第54話―作戦会議を開く―
さて、作戦会議を始める前に状況の整理だ。
発端はマリーの受けた依頼に関して。この街の権力者である、ミリアンという者の息子が無理に難しい依頼に挑み、負傷して帰ってくる。ロウガンたちがマリーの責任問題を追及。
そして、ミリアンがそれに対する慰謝料を求めてきた。
その後、何故かリンスも巻き込まれ、マリーと共に、ミリアンの家の者を襲ったという話になっている。今、マシロの町全体が二人を追っている状況だ。
追っている奴らはどこか様子がおかしいということだ。それは、ギルドの者達だけでなく、ミサキのところに居た、ハクビ、ウィズ、レイカの三人も同様であった。
「……現状はこんなものか?」
「そうですね……。あ、それと、町の至る所に私たちの人相書きが貼られているということから、この一件はワイツ卿にも届いていると思います」
リンスがそう言った。……確かにな。ここまで大っぴらにしているということはワイツ卿もおかしくなっているかもしれない……いや……。
「……マシロ卿はこのことを知らないんじゃないか?」
俺がそう言うと、皆はこちらを向いた。俺は皆に説明する。
「俺が起こした、精霊人での一件では、わざわざワイツ卿は村にまで赴いたぞ。領内で何か起これば、自ら出向く、そういう人間に見えたが……」
「確かに、その通りです。ムソウさん。ワイツ卿という人物は、領内での問題に積極的に取り組み、自らがその場で指揮を執り、問題解決へと導くというお方です。だから、領民に愛されているのです」
と、俺の疑問にマリーが答えた。そして、ミサキの家に来るまでのことを思い出してみる。道中、ワイツ卿の姿はなかった。こういう事態になれば、ロウガンや騎士団の師団長、コウカンと共にその場で指揮を執ると思っていたが、今日は見る影もなかった。
「では、街の中に、ワイツ卿の姿がなかった以上、ワイツ卿は把握していない、若しくは自宅に居る、と考えて良いか?」
俺がみんなに尋ねると、マリーとリンスは頷いたが、ミサキは首を傾げている。
「……ん?どうした?ミサキ」
「いや、何でワイツさんが自宅に居るのかなって考えていたの。……で、ムソウさんの話では、おかしくなった人たちって、一昨日のワイツさんの誕生日会に行ったんだよね? 何か関係あるのかなって……」
ミサキの言葉に、俺は驚く。こいつは突然、鋭い考え方をするからな……。確かにそうだ。ロウガンを始め、現状おかしくなった奴らの中心に居る奴らの共通点は、ワイツ卿の誕生日会へ出席した者達だ。だとしたら、ワイツ卿自身に現在、何か問題があるかもしれない。
ん? 待てよ?
「なあ、ミサキ。お前たちもワイツ卿の誕生日会に行ったのか?」
俺がそう聞くと、ミサキは首を横に振った。
「一昨日ってさ、夕方、女の子を連れたムソウさんに会った時だよね?」
……ああ、そうだったな。確か、あの日はミサキが買い物をしている最中だったな。
「そうだったな。確か、皆疲れているとか言って……」
「うん。朝から修行に素材採集依頼で、皆疲れていたからね。あの日は私の家で皆寝て、ハクビさんも泊まっていったんだよ」
「そうか……ちなみに昨日は?」
「昨日は私達、ずっとこの家の前で修行してたよ」
なるほど、つまり三人はミリアンに会っても居ないみたいだな……。
う~む。そうなると、おかしくなった理由がわからなくなる。三人が誕生日会に行ったとなれば、ほぼ確実にミリアンが怪しいのだがな……。
……いや、その線も薄いか……。なにせ、おかしくなっているのは、普通の冒険者や、ギルドの一般職員たちも居た。全員が、誕生日会に行ったとは考えにくい……。ひょっとして、関係ないのか……?
と、ここまで考えているとき、突然ミサキの家の戸を叩く音が聞こえた。
突然のことに、俺達は思わず身構える。とりあえず、二人を奥の部屋に移動させ、俺は無間を抜いた。そして、ミサキが扉の方へと行く。
「どなたですか~?」
ミサキがそう言うと、扉の方から声が聞こえてくる。それは聞き覚えのある礼儀正しい声だった。
「失礼……私は騎士団のマシロ師団長コウカンと申します。少しお尋ねしたいことがありまして……」
と、聞こえた。コウカンか……。街では見なかったし、ロウガンも今日は非番だと言っていた。一応、会おうとは思っていたのだが、ここに来るとは思わなかった。……なんだろうか? 俺は取りあえず、ミサキにコウカンと話すように合図する。
「いいよ~。何かな?」
「はい……今日は、私は非番なのですが、朝起きて町中を歩いていると、私の知っている者たちが指名手配されていたのです。しかもかなり大々的に。
私はそのことを全く知りません。さらに言えば、その捜索をしている者達の中に騎士団も居たのですが、師団長である、私は本当に何も知らないのです。探している者たちの様子もどこかおかしい。何か魔法のようなものが使われているかもしれないと思い、知恵をお借りしようとここに来ました……」
ミサキの返事として、コウカンはそう語った。
ふむ。内容的にはコウカンはおかしくなっていないみたいだが、演技という可能性もある……。ここはイチかバチか確認してみるか。
俺はリンスとマリーを扉の前に立たせた。そして、ミサキは二人を囲むように、結界を張って、戸に手をかける。俺は、入り口側から見て、死角に立ち、無間を構えた。奴が攻撃を仕掛けてきたら、応戦するようためだ。もちろん峰打ちで済ませる。
だが、相手は昨日の今日で闘ったコウカンだ。強いと理解している。俺の無間を握る手に、力がこもる……。
ミサキは皆に確認の意味を込めて頷く。俺達も頷き、ミサキはコウカンに言う。
「わかった。とりあえず中で事情を聞かせて……」
そう言って、ミサキが扉を開ける……。
コウカンは戸が開くと、目の前の二人を見て、絶句した。そして……
「なんと! ここに居たのか! 心配したぞ! リンス殿、マリー殿」
コウカンは驚きのあまり、目を見開き、硬直している。
……人相書きと実際にリンスたちを見て豹変したハクビたちと違って、どうやらコウカンは正常らしい。するとまた、別の声が聞こえる。
「……ふう、安心しました。師団長もおかしくなっていたらどうしようかと……」
「そうですね。二人を見て斬りかかったら、私たちの手には負えませんから」
外からは、男と、女の声が聞こえた。聞き覚えのある声だ。というか、昨日聞いたな……。
「なんだと!? では、なぜここまで一緒に来たんだ!?」
その二人にコウカンが怒鳴る声が聞こえる。
「様子見ですよ。あの町の様子では誰がおかしくなって、誰が正常なのかわかりませんからね」
「それから、“魔法帝”様の所ならば、例え師団長がおかしくなっても何とかできると思いまして……」
二人がそう言うと、コウカンはぐっと黙った。……ああ、このやり取り、三人は正常だな。
俺はこの状況下で、どうしたらいいのかわからないという顔をしているミサキたちに笑って、安心させる。
「……やれやれ。どうやらコウカン殿たちは正常なようだな。一瞬ヒヤッとした俺が馬鹿だったか……」
そう言いながら、三人の前に姿を見せた。コウカンは驚き、そばに居たツバキとリュウガンは喜んだ。
「ム、ムソウ殿!? なぜここに?」
「ほとんど、お前らと同じ理由だ。……おう、お前ら、昨日ぶりだな」
「はい、ムソウ様。こんなにも早くまたお会いできるなんて、嬉しいです」
「少し、早すぎますけどね」
狼狽するコウカンと違って、街中で出会った時のように、ツバキとリュウガンは俺に一礼する。やはり、サネマサの所の奴らは、肝も据わっているようだな。
その後、とりあえず三人をミサキの家の中に入れて、マリーとリンスに騎士たちの紹介をした。仲間だということがわかると、二人とも胸を撫でおろす。
そして、コウカンに今までのことを説明する。コウカンは俺の話をただ黙って聞いていた。
「……なるほどな。そういうことになっていたか」
「そうだ。で、コウカン殿たちに尋ねたいことがあるんだが……」
そう言って、この一件で怪しいとされる誕生日会についてだ。何かわかることがあったら教えて欲しい。
すると、三人は何かひそひそと話し始めた。そして、
「ムソウ殿。誕生日会については私達もよくわからない。なにせあの日は私達も出席していないのだからな」
「そうなのか?」
コウカンの言葉に俺がそう返すと、リュウガンが口を開いた。
「……ですが、私とツバキは、誕生日会の警護として、あの日、ワイツ卿の邸内に居ました」
リュウガンの言葉に皆、驚く。
「本当か!?」
「はい。ですが、特に何も起こらず、会は楽しく進みましたよ」
リュウガンはそう言った。……じゃあ、本当に一連の出来事は関係なかったのか……?俺達が頭を捻っていると、突然ツバキがマリーに話しかけた。
「あの、マリーさん?」
「はい、なんでしょう?」
「その、例のミリアン卿のご子息というのはこんな感じでしたか?」
そう言って、ツバキは紙に何かを描き始めた。それは人の顔だった。短髪の……そうだな、ウィズに近いような感じの爽やかそうな青年だった。それを見て、マリーは驚いている。
「は、はい! その方です! ツバキさん、お上手ですね~!」
と、マリーは言った。完成された絵を俺もじっくり見る。確かに上手いな。本物かはわからないが、まるで何かを見て描いたようにすごく細かく描かれている。
「数ある私の特技の一つです。何かに使えればと、勉強していました。今なら、寝坊して出勤してきて、寝ぐせだらけだった時の師団長も描けますよ」
ツバキは笑いながら言った。コウカンはコラっと怒っている。
そんな二人を尻目に、改めて絵を見ている……。ふ~ん。こいつがねえ……ってなんか見たことあるような気がするな……冒険者だし、ギルドで見たのかな……。だが、問題はそこじゃない。
「……で、ツバキ。何故お前は、こいつがミリアンの息子って分かったんだ?」
「はい……。皆さんのお話を聞いて、おかしいと思いましたので……。
私は警護中に、ワイツ卿の邸内で、この男に会っています」
ツバキの言葉に耳を疑った。誕生日会が開かれているときといえば、こいつらが依頼に出ているときだった。
一体、どういうことだと、ツバキに尋ねると、ワイツ卿の誕生日会のことを語り始めた……。
◇◇◇
ツバキの話によると、ツバキは会場でいうところの、入り口付近を警護していたという。皆、豪華そうな食べ物を食べていて、私も食べたいなあ、なんて思っていた時だった。
「む、警備、お疲れさん」
不意に誰かの声が聞こえた。声のする方を見ると、そこにはこの街の貴族、ミリアン卿が、青年と何人かの若者と、従者のような男を連れていたという。
ミリアン卿以外の者には見覚えが無かった。しかし、この屋敷に居て、ミリアン卿に連れられているところから、そいつらも貴族か何かかと思い、ツバキは胸に手を当てて、受け答えする。
「はっ!皆さまのご安全はしっかり、我々の方で護らせていただきます!」
「いや、そんなに畏まらなくてもよい。ところで……」
ミリアン卿は豪快に笑いながら、ツバキに寄ってきた。
「お主は、独身か?」
突然、変なことを聞かれて、ツバキは一瞬何事かと思ったが、ミリアン卿の隣に居る青年を見て、何か思い当たったようだ。
まあよくあることで、貴族たちの中には、こういった食事会のように大人数が集まる行事があると、未だに結婚していない息子との相手を探しに来ている者も多いという。
実際の所、ツバキも今までそういうことがあったという。また、面倒な……とも思ったが、ツバキはこういう時に、決まって言う台詞があるという。
「私はまだ、独身ですが、心に誓った方というのはおります。その人に近づくために私は日々鍛錬をしております」
そう言うと、大抵の人間は引き下がるという。今回もそうだった。ミリアン卿は、ふむ、と言って、ツバキの元を離れていった。
ようやく落ち着ける、と思っていたが、目の前にはまだ、青年たちが居た。
「あの……なにか?」
「あ、いえ。ずっとお慕いしている人物がいて、その人を想い、今を生きているという貴女の心に感服しました。是非、握手をと思いまして……」
そう言って、青年は手を差し出してきた。
「いえ。私などの手に触れるのはいけません。申し訳ないですが……」
ツバキは何となく面倒だったので、断った。しかし、
「そう仰らずに……」
と言って、青年はまだ手を出してくる。ツバキは正直うんざりしていた。誰か来てくれないかな、と思っていたら、
「カリヴ! 何をしているんだ? 早くこちらへ来なさい!」
という声が聞こえた。見ると、ミリアン卿が他の女を見つけたのか、青年を呼んでいた。
「全く……お父様は……。では、私はこれにて失礼します」
諦めたのか、青年たちはツバキに一礼し、その場を去っていった。
「……この絵の人物がミリアン卿のご子息、カリヴ・ミリアン殿と皆さまが仰るのであれば、私がお会いしたのは間違いなく、本人です」
と、最後にツバキはそう言った。しかし、貴族の息子くらいなら、ツバキも見覚えがあったのではないかと聞くと、コウカン曰く、貴族の中には、王都に居を構え、自分が担当としている領地にも拠点となる家を構えている者も多いという。
ミリアン卿もその一人で、その家族は普段、この街には居らず、王都にいるとのこと。ツバキたちが知らないのも無理はないとのことだった。
しかし、ツバキの会った者達が、ミリアン卿とその家族、あるいは従者で、ツバキが描いた絵と同じ人物ならば、一つの疑問は解けるということになる。
「……じゃあ、こいつらは依頼に出ていないということになるな」
「でも、怪我を……」
俺が呟くと、マリーが戸惑った様子になる。コイツは、カリヴがギルドを出て、戻って来た時にもその場に居て、怪我をしたカリヴたちを介抱したのだからな。不思議に思うのも無理はない。
ただ、ここまで来ると、何となく、カリヴたちの動きが読めてくる。
「……よくよく考えれば、怪我なんてその辺でつければいいだけだからな。偽装だったんじゃねえか?」
俺がそう言うと、マリーは、ああ、そう言えばみたいな顔をして、天井を見る。
「では、救援魔法はどうみます?」
「そのことなんだけどさ~」
リンスの問いかけに、ミサキが口を開く。
「救援魔法っていうのは、種類があるって言ったよね? ムソウさん」
「ん? ああ。普通に魔法だけを使うものと、確か、言葉を加えるものと、実際に見た情景を映す……なんだっけ、映像を残すものの三つだったよな」
「そう……この中でね、どこから来たかわかるのは言葉を加えるものと、映像を残すものの二つだけなの。だから、普通に魔法だけを使っただけだと、どこから来たのかわからなくて、大変だったんだ。それで、その二つを私が創ったの」
「ん? 何だ? また自慢話か……?」
「ち~が~い~ま~す~! 送られた伝令が普通に魔法だけを使ったものだと、使用者がどこに居るのかわからないって話。もし、それを例の冒険者一行が使ったのなら、依頼に行っていないかもしれないってことになるよね?」
「……おお、そう考えれば、そうだな」
「ちょっと待ってください!」
俺とミサキがそこまで話すと、リンスが声を上げた。
「救援魔法が騎士団の元に行って、騎士団の方々がギルドに負傷した彼らを連れてきたんですよ!? 例の山から。騎士団の皆さんはそう言っていました」
ああ、そうか。一応、伝令魔法は騎士団に届いたのか。そう言えば、怪我をしたカリヴは騎士団と一緒に来たと言っていたもんな。
だが、そこでコウカンが口を挟む。
「……そんな報告は聞いていないな」
コウカンの言葉に、驚いた表情のマリーとリンス。あ……やっぱりか。
「で、でも確かに……!」
反論しようとするマリーとリンスに、更にツバキとリュウガンが口を開く。
「いえ、確かに聞いていないです。というか、それって昨日ですよね? 昨日の朝に何か起これば私達は師団長と楽しく訓練なんかしません」
「ええ。昨日は朝から何も起こりませんでしたね。仮に何かあったとしたら、訓練中、若しくは訓練が終わった後に、必ず師団長に連絡が行くはずですが……」
そう言って、リュウガンはコウカンを見た。コウカンは首を横に振っている。……無かったんだな。なるほど……大体わかって来たな……。
「……恐らく、ギルドに来たというその騎士の奴らがミリアン卿の息のかかった奴らか、可能性が最も高いのは、偽物だったんだろう。それなら、全部のつじつまが合う。今まで妙だとは思っていたが、ミサキの話を聞いて、納得した。
救援魔法をギルドに送らなかったところが引っかかっていたんだが、何のことは無いな。普通に魔法を使っただけでは、位置まではわからない。そうなると、ギルドに届けば、ああ、あいつらはデーモンの山に行ったな、よし向かわせようという話になり、救援は山へと向かう。
話を聞けば、その役割は俺だ。そうなれば嘘だとバレるから救援魔法は騎士団に送ったという話になったわけだな」
「では、依頼に失敗したというのは……?」
「十中八九嘘だろ……そもそも行ってないんだからな」
更に言えば、伝令魔法を受け取り、救援に行くのは俺という話だった。仮にそうなっていたら、俺はミサキに頼むか、また、リンネに頼むかして、空を飛んであっという間に山に向かうだろう。そうなれば、すぐにカリヴたちが嘘をついたということにも判明し、そいつらに疑いの目が向かれることになるだろう。
ゆえに、ギルドには送らなかったと考えられる。間違っていることは多いが、俺の噂は、この街の民衆にも伝わっているからな。カリヴたちも俺のことと、ロウガンが俺のことを信頼しているということは知っているだろう。
俺に余計な動きをして欲しくなかったら、俺でもそうすると皆に説いた。
「すごいな、ムソウ殿」
説明を聞いていたコウカンは、何か、感心しながら口を開く。
「よくぞ、この状況でここまでの推理が出来るものだな。騎士に加わって欲しいくらいだ」
「いや、コウカン殿たちが居なければこの問題は解けていなかった。こちらこそ感謝する」
俺はコウカン達に頭を下げた。特にツバキには、カリヴのことを教えてくれて、本当に助かった。改めて礼を言うと、クスッと微笑みながら、喜んでいる。
「そして、ミサキも。お前から救援魔法について聞かなければわからなかった。感謝するよ」
と言って、ミサキの頭を撫でた。リンネもミサキの頭をポンポンと叩いた。ミサキは嬉しそうに笑っている。
「……さて、もう一つだけ解決しておかないといけないことがあるんだが……」
俺がそう切り出すと、コウカン殿が口を開く。
「……うむ。おかしくなった者達のことだな?」
「ああ、そうだ。何かわかる者は居るか?」
そう聞いても、誰も手を上げようとはしなかった。無理もないか。魔法でもないとするとな……。そう思い、俺もふと考えてみた。
……おかしくなっているのは少なくとも、ここに居ない連中だな。あと、ワイツ卿も可能性の段階だが、正常だ。
……う~ん。これはおかしくなっている奴らの共通点よりも、俺達の共通点を考えた方が良いのか? そう思ったが、特に思い浮かばず、会議はしばらく静寂に包まれる。
ふと、ツバキの描いたカリヴの絵が目に留まった。そして、しばらく考え込む……。やっぱり、なんか引っかかるんだよな……。
「……なあ、ツバキ」
「はい、なんでしょう?」
「その、カリヴと一緒に居た奴らの絵って描けるか?」
「はい、お任せください」
ツバキは頷き、絵を描き始める。……やはり上手いな。そして速い。俺はぼんやりと、出来ていく絵を眺めている。マリーは隣で、何か頷いていた。
「……どうした?」
「いえ……。やはり、ツバキさんが会ったという、ミリアン卿に連れられた人たちは、例の冒険者一行だということに間違いないです……」
なるほど、ツバキの絵でコイツ等が、依頼に行っていないことは確定した。それと同時に、全員、マリー達が介抱した冒険者と同一人物だということも確定した。これだけ分かれば、後はミリアン卿の家に行って……と思っていると、ふと、ツバキの絵の一枚が目に留まる。それは、一人の女の絵だ。
こいつもだ……。どこかで見たことあるな……。なんだろうなあ、この感じ……。そこまで前じゃない……。というかごく最近だ。
どこだ……。どこで見たんだ……?
「……と、これが最後ですね。この人物だけ他と比べて年上みたいだったので、よく覚えています。ミリアン卿の執事かなんかでしょうか……」
そう言って、最後に描き上げた絵を見せた。その絵を見た瞬間、俺は抱いていた違和感の原因が分かった。
「思い出したぞ! こいつら、俺に握手を求めてきた奴らだ!」




