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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
はた迷惑な貴族を斬る
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第46話―普通にマシロの依頼に取り組む―

 次の日、朝起きると、俺は顔を洗い、朝飯を食べに食堂へと向かう。リンネも一緒だ。リンネはまだ眠たそうにしている。机の上で、前足で顔をかいている。

 しかし、飯が運ばれてくると、表情を輝かせて、飯にありつき始める。顔を洗ったばかりなので、あまり汚すなよと思いながら、俺も飯にありついた。


 朝飯を食べていると、またマリーたちが来て、一緒にご飯を食べる。その後ロウガンたちもやってきて、前回と同じような感じになってしまった。


 ロウガンとリンス、さらにマリーとリリーはリンネを不思議そうな目で眺めている。ああ、そういや昨日の時点では見せたことなかったけな。


 俺がリンネの説明をすると、皆、リンネとじゃれ合い始めた。


「おお~! 可愛いな~」


 ロウガンがごつい手でリンネを撫でる。リンネは気持ちよさそうにしていた。


「……そういや、こいつはギルドの基準で言うとどのくらいの魔物なのだ?」


 俺が尋ねると、リンスが答える。


「妖狐はギルドや騎士団の基準から漏れている魔物の一つですね。めったに姿を見せないことと、人に危害を加えないことなどから、詳細は不明とされていますから」


 昨日、エリーに教えてもらったことだな。妖狐というのは姿を見せないばかりか、幻術によって姿をくらます事に長けている。人との接触がない以上は、ギルドも判別しづらいということらしい。


「でも、ここまで可愛いんですから、倒す必要もなさそうですね……」


 マリーが言うと、皆頷く。


 その後、ギルドで働く奴らが来て、マリーたちやロウガンとリンスは席を離れていく。ロウガンには一応、今日から精霊人たちの森から逃げてきた魔物たちの討伐をこなしていくと伝えておいた。


 さてと、俺もそろそろ行こうか。……しかし、ハクビ遅いな。


 とりあえずどんな依頼があるか見とくか。


 そう思い、依頼票のある所まで行く。すると、そこらに居た冒険者が俺の方を見ていることに気付く。


「……なんだ?」

「いえ、ムソウさん……ですよね……? 次はどんな依頼をするのか気になっちゃって……」


 傍の女の冒険者に聞くと、そう返ってきた。やっぱり派手なことはするもんじゃないな……。

でも、今日こそは普通の依頼を普通にこなしてやる! 俺が冒険者たちにそう言うと、なんだ、そうか、みたいな顔をしてばらけていった。よし、どういう評価になったかは別として、これで落ち着いて依頼を選べるな……。


 そう思って、討伐依頼のものを注視していた。


「……ムソウ、待たせたな」


 突然、声をかけられた。振り返ると、そこにはハクビが居る。


「おう。遅かったじゃねえか」


 俺がハクビに声をかけると、ガクッとうなだれた。


「ミサキ殿がな……いや、何でもない……」


 朝からやけに疲れている感じで、ハクビは俺に近づいてくる。ミサキのことだから、「寝起きに尻尾触らせて~!」とか言って、ハクビを困らせていたんだろう……。


 ハクビにウィズたちのことを聞くと、今はミサキの下できちんと魔法の修行をつけてもらっているところらしい。昼前には、こちらに来て冒険者として依頼をこなすそうだ。


 分かった、とハクビに頷き、一緒に依頼票を眺める。


 ……


 オウガの討伐 報酬銀貨1000枚 さらに素材の売却金 (報酬は討伐数により変動)要戦闘向きスキル

 グレムリンの討伐 報酬銀貨300枚 要戦闘向きスキル

 ゴブリンの討伐 報酬銀貨500枚 要戦闘向きスキル

 デビルスライムの討伐 報酬銀貨100枚 要戦闘向きスキル

 ワイアームの討伐 報酬銀貨500枚 要戦闘向きスキル

 ・

 ・

 ・


 ……


 う~ん……やっぱり、この中だとオウガが一番だな。ワイアームが未だに居るところを見ると、まだ、居たのかと頭を抱えるが、元々ここいらに棲んでいた個体と、ロイドが連れてきたワイバーンが生み出した個体と一緒になっていて、更に群れを成しているというが、ワイアーム自体は、ワイバーンよりは弱いので、そこらの冒険者でも対処できるという。

ただ、オウガは上級の魔物だ。なかなか、依頼に応じる冒険者は居ないという。ならばと思い、俺はオウガの依頼票をはがし、マリーの所へと持っていこうとした。すると、ハクビが俺の肩を叩く。


「ん? なんだ、ハクビ」

「あ……いや、一個だけでいいのか?」


 ハクビが不思議そうな顔で俺に尋ねてくる。え、依頼って重複して受けてもいいのか?


 ハクビに確認すると、それは別に構わないらしい。ただ、失敗すると払わないといけなくなる違約金が大きくなるとのことだった。


「まあ、後はあらゆる魔物に対しての準備をしないといけないからな、あまり普通の冒険者はやらないが、どうだ? ムソウなら問題なさそうに思うが……」

「じゃあ……そうだな、やってみるか」


 俺はそう言ってオウガ、ゴブリン、グレムリン、デビルスライム、ワイアームの討伐依頼票を持って、マリーの所へと向かった。


「マリーさん、この依頼を受けるができるか?」


 出された依頼票をみて、マリーは心配そうな顔をした。


「ムソウさん、依頼の重複というのは……」

「その辺はハクビから聞いた。俺からすれば問題はない」


 俺がそう言うと、マリーはちょっと考え込んで、


「かしこまりました。では、支給品を用意しますのでお待ちください」


 と言って、マリーは部屋の奥へと行った。しばらくすると、ギルドの職員を何人か連れて、荷物を置いていく。


 どうやら依頼を重複して受けると、その分だけの支給品を一気にくれるらしい。ちなみに失敗したら、その分の費用はこちらで支払うことにはなるがな。


 渡された支給品を異界の袋に入れて、俺達はギルドを出た。


 マシロから、精霊人の森方面の荒野をハクビと共に歩く。歩きながら、ミサキとの生活について話したり、討伐について話したりしている。


「今回のこの依頼……撃退ではダメなのだろうか?」

「どうだろうな……撃退したところで精霊人の森から依頼が来れば二度手間だからな。きっちり倒した方が良いのかもしれないな」


 せっかくワイアームを殲滅したんだ。精霊人たちにはゆっくりと過ごしてほしい。


「キュウッキュウッ♪」


 リンネは俺の肩の上で何やらはしゃいでいる。今回からは、リンネも加わる。ギルドに預けるという手もあったが、こいつの実力というものを見て、鍛えていこうとも思ったからな。


 現状は幻術しかわからないが、こいつの能力は他にもありそうだからな。なにせ山の大将の子供だ。若干楽しみでもあるな……。


 そんなことを思っていると、グレムリンの群れが現れた。


 俺達は臨戦態勢をとり、俺は無間を構える。数は十体といったところか。パタパタと飛んでいるが、そこまで高くは飛べないみたいだな。


「さっそくか。ハクビ、行くぞ!」

「ああ!」


 俺はグレムリンの攻撃を躱しながら、斬波を放っていく。ハクビは相変わらず、爪での攻撃や、拳闘を主に使いグレムリンを倒していった。


 あっという間に、辺りにいたグレムリンを退く。


 ……この調子で行けば今日中にはとりあえず、殲滅とはいかないまでも、依頼自体は何とかなりそうだな。


 俺達はその後も魔物たちを倒していった。


 デビルスライムは三十体以上で現れることが多く、ハクビは若干苦戦していたようだが、そこは俺が補佐してやった。


 ゴブリンは武具を身に着けている分、多く出てくると若干手こずったが、問題はなかった。武具を身に着けていない頭部や、関節などをハクビは器用に狙って、攻撃していた。


 精霊人たちの森から来たのであろう、ワイアームはグレムリンよりも高く飛ぶが、俺の剛掌波で弱らせ、低くなったところを、ハクビが狙って爪撃を繰り出し、倒していけた。

 しかし、ハクビの爪はやはり、刃こぼれしてきているらしく、段々と一撃では倒せなくなってきている。

そこで、俺がリンガとの戦いで編み出した、気を研ぐような感じで手にまとわせ刃状にすることを伝えると、ハクビはそれを爪で行った。すると、通常時よりも鋭さが増したと言って、どんどん魔物を狩っていった。


そして、ハクビは、魔物の臭いを嗅いで、位置を特定するという索敵能力に長けている。今回の依頼に関する魔物を探知すると、俺に伝えて、その場に移動し、更に敵を倒していく。

街道の近くに居た魔物はあらかた倒し、更に街道から離れた魔物たちも倒していった。


「お? あれはオウガだな……」


 しばらく他の魔物たちと闘っているうちに、オウガ三体を見つける。


「オウガが三体とはな。あれは確実に倒した方が良いな……」


 ハクビが呟く。一応、報告されている中では、この辺りの魔物たちの中で一番強いからな。俺もその方が良いと思った。


 と、そう言えば……。ふと、リンネを見ると、リンネもオウガを睨みつけているようだ。


「キュゥゥゥゥゥゥッ!」


 ふむ……こいつを渡してきたのがオウガだったからな。リンネにとっては嫌な相手かとも思ったが大丈夫らしいな。


「魔物にも自分にとっていい魔物と悪い魔物の区別はつくらしいな。まあ、人間も一緒だからな……」


 ハクビの言葉に、俺も納得した。人間にとって人間すべてが必ずしも味方とは限らない。俺達にとっては同じに見えるあのオウガもリンネにとっては山のオウガとは違う何かがあるのだろうな。


「キュウッ!」


 その時、突然リンネが俺から飛び出す。オウガの方に向かっているらしい。


「あ、馬鹿ッ!」


 俺はリンネを追いかけたが……あいつ、結構速いな……あっという間に遠くの方へ行ってしまった。前に競走した時にジンランに頼らなくても良かったんじゃないか?


 すると、オウガたちはリンネに気付く。そして、雄たけびを上げてリンネに襲い掛かろうとした。


 俺とハクビは気で攻撃しようと、力を溜める……。と、ここで、リンネの体が光る。


「キュウウウウ~~~ッッッ!!!」


 すると、リンネの周りに、緑色の小さな人魂のようなものが三つ浮かんだ。


「キュウッ!」


 リンネはそれをオウガに飛ばす。あんなもので何とかなるのか? とりあえず今は攻撃の準備を……と思っていると……


 ボウッ!


 リンネの放った小さな炎はオウガに当たった途端大きくなり、オウガたちをそれぞれ包んで激しく燃え上がった。


「ガアアアアアアッッッ!!!」


 俺達が唖然としている中、オウガたちは絶叫を上げ、息絶えていった……。


「キュウッ♪キュウッ♪キュウッ♪」


 リンネはこんがりと焼けたオウガの死体の周りをくるくると回りながら、はしゃいでいる。俺とハクビが近づいていくと、リンネは俺の方に駆けてきた。尻尾を振っている。

……褒めて欲しいんだな。俺はリンネの頭を撫でてやった。リンネはニコッと笑うと、今度はハクビの方にも駆けていく。


「……あ……私も……褒めないとな……」


 ハクビもリンネの頭を撫でた。リンネは嬉しそうにして、また、俺の肩に飛び乗った。


「なあ、ムソウ……」


 未だ状況の把握ができていないハクビは、未だリンネのやったことに疑念を抱いていた俺に話しかけてくる……。


「なんなんだ、これは?」

「俺が分かるとでも……?」

「いや、飼い主なんだし……」

「俺が分かるとでも……?」


 俺達はしばらくそこに立ち尽くしていたが、我に返り、オウガの死骸を異界の袋へとしまっていく。

 取りあえず、リンネが何を出来るのか、調べておく必要があるな……。

 俺は、リンネを地面に下ろし、さっきの炎を出してもらった。うん?今度は光らないな。普通に出た。


 さて、では鑑定眼で視てみよう。


 狐火

 妖狐の技の一つ。魔力のこもった炎で敵を焼く。威力は相手が大きいほど強く、大きくなる。


 ……と出た。


 なるほどな。さっきのはこいつの技だったのか。にしても、相手が強くなれば威力が上がるというのはどういう仕組みなんだ? リンネの不思議な力に、更に首を傾げるが、一つ、こいつの謎が解けて嬉しいな。


「妖狐の技の一つ……か」


 俺と同じく鑑定眼を使ってリンネを視ていたハクビが呟く。


「どうした?」

「いや……妖狐の技の一つ、ということは、妖狐だけの固有の技かも知れないということ、また技の一つということはこの先、この先そんな技を何個も覚えていくのでは、と思ってな……」


 ああ、なるほどな。技名も「狐」火だし、それは有るかもしれない。ひょっとしたら、こないだ俺達に使って見せた幻術も妖狐固有のものかも知れないな。


 そうなってくると益々楽しみだ。一体こいつはどこまで強くなれるのだろうか。


「……まあ、今はこいつのことはあまり気にせずに、依頼をこなそうか。まだまだ魔物は多いみたいだ」

「確かにな。私の鼻でもまだまだ、この辺りには多くの魔物の臭いがしてくるからな……」

「よし、では行くか。……ああ、この先はお前にも前に出て闘ってもらうぞ!」


 俺はリンネにそう言ってやると、リンネは力強く頷いた。


 こうして、俺達はリンネの特訓も兼ねた、魔物討伐を再開していった。

 リンネの狐火は追尾効果もあるらしく、離れている敵にも必ず当たっている。それは飛んでいる敵にも同様だ。倒しきれないときもあったが、そこは俺とハクビで対処することが出来ている。


 ハクビの方は以前に比べるとやはり、体の使い方や気の扱いがうまくなっているようにも感じる。狂人化の心配はなかった。


 俺はというと……まあ、いつも通りだ。ほとんどの敵は一撃で倒すことが出来ているが、あまり力を入れすぎると消滅してしまうことも多く、素材が手に入らないこともあって、その度に、ハクビに呆れられたように見られる。


 そこは、許してくれよ……。


 ひとしきり倒し終わって、ハクビが俺に言った。


「ムソウ。この辺りからはもう魔物の臭いはしない。そろそろ移動するか?」

「そうか……殲滅が目的ではないから、ここで引き上げてもいいが、まだ時間はありそうだな……よし……では移動するか」


 俺達は、魔物を探すため、少し移動する……。


 すると、荒野の真ん中に緑があり、泉が湧き出ている場所があった。


「む? オアシスか……?」

「おあしす? なんだそれは」

「ああやって、荒野や砂漠などに突然ある緑地地帯のことだ。ちょうどいい、昼飯がてら、少し休憩でもしよう」


 俺はハクビに頷き、そのオアシスに行って、食堂で買っておいた、弁当を食べ始める。

荒野の真ん中にこんなものあるなんてな。これからこういうところに行くときは、このオアシスというのを事前に聞いて移動した方が良いかもしれない。


 昼飯を食べた後、ハクビが……


「ムソウ、すまないが、ここで水浴びでもしていっていいか?」


 と、聞いてきた。ああ、ハクビは獣人だからな。体毛が多い分、やはり普通の人よりは暑く感じているのかも知れないな。


「構わない。リンネも一緒に頼めるか?」


 俺はリンネをハクビに差し出す。リンネも毛だらけだからな。多分、暑い思いをしているだろう。


「任せろ。……ムソウは良いのか?」

「俺は良いよ。辺りを警戒しておくから、ゆっくりしとけ」


 そう言って、俺はオアシスから離れていった。


 ――


 オアシスから離れていると、やはりと言うべきか、この荒野の中にある水場を求めて、魔物たちもやってきた。俺はそいつらをいったん、死神の鬼迫で追い払ったりしている。基本的に攻撃してこないものはこうした方が良いな。


 何でもかんでも斬っていると、ゼブルたちと一緒になってしまいそうだ。俺はその後も魔物たちを威嚇し続ける。


 ふと、辺りを見ると、魔物たちの姿は消えている。これなら大丈夫だろうと思い、俺は魔物と闘いながら集めた、荒野に落ちている鉱石を鑑定眼で視ていた。この中に素材でもあればまた、買い取ってもらうか、このオアシスに生えているものと合わせて調合するかしたいなと思っていたからだ。


 だが、鑑定眼で出たものは素材になりそうなものは無かった。一応、「給水石」という名称のある石がでてきた。これは今、俺が持っている調合の本には載っていないが、鑑定で視ると、何かの素材にはなるらしい。

なんでも、多く水を含むことが出来て、旅人の間では水筒代わりに使う者も多いという。だが、俺には異界の袋があるからな。これは必要ないかな。そう思ってとりあえずその石を異界の袋の中に入れた。


「待たせたな、ムソウ」

「キュウッ!」


 お、ハクビとリンネが戻ってきた。


 俺達は再び、魔物の討伐へと向かった。


 やはり場所を変えれば、また魔物は多く出現しているみたいだ。俺達は襲い掛かってくる魔物たちを次々に撃退していく。一応、ハクビにも、敵意のない奴は相手にするなと伝えておいた。そのおかげで、倒していく魔物たちの数は減っていく。素材も少なくなるが、報酬を受け取られることには変わりないので、それで充分という話で落ち着いた。


 そして、辺りに居る魔物たちをひとしきり、倒したり、追い払ったりすると、ハクビが何かに気付いたようにハッとする。


「ムソウ、この先から今まで嗅いだことがないような魔物のにおいがする……」


 そう言って、ハクビが荒野の先を指差した。


「ふむ……まだギルドが確認していない魔物の可能性もあるな。ちょっと行ってみるか……」


 俺達はその臭いのする方へと向かった。


 そして、そこに居たのは、巨大な牛のような魔物。大きさはワイバーンを越えている。頭には大きな角が生えていて、牙も生えている。背中にはたてがみもあり、まさしく怪物という様相だ。……牛というよりは猪にも近いな。


 明らかに強そうだ……。


「ハクビ、あれはなんだ? 知ってるか?」

「ああ……恐らくベヒモスだろうな。この荒野にいるとは聞いていたが、まさか本当だったとはな」


 ハクビの話によると、ベヒモスは、非常に凶暴な性格であるという。また、見た目以上に素早く動き、鋭い爪で襲ってくる。時にはワイバーンなども襲うという超級上位の魔物だ。


「……倒した方が良いのか?」

「こういう場合は、直ちにギルドに帰還し、魔物発見の報告をしなければならないが、アイツを放置すればここらの生態系もまた、変わるだろう。

 倒した方が良いのかも知れない」

「よし、分かった」

「え、ちょ――」


 俺は無間を手に持って、ベヒモスの前に飛び出た。


「ギャオオオオオオオ!!!」


 ベヒモスは俺を見るなり、咆哮を上げる。そして、そのまま突進してきた。角で刺す気か? 俺は跳躍しそれを躱した。

 ベヒモスの突進が空ぶった瞬間を狙い、斬波を放つ。するとベヒモスは大きく口を開き、俺の斬波をかみ砕いた。


 え……斬撃をかみ砕けるのか……。すげえな。


 ベヒモスは体を震わせた。すると、バチバチと体毛が電気を帯び始める。あれはやばそうだと直感した。


 そう思っていると、ベヒモスは俺に雷を放ってくる。


「うおっ!?」


 俺はそれを間一髪躱した。さすが雷……速いな。そして、生まれて初めて雷を躱し、何となく嬉しい気持ちになった。

 ベヒモスはそのまま雷での攻撃を連発してくる。俺はそれらを躱しながら、斬波を放ったりしているが、ハクビの言うように、意外とすばしっこく、斬波を躱しては、再び雷を連発し、こちらから攻撃させることを許さない。


「こうなりゃ……」


 ―おにごろし発動―


 俺はEXスキルを発動させ、神人化した。ベヒモスは一瞬たじろぐがまたすぐに雷を放出しようとしてくる。


 俺は奴が攻撃を仕掛けてくる前に光の棒を出し、地面に刺した。


 すると、ベヒモスが攻撃してくる雷は、すべて俺の差した棒めがけて集まっていく。避雷針のつもりで出してみたが成功したみたいだ。


 俺はそのまま滑空し、ベヒモスへと一気に近づいた。


「グオオオオオッッッ!!!」

「しゃらくせえっ!」


ベヒモスは、飛んでくる俺めがけて、下あごで思いっきりしゃくりあげようとして来た。俺は、それを躱し、ベヒモスの真下に潜り込むと同時に、大斬波を放つ。

斬ることは出来なかったが、ベヒモスは空中に打ち上げられた。


「グオオオッッッ!?」

「これならやりやすい……奥義・無斬ッッッ!!!」


 俺はその場から飛び上がり、無間で奴を斬りつけていく。連撃を受けて、ベヒモスの体には段々と傷が増えていく。何が起きているのかわからないという表情でベヒモスは体のあちこちから血を流していった。


「ギャ、ギャオオオオオオッッッ!」


 これで止めとばかりに、俺はベヒモスの首を斬った。ベヒモスの頭部は胴体から離れ、血が噴き出し、地面へと落ちていった。


「ふ~……終わったな」


 俺が無間を担ぎ、神人化を解いた。ワイバーンを襲うこともあるかも知れないというのは、あながち嘘ではないようだ。攻撃性は似たようなものだが、空へと逃げられても、雷を放ち、翻弄し、地上に降りれば、ベヒモスの分野といったところだろう。

 そして、俺の斬波をかみ砕くほどの強靭な顎と、牙。これに襲われれば、大概の魔物はやられてしまうな。

 ひょっとしたらこいつは、元々、ここいらを縄張りにしていたが、精霊人の森からの魔物で気が立っていたのかもしれない……。

 倒せてよかった。こいつが精霊人の集落や、マシロに来ていたら大変だったな。


 俺も、斬波をかみ砕かれるとは思っていなかった。もう少し、技の威力を上げるために、もっと多くの気を、出来るだけ早く溜められるようにしないとな。


「お~い! 終わったぞ! 素材回収手伝ってくれ~!」


 さて、取りあえずベヒモスの死骸をばらして、素材の回収を行わなければならない。その為、ハクビを呼んだが、ハクビはぽかんとしている。

しかし、リンネが飛び出すと同時に、すぐ我に返り、牙やたてがみなどをはぎ取っていった。


「……本当にお前は“規格外”だな」


 素材を剥ぎ取りながら、ハクビはそんなことを俺に言ってくる。お前も大概だろうが。ルーシーを倒した時のロウガンの反応を見せてやりたいものだ。


 しかし……作業を続けているうちに、全身、ベヒモスの血だらけになってしまったな……。俺も後で泉に浸かった方がいいかな。


 そんなことを思いながらも俺達はベヒモスの解体作業に取り掛かる。基本的には牙、角をとった後はすべて異界の袋に収納しておいた。

 その後、ある程度時間も経ったことだし、ベヒモスも倒せたし、そろそろマシロに帰るために俺達は帰路についた。

途中、俺は返り血を落とそうと泉で水浴びをした。泉が真っ赤になっていく様をみてハクビは微妙そうな顔をしていたが、まあ、またすぐに元に戻るだろうと言って、俺達は帰っていく。


 リンネは俺の肩で寝ていた。

 初陣だったが、こいつは大活躍だったからな。後で思いっきり撫でてやろう……。


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