守りながら闘っているコウカンとリュウガンも特に問題ないようだ。ガイコツの軍勢を倒しつつ、呪われた者達を縄で縛り、動きを封じていく。流石、騎士だ。捕縛術は相当なものだな。あそこが終われば、リンネと合流するように伝えると、二人は頷いた。
「……よし。ならば、ミサキも俺について来い。ミリアンの使ってくる魔法に対抗するにはやはり、“魔法帝”の力が必要だ」
「りょ~か~い!」
俺の言葉に、ミサキは頷き、ついてくる。
そして、櫓の元まで行くと、俺とミサキでその近くの敵を一掃する。迫りくるガイコツは俺が相手をして、ミサキははなれた所に居るガイコツに、火炎弾や、水の塊を放っていた。
「ムソウさん!刀を!」
「おう!!!」
俺はミサキの前に刀を出す。ミサキは何かを唱えながら、手を無間にかざした。
「……うん! 良いよ~!」
ミサキはその作業を終えて、俺にそう言った。俺は刀を円状に振った。
「衝風波!」
無間から、俺達を中心にして円状に突風が吹く。その風により、周りの敵は吹き飛んでいった。
「天岩戸!」
ミサキは櫓の周囲を俺達も入れて、結界を張った。……これで、邪魔は入らない。ミリアンも逃げられない。
「ミリアン! これでてめえも終わりだ! もう邪魔は入らねえ! 覚悟しな!」
「フン! この結界の中でもスケルトンは増やせる。魔物たちも召喚できる! まだ負けてなどおらん! ……それにな……まだ私にはこいつが居る!」
動じることなくミリアンは、隣に置いてある何かの布をとった。そこにあったのは鉄格子の檻のようなものだった。よく見ると、中に小さな影が見える……。
「このガキは、ワイツの一人娘、シロンだ! ……いいか? 少しでも私に近づいてみろ!このガキをズタズタに引き裂いてやる!」
ミリアンは、手にした錫杖から黒い刃のようなものを生み出し、檻に向けた。
「シ、シロン!」
ワイツ卿は檻を見ながら、目を見開き、立ちすくんでいた。
ふむ……どうやら、人質がワイツ卿の娘と言うのは本当らしい……が……。
「……ねえ、ムソウさん、シロンちゃんって確か……」
ミサキが俺に真剣な目つきになって、口を開く。ミサキも一度会っているからな……。
「……ああ。一昨日、俺と一緒に白露の花を取りに行った少女だな。
まさか、あの時の「父上」というのが、ワイツ卿だったとはな……」
そう、檻の中に居る人質というのは、俺に白露の花の採集を依頼してきた、あのシロンだった。
……何か、ここ数日の出来事が全てつながっている気がして、若干呆れにも似た感情が俺に芽生えてくる……。
だが、それと同時に、ミリアンに対する怒りも更に上がっていく感覚があった。ここで、冷静さを失くしては駄目だと思い、深呼吸する。
「何をぼさっとしておる! そうしている間にも、スケルトンや魔物は増えていくぞ!」
ミリアンは笑いながら、魔力の塊を地面に向けて撃ち出していく。地面に魔法陣が描かれ、そこからガイコツや、ミニデーモン、デビルスライムなどの小型の魔物が召喚されていく。
俺はそれを見ながら、どうするか考えていた。こいつらを蹴散らして、ミリアンに近づくことは可能だ。
しかし、その間にシロンがやられる可能性もある。どうしたものかと、頭を捻っていると……
「ねえ、ムソウさん」
「ん? なんだ? ミサキ……」
「私も怒ってきた。魔物のお掃除は任せて」
ミサキも俺と同じく怒っているらしい。白露の花を乾燥させただけという関りではあるものの、ミサキにとっても、今の状況は許せないらしい。
「……それは良いが、今の俺はミリアンの所に素早く行って、シロンを助け出し、ミリアンを倒すことは難しいぞ。もう少し若けりゃな……むしろ、お前が魔法でミリアンを狙って欲しいものだが……」
「ごめん……それだと、シロンちゃんを巻き込んじゃうかも……」
ああ、そうか。ミリアンがシロンのすぐそばに居る以上、それは難しいか。どうしたものかと頭を掻く。
ミサキも、黙って、何か考え込んでいた。しかし、ふと、何か思いついたように、手をポンと叩いて、ニコッと笑った。
「そうだ! ムソウさんが若かったら良いんだよ!」
そう言ってミサキは俺に手をかざす。
「お、おい、何をする気だ?」
「良いから、良いから♪」
ミサキは困惑する俺を無視して、魔法を唱え始めた。
「奥義! まきもどし~!」
ミサキの手のひらから、光が出てきて、俺を包んでいく。俺は思わず、目を閉じた……。
……しばらくすると、
「よしっ! もう良いよ! ムソウさ……ムソウ君!」
という、やけに明るいミサキの声が聞こえる。さっきまでの怒りは……って、ん? ムソウ「君」……? 何なんだ? 一体……。
「おい、ミサキ何を――」
俺はミサキに何をしたのか聞こうと、声を出した。だが、違和感に気付く。あれ?俺ってこんな声だったっけ?
そして、なんか体が軽いような、そんな気がする。……いや、軽い! 絶対軽い! その場で何度か跳躍したり、腕を回したりしたが、明らかに先ほどまで体が軽くなっていることに気付く。身体強化の魔法でも使ったのかと俺が慌てていると、ミサキは懐から何かを取り出した。
「はい! これ見て! ムソウ君って、意外とカッコ良かったんだね~♪」
ミサキが取り出したものを見てみた。それは鏡のようだ。俺はそれを覗き込む……。
「ああ!? 何だ、これ!」
そこに映っていたのは、懐かしいとすら感じる、俺の若い時の顔だった。20年ほど前か?サヤと結婚したときくらいが確かにこんなだった気がする……。
ひげは無くなり、髪も若干短くなっている。顔のあちこちに出来ていたしわもなくなり、そこには……自分で言うのもなんだが、精悍な男のりりしい顔があった。……いや、眉間に結構深めのしわがついているな……。こんなに不愛想だったのか? 俺。
とにもかくにも、俺は若返っているみたいだった。
「……え、なんだ? 何をしたんだ?」
俺は慌てて、ミサキに尋ねた。ミサキは更にニコッと笑う。
「私が編み出した、究極の魔法の一つ、時間魔法だよ!」
あ……これがか……。ミサキによると、俺の時間を戻し、若返りの効果を発現させたという。普段は劣化したモノなどに使うそうだが、ある時、自分の顔にしわを見つけて、老けないはずなのに~と驚いたミサキは、ひょっとしてと思い、使ってみたら若返って、しわも消えたという。
……その後、しわの原因は居眠りしてて、ついただけのものと判明したんだが……。
出来た過程はともかく、流石“魔法帝”、やはりすごいな……。
素直に、ミサキが凄いと感じた俺はミサキの頭を撫でてやった。
「すごいな、ミサキ。今なら先ほどよりもよく動けそうだ」
「むう……同年代の男の子に頭を撫でられるとちょっと複雑……まいっか! あ、ついでに……身体強化(極)、身体能力を強めておいたよ~」
ミサキは新たに魔法をつけてくれた。おお……軽いな、体が。それに力も漲ってくる。ひとごろしも発動させているから、今の俺ならなんだってできそうな、そんな感じすらしてくる。
「な、なんだ!? 貴様! その姿は!?」
ふと、ミリアンの慌てる声が聞こえてきた。俺は振り返り、ミリアンに向き直る。
「お前に、その姿は? とか言われたくねえよ。待ってろ……すぐ行くから……よっ!」
俺は駆け出した。うむ、やはり速いな。周りの光景があっという間に後ろへ過ぎていく……。久しぶりの感覚が気持ちいい。
俺は、ぼーっと立っているのも同然の魔物たちを斬りつけながら櫓へと近づき、上まで登っていった。下ではミサキが魔法を使い、魔物たちを一掃している。
そして、俺は檻とミリアンの間に立った。
「……よお」
「な!? い、いつの間に!」
驚愕するミリアンに刀を振るい、錫杖を弾き、櫓から蹴り落とす。
「グッ……」
ミリアンはガシャッと音を立てて、地面に叩きつけられた。俺は檻の方を振り返り、刀で檻を斬った。
そして、シロンに近づく。……息はあるみたいだな。
俺はシロンを抱えて、魔法で魔物たちを倒している、ミサキに結界を解くように言った。ミサキは頷き、「天岩戸」を解いた。
そして、シロンを抱えたまま跳躍し、ワイツ卿の所まで跳んだ。
俺が降り立つと、ワイツ卿とコウカン、リュウガンの三人は俺の姿を見て驚いている。
「む!? お前は……ムソウ殿か!? その姿は……一体?」
「それは後だ。……ワイツ卿、シロンは取り戻した。まだ、気を失っているみたいだがな……」
「おぉ……おお! ありがとう! ムソウ殿! ……本当にありがとう……」
シロンをワイツ卿に渡すと、ワイツ卿は涙を流しながら、俺に頭を下げた。
そして、周囲を見る。ミサキは再生したミリアンと魔法の撃ち合いをしているみたいだ。あいつは大丈夫そうだが、流石に皆、疲れてきているのか、マリーもリンスもツバキも苦しそうな表情を浮かべている。
リンネも時々、口を大きく開けて息を乱しながら、力を溜めながら闘っている。
皆の中で、特にツバキの消耗が大きいみたいだ。動きが先ほどに比べて格段に悪い。無理もないか。相手は狂人化したハクビだ。……これは急いだほうが良いな。
「ムソウ殿。人質がこちらに居る以上は、既に本気を出しても良いかと……」
「……ああ、分かった……」
俺はコウカンに頷き、無間を構えて目を閉じる……。
そして……
―おにごろし発動―
無間が輝きだし、光が俺を包んでいく……。




