第44話―四神と別れる―
朝飯を食べた後、支度を済ませて、俺達はマシロへの帰路につこうとしていた。ふと、ミサキを見ると、魔法を発動しようとしている。
「何やってんだ?」
「マシロのギルドへ、伝令魔法を使うの~」
魔力を込めたミサキは、自分の頭に手を置いて、何やらぶつぶつと独り言をつぶやいている。
そして、手を天に向けて鳥の形をした魔法を打ち上げた。精霊人の集落で、あの門番がやってたやつに似ている。
「……これで良し!一応、今回のあらましと、全員無事っていう報告と、これからマシロに向けて出発するよって伝えるようにしたよ~」
すげえな。たったあれだけの行為に、それだけの情報が組み込まれているとは、流石、“魔法帝”だ。
「おお、助かる。ギルドについてからいろいろ説明するのは面倒だからな。ところで、その魔法って魔法使いにしか使えないのか?」
「どうして?」
「魔法を使えない冒険者もそれ使えた方が便利かなって思ってな」
異界の袋や、結界を封じ込めた魔石を作るくらいだ。これも魔道具としてあればいいと思っているが……。
「魔道具として伝令や救援を呼ぶものはあるけど……」
「そうか。なら今度買ってみるかな」
俺がそう言うと、ミサキは頷き、その魔道具について説明しだした。
なんでも、ただ、伝令の魔法を打ち上げるものと、それに言葉を残すもの、さらに映像と呼ばれる、見たり聞いたりした光景そのものを加えるものと分かれているらしく、用途に応じて使い分ければ? という話だった。
「ムソウさんの場合は、強力な魔物の討伐依頼が主な活動内容っぽいし、倒したって言っても、信じてもらうまでに時間がかかると思うから、映像がつけれるもののほうがいいかも知れないね」
「何故だ?」
「今回のように、デーモンロードを倒したと言っても、証拠は残さなかったからね。その場合、査定に出す素材がないから、帰って話しても、なかなか信じてくれないと思うよ。
まあ、今回は、依頼自体が異常事態になっているというところで話が終わっているから、ロウガンさんは信じてくれると思うけどね。
仮に、ミニデーモン討伐依頼に最初からムソウさんだけが行って、デーモンロードも出たから倒した、報酬を上げてくれって言っても、信じてくれなかったと思うよ。
だから、私は伝令魔法にデーモンロードとか、あのえっちぃサキュバス、それに私達が倒したデーモンキングの映像をつけて送ったの」
ミサキの話を聞きながら、なるほどと思った。確かに、前のワイアームの依頼でも、大量のワイアーム及び、ヒュドラの素材を残していたからこそ、現地で精霊人たちを説得できたし、ロウガンたちに対しても、上手いこと話しが潤滑に進んだからな。
今回のように、本気で戦えば素材が残らなくなる可能性が多そうな俺にとっては、映像付きのものを買った方が良いってわけか……。
「……わかった。じゃあ、帰ったら、ロウガンあたりにでも頼んでみるよ。ありがとな、ミサキ」
俺が礼を言うと、ミサキはうん! と頷いた。
その後、俺達は帰路につく……。
森を歩いていくこと数時間、街道が見えてきた。振り返ると、デーモン達の山が遠くの方に見える。
リンネは俺の肩の上で、山をしばらく見続けていた。
故郷だからな。離れるのはやっぱりつらいか……。
「……リンネ、行くぞ」
「……キュウ!」
俺が問いかけると、リンネはコクッと頷いて、前を向いた。
体は子供でも、心は強いな、こいつは。俺はこの先、必ずこいつを強くさせないといけないな。そして、立派になったところを、あのオウガたちに見せてやらねえと……。
「よしっ! 皆~、森も抜けたし、ここからはバビューンっとマシロに向かわない?」
ミサキが突然、声を上げる。これまでの経緯から何か企んでいる顔だと分かるくらいに、ニコリと笑っている。
「なんだ? 何かするのか?」
「えへへへ……」
ミサキは、笑いながら四神達を見た。四神達は、そんなミサキに笑い返す。
「ミサキ様、我の準備はいつでも」
「私もです」
「俺もだ。体が疼いて仕方ない」
「我もだミサキ殿……」
四神達がそう言うと、なんのことだかわからない俺達にミサキが説明しだす。
何のことはない。ここからは、木もあまり生えていないし、四神達に騎乗して帰ろうということだった。
ああ、確かに、ぴよちゃんに乗って戦うハクビを見ながら、ああいう風に旅をしてみたいとも思ったな……。
俺達はミサキの提案にもちろん頷いた。……ちなみに、サンロウシも乗り手だ……亀だし、爺さんだからな……。
「じゃあ、誰に乗りたいか選んで!」
そう言って、ミサキは四神達に手を向けた。
「先に選んでいいぞ」
「ほんと~! じゃあ、私はエンテイさん!」
レイカは、エンテイの元へと近づく。小さいから、空を飛べるエンテイが良いのか? うきうきした様子で、エンテイに跨るレイカ。
「私は……リンガ殿だな」
ハクビは、そう言いながらリンガの元に近づいていく。ぴよちゃんが、あれ、我のところではないのか? という目で見ているが、ハクビは気づかない。それを見て、リンガが笑っている。
「じゃあ、俺はぴよちゃん様で……」
そんな、ぴよちゃんの元に、ウィズが向かう。それを見たミサキが、
「じゃあ、私もぴよちゃん~~~!!!」
と言って、ウィズの元へと駆けていき、ウィズの腕に絡みだす。皆、それを見て、頭を抱えながら、ため息をついた。
「では、儂は……エンテイ――」
「嫌です……」
サンロウシがエンテイを選ぼうとすると、言い終わらないうちにエンテイが拒否した。……昨日の一件だな……。これは仕方ないか……。
「ひどいのお~。ではジンラン、頼めるか?」
「ああ、良いぞ、サンロウシ殿」
さして、気にしていない様子で、サンロウシがジンランに近づいていく。寛容というか、何も気にしていないというか……。何となく、ああいう爺さんになるのも悪くはないなと、苦笑する。
さてと、俺はどうするかな……。
皆を見渡してみた。ぴよちゃんは、もうダメそうだな。三人乗るのは辛そうだ。リンガは、何か、ずっとうずうずしているようだ。ちなみにハクビもだ。ゆっくり帰るなんてしなさそうだな……やめとこ。残るはジンランとエンテイか……。
あ、そうだ。ここは……
「リンネ、どっちがいい?」
俺は肩に乗っているリンネに尋ねた。リンネは、二人の方まで行き、じっくりと二人を吟味する。子供だからな。俺じゃなくて、リンネに選ばせた方が良いだろう。
エンテイとジンラン、それぞれの隣で、レイカとサンロウシがおいでおいでとしている。すっかり、皆にも懐いたものだな。
そして、しばらく悩んだ挙句、リンネはどちらに乗るか決めたようで、その者の前に立ち、俺の方を振り返る。
「キュウッ!」
リンネの背後にはエンテイが居る。
なるほど、エンテイが良いんだな。エンテイの上で、レイカがわーい、と喜び、サンロウシはその光景を朗らかに眺めていた。
「分かった。……エンテイ、頼めるか?」
「はい、よろしくお願いします」
エンテイは俺も乗ることに頷いてくれた。一応、剥き身の無間は異界の袋の中に入れた。エンテイに当たると、悪いからな。
「じゃあ、皆、変身して~!」
ミサキが言うと、四神達は魔獣の姿になり、俺達はそれぞれ騎乗した。ちなみに、レイカは俺の前に座り、俺に背中を預けながら、背もたれだ~とか言っている。
「これなら、らくちん♪」
「じゃあ、リンネを見ててくれ」
そう言って、リンネをレイカの前に置いた。
「良いよ~!……フカフカだ~……」
レイカはそう言いながら、リンネを抱いた。リンネは嫌がっていないみたいだ。昨日は、喧嘩したみたいだが、一晩眠ったら、全部解決といった様子だ。これなら大丈夫だな。
「皆~! 準備は良い? それじゃ、しゅっぱ~つ!!!」
ウィズに抱き着く形でぴよちゃんに乗っているミサキが叫ぶと、ぴよちゃんとジンランは空を飛び始めた。リンガは、よっしゃあああああ~~~!!! と言って、すごい速さで、大地を駆けていく。ハクビも、早馬に乗るように、中腰になってリンガに騎乗しているようだ。
……ああ、やっぱり。あっちに乗らなくて正解だった。
「さて、私も行きますね」
「ああ」
「よろしく~!」
「キュ、キュウ~♪」
そして、最後にエンテイは翼を広げて空へと飛んだ。
宙に浮く感覚というのはこういうものなのか。なかなか、気持ちいいな。そして地面がだんだんと離れていく……。
「気分はどうですか?」
「ああ、最高だ。空からの眺めというのはこうも見事なものだな」
前を向くと、どこまでも続いていく地平線。横を見ると、雲が流れている……。こんな景色は流石に見たことがない。
「キュ、キュウウウ~~~~!」
リンネも楽しそうだな。レイカの腕の中で、すごく興奮しているようだ。レイカは……
「うう~、高い……怖い……」
高いところ苦手なのか……? リンネを抱きしめたまま動かない……なんでエンテイを選んだんだよ。
「俺が支えていてやるから、安心しろよ」
俺はそう言って、レイカの肩を持つ。
「ありがとう、ムソウおじちゃん……」
少しはレイカも落ち着いたみたいだ。やはり、200年生きていようと、精神年齢は子供なんだなと実感するな。
レイカの頭を撫でながら、しばらく景色を楽しむ。そう言えば、空を飛ぶ魔物などは襲ってこないな。恐らくだが、四神の気配に恐れをなして、近寄ってこないのだろう。一晩過ごしたり、覗きをするような奴らだが、ギルドの基準では、災害級だ。改めて、凄い奴らに跨っていると考えると、何だか、可笑しな気持ちになる……。
その後、しばらく飛び続けていると、エンテイが話しかけてくる。
「……ムソウ様、ミサキ様はどうですか?」
「ん? ……どう、というのは?」
「いえ、旅の間、ずっとご迷惑をかけていたんじゃないかと思って……」
ああ、気になるのか。……そりゃそうだよな、ああいう性格だからな。母親気質であるエンテイはやはり不安に思うようだ。
「そうだなあ……鬱陶しいことも多かったし、初対面の時が一番腹立ったな……」
「な、なにがあったんですか!?」
俺はエンテイに、ミサキと初めて会った時のことを話してやった。正直、ゼブルとの戦いよりも、ミサキが喚んだ……というか作った、あの魔龍の方が手ごわい感じだったからな。
俺が話し終えると、エンテイはため息をついて
「……申し訳ありません。ミサキ様はなんと言うか、いたずらっ子みたいなところがあるので……」
と言った。いたずらっ子で済む問題か? あれが……。
俺はずっと気になっていたことをエンテイに聞いてみた。
「なあ……何故、お前たちはミサキと契約することになったんだ? “魔法帝”と言えども、あんな小娘に……」
「あ……やっぱり気になりますよね」
「私も気になる~!」
レイカも、四神たちのことが気になるようだ。空を飛んでいる恐怖はどこへやらと言った感じになっている。、エンテイはフフッと笑って、ミサキとの出会いを語り始めた……。
◇◇◇
四神とミサキとの出会い……それを語るには、まず、ミサキがまだ四歳くらいの時にまで遡る。
当時のミサキは、生まれながらにして持っていた、EXスキルと、その過程で手に入れた絶大な魔力のため、ミサキが生まれた、リヨク領の住民たちに崇められていたという。
だが、そんな状態だと、同世代の友達もできることもできず、いつも一人で過ごしていた。
そこで、ミサキは魔法創造により、召喚魔法という新しい魔法を作った。
この魔法は魔物と契約をすることによって、いつでも喚べるというものだと言う。ミサキは、どんな魔物と契約しようかな~、と思いながら、リヨクの町中を歩いていた。
すると、道端で箱の中に入った、小さな魔物を見つけた。
「ピヨ~、ピ~……」
それは今のリンネくらいの大きさで、羽根の生えている魔物だった。そして、そこには
「拾ってください」
の文字があった。
ミサキは、その魔物が捨てられたということまでは考えつかず、「拾ってください」の文字を見て素直にそれを拾ったという。そして、名前を付けて育て始めた。
およそ五年後、その魔物は大きくなり、家の中では飼えなくなってきた。そこで、ミサキは召喚魔法の契約を行い、その魔物を外に放し、遊びたいときに召喚して遊ぶようになった。
……これが最初の契約獣、ぴよちゃんとの出会いだったらしい。……遊びたいときに喚ばれるって、ぴよちゃん、やっぱり苦労していたんだな……。
……しばらくして、ぴよちゃんは、3匹の魔獣と一人の青年を連れてきた。
「わあ~、ぴよちゃん、その子たちは?」
幼いミサキはぴよちゃんに連れられた青年と、三匹の魔獣に目を輝かせる。
「この子たちは、森に置かれていました。この方は、その子たちの付き人だそうで……」
ぴよちゃんの言葉に、青年は頷き、口を開く。
「私は玄武という魔物です。こちらのオピニンクス殿に聞けば、貴女は魔獣とも心通わせてくださるそうで……。ということならと、この三匹と共に、私も貴女の保護を賜りたいと思いまして……」
これが、ミサキと四神達との出会いである。サンロウシはこの頃、年長者として、他の三匹を護る立場にいたようだ。
エンテイの話によると、三匹と玄武はもともと、ある金持ちの人間によって飼われていたみたいだが、そいつが、愛玩動物としての三匹に飽きたらしく、玄武ともども森に捨てたという。
そして、玄武が幼い魔獣たちをこれからどうするかというときに、ぴよちゃんに出会い、ミサキのことを聞いたというのだ。
「ほご~?……保護か……何だか堅苦しいなあ~。友達になるならいいよ~!」
ミサキはそう言って、三匹の魔獣とサンロウシ、後に四神と呼ばれる魔獣たちと契約を結んだという。
「……ミサキ様はそれからというもの、遊んでもらいときは、私たちを呼んでいました。そして、ミサキ様が成長し、私達も共に成長し、数々の魔物、果ては壊蛇との戦いにも呼んで下さいました。
……森に捨てられた私たちにとって、ミサキ様とともにいることが、生きる理由となったのです。ですから、私たちはミサキ様の元を離れません。いつでも、いつまでも、私たちはミサキ様と共にいます」
エンテイはそう言って、笑った。
「ミサキは、魔物たちとでさえ、仲良くなりたいんだな……」
俺が言うと、エンテイはコクっと頷く。偶に、ミサキは闘い以外の雑用にと、四神を呼ぶこともあるそうだ。エンテイたちはそれくらい、自分でやったら? とは思いつつも、ミサキと一緒に居れる時間が嬉しいようで、不満には思うが、文句は言わないのだという。
マシロに居た時もそうだったが、ミサキはとにかく人懐っこい性格だ。俺を嵌めた時も、その後も、ミサキは十二星天というのにも関わらず、街の人に慕われていた気がする。
それは決して、ミサキが企んでやった結果ではなく、ミサキの性格に、多くの人が親しみを持った結果なのであろう。
その、気質に四神達も頼り、寄り添うようになったのではないかと。
かくいう、俺も、ミサキの人懐っこさには、悪い気はしていない。少々、鬱陶しいなあとは感じるが、その度に、少しだけ、楽しくなる気はしている。……本当に、少しだけ、だがな。
そんなことを思っていると、ミサキとウィズを乗せたぴよちゃんが横に来た。
「どう? ムソウさん、それに、レイカちゃん。空に飛んだ感想は?」
ミサキは俺に目を輝かせて尋ねてきた。
「ああ! 最高だ! お前の提案に乗って良かったよ!」
「こんな体験は、200年生きてきて、初めてだよ! ありがと~!」
俺とレイカが、ミサキに笑うと、ミサキは思いっきり笑った。ぴよちゃんも、ウィズも、エンテイも笑っている。
出会いは最低だったが、ミサキと旅ができて、本当によかったと思う。サネマサといい、十二星天って奴らは、こんなにも気持ちの良い奴らなのかと、心の中で笑っていた。
◇◇◇
また、しばらくすると、マシロの町が見えてきた。
俺達は地上に降り立つ。
そこには先に走って行った、リンガとハクビが居た。
「お? 遅かったなあ~」
リンガが挑発混じりに俺に問いかけてくる。
「競争じゃねえからな。ゆっくりと帰らせてもらったよ。ありがとな、エンテイ」
リンガの挑発を軽く流し、エンテイに礼を言うと、エンテイは手を振った。
リンガはそれをみて、何やらポカンとしているが、すぐさまハクビと共に、何やら話し込んでいる。
「ムソウ……最初から勝負する気なかったか?」
「では、我々の頑張りとは……?」
二人はそう言って、ガクッとうなだれた。
そんな二人を無視して、俺達はマシロに入ろうとするが、ミサキが声を上げる
「あ、待って。皆はここでお別れだよ」
ミサキがそう言うと、ぴよちゃんと四神達は、頷く。
そうか、お別れか……。さすがに災害級の魔物が五匹も街に入ったら大変なことになるからな……。
「え~っと……ウィズ君とレイカちゃん、ハクビさんにはすぐに会えるかも、だけど、ムソウさんには当分会えないかもしれないから、皆、今のうちに言いたいこと言っちゃって!」
と、ミサキは言う。すると、ぴよちゃんが前に出た。
「ムソウ殿、我はハクビ殿と共に戦ったが、次はお前と共に戦ってみたい。いずれそのような日が来れば、頼む……」
「ああ、そういう日が来れば……な。その時は俺の方からも頼む」
俺がそう言うと、ぴよちゃんはフッと笑って消えていく。
次に前に出てきたのはリンガだ。
「おい、ムソウ。俺はお前に負けたとは思っていないぞ。またいつか戦おう! その時こそ勝って見せるからな!」
「あ? じゃあ、次は、完膚なきまで叩き潰してやる。その爪も、牙も、今より鋭く、頑強に鍛えときな!」
リンガは、すごく嬉しそうなな顔をして、消えていった。
次に出てきたのはジンランだ。
「ムソウ殿。我らの闘いは、リンガのものと違って、本当に決着はついていない。あの時の言葉通り、お互い成長して決着をつけようぞ!」
「……相変わらずの偉そうな口調だが、まあ、良しとしよう。次は、本気で、俺の本当の力で、テメエも叩き伏せてやる。二度と、そんな口、聞けなくしてやるからな」
ジンランと俺は、笑い合い、ちょっと強めの握手をした。そして、ジンランもフッと笑い、消えていった。
「……ムソウ様」
次に来たのはエンテイだ。エンテイは何か悲しそうな目で俺を見ている。
「……貴方に会えてよかったです。あなたの様な方を背中に乗せることが出来て、私も光栄に思いました。本当にありがとうございます。また、あなたを乗せることが出来れば、私は――」
「ああ、その時はよろしくな。お前も、一気に面倒見る奴が増えて大変だろうけど、頑張れよ!」
俺がそう言うと、エンテイは少し俯き、寂しそうな顔をしたが、俺の言葉に頷いて、消えていった。
最後にサンロウシが前に出る。
「……ムソウ殿。此度は皆を助けてくださり、本当に感謝する。……そして、リンネ。そなたは必ず強くなる。頑張って儂らの様になるのじゃ。お主が、ムソウ殿を護ってやれるくらいにはな……」
「キュウッ!」
サンロウシの言葉にリンネは大きく頷く。
「今のは年寄りっぽかったぞ。……サンロウシ、お前らに会えて、俺の人生にまた一つ幸せな楽しみが出来た。だから、これからも、よろしくな……」
俺の言葉に、サンロウシも笑って頷き、リンネの頭を優しく撫でて、消えていった。
……後に残されたのは、俺とミサキと、ウィズ、ハクビ、レイカ、そしてリンネだけだった。急に寂しくなったな……。
リンネも寂しかったのか、皆が居た場所をしばらく眺めていた。だが、すぐ俺の肩に乗った。
リンネにとっては、魔獣の先輩みたいな感じで過ごしていたのかも知れない。俺は、リンネの頭を撫でた。
「……絶対強くしてやる。あいつらに負けないくらいに」
リンネは俺の目をまっすぐと見ながら、強く頷いた。そして、強くなったリンネが、あいつらと肩を並べて、闘っていく様を夢見ながら、街の方に歩いていった。




