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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
世界が動く
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第393話―“鬼姫”の祝辞―

 急遽追加という形になったが、アザミ達の舞に満足した俺達は、その後、残っていた料理の数々を平らげていく。流石に残すのは勿体ないからな……と、思っていたが、残ったら残ったで、クサツ等、遠方から来た自警団の長達への土産にしたり、高天ヶ原で働く者達への夕餉になるそうだ。

 今更言われてもな、と思うくらいに、卓の上の皿は開いているものが多い。少しばかり、困った顔のコスケだったが、たまが、


「こんなこともあろうかと、たっくさん作ってるよ~!」


 の、一言により、安堵の顔を浮かべる。胸を撫で下ろすコスケに、自慢げな顔のジロウとクサツ。温泉街の皆にも、たまの料理を食べさせると、クサツもご満悦だった。

 そう言えば、ジロウは今回、元に戻るまでの時間が長いな。そう思ってシンキに確認すると、フッと笑みを浮かべながら、懐からジロウが使った、時間魔法の魔道具を取り出した。


「こうやって、ずっと魔力を込め続けていれば問題ない」

「大丈夫なのか?」

「そんな簡単には壊れないだろう。あれでもミサキの仕事は完璧だからな。量産できないのが、難点だが、これほどの品をそんな簡単に――」

「いや、魔道具じゃなくて、お前の身だ。魔力流しっぱなしで大丈夫なのか?」

「ああ、そっちか。実を言うと、結構キツイから、さっきからジェシカ達と回しながら使っている」


 ジロウの為にここまでするなんてな……。よく見ると、確かにコモンやジェシカが、酒や食い物とは別で、魔力回復薬を呑んでいたり、ジェシカに至っては、自分のスキルを使って、魔力を回復させたりしている。

 ここまで来たら、せめて今日が終わるまではこうしているつもりの様だ。

 取りあえず、皆には、頑張れと念じておいた。


 さて、残っていた料理を片付けた所で、シロウとナズナにより、閉式の挨拶が行われ、披露宴は締め括られた。

 この後は、上街から下街へと移動しながら、二人の姿を、街の衆に見せつけるという段取りだ。

 四天女を始めとした妓女達とクサツは祠には行かないので、ここでいったん別れる。

 カサネが四天女達にデレデレしながら別れの言葉を言っている横で、クサツはジロウと固く握手を交わしていた。


「では、ジロウ殿。改めて今回はおめでとう。アンタの家族を見ることが出来て良かった。たまちゃんが大きくなって祝言を挙げることになれば、また呼んでくれ」

「当然だ。まあ、その前に、たまの旦那に相応しいか、俺とアンタで見極めねばな」

「ハハハ……ジゲンさん、やっぱりそっちの方が良いぞ。そっちの方が安心できる」

「む……そうか。だが、たまの前では優しい「ジゲンおじいちゃん」で居たいから、勘弁してくれ」


 ジロウの頼みに、苦笑いしながら頷くクサツ。たまが、なんのはなしー? と二人の顔を覗き込むが、クサツも何も言わず、たまの頭を撫でた。


「へんなのー。おしえてよ~!」

「また、教えてあげるさ。その時は、また、ノボリ達も連れて来る。たまちゃんもジロウ殿も、また、うちに遊びに来るんだぞ」

「ああ、いずれ。またな」

「皆に会いに行くからね~!」


 たまはそう言って、クサツの胸に飛び込んだ。最後まで嬉しそうに、たまを堪能するクサツと、うんうんと頷くジロウを見ながら、確かにこの二人が居たら、たまの旦那も大変だなと苦笑いする。

 やがて、それぞれの別れが終わった後は、十二星天全員の合同による、転送魔法が使用された。

 流石にこの人数を一人が、というのは不可能らしく、集団術式と同じ要領で行われる転送魔法は、相乗効果で魔法の効果を更に強力にし、俺達は一瞬で、上街のギルドへと移動することが出来た。


 ギルド前には、ミオンを始めギルドで働く者達、ヴァルナを始めとした天宝館の職人達、そして、先ほど別れた貴族達含め、上街中の住民達が集まっていた。


「アヤメ様、お疲れ様です。そして、シロウさん、ナズナさん。この度は改めておめでとうございます」


 皆を代表して、ミオンがシロウ達を祝う。シロウとナズナは嬉しそうに笑みを浮かべながら頷いた。


「ありがとう、ミオンちゃん」

「いつもアヤメさんがお世話になっております。これからも、よろしくお願いしますね」

「はいっ! 頑張ります!」


 こぶしを握って強く頷くミオンに、シロウ達も安心したように笑っていた。

 そして、ヴァルナ達からも祝いの言葉をかけられていく中、アヤメからこれからの段取りの説明がされた。


「え~っと、まず、リンネ。大きくなって二人を乗せて欲しいんだが、大丈夫か?」

「うん! リンネ、がんばる!」

「ありがとう。で、その横に、叔父貴とコスケが並び、後に俺とショウブ、ジロウ一家、コウさん達、見届け人の十二星天、そして、闘鬼神が続くようにしてくれ」


 並び順は、新郎新婦が目立つところに、そこに並んで親族、後ろに見届け人、その後に参列者が並ぶようだ。アヤメに頷き、ダイアンやアザミに準備をするように促す。

 すると、困った顔をしたレオパルドが、不満そうな顔のキキとリンを俺達の元へ連れて来た。


「あー……ムソウ、シンキ、アヤメ。少し、相談なんだが……?」

「何か問題でもあったか?」

「その……二人が……」


 レオパルドは視線を落とし、キキとリンに話をするように促した。


「リンネばかり目立ってずるいぞ!」

「私たちも先頭を歩きたいですわ!」


 二人の申し出に、ぽかんとする俺達。レオパルド曰く、ただ歩くだけよりも、キキとリンも、獣の姿になって、衆目の前で、その雄姿を見せびらかしたいとのこと。

 自分達は、人々に崇められる神獣だから、後ろに続いて歩くという事はしたくないそうだ。

 レオパルドも大変だなと思いながら、ここまで大して困らせてこなかった二人からの我儘だ。どうしたものかと悩んでいると、ジロウが意見を出す。


「なら、俺とたまをキキちゃんが、コスケをリン君が乗せれば良いだろう。若返った俺はともかく、コスケは歳だし、たまにも少々きついだろうと思っていたからな」


 ジロウの考えに、確かにそうかと思いつつ、ジロウに懐いているキキはまだしも、リンは大丈夫だろうかと首を傾げた。

 すると、少し手伝ってくれと俺の手を引きながら、二人の前に立つジロウ。そして、キキ達にニコリと笑いながら、口を開く。


「話は決まった。キキちゃんは、儂とたまを乗せてリンネちゃんの横を歩くように」

「は、はいっ! お爺様!」

「それで、リン君はコスケを乗せてくれ。アイツも歳だからな」

「なっ! ど、どこの馬の骨とも分からない人間を、僕の背中に乗せるというのか! 嫌だ!」


 ほらな。キキはすぐに納得したが、リンはそこまで親しくもない人間を背中に乗せるという事はしたくないようだ。

 この様子だと無理やり乗せた所で、何をするのか分からない。ここから、どうやって説得するのかと思っていると、俺の横で笑顔のまま、ジロウはゆらゆらと闘気を解放させた。

 天災級の神獣であろうが、心は子供。ジロウの気迫に、リンは顔色を悪くしながら慌てる。


「お、おいぃ! じ、爺さん! 何を――」

「リン君……今日は、俺の“家族”の大切な日だ。コスケも俺の家族。アイツを悪く言うのは許さない。このまま、リン君の願いは聞かないという考えも出てくるが……どうする?」

「わ、わかった! 言うことは聞く!」

「よしよし……それから、二人に言う事がある。祠に行くまで……いや、行って勝手なことするようなら、許さねえからな。俺も……ムソウ殿も……!」


 二人を威圧するように、更に闘気を解放するジロウ。そして、チラッと俺に視線を向けてきた。なるほどと思い、俺も闘気を解放し、少しばかり死神の鬼迫をぶつけた。


「ひっ! ……ちゃ、ちゃんとします、お爺様……」

「や、やる! 僕もちゃんと言う事聞く!」


 そのままの勢いで、キキとリンは獣の姿となった。その姿に納得したジロウはスッと闘気を収める。終わりか、とため息をつき、俺も闘気を収めた。


「それで良いんだ。さて、では、コスケを頼むぞ、リン君。たま、今日はリンちゃんが背中に乗せてくれるそうだ。行くぞ」

「う、うん……たのしみだなあー……」


 キキとリンを黙らせたジロウの行動には、流石のたまも若干引いたのか、棒読みで喜びながら、ジロウの手を取り、キキに跨った。


「やれやれ……ジゲンさんだった頃が恋しくなってしまった……リン君、我が主が申し訳なかった……まあ、よろしく頼むよ」


 コスケを頭を掻きながら、申し訳なさそうにリンに跨る。リンは何もすることなく、コスケを受け入れ、そのままスッと立ち上がる。取りあえず、麒麟の二人はどうにかなったとため息をついた。

 ジロウの行動の所為で、その場は静まり返っていたが、一人、レオパルドだけは喜んだ様子だった。


「そうか……あの二人を黙らせるにはああすれば良いのか……」


 多分、違うだろうなあと思いながら、俺達は準備を再開する。

 全員で列を作り、最後にリンネに変化して貰った。


「結構重要な立ち回りだが、大丈夫か?」

「クワンッ!」


 リンネは自信満々に頷いた。これなら大丈夫だろう。


「リンネちゃんに跨るのは、初めてだな……あの時は、親父に乗せてもらえなかったし」

「あの時って?」

「闘宴会との闘いの時だよ。ボロボロの状態で、お前を屋敷まで自分の足で運んだのは良い思い出だな……」

「そう……ありがとね、シロウ。いつも護ってくれて」

「何だ、急に。これからも護ってやるから、そんなに改まるなよ。さて……じゃあ、リンネちゃん、よろしくな」


 こんな時でもいちゃつきながらリンネに跨る二人を間近で見ながら、少々顔が熱くなってくる。

 アヤメも同様の反応をしながら、さっさと乗れ! と急かしていた。

 取りあえず、これで準備は整ったと思い、俺もツバキ達の元へと戻った。


「どうされました? ムソウ様」

「何でもない。さて……いよいよ祠だ。お前も準備は良いか?」


 最後の確認と、ツバキが下げているコウカの人形に語り掛けると、薄く光を放つ。


「大丈夫そうですね」

「だな。これで後は、祠に行くだけ……っと、カドルはどこだ?」


 ふと、辺りを見たが、気付いたらカドルの姿が見えなかった。そう言えば、この隊列にも参加していないようだったが、どこに行ったのだろうかと首を傾げていると、ツバキが答える。


「カドル様は、今回の行列に参加しません」

「何故だ?」

「「龍族である我が、領主アヤメ殿、ムソウ殿と近しい者達を祝っていると衆目の前で晒すことについて、また、あらぬ疑いをエレナが抱くのは避けたい」とのことです」

「はあ……なるほど……」


 何となく、カドルの心配が分かる気がした。既に、仲たがいしたシンキ達は構わないと思っているみたいだが、カドルとしては、未だ、エレナとは友好的だと考えている。

 カドルがまた、俺達と友好的だという事を人々の目に映せば、また、俺がエレナの誤解を解くためにそうさせたと、更なる誤解を生みかねない。

 カドルはそう考えて、行列を辞退し、今は刀精の祠にて俺達を待っているそうだ。

 ちなみに、寂しくないようにと、ツバキは斬鬼をカドルに渡したとのことで、今は、エンヤと共に、楽しく自分達を待っているのでは、というツバキの言葉に、思わず笑った。


「そういや、差してないな、刀。なるほど、そういう事か……」

「向こうでは合流するので、まあ、良しとしましょう。あ、そろそろ出発されるみたいですよ!」


 ツバキは、先頭を指差す。視線を向けると、リンネと麒麟がゆっくりと進み、その後をアヤメ達が歩き出した。

 そして、十二星天と共に牙の旅団が動き出した時だ。


「良し、コウシ、チョウエン、頼む」

「「おうっ!」」


 サネマサの合図とともに、コウシが牙の旅団の紋章が描かれた旗を、チョウエンが、ジロウ一家の旗を掲げた。

 ああいうのも、目立つ為には良いことだな。ジロウが作った二つの“家族”が二人を祝っているという気がしたと同時に、何となく、羨ましいなと感じた。


「あの後ろを歩くのは辛いな。うちも旗を持って来れば良かったが」


 思わず呟くと、すぐ後ろに居たダイアンが口を開く。


「頭領、あるっすよ、旗」

「え? 本当か?」

「うっす。俺達も立てますか? ジゲンさんとたまちゃんも、あの二人の“家族”で、俺達とも“家族”っすから、問題ないと思うっす」

「おう! 頼んだぞ、ダイアン!」


 意外なところで気が利くダイアンは、強く頷き、異界の袋から闘鬼神の紋章が描かれた旗を何本か取り出し、チャンやハルキ達と協力しながら、旗を持って歩き出した。

 これで、俺達も若干ではあるが箔がつくなと満足しながら、皆の後に続いた。


 ◇◇◇


 その後、上街を抜けて、花街へと続く坂道でも多くの人間がその場で、シロウ達を祝っていた。それと同時に、麒麟とリンネ、更に十二星天に手を合わせる者まで居る。

 特に、シンキへの反応が凄い。滅多にお目に掛かれないという、人界の宰相様を目にすることが出来たと、感激しながら涙を流す者達まで居る。

 今日はシロウ達の祝言だというのに、と自分に感激されても困ると言った顔のシンキをサネマサ達が茶化していた。

 群衆の中には、旅人や冒険者達も居る。今日、ここに来ることが出来たのは、本当に幸運だったと喜んでいる。

 そして、男共は、元とは言え四天女であるナズナの姿に感激し、涙を流していた。そこまでの事かと俺達は笑いながら更に進んでいく。


 その後、先ほどまで居た花街を通り過ぎる。花街中の住民達から祝福の声を浴びるナズナ。


「おめでとうございます、ナズナ様!」

「ナズナ様、お綺麗です! シロウ様と末永くお幸せに~!」


 高天ヶ原の上階から降り注ぐ花の雨を浴びながら、ナズナは嬉しそうに顔を赤らめ、シロウと共に笑い合っていた。


 そして、最後に下街へと進んでいく。ここは、主にトウショウの里の住民達が多いようで、シロウ達への祝いの言葉の他、ジロウやアヤメ、サネマサ達に対しても、感謝や祝いの言葉が投げられた。


「え……ジロウ様が……若い!? 何したんだ!?」

「十二星天様が居るんだから、あれくらいはするさ。何せ、ジロウ様だもの!」

「今も昔も、型破りじゃのお~!」


 上街、花街でもそうだったが、やはり、ジロウが若返った姿で居ることについては、下街の反応が、特に大きい。

 驚きながらも、ジロウだから、という理由で、さして気にすることも無く、祝いの声を上げていた。


「シロウの旦那! おめでとう! 俺達は、この日を待っていた!」

「ようやくだ! ようやく、二人が……! アヤメちゃんもショウブちゃんも急げよ~!」


 昔から二人を見てきた者達は、ジロウ一家や高天ヶ原の妓女達だけではない。寧ろ、下街の住民達の方が、二人の事をジロウやアヤメ達と共に見守っていた。

 この日を待っていたと笑い、未だ伴侶の居ないアヤメとショウブに、挑発的な声を掛ける。

 二人とも、少し苛立ったようにしながらも、何もせずにため息をつきながら歩いていった。


「牙の旅団の皆! 今日までありがとう! アンタらのおかげで、俺達は平和に暮らしている!」

「あの時言えなかった、儂らの感謝を受け取ってくれ~!」

「そして、今後も私達を見守っておくれ~!」


 祝いの言葉の他に多いのは、今日、依り代の力を喪い、刀精となる牙の旅団の事情を知っている者達からの感謝の言葉。

 少なくとも、今生きているのは、牙の旅団のおかげと感じている者達から、次々にコウシ達に、感謝する声が聞こえてくる。

 少し、照れ臭そうに、恥ずかしそうにしながらも、コウシ達は堂々とそんな者達に手を振っていた。

 そして、それらを眺めていたダイアン達は、しっかりしねえと、と頷き合いながら、コウシ達の背中を見つめていた。

 俺も、あいつ等の代わりに、あいつ等の分まで、ジロウやサネマサ、牙の旅団の“家族”をどんな時でも護っていこうと誓った。


 その後、俺達は刀精の祠に辿り着く。ここからは、ジロウ一家の者達は参加しない。エンヤ達が、邪神大戦で活躍した者達で俺と関わる者達という事は、未だ、広めるわけにはいかない……という以前に、多分、祠の中がいっぱいになるからだ。

 誰も近づかないように見張っておいてくれと、一応、ジロウから頼んでもらい、入り口に残ってもらった。


 さて、いよいよだな、とツバキと顔を見合わせ、俺達は意を決した様子の牙の旅団と共に、祠の中へと入っていった。


 ◇◇◇


 洞窟の奥、刀精の間には先に向かっていたカドルと、斬鬼の刀精であるエンヤが既に実体化し、俺達を待っていた。


「む、来たようだな」

「ああ。ご両人一行の到着だ」


 座って話をしていたエンヤは立ち上がり、カドルは顔を上げて、シロウ達を出迎えた。

 初めてエンヤの姿を目の当たりにしたシロウとナズナ、ついでにショウブとコスケは目を見開く。


「アンタ……いや、貴女が、クレナの始祖でムソウの……“親”?」

「エンヤだ。よろしくな、シロウ、ナズナ。今日は俺からも、お前らを祝うとしよう」

「あ、ありがとうございます」

「ふむ……話に聞いていた通り、ムソウ殿の育ての“親”と言う事はあるのお」

「何とも、威風堂々たる立ち振る舞い……ジロウ様やガロウ様のご先祖と言うのは納得です……」


 コスケの言葉に、何か納得のいかないことがあったのか、チラッとエンヤはコスケに視線を向けた。


「ジロウはともかく、ガロウって男は、俺に似ていないだろう。話を聞く限り、ジロウと違って穏やかな男だったという印象を受けているが?」

「え……は、はあ……まあ、そうです」

「フッ……見る目があるな、お前は。ガロウはどちらかと言えば、俺の旦那と、娘に似ているだろう。今から証明してみせる……アヤメ! それにお前ら! 他の奴らも出してやれ! ツバキ、分かってるな? 無論、アイツもだ!」


 エンヤは、アヤメや十二星天に、ハルマサ達も喚び出せと命ずる。皆はいそいそと刀精が宿っているものを取り出していく。

 俺は、エンヤに頷き、ツバキにも頷いた。


「よし……出て来い、お前ら」

「ようやくですよ、コウカ様!」

「え……ツバキ、今なんて――」


 ツバキの言葉に、驚いたような困惑した顔をしながら、こちらを見てくるシンキ。凄く真顔だ。隊列組んでここまで来て、一息ついていた所に、妙な事を口走るツバキ。ぽかんとした顔で、こちらを見てくるが構わず、ツバキは胸のコウカの人形を取り出し、天へと掲げた。


 それぞれの刀精が出現するのに合わせ、刀精の間は光で満ちていく。

 そして、一つ一つの輝きが収まっていき、ツバキの両脇にハルマサとちっこいツバキ、アヤメの側にタカナリ、サネマサの側にエイシン、コモンの側にトウヤ、レオパルドの側にアキラ、ジーンの側にレシア、ジェシカの側にナツメが出現する。

 これで終わりと思ったのは、この中で、ナツメとエイシン。皆の前に実体化し、一息ついたところだったが、未だ、ツバキの横で強い輝きを放つ、最後の魂に目を丸くする。


「「……え?」」


 無論、ショウブとコスケ、シロウとナズナはともかくとして、ナツメとエイシンと同じ思いのアヤメ、サネマサ、ジェシカもキョトンとしながら、その光を眺めていた。

 しかし、シンキは一人、その魂から何かを感じたのか、徐々に狼狽した表情を浮かべる。


「あれは……! いや……まさか……そんなわけ……」


 シンキが一人で慌てている中、その光はツバキの元から離れて、シンキの側を漂い始めた。


『何を……慌てているの?』

「ッ!? なっ!?」

『フフッ……ホント、変わらないね……嬉しいわ、シンキ……』


 まるで幼い悪戯っ子のような声を放ったかと思うと、シンキの元を去り、その魂は、シロウとナズナの前に浮かび始めた。

 そして、皆が固唾を飲んで見守る中、光は徐々に弱まっていき、段々と人の形を成していく。


 そうして、現れたのは、桃色の髪を躍らせ、その間から小さな角をのぞかせた鬼族の姫。ゆっくりと地上に降り立つ姿は神々しさすら感じられる。

 静かに地面に下りたコウカは、シロウとナズナ、それに俺達を見回しながら、クスっと笑った。


「……ふぅ……私にも、お祝いさせて。シロウさん、ナズナさん。おめでとう」

「……な……え……?」

「……だ……あ……コ……コウカ……さま……?」


 ジロウが若返った時よりも狼狽える二人。無論、アヤメ達、事情を知らなかった者達も固まったまま動かなかった。

 事情を知っている者達でも、闘鬼神やたまなどは、初めて見たコウカの姿に言葉を失っている。

 ジロウは一度会ったことがあるからか、リンから下りながら、コウカに頭に下げていた。


 そして……


「……は?」


 一番気になっていたシンキの反応は、皆と同じく固まったまま、どうにも動かなかったという、何とも微妙な気分にさせてくれるものだった。

 てっきり、エンヤ達と同じく、会った瞬間に号泣するものだと思っていたが、どうも勝手が違うらしい。

 どうしたものかと思っていると、ツバキが耳打ちしてくる。


「ムソウ様……あれは、状況が呑み込めていないだけかと思います」

「む……そうか。つまり反応する前に、色々とあり過ぎて、頭の中で整理しているのだろうな……」


 なるほど。ツバキのおかげで謎が解けた。つまり、訳の分からないことが訳の分からない感じで、突然、訳の分からない状況で起こったという、訳の分からないこの光景に、シンキの頭が追い付いていないようだ。

 まあ、アヤメ達やナツメもエイシンも、同じ反応だからな。これは仕方ないと思いながら、シンキ達が動くのを待っていた。


 すると、二人を祝ったのに、返事が帰って来ないことに不満を覚えたのか、一つため息をついたコウカ。


「まったく……二人とも、ちょっと待っててね」


 少しムスッとした顔で、シンキに近づいていく。そして、目の前まで来たコウカは、腰に手を当てながら、口を開いた。


「シンキ、我に返って。貴方がはっきりしないと、私、ただの不審者だよ?」

「……な……あ……え……?」

「頭領さん達のおかげで、こういうのは既に、免疫がついていると思ってたけど……まだ、慣れない?」

「な……は……?」

「もう……しっかりしてよ、シンキ!」


 グイっと近づいて、シンキの目の前まで顔を持っていくコウカ。すると、狼狽えてどこを見ているのか分からなかったシンキの目が、コウカの顔に集中する。

 そして、しばらく見つめた後、ハッとした顔で、シンキは思わず後ずさった。


「なっ!? はっ!? えっ!? な、何で、ここに!? これは夢か!? もしくは、幻術か!?」


 ようやくコウカの存在を認めるところまで来たかと思ったが、シンキはこの状況が信じられないようだった。

 まあ、気持ちは分かるが、段々と面白くなってきたので、ツバキと共に笑いをこらえながら、その光景を眺めていた。


「解幻術ッ! 解幻術ッ! 作動しない! ジェシカ! 俺はどうやら幻術に掛かっている! 治癒してくれ!」

「えっと……」


 ジェシカは少し戸惑いながらも、スキルを発動させて優しい光をシンキに当てた。目を閉じてそれを一身に浴びるシンキ。


「よし……これで大丈夫だ」

「……何が?」

「うおっ!? じぇ、ジェシカのスキルでも駄目なのか!?」


 ゆっくりと目を開けるシンキだったが、その顔を覗き込むコウカによって、更に後ずさる。色々と理由を付けては、目の前のコウカが本物だと信じられないようだ。


「そんなわけない! あり得ない! ここに……こんなところに……」


 再び狼狽するシンキ。その間に、一応ナツメやエイシン、それにアヤメ達には、エンヤ、アキラ、トウヤと、ジーン、レオパルド、コモンが事の仔細を説明していく。

 皆はすぐに納得しつつ、悪趣味な……と頭を抱えて、コウカの姿を眺めていた。

 コウカが本物だと知り、シロウとナズナも、胸を撫で下ろすと同時に、微笑まし気な顔でコウカとシンキのやり取りを眺めている。ボソッと、


「最高の祝言だ……親父たちだけじゃない……“鬼姫”様にまで祝われるなんて……」

「ええ……本当に……最高ね……シロウ……」


 と、感動している声が聞こえてくる。

 さて、こっちは既にコウカを受け入れる準備は整っている。早くしてくれ、シンキ……。



「そんな……! こんな、こんなところに……! お、お前は誰だ! 俺の……俺達の大切な御方に化けるなど、この俺が容赦しない!」


 とうとう、目の前の存在がコウカだと信じられなくなったシンキは、刀に手を掛けた。ここまで来るのは意外だったと思い、止めようとしていると、その心配は無いと、エンヤに制された。

 コウカは、キョトンとしていたが、クスっと笑って、シンキに語り掛けた。


「本当に……変わらない、シンキ。いつでも、お父様や私の事を大切にしてくれる……いつでも、シンキが居たから、私も安心できた……」

「ハッ! そんな、妄言で俺を惑わそうとしても無駄――」

「ねえ、覚えてる? サヤと初めて会った日の事。シンキ、突然現れたサヤに斬りかかったんだよね。明らかに怪しい人が、私に近づいたからって。サヤに返り討ちにあっても、シンキは私を護ろうとしてくれていた。

 でも……サヤの話を聞いて、サヤの事をすぐに許してくれた。厳しいけど、優しい……それが、シンキだよね」

「だ、誰から聞いた!? そのことを知っているのは、もう、この大地には俺か――」

「シンラ……カンナともすぐに仲良くなって、いつも二人で一緒に楽しそうにして……そして、カンナが私に、一緒になってって言ってきたときも、カンナの隣に居て、そこからは、私達夫婦を一番側で護ってくれたよね。貴方が居たから、私もカンナも、ラセツと一緒に生きていけることが出来たの……」

「違う……俺は……俺が弱かったから、お二人を……エンヤ達を……最後まで、見守ることが出来なかった……カンナも……サヤも……あの御方も……」


 段々と、体から力が抜けたようになっていき、シンキはガクッと膝を付き、項垂れた。

 その表情から、エンヤ達の時のような、感極まってというわけではなく、本当に悔しい思いをしているような顔だった。

 流石に、俺達も笑えず、更に何も言えず、ただただその光景を見守るだけになってしまった。

 そんな中、コウカだけが優しい笑みをたたえたまま、首を振っていた。


「ううん。シンキは頑張ったよ。今日まで、私達の時みたいに、私達の子供達を、ずっと一番近くで見守っていたんでしょ? レシアさんやアキラさん、それにジーンさんやレオさんから聞いたよ。当代の人界王オウエンは、私達に似てるって。シンキが側に居てくれたおかげで真っすぐ育ったのかな?」


 ニッコリと笑いながら、項垂れる自分への問いかけに、シンキはコウカにポツポツと小さな声で返していく。


「まっすぐ……ですか……それは……少し語弊が……」

「語弊って何?」

「オウエンを始め……歴代の人界王は……お二人の悪いところが……似ているのです……私としては……良いところを伸ばすようにと……言ってきたのですが……」


 敬語となるシンキ。珍しいものを見ているとサネマサ達がコソコソと話している。

 まあ、今の時代に、シンキが敬うべき存在が居ないもんな。

 そんなシンキの、丁寧な言葉に、コウカは少しムッとした顔になった。


「シンキ……少し毒舌になったの? 前は私にはそんなこと言ってこなかったよね?」

「もう何年も……貴女方のご子息たちの側に居れば……こうなります……」

「む……でも、人界は平和なままだよね。これは、私達の子供が如何に優秀かって事よね?」

「……そうですね……やはり、私の努力は――」

「あ、違うの! そう言うことを言いたいんじゃなくて……!」


 そして、今度は慌てるコウカ。先ほどとは一転して、再び、徐々に面白くなってきた。

 どっちの反応も面白いなとじっくり眺めている。


「……冗談です……少し……仕返しをと……思いました……」

「む……駄目だよ……そういうのは……」

「いえ……これは十代ほど前の人界王……ウラからの助言です……それくらいなら……主と言えども……やり返しなさい……と……ちなみに……唯一の女王です……」

「え!? 女王!? 女王の時代があったの!? 聞きたい!」


 はしゃぐコウカだったが、シンキは少しクスっと笑みをこぼしながら、ゆっくりと頷いた。


「はい……お話しします……ですが、その前に……今一度……確認したいことがございます……」

「……何? シンキ……?」


 立ち上がるコウカの顔を、シンキは面を上げて見つめた。顔を下げていたから分からなかったが、どうやら泣いていたようで、目から涙を流しながら、ジッとコウカの姿を目に焼き付けていた。


 そして、意を決したように、シンキはコウカに語り掛ける。


「貴女は……コウカ様でございますか?」


 シンキの問いかけに、コウカは優しい笑みのまま、コクっと頷いた。そして、シンキ含め、待っているシロウやナズナ達にも聞こえるように、胸を張り、手を当てながら応えた。


「ええ。私は……冥界王エンマの娘、初代人界王シンラの妻、“鬼姫”コウカ。そして、貴方はは現・人界宰相、元・私達専属の近衛兵のシンキ……で、良いかな?」

「はいっ! ……コウカ様……お懐かしゅうございます……シンキは……私は……片時も、コウカ様の事を忘れたことはございませんでした……!」


 再び、頭を垂れながら、泣き出すシンキにコウカはしゃがみ、


「ありがとう……シンキ……」


 と、何度も感謝の言葉を口にしていた。

 二転三転する二人の反応に、俺達から笑い声をあげる者達は居なかった。別に良いのだが、もっと面白いものが見られると期待していたあの頃の俺達が、何となく馬鹿だったと少し後悔する。


「思っていたものとは違いましたね……」

「だな。まあ、良いものは見られた気がするから、良しとしよう」

「ちなみにですが、ジーンさん? 予知とかしていないですよね? 反応が薄いですよ」

「何を言っておる、コモン。そんな野暮な事はしていない……つもりだったな……」

「したんじゃねえか。そう言うことは教えろって、こないだ決め合っただろ。ッたく……にしても凄いもんだな、コウカ様」

「何がだ? レオ」

「流石のキキとリンも、コウカ様の神々しさと優しさの前では、でしゃばる気も起きないようだ。見ろよ、アレ」


 そう言われて、レオの指す方を見ると、キキとリンは黙ったままポカンとした顔で、コウカの姿を見つめていた。

 何か感じるものがあるのか、二人ともコウカに敬意を顔つきとなっている。神獣という存在を生み出した、鬼族に対する遺伝子に刻まれた敬意と言うのは残っているのだろうかというレオパルドの言葉に、だろうなと頷いた。


「しかし……やはり、このままだと面白くないですね……」

「だな。少し可哀そうな気もするが、仕掛けるとしよう、ツバキの嬢ちゃん」


 やはり、この反応に納得いかない様子のコモンとレオパルドは、意地悪な笑みを浮かべながら、ツバキの肩にポンと手を置く。


「お前ら……それで良いのか?」


 俺とジーンは寧ろこのままの方が良いと、少し頭を抱えたが、コモンとレオパルドは即座に頷いた。


「今まで世界の真実を隠しながら、俺達を騙していたんだ。シンキには、秘密を隠すという事の罪深さを学んでもらおう」

「既にトウヤさん達からの了承も得ております」


 いつの間に、と思い、トウヤとアキラに目を向けると、二人もニッと良い笑顔でこちらに頷いてきた。

 一応と思い、こうなった時の、こちらからの仕掛けについてエンヤに相談したところ、エンヤも乗り気となった。


「クックック……それは面白そうだ。俺の方は良いぜ、ザンキ。言いたいことも言えるしな……」

「俺は知らねえからな……」

「構わない。さあ、ツバキ。やってやれ」

「は、はい……」


 エンヤにもコモン達の提案が受け入れられたことを確認した俺は、もう何も言わず、その後の展開を見守ることにした。


 ツバキは、口に両手を当てて、今なお、再会を喜んでいるコウカ達に大きな声で語りかける。


「コウカ様~! シンキ様との再会は完了したようですね~! でしたら、こちらに戻っていただき、次に進みましょう~! シンキ様も急いでくださ~い!」

「……え?」


 感動の再会に水を差すツバキの一言に、シンキは戸惑った顔を向けるがハッとしたコウカは立ち上がり、こちらに近づいてきた。


「あ、ごめんなさい、護衛さん」

「あまり、私の元を離れないでくださいね」

「……はい」


 申し訳なさそうにするコウカ。その後、シロウとナズナに改めて向き直り、二人の手を取って、祝辞の言葉を述べ始める。


「さて……クレナ領トウショウの里、自警団ジロウ一家二代目頭領、シロウさん。領主直轄妓楼高天ヶ原管理人、ナズナさん。今まで育んできた二人の愛を、これからも大切にして、末永くお幸せに……。

 頭領さんやタカナリさん、スイレンちゃんから始まって、貴方達に繋がってきたクレナの血……決して、絶やすことなく、健やかな繁栄を期待しています。

 改めて二人とも、ご結婚おめでとうございます。初代人界王シンラ、並びに当代人界王オウエン、そして、天界王ケアル様、我が父、冥界王エンマの名代として、私、コウカが貴方達の誓婚をここに認めます」


 思いのほか、二人の結婚が大層なものに感じる祝辞に、アヤメやジロウはクスクスと笑い、エンヤとタカナリも笑いをこらえるように、二人を見守っていた。

 いきなりの本番だったが、なかなか上出来な口上だったと思っていたが、シロウとナズナはコウカの言葉に応えるどころか、少し困った顔をしていた。

 駄目だったかな、と不安そうな顔でこちらを見てくるコウカ。流石に俺達も何も言えないでいる。


「えっと……駄目だったかな? それとも、まだ、私に驚いている……とか?」


 首を傾げるコウカに、シロウとナズナは顔を見合わせながら口を開く。


「い、いや~……とても、ありがたきお言葉でしたが……その……」

「あの……あちらから……凄い視線が……」

「えっと……大丈夫なんすか……?」


 二人は同じ方向を指差す。俺達が顔を向けると、その先には、体を硬直させながら、何か信じられないものを見ているような顔をしたシンキが立っていた。


 今更、コウカが信じられないのかと、やれやれと頭を掻く。先ほどの感動の再会はどうした……。

 コウカは、あらら……と言った感じに、苦笑いしている。

 しかし、抑えきれない、悪戯っ子としての性分が顔に出ていた。そのままフッと笑って、シンキを呼びかける。


「どうしたの? シンキもこっち来て、二人を祝お?」

「いや……少々待ってください……え……護衛? ツバキが……? え……?」


 何かブツブツと呟きながら、シンキはその場に立ち尽くしたままだった。

 深く思案を巡らせながら、頭に手を当てて考え事を整理している。


 そして、ハッとしたかと思うと、急に叫び出した。


「護衛ッ!? ツバキがッ!? コウカ様の!? どうなってるッ! ムソウ~~~~ッッッ!!!」


 叫んだまま、何故か俺に向かって突撃してくる。凄い形相だ。

 俺達はこれを見たかったという気になり、ついに腹を抱えて笑い出した。


「アハハハッ! それだ! その顔が見たかったぜ、シンキ! 焦らすなよ~!」

「気持ち良いですね! シンキさん!」

「ああ、緊張が解けた。未来は予知しない方が、やはり人生は面白いな!」


 レオパルド達も、シンキを指差しながら笑っている。意外にも、コモンの言葉が結構、突き刺さる内容だ。もしも俺がシンキの立場なら、確実に無間を抜くだろう。

 そして、シンキは俺に向かいながら、レオパルド達を、これまた凄まじい形相で睨んだ。


「テメエらの差し金か! 許さねえ! ムソウ諸共ぶっ飛ばしてやらあああ~~~ッッッ!!!」


 そのまま駆けながら、シンキは本来の鬼の姿となり、刀を抜いた。強い怒気と闘気を放ってきて、普段なら身構えるのだが、笑ってしまって力が出ない。


「おいおい落ち着けって、シンキ。ちゃんと話をするから」

「うるせえッ! この、似た者夫婦が! 夫婦そろって、俺の事、弄繰り回してんじゃねえ! サヤと同じ罰だ! ぶん殴ってやる!」

「って言いながら、刀抜いてんじゃねえか。しかも、お前、人の妻を殴っていたのか……何とも……」

「やかましいッ! ウオオオオ~~~~ッッッ!!!」

「仕方ない……ツバキ」

「はい。申し訳ございません、シンキ様」


 とびかかって来るシンキに向けて手をかざすツバキ。スキルを発動させ、強固な障壁をシンキの前に出現させた。


「おぶっ!」

「よし……エンヤ、やるぞ」

「オウッ! せ~の!」


 大きな音と共に、障壁をずり落ちるシンキに、俺とエンヤで同時に一撃を与える。


「「オラアッ!」」

「ガハッ!」


 ツバキの力で具現化しているわけではないので、普段よりは弱いと自己判定していたエンヤだったが、充分だった。俺の分と合わせて蹴られたシンキは吹っ飛んでいき、地面に転がる。

 腹を抑えながら、うずくまるシンキに、俺達はやれやれと思いながら、コウカは気まずそうに笑みを浮かべながら、シロウとナズナは真顔で、後の者達は、何やら可哀そうなものを見るような目をしたり、若干俺達に引いたような顔をしながら、それぞれがそれぞれの想いを抱きながら、その光景を眺めていた……。


コウカのキャラが少しブレて来たことが悩みです……。

基本的に、サヤと同じ感じのキャラクター性で、ミサキほど活発ではない感じにしようと思っています。

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