第379話 天上の儀 ―俺の今後を決める―
さて、黙っていても埒が明かない。俺は一つため息をつき、茶を飲んだ。
「え~と……取りあえず……ロロ、大変だったな」
「はい……すみません……」
何度も謝って来るロロ。何となく申し訳ない気持ちでいっぱいになる。リンネを膝の上に置いて、全身を撫でているにも関わらず、嬉しそうじゃないロロは初めて見るな。
リンネも、皆と同じ様に、心配そうにロロの顔を眺めている。というか、全員、不安そうな、心配そうな顔だ。
時折、俺の方にも視線が来ることがある。こういう時は、やっぱり心配はしてくれるんだなと、俺は嬉しくなった。
思わず笑みをこぼしながら、ひとまず安心させようと、ロロの頭を撫でる。
「ひっ……」
怖がられた……この結果に怒った俺が、お仕置きでもすると思ったらしい。これはこれで傷つく。
「何もしねえよ……ったく……」
しかし、気にせずロロの頭を撫でる。ロロは、最初は震えていたが、段々と不思議そうな顔つきになっていき、俺の顔を見てきた。
「頭領……?」
「まあ……何だ? ……お疲れさん。俺は何も気にしてねえから、そんなに落ち込むな」
「ですが……」
「いや、本当に気にしていない。皆も聞いてくれ」
俺はそう言って、今回の天上の儀についての所感を皆に話した。
まず、ロロの行動について。これに関しては、一時の感情に身を任せてしまったというロロの責任もあるが、セインもセインだ。どれだけ周りに居た奴らが止めようとも、俺に対する暴言や、その他、この世界の人間に対する罵詈雑言を吐き続け、ジェシカまでも怒らせた。
正直な話、サネマサやシンキに、その場に居たなら暴れて欲しかったものだと思うが、まあ、あの二人にも立場があるから仕方がない。
ただ、俺がその場に居たとしたら、暴れただろう。それをロロがやっただけだ。だからこの件について、俺は怒る気になれない。
ちなみに、皆はどうだと聞いたところ、ダイアンとリア、それにツバキは少しだけ悩んだ顔をしたが、ジゲンは、即斬ると即答した。流石である。
「己の尊厳を傷つける者に対しては、十二星天も貴族も王も関係ない。儂がその場に居ても、ロロ殿と同じ行動はとるじゃろうな」
「ジゲンさん……」
ジゲンの言葉に俺が頷くと、少しばかり、落ち着いた様子になるロロ。
しかし、後悔はまだ残っているようなので更に続けた。
今回の天上の儀に置いて、アヤメがセイン派閥の人間の、俺に対する考えを聞くことが出来た。予想通り、かなり嫌われている。ついでに、クレナに居た貴族達にも、未だに大いに嫌われていることが明らかとなったが、俺からすれば小事だ。罵詈雑言も、聞き流して、欠伸を掻く自信がある。
しかし、十二星天エレナに関しては、少し事情が違うようだ。大前提として、人界の為という信念のもとに俺の力を危険視している。
それについては別に良いが、セインとリーに関しては、単純に、俺のことが気にくわないようで、今日のロロの行動により、更にそれが助長され、下手をすれば、このままクレナに乗り込まれるかも知れないという可能性まで生まれた挙句、冒険者としての資格も剥奪されることもあり得る話になった。
ただ、それについても特に気にしていない。俺を恐れているから、向こうが来ないという考えからではなく、単純にそんな奴らに負ける気がしないだけだ。他の人間に被害がどとか言っているみたいだが、街に来ても、誰も居ない所までおびき出すように逃げれば良いだけの話だ。
嫌われていようが、敵視されていようが、直接刃を交えそうな事態にならないのなら良いし、冒険者の資格を取られそうだと言うのならそうすれば良い。
そうなれば、ロロの言うように、俺は晴れてセインの監視下から自由に生きることが出来るというものだ。他の奴らについては申し訳ないが、なんなら、この世界には傭兵という職もある。
「傭兵集団・闘鬼神」と、本来の名に戻しても良いと思っている。まあ、傭兵と冒険者の違いなど分からないがな。
「む……ちなみにムソウ殿。傭兵と冒険者は……」
「あ、今はいい、爺さん」
俺と同じ様に調子を取り戻した様子のジゲンは、傭兵と冒険者について語ろうとするが止めた。多分、長くなる。
とにかく、冒険者の資格をはく奪されても何とかなるが、その可能性は低いだろう。俺を本格的に野放しにするのだからな。
それに、今回の天上の儀で決まった、俺がコクロの海賊団を殲滅するという話もまだ残っている。それも、セインの名において、という条件も付いている。
本会議でそれが既に決まっている以上、当分は、セインが俺達に干渉することは無いだろう。
ひとまず、ロロのおかげで、セイン派閥の人間が、俺を本気で嫌っていることと、それと同時に、俺を恐れているから俺に直接干渉しようとしないという事が分かった。
つまりは、いつも通りという事である。状況は何も変わっていない。唯一変わったと言えば、エレナは俺を嫌い、ジーンは違うという事が確定した。
コクロの海賊を殲滅することに関し、俺を手伝ってくれるそうだし、この点について分かったのは、良かったとロロに頷いた。
「まあ、カドルについては申し訳ないと思っている。俺の所為ですまなかったな」
「いや……我の方こそ、すまなかったな。我の軽率な行動の所為で、エレナに要らぬ誤解を与えてしまったようだ……」
エレナがカドルに会いに来ない理由が、俺という事で、そこは申し訳ないと思い、カドルに頭を下げたが、逆にカドルも頭を下げてきた。
コイツについても反省する道理はない。実際カドルが居て助かったこともあるし、それにはジゲンも納得している。
ひと月後には、コウシ達を解放し、カドルは雷雲山に戻り、力を保つことも決まっている。
この件については、早々に決着がつくだろうと言って、俺がコクロに旅立った後にでも、エレナをカドルに会わせても良い、という結論に至った。
というか、カドルは、他の龍族と共に、世界の真実について、世界中を飛び回ることになることが決まっている。その時にでも、誤解を解いておけと言うと、カドルは任せてくれと頷いた。
後は、十二星天の亀裂が何となくではなく、完全に明らかとなり、更に溝が深まったことだ。
これについては、コモン達が帰ってきてから確認するという事で、俺はこの話を終えた。
「つまりだな、俺は別にお前の行動に怒っていない。俺の代わりに、俺の意を示してくれただけだ。寧ろ、感謝している。ありがとう、ロロ。本当によくやったな」
「いえ……私は……」
「ただ、一つだけ言うことがあるとすれば……」
俺は、再びロロの頭にポンと手を置いた。
「……あまり、心配掛けないでくれ。お前が落ち込むと、皆も辛くなる。リンネも心配しているぞ?」
そう言って、リンネを指さすと、ロロは膝の上のリンネに目を向けた。
未だ、心配そうな顔のリンネを見つめながら、ロロは涙を浮かべる。
「リンネちゃん……私……」
「キュウ!」
頬を垂れる涙をリンネはペロッと舐める。そして、獣人化し、リンネはロロをギュッと抱きしめた。
「ロロおねえちゃん……なかないで。リンネ、おねえちゃんがないてるの、みたくない」
「リンネちゃん……」
「おねえちゃん、いつもみたいになでて。リンネ、きょう、おししょーさまと、ツバキおねえちゃんと、たまちゃんのおかげできれいになったの。ロロおねえちゃんにも、ほめてほしいの。だから……」
「……そう……ですね……そうですね、リンネちゃん……すごく、可愛くなりました」
ロロは涙を拭い、リンネの髪を撫でる。まあ、その部分は変わってないんだがな。優しく撫でながら、段々と表情を緩ませていった。
「本当に……可愛いです」
「えへへ……ロロおねえちゃんにほめてもらえた……」
「本当に……本当に、可愛いです~」
ロロは、リンネを抱き上げながらうっとりとする。そして、そんなに日が経っていないにも関わらず、久しぶりだという顔で、リンネを撫で回していく。
そういや、王都ではレイカが被害者になったとか……やはり、爆発した原因には寂しかったというのもあったようだな。
リンネは困りながらも嬉しそうにしていた。ようやく、元に戻ったかと胸を撫で下ろす。
「……落ち着いたか?」
「あ……はい。ありがとうございます」
「おう……だが、ロロ。俺には謝らなくても良いと言ったが、お前は一人、謝らないといけない奴が居ることを忘れるなよ」
「え……あ、ジェシカ様です、よね。最後の最後でご迷惑を――」
「いや、違う。アイツも怒っていなかったからな」
「あ……では、アヤメ様ですよね……たくさん迷惑を掛けてしまったのに、アヤメ様にも――」
「いいや、アヤメは寧ろ楽しそうにしておったのではないか? それについては儂からも礼を言わせてくれ。アヤメが世話になった、ロロ殿。アヤメにも後で、ロロ殿が世話になった礼をしておこう」
王都に居る間、ずっと面倒を見てくれたアヤメの厚意を無下にしてしまったという顔のロロに、先にジゲンが頭を下げた。
ロロは更に首を傾げながら、キョトンとする。
「あの……どなたですか? 私が謝らなければいけない相手というのは……」
「心当たりは?」
「色々思い当たる方が……」
「多分そいつらよりも重要だぞ。分からねえなら教えてやろう」
俺はそう言って、ゆっくりと手を上げて、ソイツを指さした。その先には、え、という顔のリアが居る。
「取りあえず、今のうちに謝っておけ。今なら許してくれるかも知れないぞ」
「あの……何のことですか?」
「ん? 言っていたじゃねえか。人界王オウエンは、コイツに目を付けたんだろ? 俺だけならまだしも、リアにまで……オウエンと会談する話が復活すれば、コイツも爺さんと一緒に強制参加だ」
そう言うと、ハッとするロロ。今日の出来事が強烈過ぎて、昨晩の事は、頭の中に残していなかったらしい。
そして、リアも俺の言葉に、あ、と言って、ロロの顔をジトっと見つめながら少しずつ顔を近づけていく。
「そうよ……ロロ、アナタ、言っていたわね。オウエン様が私に興味を示したって……こんなにも闘鬼神に冒険者が居る中で、私だけに興味を示したって……」
詰問するリアに、ロロは慌て始める。ダイアンは横で、気まずそうに視線を逸らしていた。
「い、いえ、それは、サネマサ様達が……」
「うん。サネマサ様にも後で文句を言うから、安心して……」
「あ、でも、私は、他にもいろんな人が居ると言おうとしました!」
「言わなかったら駄目なの……私だけが注目されるの……私はそれが、嫌なの……」
「で、でで、ですが、人界王様にお目通りできるかも知れないのですよ! 光栄な事ではありませんか」
「頭領と、ジゲンさんと、オウエン様に混ざる私を想像してみなさい……どう思う……?」
「い、いやあ~……良いと思います」
リアの言葉に、残された俺達はその光景を思い浮かべる。ツバキとダイアンは、苦笑いしているが、俺とジゲンは、まあ、こんな感じだなと頷いていた。
「俺は気にしねえが……」
「儂も特には何も――」
「二人は黙ってて。“規格外”の二人の意見なんて聞いてないわ」
キッと睨むリアに、俺とジゲンは素直に頷いた。ああ……怒ってるな、やっぱり。余計な事を言うんじゃなかったと、笑いをこらえながら、頭を抱える。
すると次の瞬間、リアはロロの両頬をつまんだ。力を入れて、ぐにぐにとこね回す。
「い、いひゃいでふ~! ひ、ひあはん~!」
「面倒な事をしてくれたわね~! “ギルド長”や“騎士団長”はまだ良いわ、分かりやすいから! はっきりしてるしね! でも……でも、人界王様って何よ!? 私は、頭領と違って、平穏に暮らしたいの!」
いや、俺だって平穏に暮らしたいという言葉をぐっと抑える。面白いから、止めずに見ておこう。
「それに、そこはダイアンの名前を出しておきなさいよ! 一応は、私達を統括する人間なんだからね!」
「いや、俺を巻き込むなよ!」
リアの言葉に、ダイアンはすぐさま反論するが、リアはそれに言い返す。
「はあ? アンタは私達のとりまとめ役でしょ!? なら、人界王様が来た時は、アンタも同席よ! 頭領とジゲンさんの横で、オウエン様と楽しく会食していれば良いのよ!」
「巻き込むなって! 俺は……フッ、俺はそんなタマじゃねえよ。俺は、皆と一緒に、お前らの事を後方から応援するつもりだ。頑張れ! ってな……」
「……あっそ。話の通じないタマなしは置いておいて……ロロ~、この責任は償ってもらうからね~!」
「は、はい! ふいはへん!」
はあ~~~、と盛大にため息をつきながら、リアはロロを解放した。ロロは頬をさすり、リンネがよしよしと頭を撫でていた。
ダイアンはリアの言葉に物申したい様子だったが、強く睨まれて、顔色を悪そうに視線を外す。
ほう……リアは死神の鬼迫をも真似るように……な訳ないか。ダイアンがタマ無しなだけか。
そして、息を整えたリアは、再びロロに手を伸ばし、ポンと頭に置いた。
「まあ……取りあえず、お帰り、ロロ。皆も心配してるから、明日、きちんと事情を話すのよ。良いわね?」
小さく微笑みながら、リアに見つめられたロロは、ハッと目を見開き、コクっと頷いた。
「はい。お土産も沢山、買ってきました」
「それは楽しみね。こないだは頭領からも貰ったし……」
「お、そうだった。俺達の土産も、明日ロロに渡すからな。それで、ロロも明日からしばらく、家で休んでいても良いぞ」
「私……も? 他にもどなたか、お休みなのですか?」
「ゔっ……」
キョトンとするロロに、俺は何も言えなかった。それは俺だからな。俺が、少しやらかしたからだ。
それを話すのは何となく嫌だと思っていると、ジゲンとツバキがフッと笑みをこぼした。
「まあ、明日になれば判明します。そして、私もロロさんのお話をもっと聞きたいと思いますので、よろしくお願いします」
「儂もじゃ。詳しくはまたアヤメからも聞くが、特に武王會館の事について、教えてくれ」
「はい……あの、ジゲンさん。アヤメ様、サネマサ様が、今回の事でジゲンさんに怒られるのではと……その、ご心配されて……」
「ほっほ、怒らんよ。アヤメはともかく、サネマサは儂を何と思っておるのじゃ……親友にそう言われるのは、今更ながら不本意じゃの。向こうでは本当に世話になったのう、ロロ殿。二人の面白い話を聞かせてくれるとありがたい。それに、レンブの話も聞けて良かった。儂らもムソウ殿の面白い話を話してやろうぞ」
ジゲンの言葉に、ロロは首を傾げながらも頷く。くっ……俺の失態がロロにまで……。
まあ、このことは置いておいて、武王會館の話は聞きたい。あと、ミサキの事も、マシロの皆の事も……ロロにはもっと、楽しくて嬉しくなりそうな話を聞いてみたいものだ。
アヤメ達が帰るまでの間の楽しみとしておこう。
◇◇◇
その後、皆はそれぞれの部屋に帰っていった。今日ばかりは久しぶりにという事で、ロロがリンネと寝たいと申し出た。
リンネの方が問題ないとのことだったので、せっかくだから、たまも混ぜてやれと言うと、ロロは嬉しそうな顔で頷く。
そのままジゲンと共に部屋を出ていき、ダイアン、リア、カドルも、俺の部屋を出ていった
そして、布団を敷き直していると、ふと、ツバキが話しかけてくる。
「あの、ムソウ様」
「ん? 何だ?」
「実際の所、どうなのですか? その……十二星天様について……特に、セイン様、リー様、エレナ様について……」
深刻そうな顔になっているツバキ。先ほどまでについては、俺がロロを気遣ったから、何も気にしていないと言ったと思っているらしい。そんなことは心の底から無いと、俺は笑って頷いた。
「さっきも言ったが、俺は大丈夫だ。向かって来ようと、嫌われていようと、それは今までと同じだ。何も変わってないなら、問題は無い」
「冒険者剥奪については……?」
「それについても、さっき言ったように、セインがそうする利益が分からない。俺を監視下に置きたいなら、冒険者で居続けるようにするだろうよ。まあ、心配なのは、俺から皆に飛び火したら面倒だという事だが、それについてもロロが釘を刺してくれたみたいだし、気にすることは無いだろう。ただ……」
俺は布団の上に座り、ツバキに目を向けた。
俺に関することはまだ良いが、一つだけ、懸念があるとすれば……。
「リーって奴がお前をどうしたいのかは、不安なところだな。実際、それが原因で謹慎になっているわけだし」
「そう……ですね……」
ロロの話によれば、リーが謹慎になったのは、モンクでのツバキの活躍に難癖をつけ、ツバキを処断しようと言い出したことを端に、その他、モンクの事件やクレナの事件、マシロの一件に関わった、領主、ギルド支部長、騎士団師団長の責任を追及し始めたことに対し、同席したレオパルドがそれを抑えようとした。
その際に、二人があわや武力で、互いを黙らせようとしたからである。まあ、レオパルドは熱くなりやすいみたいだから、しかも喚んだのが更に熱くなりそうなトウケンという事で、馬鹿だったなあで終わるが、問題はリーだ。
流石に、俺もコイツに関しては呆れてしまう。褒めるのならまだしも、モンクの事件を解決に導いたツバキに不快感を示すとはな。
それも理由が、「勝手な事をしたから」で、その他の者達については、「セインが嫌っている俺の力になったから」というのは、本当に納得できない。
何考えているのだろうか……? 理解できない。
ただ、放っておけば何をするのか分からないという事は理解できる。騎士団の総大将としての権力と力を使って、ツバキを俺の元から離すことも出来るだろうし、最悪、除名もありうる。
正直、俺よりも危ない状況に居る気がする。まあ、何が起きても、ツバキも皆と一緒に護ってやるがな。
「俺の所為で、面倒な立場になったな」
「いえ……正直、私もリー様に失望しましたね……」
こうやってはっきり言うところはツバキらしいなと思う。ツバキの中で、リーという男は、十二星天だとしても、快く思わない人間に成り下がったようだ。
「騎士団は続けたいか?」
「それは……はい」
騎士団に残っても、あまり良いことが無いのではと思ったが、ツバキは騎士を続ける意志の様だ。クレナに来た頃は、辞めても良いと言っていたが、何かきっかけがあったらしい。
「父さんと母さん、それに、マルドの皆に、もっと立派な騎士になると、約束したもので……」
「そうか……フッ、そうだったか。それは、辞めるわけにはいかないな」
「それに私は今、ムソウ様と、リンネちゃん、そして、コウカ様専属の護衛ですので、騎士を辞めるわけにはいきません」
「おいおい、コウカの専属はシンキだろ? その座を奪ってやるなよ」
「では、シンキ様と相談して、コウカ様を御守りできるように、騎士を続けるように致します」
「ああ、それは良いな……」
いくら十二星天で、騎士団の創設者とはいえ、人界の宰相には、下手に逆らわないだろう……という考えは既に当てにならないが、シンキがこちら側についてくれているのは大きい。
リーが何をしようとも、ツバキが騎士を辞めることになる可能性は低い方だろう。
それに、大事な会議の期間中に問題を起こした者の発言力は弱い。今後も、ツバキはだ丈夫だろうと再確認し、互いにこれからもよろしく、と頭を下げ合った。
「取りあえず、俺の事についても、俺が問題ないと言っている以上は任せてくれ。その代わり、お前の事についてはお前に全て任せる。とは言うものの、頼られれば、力にはなってやるから、安心しろ」
「ふふっ、ロロさんが仰った、ムソウ様の良いところはそういうところです。もちろん、私達の事を頼ってくださってもよろしいのですよ」
「ハッハッハ……本当にオウエンが来た時は是非とも、力を貸してくれ。俺が粗相をしないようにな」
「……考えておきます」
ロロから聞いた話の中で、一番心配しているのはこれだ。話を聞く限り、オウエンという男は、確かに好感が持てるが、何をするか分からないし、確かにどこか、俺よりはサヤやコウカの血を感じる。
つまり平然と悪戯のような事をしては、面白がるような性格の様だ。シンキに黙って、突然、この家に来る可能性もある。
そして、顔も知らない俺や、その他の者達が知らず知らずのうちに無礼をはたらくこともある。
向こうがそれで怒る可能性は低いだろうが、一応、念の為、更にアヤメの為に、それだけは避けようと、ツバキと決めた。
そして、布団を被りながら、ロロの土産に思いを馳せ、未だ城で頑張っているアヤメやロウガン達に、頑張れと、激励の言葉を浮かべながら眠りについた。




