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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
最強傭兵異世界に落とされる
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第5話―ギルドで登録する―

 マシロは城壁のようなものが町をぐるっと囲んでいる町だった。


 壁は二重にあり、壁と壁の間には川が流れていた。攻め込むには苦労しそうだなとなんとなく思った。関所らしきものはあるが、街に入るのは意外とあっさりしていた。

 

 というのもギルドに登録していた商人であるグレンが身分証明のようなものを見せ、俺を連れだと言ったらすんなりと入れてくれた。ほんとにグレンには感謝だ。


「さて、すぐにギルドへ行くか?あんたのワイバーンの素材もそこで査定すれば金になるかもしれないし」

「ああ、本当ならこの鱗で鎧でもできればと思ったが、一文無しだもんな……」

「まあ、金が手に入るのはまた今度かもしれないが、先に行った方が後々の為にもなるからな。そうするか……」


 む……金はまた今度か……いよいよどうすれば良いのか分からないな。まあ、良いや。最悪、さっきの検問の詰め所にでも泊まらせてもらおう。騎士だもんな。街の治安を護る騎士だからな。泊めてくれるだろう。

 何となく、気軽に考えて、俺はグレンの言うように、ギルドを目指すことにした。


 ◇◇◇


 町の広場には露店などが出ている。活気づいてんな、と思うと、ギルドがある場所には冒険者がいる。だから店も多くなると、グレンが言った。

 そして、そのギルドがあれだ、と指差した方向に、何やら他の建物よりも、大きめの建物がある。ワシかな……大きな鳥が羽ばたいているような絵柄の旗が立っている。あれかあ、と思い、ギルドに着いた。


「じゃあ、俺は、ワイバーンの素材を査定に出してくる。こいつを出せば金はあんたの物だ」

「これは?」

「俺の名前が入った書類だ。査定による売却金がお前に行くようにしてある」

「何から何まですまないな。この借りはいつか必ず返す。……万倍で返してやるからな」

「言質はとったぜ。その時は頼む。じゃあな」


 最後の一言。流石、商人だな。だが、見ず知らずの俺にここまでするなんて……本当にありがたい。宿代を借りようかと思ったが、すんでの所で止めた。これ以上、借りを作るわけにはいかないと、直感的に思ったからな。

 さて、その後、ギルドに入り、グレンはワイバーンの鱗を持って、どこかに行った。

 俺は正面のギルドの受付っぽい所に行ってみた。


「聞きてえことがあるんだが」

「あ、はい、なんでしょう」


 ギルドの紋章が入った黄色の着物を着ている、女が応える。女は俺の方をジロジロと見ていた。


「ここで登録したいんだが……」

「はあ……その歳でですか?」

「問題があるか?」

「いえ……特にそのような規定はありませんが……」

「俺のことを心配してくれるのはありがてえが、大丈夫だ。そこらの若者よりは強い自信があるぜ」


 俺がそう言うと、女は、再び、はあ、とため息をついて、俺に何かを渡そうとする。


「ではこちらの書類に……っとその前に、あなた自分のスキルは把握していますか?」

「いや、分からない」

「でしたら、あちらへ先に行ってください」


 と、女は右奥を指さした。そこにはまたしてもギルドの紋章が入った、今度は青い着物を着た女が気だるげに座っている。女の前には、何やら丸い宝玉のようなものが置かれていた。胡散臭い、占い師みたいだな……。


「あちらの宝珠で鑑定したあと、自身のことを確認したうえでまたこちらに来てください」


 目の前の女にそう言われたので、青い着物の女が居る所に移動する。


 移動している最中、ちらちら視線を感じる。やっぱりこの服ってこっちじゃ目立つのかな。そんなたいして変わらないと思ったが。……あ、無間かな。剥き身だもんなあ。……まあ、殺気は感じないし、大丈夫だろう。


 そして女のいる所へと着いた。どことなくさっきの女に似ている気がする。態度は真逆だがな……。


「すまない」

「なんでしょうか、おじさま」


 ……無視だ。何となく、その方が良いと感じる。


「冒険者登録する前にここに行けって言われたんだが……」

「あ、そうなんですね。かしこまりました。スキルの確認ですね。……ではこの水晶に手を当ててください」


 女は目の前の球を俺の前に出した。

 俺はその球に手をかざした。すると球が輝き出す。輝きはしばらく続いた後、収まった。


「はい、出ましたよ。こちらが、貴方の情報です」


 そう言って、女は俺に何やら書かれた紙を渡した。それによると


 名前:ムソウ

 年齢:39

 出身:異世界(安備国)

 職業:傭兵

 種族:人族(迷い人)

 所持武器:神刀「無間」

 スキル:剣術、武術、気功、調理、調合、鑑定

 EXスキル:すべてを斬るもの、かみごろし、おにごろし、ひとごろし、状態異常完全耐性、言語理解、言語変換、星の加護

 技:斬波、奥義「無斬」


 特筆事項

 一切の魔法適性なし。



 と、書いてあった。


 おおう……俺の名前「ムソウ」ってことになってる。前の世界の呼び名とは違うが、まあ、良いか。

 そして、それ以外の項目も、グレンの鑑定よりも、詳しく出てる。

 ただわからないのも多いな。「EX」ってなんだろう。というか、何て読むのだろうか……なんかスキルとは違う感じで書かれているが、まあいいや。気にしてもしょうがないな。


 あと気になるのは技っていうのもあるみたいだな。これはやろうとすればできるのかな。


 そう思っているとなんだかできるような気がしてきた。何か、今までは感じることが出来なかった、力の流れのようなものを自分の中に感じるようになってきた。


「どうです?自分を知る感覚って面白いですよね」


 目の前の女は、俺が感動している中、面白げな顔で、俺を覗き込んできた。


 女に寄れば、スキルや技は理解してこそ発揮できるという。今感じた力の流れも「技が使える」ということを認識してようやくわかるようになるらしい。そして女はこう続けた。


「では、本当にスキルが使えるようになったか試してみましょう!鑑定スキルがあれば私を視てください!……私の名前はな~んだ?」


 すごく明るい笑顔で、自分の両頬を両手の人差し指で指しながら言ってきた。なんとなくこの仕草は腹立つ……。

 しかし、どの程度、俺に鑑定スキルが使えるのか気になり、この女を視ると、俺の頭の中に情報が入ってきた。


 名前:リリー

 年齢:77

 出身:不明(現段階では視れない)

 職業:不明(現段階では視れない)

 種族:精霊人

 所持武器:なし

 スキル:不明(現段階では視れない)

 技:不明(現段階では視れない)


 おお、これが鑑定かあ。グレンのより見れないものが多いのは鍛えてないからか。そして、鑑定スキルを使うとこんな感じになるんだな。少し変な感じだ。

 

 ……ってこの女、77歳なのか!これには驚きだ。な~んだ? とか言ってて俺の倍近く生きてる!


「……リリーさん、結構年上なんだな」

「わっ!年齢もわかるんですか!すごぉ~い!」

「いや……」

「あ、失礼しました。なるほど鑑定スキル、使えるようになったみたいですね。ではこれにて自己確認の作業は終了です。ちなみにその紙に書かれたことは他人には分からないようになっていますのでご安心を」


 なんでも、個人の情報というのは、魔法以外にも、呪いという術などにも用いられることがありそれを防止するためにこの方式がとられたという。この宝珠や紙などは自然のものではなく迷い人であるギルド長により作られたものであるという。


 とにかく自分のことはわかった。では改めて登録の受付に向かうとしよう。


 リリー(77)に礼を言い、再び受付の女の元へと向かった。


「スキルの確認ができたから、登録を頼む」

「かしこまりました。ではこちらの書類の必要事項を書いてください」


 女は紙を俺に渡した。紙には俺の知らない文字でいろいろ書かれていたが読むことはできた。たぶんEXスキルにあった言語理解のおかげだろう。

 ギルドに加入する際の規約などのあとに名前、使用スキルなどを書く欄があったので書いたがEXスキルについては書かないことにした。

 これに関してはよくわからないからな。余計な混乱を呼ばないためにも書かない方が良いかなと思った。


「ではこれをもとにムソウさんの冒険者として登録を行いますが準備はよろしいですか?」

「あ? 準備? 何のだ?」

「試験です。……ご存じなかったのですか?」


 女はきょとんとして俺に説明した。


 ギルドに登録する際に、そこのギルドの支部長立ち合いのもと、試験を行うようだ。理由は、個人の力の把握、これにより最初に討伐する魔物を冒険者ごと判断するためである。

 さらに、仮にギルドへ反抗してきたときのための措置であるという。何やらきな臭いがまあ仕方ない。俺は、わかったと言って試験会場へと移動した。


 会場にはすでに七人ほどの受験者がいた。


 十代くらいから二十代後半くらいまでの男女……じゃねえな。一人皆よりも抜きんでて若い……というか、幼い女の子が居る。10歳くらいか? 腰に、弓矢や、短刀など、まるで狩人のような様相だ。あんな子も冒険者になるというわけか。なかなか面白いな、この世界は。

 そして、もう一人、目を引く者が居る。それは、頭の上に動物のような耳と、腰のあたりから、これも動物のようなしっぽを生やした女だった。歳は、二十前後といったところか。

 変わった見た目してるなあと思ったが、周囲の人間が気にしている様子も無いので、ああいうのも、この世界では当たり前なのかと感じた。ひょっとして、グレンが言っていた交配種の一つなのかもなと、考えながら、その者達を眺め、俺は妙に納得した。

 なるほど……こうなると、確かに俺は老けているのかも知れないな。何となく、恥ずかしい気持ちになり、皆がチラチラとこちらを見てくる中、俺は目を合わせないように、視線を逸らしていた。

 すると、奥の方から声が聞こえてくる。


「これより冒険者ギルドマシロ支部による新人冒険者への試験を行う」


 声のする方を見ると、ひとりの背の高い優男が立っていた。黒い髪を後ろで縛り、眼鏡をかけている。普通の刀よりもさらに細い剣を腰に差しているがあれが得物か……いや、今はどうでもいいか。


 さてどんな試験なんだろうか。


「諸君にはこの魔石を、なんでもいい、自分の使うスキルや技を使って攻撃してほしい。それにより次の試験に移るかどうか決める。では受験番号1番前へ」


 長髪の男が言うと、俺とは反対側にいた大柄で、大きい斧を持った男が前に出る。男は斧を振りかざし、


「斧砕斬!」


 と、力を込めて斧を魔石へと振るった。あれが、「技」ってやつか。いちいち叫ばないといけないのかな。何となく恥ずかしい気持ちになってくるが、前の世界に居た、似たようなことをしては、俺に手の内を伝えてくる馬鹿を思い出して、まあ、良いかと思うようになった。

 さて、大男の振るった斧は、勢いよく大きな音を立てて、魔石にぶつかった。

 しかし、魔石はすこし剥がれるだけで原型をとどめていた。優男の試験官は、魔石の状態を見た後に、大柄の男に口を開いた。


「まずまずだ。だが、技にかかるまで時間が経ちすぎているのとお前自身が遅すぎる。お前は下級から相手をして、腕を磨け」


 大男は、そう言われて、ガクッと肩を落としながら、試験会場を出ていく。どうやら、この魔石の破壊の割合や、それまでの過程により、下級から超級の魔物に冒険者を振り分ける試験みたいだ。


 そして、この後も試験は続いた。中には魔法を使うやつもいて、最初の男と違って、次の試験を受けるように言われ残った奴もいる。


 魔石に攻撃し、帰る者もいれば、残る者もいた。


 そして7人目の者が終わり、俺の番となった。


「最後に受験番号8番、前へ!」

「オウっ!」


 さて、俺もどうにかしてこの魔石を壊してえな。無間を構える手に力が入る。前いた世界で、雇った俺の力が信じられないと言う雇い主の前で虎三匹相手に模擬戦をしたことを思い出した。


 その時は無間を手に入れたばかりの時でその切れ味に驚いたりしながら、余裕で倒せたんだよな。今回もせっかくだ。覚えたての技ってやつを使おう。


 この奥義ってやつがいいな。俺がそう思うと頭の中に奥義「無斬」の情報が頭の中に入ってきた。ほう、鑑定というのはこういうことも出来るのか。本当に便利だな。


 奥義「無斬(むざん)

 神刀「無間(むげん)」による連撃。相手の息の根が尽きるまでひたすら連撃を繰り返す。


 ……へえ、いいじゃねえか。向こうの世界でも斬って斬っての日々だったからなあ。無間と一緒にこの世界を生き抜く最初の一歩にふさわしく、全力で行こう。


 俺は、無間を大きく振り上げた。


「奥義、無斬ッッッ!」


 そのまま無間を振り下ろし、一撃、二撃、三撃……と無間をふるう。魔石はある程度固いのか表面から剥がれていく。


 最初は少しずつ削っていく程度だったが、50回ほど刀を振ったところで切った魔石の破片が大きくなってきた。俺が硬さに慣れたこともあるが、どうやらこの技は振れば振るほど、力を増していくらしい。それに、速さも……。

 技の使用時から呼吸をしていないことに気付く。


 そろそろ息がつらくなってきた


「ウアッッッラアぁぁぁ!」


 最後の一撃とばかりに無間を振るうと、無間の刃の周りに出来た大きな力の塊で出来た斬撃が、剥がれ続けて子供の拳くらいになった魔石を二つに割った。


「こんなもんで、どうだ?」


 無間を仕舞いながら、試験官である長髪の男のほうを見ると、何やら口をパクパクさせていた。他の受験者も同様に目を白黒させている。


「ま、魔石が砕けるところなんて初めて見た」


 我に返った様子の長髪の男が語る。


「番号8番……え~とムソウ。今のは技か? 一撃当てるだけでよかったんだが」

「あ、そうだったのか。初めて使う技だったからちょっと試したくなった」

「はじめて……」


 何かまずいことしたか。だったら斬波……これは、斬撃を飛ばす技らしいがこっちの方でも良かったんじゃないかと今になって思う。


「……すまん」

「謝らなくてもいい。一撃の技を何度も使うならまだしも連撃が技ならしかたない。結果は……まあ合格だ。次の試験へと移ろう」


 試験官の男がそう言った後、俺と先ほどの試験で合格とみなされた受験者三人は次の会場の準備が終わるまで、その場で待った。


 その三人というのが、先ほどの女と、少女、それに、若い男。こちらは、武闘家のようで、どこか違う感じの服装に、長剣を腰に差した男だった。魔石の試験の際には魔法を使っていたが、剣も使えるのかと、感心した。

 待っている間、そいつら他の受験者はチラチラと俺を見ていた。


 ……落ち着かないな。


 ◇◇◇


「さて、二回目の試験は支部長との一騎打ちである。勝敗は関係ない。この道具が三回鳴るまで、戦い続けろ」


 男の持つ道具は手の上に収まる小さな鹿威しのようなもので、上から水が流れていき、その下の筒に入り、ある程度溜まったら筒の反対側が上に上がり、水が抜けると同時に、上がった筒が下のすずを鳴らす。抜けた水はまた管をつたって上に行き永遠に水が流れるという仕組みだ。


「支部長はどこですか?」


 俺の隣にいた武闘家のような、爽やかな青年が聞くと、試験官は後ろを向いた。。


「ちょっと待ってくれ。……支部長! 早く来てください! みんな待ってますよ」


 試験官が後方にむかってそう叫ぶと


「悪い悪い、久しぶりにいいものをみれたからな、感慨にふけってた。で、リンス。今日は何人残っている?」

「四人です」

「上々だ」


 のそ~っと現れたのは、俺より一回りでかい壮年のおっさんだった。ひげ面で、体中に傷がある。ひときわ目立つのが、顔に刻まれた三本の爪痕だ。傷は、額からあごの辺りまで伸びている。身に着けているものは少々傷んではいるが龍のものか、鱗で出来た鎧を身に着け、腰には一対二本の刀を差している。直感的に今までのどんな相手よりも強いと感じた。


 というかあの長髪、リンスっていうんだな。必要ないとは思うが、覚えておこう。


「改めて、マシロ支部長ロウガンだ。よろしく!」


 支部長……ロウガンが俺たちに挨拶をした。


「さて、さっきまでの試験はお前らのスキルや技、魔法の威力をただ、見るだけだったが、今回はお前たち自身がどこまで動けるかを見る。勝敗は関係ないから好きにやってくれ。ただ俺も攻撃はするからそのあたりは自己責任で頼むぞ」


 そうだったのか。てっきりあれだけかと思ってたからな。つい、力をいれてやってしまったなあ。寧ろ、ここからが本番という感じで、大きくため息を吐いた。


「では一人目!」


 そんな中、次の質問が、淡々と始まっていく。試験官リンスが合図を出すと、先ほどの青年が前に出る。


 魔石の試験では魔法を使っていたな。グレンの話によると長い経験が必要だとか……。それをあのくらいの年齢で、使いこなしているとはすげえな。


「受験番号2番ウィズ。おねがいします!」


 ウィズはなにやら手袋をはめた。ちょっと鑑定眼を使ってみよっと……。


 魔道具:キメラの皮手袋

 装着者の魔力をあげる


 と、出た。キメラってなんだ? まあいい。なるほどあれで魔力を底上げし魔法を行使するのか。


「では、はじめ!」


 リンスの合図でウィズは呪文を唱える。するとウィズの体が淡く光りだす。なるほどあれがいわゆる魔力か。


 そして、光が手の元へ流れ、ウィズの手元にこぶし大の火の玉が生まれた。


「火球!」


 ウィズが叫ぶと火の玉はロウガンの元へと飛ぶ。ロウガンは動かず、二本の剣を鞘から素早く抜き火の玉を斬った。


「いい魔法だ。だが発動までに時間がかかって、相手に対抗策を練られやすくなるぞ」

「では、こうです!」


 ウィズはそういうと手を広げたすると先ほどの火球が小さく分裂し20ほどの火の玉がウィズの周りに出現する


「火球連撃!」


 火の玉が次々とロウガンの元へ射出される。


「おお! すげえ!」


 さすがにロウガンも走りながら身をかわしたり、二本の刀をそれぞれうまく使い火の玉を凌いでいる。


 火の玉を連発し続けたあと、ウィズは違う呪文を唱える。


「身体能力向上!」


 ウィズの纏っていた魔力が一層強くなった。そしてウィズがロウガン向けて飛び出し、拳を向ける。


「防御術・仁王!」


 ロウガンはその場にどっしりと立ち防御態勢に入った。


 そのまま、ウィズの拳はロウガンの腹にさく裂した。ドンッと良い音が響く……だが、


「……良い拳だな。火球の連撃が尽きた後は近接攻撃もできるのか。なかなか万能だが、俺には通用しねえぜ」


 ニヤッと笑い、ウィズの腕をつかみ、そのまま一本背負いに入った。仰向けに倒され驚愕するウィズの顔の横に剣を突き刺す。


「それまで!」


 リンスがそういうとウィズは立ち上がった。


「火球の連撃はすごかったぜ。遠距離からの支援や攻撃は文句なしだ。ただ、近接攻撃術はまだまだだな。が、鍛えりゃさらに強くなるはずだ。初級の……そうだな、魔法攻撃が効きづらい、ミニデーモンあたりを狩って鍛えてみろ」


「はい!ありがとうございます!」


 勝負には負けたがウィズの顔は晴れ晴れとしていた。納得いく戦いだったんだな。


 確かに、いい試合だった。時間的には一つの合図分しか経過していなかったが、俺も魔法などいろいろ見れたからな。俺も使いてえなと思ったが、宝珠での鑑定によると「一切の魔法適性なし」だったからなあ。


 ちょっと残念だと感じる。


 戦いを終えた、ウィズが戻ってくる。素直に、闘いを終えた若い奴を褒めたい気持ちになった俺は、ウィズに笑ってやった。 


「さっきの戦いは良かったと思うよ。俺も良いものが見れた」


 そう言うと、ウィズは、


「ありがとうございます。だが、まだまだですね……」


 と、呟いた。向上心があって、何よりだな。


 その後も試験は続く。


 ウィズの次に出てきたのは、緑髪の幼女、レイカという弓兵だった。先ほども言ったように、子供くらいの背丈で耳がとがっている。弓矢以外にも、吹き矢や小刀、暗器なども身に着けている。さしずめ忍者だな。身に着けているマントと頭巾は、迷彩トカゲという、体を不可視状態にする魔物から剥いだ皮で出来ているらしく、時々、見えづらくなるとウィズが教えてくれた。


 確かに矢を魔法やスキルで強化し獲物を射るみたいだった。前の魔石の試験の時も弾くだけかと思ったら、矢が突き刺さっていて驚いた。


 レイカは遠方からロウガンを狙い撃つという戦法をとっていた。砲術スキルの熟練者らしく、どんな方向に打ってもロウガンに当たっていた。


 そして、レイカは異様にすばしっこい。ウサギ顔負けの身のこなしで近づくロウガンの攻撃を躱し、躱しながらも、矢や、吹き矢、暗器などでロウガンを攻撃していた。


 その結果、時間いっぱいまで戦うことが出来た。


「……戦い方はよかったが攻撃自体がまだ弱いな。大型の龍や魔物相手じゃきついだろう。しばらく小型の魔物で練習だ。ただ危機回避能力はありそうだから、危険な場所への採集依頼もこなしてくれ」

「りょうか~い!」


 二人のやり取りを見ながら、親子みたいだ……とウィズがつぶやくのが聞こえる。


 まあ、あの身長差ならそう見えるな。しかもレイカは背丈も顔も子供っぽいからますますそう見える。

 そこらの大人よりは確実に強いと思うが。


「ふぅ~、疲れた~」


 レイカは帰ってきた途端にそう呟いた。


「手数は多いからな。それぞれ鍛えたら、ほとんど無敵じゃないのか?」

「アハハ、おじちゃんに言われるとやる気出るかも。もうすこし、頑張ってみるかなあ」


 俺の問いにレイカは笑って答えた。


 次に前に出たのはハクビという先ほどの女だ。魔物と人間の間に生まれたという魔人族という種族らしい。


「獣人かあ。きれーだなー」


 レイカがなにやら羨望の眼差しで見ている。


 魔人にもいろいろあるんだな。レイカとは逆で妖艶な大人の女という印象だけに、レイカもああなりたいのかと思ってしまう。


 ハクビの戦い方はいたって単純。爪を使った連撃と蹴りや拳で戦う武闘家だった。


 ここで俺は気功スキルというのも見ることが出来た。気功は魔力のような体内にある流れではなく、グレンが言ってたように体外にある自然の力を使うものみたいだ。


 注意してみると、試合場の地面や空中には光るものがあり、ハクビはそれを吸収して爪を伸ばしたり、ウィズのように拳や足に纏わせたりして戦っている。また気を一点に集めて射出したりと多芸だ。


 しかし、気を使うことにも、やはり限界があり、長期戦には向いていないのか、ハクビが未熟なのか、ハクビの攻撃が緩んできた。


 ロウガンがハクビのふるった爪を剣で受けると爪が割れた。


「大丈夫か?」

「……問題ない。またすぐ生える」


 二人はやり取りのあと、また戦い始めたが、拳を打つたびにハクビの手や足が血まみれになっていく。純白の毛も赤く染まっていく。


 ハクビが立っているのもやっと、というところで三回目の合図が鳴った。


「それまで!」


 ハクビがその場に倒れこむ。


 ロウガンはその場へ行き、


「……無茶しすぎだ。気をうまく練れないうちにあんだけ連撃したらそりゃそうなる。長期の戦いには向いてねえな、お前。ちょうどオオイナゴの大群の討伐依頼があるからそれを完遂してこい。ただ一人で行くなよ」


「……クソッ!」


 ハクビは立ち上がると俺たちの所へふらふらな足取りで戻ってきた。


「すぐに回復します、あまり動かないでください……」


 ウィズはハクビに両手を出す。


「すまない……」


 ウィズの手から出てくる光、まるで日光のような光はハクビへと注がれる。するとハクビの傷が治っていく。治癒魔法というものらしい。


「……お姉ちゃん、焦ることないんだよ」

「フンッ、エルフが言うと説得力がありすぎて困るな」


 ウィズが治癒魔法を施している間に、レイカとハクビはそんなやり取りをしている。


「さて、だいぶ楽になった。えっと……ウィズって言ったか?もうやめてもいいぞ」

「まだです!これ治したらすぐにでも依頼に行きそうですからね!もっと完璧に治しますからジッとしててください!」

「人が良いな、お前も。だがすぐには動かない、安心しろ」


 そう言うと、ハクビは俺を見る。


「……あ? なんだよ」

「ムソウっていったな。次の試合はじっくり見させてもらうぞ」


 ハクビはそう言う。ああ、なるほどとレイカとウィズも軽く微笑んで俺を見た。


「なんだ……?」


 キョトンとしていると、三人はそれぞれ、輝いた表情で口を開く。


「魔石が割れていく所は初めて見ました!何者なのかわからないですが、どんな戦いをするのか期待しています!」

「おじちゃん強そうだしどんな力を持っているか気になる!」

「出し惜しみするなよ。手加減したら支部長より早くお前をぶっ飛ばすからな」


 どうやら全員俺に何かしらの期待をしているみたいだ。


 期待されてもなあ。魔石だって、連撃だからできたのであって、とか言うと、


「早く見たいです!」

「早く早く!」

「とっとと行ってくれ」


 ……聞いちゃいねえ。俺の意見は無視だな、まったく……仕方ない、もう行くか。


 ふとロウガンの方を見ると、先ほどのハクビへの説教の時に見せていた厳しい顔はどこへやら、にやにやしていた。


「支部長も待っている。早く行け」

「はあ……わかったよ」


 ハクビがそう言ったので俺はロウガンの元へと行った。


 ◇◇◇


 試験が始まる前にロウガンと軽く会話をする。


「ハクビって女は治癒魔法で大丈夫そうだ」

「……そんなことより、魔石を割ったのはあんただな!?」


 そんなことって……まあいいや。


「ああ、すまないな」

「いや、たしかに高価なものではあるが、それは別にいい」


 あ、なら気にするまい


「魔石を割る人間なんて久しぶりに見たぜ。前は何してた?」

「……傭兵だ」

「傭兵かあ。じゃあ対人の戦いは慣れているな?」

「ああ」


 ロウガンが刀を抜いた。


「じゃあ、俺は手加減せずにやるつもりだが、どうだ?」


 ロウガンが問いかけると、俺も無間を構える


「そうしてくれたら俺も嬉しいな……」


 思わず、笑みがこぼれた。


 やはり真剣勝負というのはいい。互いに命のやり取りをしてるからこそ、命を懸けているからこそ、命を実感できる。


「では……冒険者ギルドマシロ支部長ロウガン、参る!」

「受験番号8番……ムソウ、参る!」


 そのままあっさりと、俺たちの戦いが始まった。


 先に仕掛けたのは俺だ。無間を上段からロウガンへと下す。しかしロウガンは二本の刀でそれを受け止める。


 そうして無間を挟み込み動けなくする。


 ロウガンの力もあるが、この刀も相当だな。無間を受け止めるなんて。


 つい、鑑定眼で見てみると


 名刀「夏至と冬至(げしととうじ)

 熱と冷気、相反する2つの力を操ることができる。


 へえ、すげえ刀っぽいな。それならちょっと距離をとったほうがいいかな。


 俺はロウガンの腹を蹴り、後ろへと跳躍して距離をとる。ロウガンが体勢を立て直す前に、技「斬波(ざんぱ)」を放つ。


 この技は、無間に気を纏わせて振ることで、斬撃そのものを飛ばす技だ。見よう見まねで気を使ったがどうやらうまくいったらしい。


 ロウガンはウィズの火球を斬るように剣で斬波を防ごうとしたが、力が足りず、後方へいなした。ロウガンの後ろの壁に大きな切れ目が出来る。

 この男は二刀流が凄まじく上手いな。基本的に一方の刀で防御、もう一方で攻撃という戦法をよく見るが、ロウガンは二本の刀で揃えて防御、攻撃としている。故に、防御は固く、攻撃は重い。


 だが、二刀によく見れる、意表を突いた攻撃は少ない。何度も打ち合ったが、俺は真っ向から、ロウガンの攻撃を受けたり、躱したりできる。


 と、ここでロウガンは距離をとり、一瞬力を抜き剣を大きく広げて回転し始めた。


刃風・鎌鼬(じんぷう・かまいたち)!!!」


 ロウガンを中心に巨大な竜巻が現れ、俺に迫ってくる。竜巻の中に、透明な風で出来た刃がくるくると回っている様子が見えた。こっちが斬撃を飛ばすなら、と向こうも斬れる竜巻を飛ばしてきた。


 おお、死角なしの攻撃か。ありゃ、まともにぶつかったらやべえな。

 俺は先ほどまでよりも多く気を無間に集めるた。


 先ほどより大きい斬波がロウガンの刃風とぶつかる。


 ギリッギリッギリッ


 金属音が鳴り響き俺の斬波と竜巻は相殺された。


「やるなあ! ならば……暗技・毒殺剣(あんぎ・どくさつけん)!」


 今度は魔法を使ってきた。魔力が剣に纏わりつく。紫色になった剣でロウガンは俺に連続の突き技を放つ。


 突き技自体は防げたが、剣から上る紫の煙を吸ってしまった。


 ー状態異常完全耐性発動ー


 俺の頭の中に文章が浮かび上がる。なるほど、EXスキルにあったこのスキルは自動的に発動するんだな。ていうかあの刀、毒かよ!


 ロウガン本当に本気で俺を殺そうとしているんだな。


 毒を吸い込んでもピンピンしてる俺を見てロウガンは一瞬目を見開いたが、そのまま地面に手を当てた。


「毒もか……なら、動きを封じるまでだ! 地固め・牢の陣!!!」


 また、魔法か。どんな魔法だと思っていると、俺の四方に壁が現れた。そして土で出来た囲いに閉じ込められてしまった。


 やべえ、何かしてくる前に何かしないと! 斬波は通用するかわからないし奥義もここで使うにはしんどそうだ。


 ……あ、そうだ。EXスキルに気になっていたものがあったな。それを使ってるか。


 ーすべてをきるもの発動ー


 俺がスキルを発動させると、壁のあちこちに赤い線のようなものが入るようになった。おもむろにその線の一つを無間で斬った。すると土の壁は案外あっさりガラガラと崩れ去った。


 俺がそこから飛び出ると、ロウガンは先ほどの刃風よりも大きな竜巻を俺に放ってきた。さすがに斬波は無理だなと思っていると、竜巻の中に赤い線が見える。


 まさか、と思いつつ、そこに斬波を当てると竜巻が二つに割れ、消えていった。


「なっ!?」


 さすがにロウガンも驚愕の表情を消せないみたいだ。


 どうやら、すべてをきるものは物質であろうと、そうでなかろうと俺が見たものの「切れ目」を見つけ、そこを斬るとなんでも斬れるスキルのようだ。


 二つ目の大技を放ったロウガンに俺は正面から突っ込み、無間を上げた。


 ロウガンの持つ刀の切れ目が見える。


 どうしようかと思ったがさすがに斬るのはやめよう。すべてをきるものを解除した。


 そして前の世界で編み出した、俺自身の技を使った


「砦崩し!」


 防御態勢をとる相手に対し、思いっきり力んで無間を振るって、防御を解く、あるいは獲物を破壊する武器破壊技だ。


 キンッ、カンッ


「ぐっ!?」


 ロウガンの手から剣が離れたところで、ロウガンに蹴りを食らわせ吹っ飛ばしたところへ、無間での突きーー


「それまで!」


 リンスの声が響く。


 無間はロウガンの首の前で止まっている。


「はあ~。疲れた……」


 俺は無間をしまい、ロウガンに手を出す。


「結果は?」


「はぁっ……はぁっ……ちょっと……待ってくれ」


 ロウガンが息を整えている間、辺りを見るとすごいことになっていた。斬撃の跡や、竜巻によって砕かれた地面。これの修繕とかやらされるのかな。


 ウィズたちの方を見ると、すごく固まっている。レイカは……すごくおびえて泣きそうな目で俺を見ている。何で、俺なんだろうか……後で、詫びに、甘味でも食わせるかな……。


 ◇◇◇


「ふぅ~。さて、ムソウ。お前の結果は、俺からは文句なしだ。好きな依頼や自由に討伐をこなしてくれ」

「え? そんだけ? 他の皆には色々助言してたが……」

「文句がないってことは言いたいことは特にないってことだ!」

「ああ……わかった」

「その代わりにお前に何個か聞きたいことがある」

「なんだ?」

「毒が効かなかったのは何だ?俺の毒は結構強いぞ?」


 そんなの試験で使っていいのか……?


「状態異常完全耐性のスキルだ」

「なんだそれは?」

「スキルの一つだが……」


「「「「「はあ!?」」」」」


 ロウガンとリンスと、気づいたら近くまで来ていたウィズ達がそろって声を上げた。


 ……なんだ?EXスキルってなんか、まずいのか?


 しばらくみんな静かになり、それぞれで何か考え始めた。


 ふいにハクビが口を開く


「ムソウ、お前は迷い人か?」

「ん?ああ、らしいな……」


 鑑定で視ればわかることだからな。俺は正直に打ち明けた。すると皆、納得した表情でこちらを見た


「そうか。迷い人ならEXスキルを持っているのも納得だ」


 ロウガンが俺を見据えてそう言う。……なるほど。「EX」はイーエックスというのか。一つ、勉強になったし、あることも分かった。

 こいつら、なんか知ってんな? 仕方ない。俺も全てを話すとしようか。


 俺はみんなにこれまでのことをすべて話した。俺がこの世界に来たこと、グレンとの出会い、宝珠での鑑定結果などすべて。


 俺が話し終えるとロウガンが口を開く


「なるほどな。迷い人にもいろいろ居るがお前みたいなのは確かに初めてだ。しかし召喚でも転生でもないのにEXスキルが与えられているとはな……」


 なんでも、召喚や転生の際に神や鬼から与えられる特殊な力がEXスキルというらしい。本来この世界にあるスキルと違って、さまざまな奇跡を起こすという。


 ちなみに最初の試験で用いた魔石はギルドの創設者がスキルによって創造したものらしい。


「EXスキルって何個も持っているものなのか?」

「固有スキルのことか?支部長の竜巻を斬ったのもそれだろう?」


 ハクビが答えてくれた。聞けば、迷い人は俺のように言語理解、言語変換という最低限の生活が送れるようなスキルと固有のスキルを持っているらしい。


 すべてをきるものはその、固有なスキルらしいが……。


「ほかにもあるんだよなあ……」

「ああ、だから俺たちも驚いている」


 ロウガンがそう言う。ふつう、固有のスキルは一人一つらしい。だが、俺は何個かあるし、正直よくわからないものばかりだ。状態異常完全耐性は先の戦いである程度分かったが、後のスキルはやはりわからなかった。


「エルフの貴女なら何かわかりませんか?」


 ウィズが言う。すると


「う~ん、わかんな~い」


 レイカが口を開く。


「もう200年くらい生きているけど、聞いたこともないスキルばかりだよ~。このかみごろしとおにごろしとひとごろしはなんとなくわかるかも。というかそもそも固有スキルなんて基本聞いたことのないものだからね~」


 ああ、その三つは俺もなんとなくわかるなあ。対神、鬼、人の時強くなるとかそんな感じだろうなあ……って今なんて言った!?レイカ200年生きてるの?この見た目で!?


 俺が信じられないって目でレイカを見ていると


「あ、エルフというのは長命で中には千年以上生きている方もいらっしゃいます」


 ウィズが教えてくれた。


 エルフは森や山に住む種族らしい。レイカのように緑髪で目は金色、とがった耳で長命だという。

 いろんな種族がいるなあ……。


 さて話を戻そう。


 他には星の加護なんてものもあるなあ


「この星の加護っていうのは気功に関係しそうだな。気功は周りの草木、地面、空気から力を取り入れるからな」


 と、ハクビが言う。


 ああ、言われればそんな気もするなあ。見よう見まねで斬波を放てたのもそのせいかな……。いや、それは気功っぽいけどな。


 確かに、この星の加護だけは俺から見ても異質だと思う。


「とまあ、EXスキルについてはわかった。道理でムソウが強いわけだ」

「しかし一切の魔法適性なしとは。まあ、これに魔法が加わればもはや化け物ですね」


 俺がスキルについて考えていると、ハクビとウィズがそう話している。たしかに魔法が使えないのは痛いなあ。さすがにあきらめてたけど魔法がつかえるウィズに言われたらますます、悲しくなってくる。


「凹んでんなよ!なにはともあれ、お前は文句なしの合格だ。下級から慣らしで始めるもよし。中級から始めるもよし。好きにやってくれ!」


 ロウガンがそう言って、とりあえず俺は冒険者ギルドへの登録試験を達成した。


 その後受付に行って登録の証となる腕輪をもらった。腕輪には何か、宝石と、ギルドの紋章が彫られている。と、ここで気づく。俺が前してた腕輪、無いな……。どっかで落としたか?


 大切にしてたのにな……まあ、過ぎたことはもう気にするまいか……。


 はあ……今日はもう休もう……ってこの世界の金持ってないんだよなあ……。


 今日は野宿か?

 

 俺は重たい足取りでギルドを出ていった……


 ◇◇◇


 冒険者登録をして2日後、俺は再びギルドへと赴いた。今日から依頼をこなして稼ごうと思う。


 さて、さっそく討伐かなんかするかと思ったが先にグレンがワイバーンの素材を査定に出したことを思い出し、査定受付へと向かった。


 受付には緑の着物を着た(これにもギルドの紋章が入っている)女がいたので、


「グレンという男からこれを預かった。売却金をいただきたい」


 そう言って、グレンから貰った書類を女に渡した


「あ、貴方が……。はい、かしこまりました。少々お待ちください」


 女は奥から、空の袋と何かが詰まった袋を持ってきた。


「こちらが今回の売却金とその詳細、さらに初回報酬の異界の袋です」

「初回報酬?」

「はい。グレンさんから「やつは必ず冒険者になるから、これは冒険者としての報酬ってことにしてくれ」と言われたものですから」


 あいつそんなこと言ったのか。つくづく気の利く男だな


「そうか……ありがとう」

「いえ、ではこの道具の説明を行いますね」


 異界の袋についての説明だと、この袋にはとりあえずなんでも、大きさを問わず入るらしい。中もどうなっているのかわからないというが、これもギルド創設者が作ったらしい。


 これがいわゆる空間魔法か? とも思ったがどうだろう。


「注意事項として、この袋の中に、入らないようにしてくださいね。下手をすれば二度と出れなくなりますので」


 うわ、怖いなあ。過去にいたらしい。ある冒険者が行方不明になり、しばらくして、その冒険者の仲間がおもむろに袋に手を入れると、そいつが出てきたという。


 中では時間という概念はなく、ほぼ不老不死になっていたが、自分の狩った魔物の素材と永遠に顔を合わせることになると感じ、精神崩壊し、袋から出た途端、発狂、自害したという。


 これは本気で気を付けよう。


「そういえばグレンさんからあなたへ贈り物がありましたので入れておきましたよ」


 受付の女はそういうと袋の中に手を伸ばす。すると中から、うろこ状の胴当てが出てきた。


「これは鎧か? 仕事が早いなあ」


 早速つけてみる。着物を脱いで今のところどころさびている鉄の胴当てを外し、新しい鎧を身に着けた。


 軽い!前のに比べるとつけてないみたいだ!いいものをもらったなあ。


「とてもお似合いです!」


 受付の女がそう言うとちょっと照れるな。


「では売却金の確認です。ワイバーンの鱗が銀貨3000枚、牙が10本で銀貨30000枚、爪が6個で銀貨18000枚、翼膜2枚で銀貨6000枚、肉が銀貨3000枚で、合計銀貨60000枚ですので、両替して、金貨60枚です」


 女はニコリと笑って、もう一方の袋を渡した。中には紋章の入った金貨がじゃらじゃらと入っていた。


 俺は売却金を受け取ると、女に礼を言い、討伐に行くべく、依頼の受付へと向かった。

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[一言] 貨幣についての説明欲しいなー…なんて…ダメ?
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