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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
世界が動く
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第396話―祝言を終える―

 そして、カドルはコウカとの再会を改めて喜び合い、エンヤ達と初めて顔を合わせたコスケ達も満足し、俺達はその場を後にすることになった。

 エンヤ達も精霊としてそれぞれの武具に戻る中、コウカも人形に戻って行く。子供達二別れを告げ、シロウ達を改めて祝った後、最後にシンキに向き直った。


「じゃあ……シンキ。私の事はザンキやツバキさんに任せて、シンキは、私達の子孫、オウエンをよろしくね」

「はっ。身命を賭してお守り致します」

「サネマサさん、ジェシカさん、コモンさん、レオパルドさん、ジーンさんも、引き続き、この世界を……皆が護った大地をよろしくお願いします」


 十二星天に頭を下げるコウカに、サネマサ達も頷いた。

 安心したような顔で微笑むコウカ。そのまま、ツバキの持つ人形に戻って行った。


 皆が居なくなり、少し寂しくなったその場で、シンキが深くため息をつく。


「はあああ~~~……相変わらずのご様子で何より。お前ら、よくも俺を驚かせてくれたな……?」


 ジトっと、俺やツバキ、それにコモン、レオパルド、ジーンを睨んでくる。

 俺達はどこ吹く風と、笑い返してやった。


「世界の真実を秘密にしていたお前には負ける」

「ですね。まあ、それはジーンさんも同罪ですけど……?」

「まあまあ、許してくれ、コモン。あれが見られたのだからな」


 コウカの事を知ったシンキの反応を例に挙げるジーンの言葉に、レオパルドとコモンも、確かに、と頷いた。

 またまた、シンキの顔が赤くなっていく。


「……仕事、押し付けてやる」

「おーおー、言ってくれるなあ~。ちなみにだが、押し付けられるべき仕事も、押し付けられそうな仕事もきちんとこなしているからな」

「僕も同じです。職権乱用は駄目ですよ」

「儂の方も、クレナの調査の進み具合が予定よりも順調だ。押し付けられそうな仕事は無いな」


 シンキの文句にも、鼻で笑って返す三人。コモンは知っているが、レオパルドもジーンも、仕事が出来る奴という事の様だ。

 悔しそうに、ぐっと黙るシンキ。その後は何も言うことは無く、観念したように再びため息をつく。


「はあ……てことは、お前ら三人は、これまで通り、クレナに居るんだな。っと、コモンは防壁の修復か。順調……だろうな、お前なら」

「はい。あとひと月ほどで完了するかと。その後は、ソウブの橋ですよね? 既に――」


 っと、ここで、話が長くなりそうなら、屋敷でやれと、俺が二人の話を切り上げさせた。

 それもそうだなと、ひとつ頭を下げるシンキとコモンを皆で笑い、洞窟を出ることにした。


「良し……では、皆、今日は改めて、シロウとナズナの為、ここまでしてくれてありがとう」

「トウショウの里を代表し、妾達から感謝する」

「色々と準備が大変じゃったな。ムソウ殿、明日明後日は、ダイアン殿達も、アザミ殿達も休養として良いじゃろうか?」


 ジゲンの提案に、俺は頷いた。本当に、皆、よく頑張ってくれたからな。これだけの冒険者が休むという事についてはアヤメも了承してくれた。

 皆はどこか、ホッとしたような顔で、ジゲンに頭を下げる。


「何回目か分からないが、改めて皆、今日はありがとう。明日からも、俺は自警団の長として、この街を護っていく。安心して、冒険者稼業を続けてくれ」

「息抜きにはぜひ、高天ヶ原をよろしくお願いします。ジロウ……いえ、ジゲンお父さんも、ぜひ、来て下さいね」


 ナズナの言葉に、ジゲンはフッと微笑みながら頷き、二人の締めの言葉を聞いた後、俺達はぞろぞろと洞窟を後にした。


 その前に……。


「あ……ツバキ」

「え、はい。何でしょうか?」


 俺は皆と帰って行くツバキを呼び止めた。


「悪い。少しやることを思い出した。俺は後から家に帰るから、皆にもそう伝えておいてくれ」


 そう言うと、ツバキは不思議そうな顔をする。これ以上、この洞窟で何をするのだという顔だ。


「えっと……お一人で、ですか?」

「大した用事じゃないからな。すぐに帰るからよ」

「は、はあ……分かりました」


 最後まで困惑しながらも、ツバキは頷き、皆の後を追っていった。

 その先から、俺の事を尋ねる皆に事情を説明するツバキと、急いでご飯を作らないと、と言うたまやリンネの声が遠ざかっていく。


 そして、何も音が聞こえなくなった刀精の間で、俺は異界の袋からあるものを取り出した。


「さて……と。あの状況で、コウカ達をぬか喜びさせるわけにはいかないからな……まずは、俺だけで確かめてみるか……」


 俺が取り出したのは、一本の小太刀。かつて、トウヤの父、トウキに打ってもらい、カンナの10歳の誕生日の際に、渡そうと思っていたものだ。

 あれから、ずっと持っていた。大陸を統一した後、皆の墓も作って、エンヤやサヤ、エイシン、闘鬼神の他の皆の遺品と一緒に、これも供養の品と思ったのだが、この刀を見ていたら、あの時のカンナやサヤを思い出して、なかなか出来なかった。

 だから、常に携帯し、無くさないようにしていた。こちらの世界に来てからは、使うことは無かったが、異界の袋の奥深くに、大切に保管していた。


 今回、この場でこれを出したのは、ひょっとしたら、俺が世界を渡っている時に、この刀にカンナやサヤの魂が宿っていたらなと思ったからだ。

 死んだ者の魂は、刀精に成れば鬼族のシンキや龍族のカドルなど、魂の感知が出来る者でも、感知できなくなるという特性がある。なので、エイシン達の魂が、サネマサ達の持ち物に宿っているという事に、シンキは気付いていなかった。

 そのことが分かってから、あれから、コモンとシンキの協力により、王城に補完されている太古の品々に、サヤやカンナの魂が宿っているか確認して貰っていた。

 しかし、結果は今の所どれも、ハズレだった。


 その時、俺が考えたのは、サヤとカンナは、俺達が今居る人界には居ないという可能性。サヤを最後に確認したタカナリは、サヤは冥界に行ったと語っていた。

 ならば、肉体ごと人界の外の亜空間からこの世界に来た俺の持ち物にこそ、サヤかカンナは居るのではないかという可能性に行きついた。


 しかし、簪にはハルマサとツバキ、無間にはエンヤが宿っているだけで、他の物には、誰も宿っていないことに気付く。

 これは、俺の自己満足な考えでしか無いが、サヤとカンナならば、俺について来るように、人界に来るのではないかと思っていた。俺を船として、人界に戻れなかった二人が、エンヤ達も居る人界に来たのではないかと……。


 確認していないのは、この小太刀だけ。ずっと異界の袋に入れていたのだから、出られなかったのではと思い、俺は小太刀に語り掛けた。


「……居るなら出てくれ……シンキも……エンヤも……エイシンも……コウカも……皆、ここに居る。俺が護っている……だから……」


 俺はそのまま、小太刀を掲げた。


 ……しかし、結局、小太刀は何の反応も示さなかった。


 つまり、小太刀にも、サヤとカンナは宿っていない。

 ……まあ、ほとんど無謀な可能性だったので、そこまで落胆はしていない。寧ろ、居たとしたら、コウカ達をまた、ここに呼ばないといけない所だったし、だったら、皆が居る時にやれよ、という突っ込みが来そうだったので、どこかで安心していた。


「……そう簡単には、姿を見せないよな……流石、サヤ……カンナは、母さんとコウカに影響されたか……?」


 エンヤ達と違って、俺の前にあっさりと姿を見せない二人に、これも、俺に対する悪戯か何かかと思い、思わず苦笑いする。


 そして、ため息。


 会えない……という可能性も、やはり考えている。エンヤ達と再会できたのも、凄く運が良いからだ。

 普通は、死んだ人間には、二度と会えない。それがこの世界のみならず、どこにでも通用する、絶対的な決まりだ。


 だが、それで片付けられるほど、話は単純ではない。悠久の時を経て、エンヤ達は俺と再会した。シンキも今日、コウカと再会できた。

 希望を捨てるわけにはいかない。シンキやコウカには悪いが、二人に一番会いたいのは、俺だ。自分の願いくらい、自分で叶えたい。


 もう一度、二人と暮らしたい。

 サヤの悪戯だって、笑って許せる。カンナの我儘にだって、何だって応えてやれる。

 サヤに新しい友達が出来たことを一緒に喜んでやれる。カンナとコウカの結婚を改めて祝うことが出来る。


 二人の笑顔を、ずっと護ってやれる。


 だから……


「……絶対、見つけ出してやる。待ってろよ、二人とも」


 誓いを新たにした後、小太刀を異界の袋に仕舞い、俺はその場を後にした。


 ◇◇◇


 祠を出た時には、日も暮れて、薄暗くなっていた。しかし、まだ皆に間に合うかと思い、少し急いで帰路についた。

 だが、結局皆と合流したのは、家の前だった。既に、アヤメとショウブは上街に帰り、シロウとナズナは高天ヶ原に戻っていった。

 何をしていたのかと問うジゲン達に、野暮用だと応えて、皆と一緒に門をくぐる。


 そして、たま達女中は急いで晩御飯を作ろうとしていたが、俺はそれを止めた。


「お前ら、朝から祝言準備で忙しかっただろう。飯は良いから、着替えて先に風呂に入って来い」

「頭領……ありがとうございます。ですが、夕餉の方は……?」

「祝言で自警団の長達に渡す予定だったものを少し貰っている。後は、俺とコモンで作っておくから、お前らも休んでろよ。爺さんもな」


 女中達は頭を下げながら、家の中へと入っていく。たまも、ジゲンの手を引きながら、自室へと向かった。

 皆、一日中忙しかったようなものだからな。ダイアン達にも、飯が出来るまで風呂にでも入ってろと言っておく。

 シンキ達十二星天も、一応客人だから、何かをさせるわけでもなく、くつろいでもらうことにする。

 ツバキとリンネは、俺達を手伝うと言っていたが、二人も綺麗な着物を着て、少しばかりの化粧をしていたので、着替えて風呂に入ってもらい、十二星天のもてなしを頼んでおいた。


 そして、俺はコモンを連れて炊事場へと向かう。


「あの……何故、僕なのですか?」

「手際が良いからな」

「それだけですか!?」


 コモンは驚いた反応を見せるが、本当にそれだけである。何か、話したいことでも、とコモンは思っていたようだが、特に無い。

 だから、人数分の刺身をコモンと共に盛り、一気に米を炊いて貰った後、汁物を作って、皆の料理を作り終える。


「ほらな。便利なスキルだ」

「アハハ……ですが、そうですよね。本来、EXスキルと言うのは、こういうことに使った方が良いのかも知れませんね」


 絶妙な温度調整で美味い米を炊き上げたコモンは、苦笑いしながら頷く。

 確かに言われてみれば、特別な力というものは闘いではなく、こうやって生活に役立つように使った方が良いのかも知れないな。


「となると……」


 俺はコモンにフッと笑い、神人化した。そして、光葬針の武者を五十ほど配膳用に生み出した。

 これで、一気に料理を皆の元まで運べると笑っていると、コモンは少し驚いた顔をしていた。


「少し見ない間に、増えました?」

「ああ。もっと生み出せるが、溢れそうだからな。このくらいにしておこう」

「ムソウさんもまだまだ成長するのですね……」

「そんなに引いた顔をするなよ。というか、それはお前もだろ。トウヤようにスキルは極められそうなのか?」

「意外と難しいですが、ほんのり温かい炎を生み出せるまでには成長しました」


 そう言って、コモンは小さな炎を生み出し、俺に纏わせた。本当だな、ほんのり温かい……。


「これをどのくらいまで下げると、極めたってことになるんだ?」

「トウヤさん曰く、夏を冬にするくらい、とのことです」


 ……無茶苦茶だな。まあ、俺も自分のスキルの事があるからあまり言えないが、コモンのスキルは、やはり、十二星天の中でもかなり強力な部類に入るようだ。使い手がコモンで良かったと何となく思う。


「大変そうだな……だが、トウヤにも出来たんだ。お前も頑張れよ」

「はい。ありがとうございます」


 コモンは頷いて、料理を運んでいく。俺も武者たちを操って、皆が待つ大部屋へと料理を運んでいった。


 部屋では、闘鬼神のほぼすべての人間達が団欒としていたが、突如現れた、光る武者たちにギョッとした顔になる。


「うおっ!? って、頭領か!」

「おい、ムソウ。脅かすなよ……」


 身構えるダイアン達だったがすぐに平静を取り戻し、シンキ達はやれやれと頭を掻いていた。


「こんなことで驚くな。コウシ達が呆れてるぞ」


 思いのほか面白い反応を見せたダイアン達を一瞥し、料理を並べていると、ジゲンが朗らかな笑みを浮かべながら頷いていた。

 コウシ達の意志を継いだ以上、責任をもってダイアン達含め、闘鬼神全体を更に強くしていくという意志を感じ、お手柔らかに、と微笑む。

 俺達とは逆に、EXスキルをこういうことに使っていることに関して、呆れていたシンキは、武者から料理を受け取ったツバキが、障壁で皿を浮かせる光景を目にして、更に唖然とした顔をしていた。


「おい、ツバキ。そんな使い方するなよ。それでコウカ様を御守りすると考えると、何か、微妙な気持ちになって来る」

「……ツバキ様も、こういう使い方をしていたと聞きましたよ?」


 ツバキの言葉に、シンキは呆然とした。


「え……初めて知った……」

「まあ、EXスキルってのは、使い方を選べば便利だからなあ~。俺はスキルを極めているだけだ。面白い使い方が出来ねえ」


 ちっこいツバキの真実を知り、今まで知らなかったと、少し落ち込むシンキに代わり、サネマサはツバキから皿を受け取り、皆の前に置いていく。

 配膳を手伝ってくれたサネマサに、ツバキはクスっと笑った。


「“大師範”は、そのままの方がよろしいかと。本当の強さというものを教えてくださるので」

「おー……って、どうした? 何かいつもより優しい気がする」


 いつもなら、皮肉交じりに何か、毒づくところを素直にサネマサを褒めるツバキ。何かがおかしいと、サネマサは手を止める。


「いえ……刀精に成ったとは言え、コウシさん達が居なくなり、“大師範”も寂しいのではないかと思いまして……」


 その一言に、サネマサはかあっと顔を赤くし、皆は笑った。


「さ、寂しくねえよ! お前らも笑うんじゃねえ!」

「まあまあ、サネマサ様。これからは、俺達が居るんで安心してください」

「おい、ダイアン! 安心って何だ!? 寂しくねえって言ってんだろ!」

「そうか、サネマサ。王都で一人で寂しかったんだな。偶には、武王會館を休んでも良いし、俺も仕事は振らないようにしよう。ここに帰って、ゆっくりするのも悪くないぞ」

「別に王都でも寂しくやってねえよ! てか、武王會館に居る以上、一人じゃねえ! お前らも居るだろうが! というか、元々、俺に王城からの仕事は殆ど無いだろ!」


 そう言えばそうだと、シンキはうっかりという顔をする。昼間はコウカに弄られた分、夜は皆と共にサネマサを弄る分、コイツも底意地が悪いのだろうと感じるが、面白かったので止めなかった。


「サネマサ。これからは、無理に寂しい立場になることもないぞ。まだ、儂が居るのじゃから、また二人で余生を楽しもうではないか」

「いや、ジロウ。それはありがたい提案だが、俺は寂しくねえって……おい、誰か俺の味方は居ないのか。ムソウ――」


 助けを求めるように、俺に悲しい目を向けてくるサネマサ。

 しかし、それを遮るように、コモンが身を乗り出す。


「あ、ムソウさん。早いところ配膳を終わらせましょう」

「ああ、そうだな」


 コモンに頷き、光葬針の武者を操り、配膳を進めていく。


「ジェシカ――」

「ロロさん。今日はお疲れ様です。私は明日、王都に戻りますが、引き続き、ロロさんはギルドでのお仕事、頑張ってください」

「はいっ!」

「あ、ですが、一週間後に治癒院にて、新人治癒士への講義を行いますので、手伝って下さると助かります」

「分かりました。出来れば、私も参加したいですが……」

「ええ、もちろん。元より、そのつもりですよ。しっかり学んでくださいね」


 ジェシカはそんなこともやっているのか。邪神族の襲来が懸念される今、治癒院の戸を叩く数も増えているようだ。それだけ、命を護りたいと思う者達が増えたという事で、ジェシカは、そんな者達に医術や回復魔法の技術を伝えている。

 ギルドや騎士団から運ばれるけが人や病人の治療もあるのに忙しいことだな。シンキによると、一応城からの補助金は出ているそうだ。


 それから、魔法と言えば、という事で、ミサキにも協力を仰ぎ、コモンの手伝いの傍ら、ジェシカの手伝いも行っているという。


 アイツもアイツで大変なんだな……。


「ん? ロロが王都に来るのか……セイン達を見張っておかないとな」

「ご心配なく。何があっても、私が護りますから。シンキさんはご自身のお仕事に専念してください」

「そうか……じゃあ、任せる」


 天上の儀で危険な思想を持っていることが分かったセイン。そして、それに迎合する者達は、俺の事を敵視している。当然、十二星天の会合で啖呵を切ったロロにも良い目を向けていない。

 ロロが王都に居ると知るや、何をするのか分からない以上、シンキがセイン達を警戒し、対処すると提案したが、ジェシカが絶対に手出しさせないようにすると申し出たことにより、シンキは自分の仕事に専念する。

 邪神族の存在によって、危機感を抱いた者達が集まるのは、治癒院だけではない。力を付ける為と武王會館の門を叩く者も増えている。

 また、ギルドで冒険者登録をする者達も増加しており、各機関への資金繰りの他、ソウブの橋建設の為の予算決定など、レインの治安維持以外にもシンキの仕事は多い。

 言い方があれだが、余計な仕事をシンキに回すわけにはいかないというジェシカの言葉に、シンキは甘えることにしたようだ。良い言い方をすれば、ジェシカ達を信頼し、頼ることにしたみたいだな。

 エレナがすまない、というカドルの言葉に、シンキは笑って頷いていた。

 エレナの件については、祠でも話したが、本当に早いところ解決したいものである。


 さて、ジェシカに助けを求めたが無視されたサネマサは、更に誰か居ないかと皆を見回す。


「レオ――」

「ジーン、樹海の調査の次はどこに行くつもりだ?」

「魔獣の大山だった山だ。どのような魔物が居るのか調査するから、寧ろレオの力が必要になるだろう」

「破山大猿もゴブリンもオークもムソウが殲滅したが、そこを狙ってオウガやトロールが群れを成しているって噂があったな……分かった。キキ、リン。樹海の次は山だ。良かったな。樹海に比べるとそこらを駆けまわれるぞ」

「ふんっ! そう言って私達をこき使うという魂胆なのはお見通しですわ!」

「こき使うって何だよ。何度も言うが、お前らがついて来たんだから、せめて仕事はしてくれ」

「僕達は遊びに来たんだ! 遊ばせろ!」

「だから、山ではそこらを駆け回るついでに魔物達を近づかせないようにだな……はあ……ルイ、樹海終わっても、調査の手伝いに来てくれ……」

「ええ、分かったわ」


 レオパルドが何を言っても、キキとリンはごねる。レオパルドは、どこか諦めたかのような顔で、ルイに助けを頼んだ。二つ返事で承諾するルイ。

 今の樹海調査でも、ルイは進んでレオパルド達の護衛に参加している。理由は、ご覧の通りと言うか、予想通りと言うか、調査中、キキとリンが下手な事をしないようにする為の子守役だ。

 俺やジゲンの見立て通り、面倒見がいいルイは、調査中のレオパルドとジーンとそれを手伝う者達、何かあった際に闘う者達、そして、索敵をするリアと違い、皆の邪魔をしないように、キキとリンを見張っている。

 当初は言う事を聞かなかったようだが、キキがジゲンにぞっこんになった辺りから、何かあった際は、ジゲンか、二人がこの屋敷の主と思い込んでいるツバキ、たま、リンネに言いつけると、二人を半ば脅すようになったらしい。

 結果、二人の優先順位の上位にルイも食い込み、何故か逆らえない立場になっているようだ。


 これからも外に出る二人の側にルイが居続けるという事が判明し、少しつまらなさそうな顔をするキキとリン。

 しかし、俺が、


「いや、近々コクロに行くから、ルイもその準備をしていて欲しいんだが……?」


 と言うと、少しばかり解放された、という顔になる麒麟の二人。そして、ああ、そうだったという顔のルイとレオパルド。

 色々な事が立て込んでいて忘れていたのだろうな。正直、俺もさらりと受け流すところだった。

 コクロには、来週あたり出発するつもりだ。セインが絡んでいることもあり、取り組むのは早い方が良い。

 出発すると言っても、陸路を行くのではなく、コモン達による転送魔法でコクロに行く。少し残念だが、陸路だと、少なくてもひと月は掛かる。背に腹は代えられないと、この方法を選んだ。

 何気に、次の予定を話すのは初めてだったので、リンネに、


「つぎのたび、たのしみ~!」


 と、喜ばれた。そして、ダイアン達には、ようやく予定を話してくれたと、少し呆れながらも、牙の旅団として、また、俺と合同で挑む大規模な依頼に応えるためと、やる気を新たにする。


 というわけで、ルイはレオパルドの頼みを断ることになり、遊んで良いんだな!? と迫られるキキとリンに頭を抱えるレオパルドに、サネマサの声はまったく届いていなかった。


 誰も味方が居ないという事を確認したサネマサは、ガクッと項垂れる。


「……はあ」


 思わず漏れたため息に、側に居たたまが応えた。


「やっぱり、寂しいの?」


 少し意地悪な笑みを向けているたま。近くでジゲンがニヤニヤしている。何か吹き込んだらしいな。

 サネマサはパッと顔を上げ、たまの体をくすぐり始めた。


「寂しくね~! こんな騒々しい場所で寂しいわけねえだろ~!」

「アハハハ! く、くすぐった~い!」

「と言うか、コウシ達が居なくなって寂しいってんなら、ジロウも同じだからな! たま、俺が居ない時でも、今まで通り、ジロウを頼んだぞ!」

「わ、わかってるもんね~! サネマサ様も寂しくさせないもんね~!」

「だ~か~ら~! 寂しくねえんだよ!」


 そして、更にくすぐりを強めるサネマサ。それと同時に、更に楽しそうに笑うたま。

 サネマサを完全無視していた俺達も、たまの笑い声に呼応するように、皆で笑っていた。


 その後、無事にシロウとナズナの祝言を終えた事、牙の旅団を襲名した事、シンキに至っては、コウカと再会できたことを祝う、そして、カドルとのお別れ会も兼ねた晩餐が始まり、俺達は夜遅くまで楽しんでいった……。


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