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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
世界が動く
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第358話―皆から説教される―

 祠から家に向かっている間も、多少町の中が騒がしくなっているということは分かったが、皆、俺を目にすると、サッと視線を外したり、何かコソコソと話していた。

 無視しながら歩いていると、家が見えてくる。長い間不在だったからか、妙に懐かしく感じ、少し嬉しいような気恥しい気分で門をくぐった。

 ただいま、と入っていったのだが、玄関に入った途端、仕事から帰ってきていたジゲン、高天ヶ原での用事を済ませていたツバキ、そして、留守を任せていたカドルが俺を出迎え、そのまま広間へと案内される。

 そこでは、飯の支度をしている女中達やたま、リンネ以外の者達が勢ぞろいし、俺達を待っていた。


 俺は、皆の正面に正座させられ、皆の視線を集める。


 これは……なるほど……例の件か。何となく察した俺は、取りあえずツバキか、ジゲンか、カドルが口を開くのを待っていた。もしくは、牙の旅団でも、ダイアン達でも誰でも良いから何か話してくれと、そのまま皆を待っていた。


 最初に口を開いたのは、ジゲンだった。


「ムソウ殿……儂と別れた後は、祠に向かったそうじゃな? 何をしておったのかの?」

「まあ……エンヤと、ハルマサ、ツバキにモンクで世話になった礼をだな……」

「それだけだったのかの?」

「あー……それから、ちょっと、技の練習をだな……」


 嘘は全く言っていない。俺は正直に話をしている。

 そこに、ツバキの鋭い突っ込みが向けられる。


「技の練習……どんな技ですか?」

「ぐ、偶像術だ。少し失敗してしまったがな……」


 その瞬間、冒険者達がどよめき立ち、ツバキとジゲンは、ああ、なるほどと言う顔をする。


「ふむ……ムソウ殿は偶像術が苦手分野みたいだからやりたくないと言っておった気がするのじゃが……?」

「いや、やってみたら意外と簡単だったな。エンヤはサネマサよりもお前の説明の方が分かりやすいと褒めていたぞ」

「ふむ、それは嬉しいことじゃの」

「ですが、失敗した、とは?」

「ちょっ……と、やり過ぎたと言うか、無間の強さが、凄すぎたと言うか……まさか、自分の技を自分で斬ることになるとは思わなかったな。ハハハ……」


 頭を掻きながら、苦笑いしていると、更に納得したという顔で、ツバキとジゲンは頷いていた。


「なるほど……夕方前にこの街で発生した、あの強烈な気配と圧迫感はそういう事でしたか。ムソウ様と無間が合わさった力……確かに凄そうですね」

「いやはや、ムソウ殿は本当に凄いのお。帰ってきて早々、この街に住む者達全てに影響を及ぼすほどの事件を引き起こしたのじゃからのお~」

「そ、そんなにか……?」


 祠の近くから下街までに影響があったことは、帰り道で知っていたが、街全体にまで影響が及んでいるとは思わなかった。

 二人と闘鬼神によれば、あの瞬間、下街から花街の高天ヶ原、上街のギルドや天宝館にまで、俺の偶像術の気配が伝わり、少々、街全体が騒がしくなったようである。一部の人間は、そんな存在が居るとすれば、この街ではカドルくらいで、何かやらかしたのではないかと、この屋敷にまで押しかけて来る者も居たそうだ。

 俺がこの街に帰って来たということを知っていた皆は、ショウブとも連携し、とにかく街の火消し作業に奔走し、俺が帰る少し前に、全ての作業が終わったようである。


「それは……すまなかったな、皆。この埋め合わせは必ず……」


 というわけで、俺は皆に頭を下げた。帰って早々、皆へ謝罪をするとは思わなかったな。

 そして、詫びというか、謹慎と言うことで、しばらく依頼には出ず、皆への修行に付き合うことになった。俺は別に構わんが、闘鬼神……特にダイアン、ルイ、リア、ハルキ、チョウシ、チャンが微妙そうな顔をしている。

 特に確認することも無いだろうと思っていたが、あの六人が牙の旅団の武具を継ぐようだな。

 明日から腕が鳴るというコウシの言葉に、六人はため息で返事していた。俺は、皆に迷惑をかけた代償として、しっかりと、稽古をつけてやろうと決めた。

 甘すぎませんか、と言うツバキの言葉に、ジゲンは、ツバキも見張りの意味も込めて、俺に付き合うようにと言う指示を出す。一日中監視されれば、流石に俺も街中では下手なことは出来ないという感じだ。

 ツバキは、かしこまりましたと頷き、ダイアン達は更に微妙そうな顔をした。


 さて、俺からすると、幾らか軽くなったような気がする反省の内容も決まり、そろそろ風呂に入ろうかと思い、立ち上がろうとした。

 しかし、それをカドルが呼び止める。


「待ってくれ、ムソウ殿。我はまだ、話がある」

「ん? 何だ? ……ああ、このことか?」


 思い当たることがあったので、異界の袋からアティラから貰った素材一式を取り出す。カドルは、真ん丸と目を見開いた。


「む!? それは、地帝龍アティラのものか!? 旅先で会ったのか!?」

「ああ、会ったぞ。元気にやっていたよ」

「う、む……そうか……」


 地帝龍に会ったという話は、闘鬼神の皆も、雷帝龍も大層驚いているようだった。

 しかし、カドルは今知ったという顔になっており、俺への用事とは別物だということが感じられた。


「何だ? これの事じゃなかったのか?」

「いや……まあ、それについても驚いたが……ふむ……」

「あ、ひょっとして、この髪飾りの事か? リンネとツバキが俺に作ってくれたんだ。似合ってんだろ?」


 皆に見せびらかすように、髪飾りを向けると、ジゲン達はうんうんと頷いていた。


「ほう……手作りかの? 見事なものじゃ」

「素材は……妖狐の体毛……ってことはリンネちゃんの毛? こんなに綺麗なものになるんだね」

「頭領、良かったっすね。これ、天宝館に持って行けば、付与効果が付くかも知れないっすよ」

「ああ、そのつもりだ。防汚はしておきたいからな」

「大切にするんすよ~」

「皆さん、ありがとうございます。お土産にも、手芸の材料が沢山ありますので、皆さんも作ってみてくださいね」


 ツバキの言葉を聞き、細かい作業が好きそうな女達やジゲンなどはいっそう喜んでいた。そう言うのは苦手だというダイアン達は、少し苦笑い気味だったが、武芸じゃなくてこういうのはツバキやリンネ、それにコモンに教えてもらえと言うと、そうっすねと頷かれる。

 そして、意外にもこういうのはカサネも得意らしく、特に喜んでいる。趣味が増えそうだと、ツバキの手を取りながら、凄く感謝していた。あまり、コイツのこういう姿は見たことが無かっただけに、俺達は驚きつつも、笑っていた。


 すると、カドルが俺の肩を叩く。


「あー……ムソウ殿、我を置いてけぼりにしておらぬか?」

「え? ああ、カドルか。どうかしたか? お前も、手芸とかやってみるか? これに負けないものを作れよ」

「いや、まあ……努力するが、我が話したいことはそれでも無いのだが……?」


 違ったのか……。盛り上がっていた空気が若干静まる。カドルを睨むと、少しだけ申し訳なさそうな顔をした。


「はあ……結局何なんだ? もう、はっきり言ってくれ」

「そうか……ならば言うとしよう」


 そう言うと、カドルは俺の目をまっすぐ見てきた。


「聞きたいことは二つだ。一つ、祠で行っていたことは、本当に偶像術の練習だけか? もう一つ何かしていたのではないか? そして、もう一つの質問だ。正直、こちらだけ話してくれても構わない。祠に居たのは、ムソウ殿とエンヤ殿、ハルマサ殿、ツバキ殿の四人だけか? 我が知っている「お方」が、そこに居たのではないか?」

「ん゛!? な、何で、そんなことを思うんだ?」

「我の能力の一つ、龍陣を忘れては居るまいな」


 あ……そうか。カドル達龍族は、自分を中心として結界のようなものを張り、その範囲内の状況を感じ取ることが出来るんだよな

 てことは、既に全部知っている可能性が高い。隠しても仕方ないと思い、俺は全てを正直に話した。

 鬼神化の事は、クレナでの戦いの時にも発動していたものだから、カドルはすぐに納得したが、ツバキもジゲンも、流石にこればかりは目を白黒とさせていた。

 まだよく分かっていない能力だから、皆から何を聞かれても何も答えられなかった。無論、この力は滅多なことでは使わないと、エンヤ達とも決めたと説明すると、納得はしてくれた。

 ツバキも、その方がいいですと、俺の意見にすぐに賛同した。


「ですが、妙な力とはいえ、私達はムソウ様のお力を把握しておきたいのです」

「変わったことがあれば、何でも言ってくれ。出来ることなら、儂らも力になろう」

「ああ……分かった」


 今までと違い、俺の訳の分からない力に関しても、こうやってすぐに相談できる人間と言うのは居る。皆の力を俺が把握するように、俺も皆に自分の力について把握してもらった方が良いのかも知れないな。ツバキとジゲンに頷き、次の質問に移った。


 これについてはツバキも居るから説明しやすかった。

 しかし、皆が……特にカドルが受けた衝撃は大きかったようだ。コウカが宿ったコウカの人形を掲げると、ジゲンとカドル含めた、その場に居た者達全員が平伏する。


「まさか……エンヤ殿やタカナリ殿にも驚いたが……コウカ様までとは……」

「やはり、我が感じていた気配は間違っていなかったようです……お久しぶりです、王妃様」


 ジゲンとカドルはまだしも……いや、まだしもではないな。皆の行動に思わず唖然とする。

 普段は礼儀とかそう言うのは考えて居なさそうな者まで平伏し、中には手を合わせている者も居る。ツバキは、ああ、やっぱりといった顔をしていた。

 コウカの影響力と言うのは、この世界で生きている人間にとってここまでなのかと感じ、少々焦る。

 これ……例えばカンナと再会した時などはどうなるのだろうか。一応、俺、コウカの義父なんだけどなと、頭を掻いた。


「えーっと……取りあえず、お前ら、顔を上げろ。コウカは多分、そんなこと望んでないから」

「ええ。私も注意されましたので、皆さん大丈夫ですよ」


 ツバキの言葉に、おずおずと顔を上げる一同。そして、何があったのか説明した。

 それから、シロウとナズナの祝言の後、どうしていくのかも説明した。祠で話し合ったことも、この際にツバキにも話した。


「一応、シンキには話すが、コウカの意志は固い。恐らく、そのままお前に任せることになりそうなんだが……?」

「はあ……まあ、私にも御守りできる自信は確かにありますけど……」

「エンヤ達も居るから大丈夫だってエンヤが言っていた。そう言うことになったら任せても良いか?」

「かしこまりました。皆さんも、よろしくお願いしますね」

「い、いや……」


 ツバキの言葉に、ジゲンはすぐに頷くが、闘鬼神は荷が重いと少々渋る態度を見せる。

 すると、カドルがスッと皆に顔を向けた。


「皆……我も祝言が終わった後はこの屋敷を離れるつもりだ。コウカ様を近くで御守りできないのは残念で仕方無い。しかし、お主らが我の代わりにコウカ様を御守りするのであれば、これほど頼もしい事はない。特にハルキ、お前には多大な信頼を置いている」

「ふぇ!?」


 突然、名前を呼ばれたハルキは、声を裏返し、変な声で返事をする。

 聞けば、ハルキは最近、雷克服の為、カドルに鍛錬を付き合ってもらったりしているらしく、闘鬼神の中でも特に仲が良い(?)らしい。


 カドルは、優しく微笑みながらハルキの肩に手をポンと置く。


「強くなるのだ、ハルキ。コウカ様を御守りするに遜色ないくらいにはな。ロウの出した課題を達成できれば良いものをやろうと言ったが、辞めた。お前にはこれを渡しておく。有意義に使ってくれ」


 そう言うとカドルは体から何か、光るものをハルキに飛ばした。ハルキがそれを受け取ると、それは何かの牙のようなものだった。


「我の牙だ。“鍛冶神”に渡し、装備を強化するのに使ってくれ……コウカ様を頼んだぞ」


 おお、良いものを貰ったな、ハルキ。俺も若干欲しいぞ。ジゲンも欲しそうな顔をしているくらいの代物の様だ。

 ハルキはぽかんとしていたが、すぐに意識を取り戻し、首をブンブンと横に振る。


「い、いやいやいや! カドル様! もう少し落ち着いて考えるっすよ! 俺、そんなに出来る人間じゃないですって! 他の奴に渡した方が、有意義っすよ!?」

「無論、ムソウ殿や“刀鬼”殿含め、皆にも我の一部を渡すとは決めておる。お前に渡したのは、その中でも最高の質のものだ。お前の成長は見張るものがあるからな。今後も励めよ」

「いや、尚更、これは俺には受け取れねえっすよ! 何なら頭領に――」


 パッとこちらを向いて来るハルキに、俺はキョトンとして口を開く。


「いや、俺は良いよ。どちらかと言えば鱗が欲しい。カドルの頼み、聞いてやれよ」

「え! あ、じゃ、じゃあ、これはジゲンさんに――」


 俺が牙を断ると、ハルキはジゲンの方に顔を向けた。助けを求めているような顔のハルキに、ジゲンは朗らかな顔をする。


「儂も大丈夫じゃ。カドル様のご厚意は無駄にしてはならん。ロウも良いな? 武具を改造することになるが……?」


 唖然とするハルキの前で、ジゲンに大きく頷くロウ。


「もちろんだ。覇槍はすでにハルキのものだからな。俺から言うことは何も無い。というか、俺達の後継者が、コウカ様を御守りするってのは良い話だな。俺達は刀精になるが、一緒に俺達も頑張るぜ!」


 ロウの言葉に、牙の旅団の面々も頷く。ロウにまで期待を込められしどろもどろになるハルキは、ツバキや闘鬼神の皆にも助けを求めるように、顔を向けていく。


「ツバキ姐さん! これ受け取って、コウカ様を御守りする力の足しに――」

「いえ、私にはエンヤ様達が付いておりますのでこれ以上は求めておりません」

「ダイアン! 俺達のリーダーだろ、お前! これで、箔を――」

「ハルキ、カドル様の厚意は無駄にしちゃ駄目だ。リーダー命令だ、しっかり、報いてやれ」

「ああ~……チャン! お前、武具の強化に素材が欲しいって言っていたよな!? これ使って――」

「いや、良いよ。俺達にも下さるってカドル様は仰ってんだから。俺達と一緒に頑張ろうぜ、ハルキ」


 ことごとく皆にあしらわれていくハルキ。口をあんぐりと開けて何も言えないで居ると、カドルが優しく口を開く。


「我の頼み……聞いてくれるな? ハルキ……?」


 徐々に真顔になっていくカドルは、少しだけ口を開き、鋭い牙をちらつかせ、パチパチと弱く放電する。

 ほとんど、脅しになっているカドルの言葉に、ハルキは渋い顔をするも、貰ったカドルの牙を大事そうに抱えてコクっと頷いた。


「わ、わかったっす。俺の命に代えてでも、コウカ様は御守りするっす……」

「うむ! よく言った!」


 ハルキの言葉にカドルは満足したように頷き、ツバキの手の上にあるコウカの人形に顔を向けた。


「ひとまず、ツバキ殿以外にも、コウカ様を御守りする頼りになる者は確保いたしました。どうかご安心の上、今の大地をお楽しみください」


 そう言って、恭しく頭を下げるカドルを見ながら、何、お前が勝手に決めてんだと心の中で突っ込みを入れた。

 ツバキと一緒に呆れていると、ダイアンとジゲンが寄ってきて俺に口を開く。


「まあ、半ばカドル様の勢いもあったっすけど、俺達にもコウカ様やツバキさんを御守りする気持ちはあるんで、安心してください、頭領」

「その代わり、このことは我らだけの内緒の話にしておいた方が良いじゃろう。此度の天上の儀の結果がどうなろうと、コウカ様の魂が大地に存在するという真実は隠しておいた方が良い。転界教に知れ渡ってしまうと大ごとじゃからのお。一応、アヤメには儂から話しておく」

「ああ、分かったぜ、爺さん」

「あ、そうだ、頭領。大事なことを一つ言うのを忘れてたっす」

「ん? 何だ、お前もか。何だ?」


 まだ、俺に話すことがあるのかと頭を掻いていると、ダイアンはガヤガヤしている皆を落ち着かせ、全員でこっちに顔を向けさせた。

 そして、ニカっと笑うと、皆で頭を下げる。


「長旅、お疲れさまでした。おかえりなさいっす」

「まさか、帰って早々、事件を起こすとは思ってなかったけどね。お帰り、頭領、ツバキさん」

「土産話もあるんですよね? 早く聞かせてくださいよ~」

「それから、モンクでどれだけ稼いで来たか、きちんと聞かないといけないわね。頭領、正直に話してくださいね~」

「頭領、おかえり~!」

「ツバキ姐さんもおかえり~! やっぱり大変でした~? そのあたりも聞かせてください!」


 皆、口々に俺達の旅を労う言葉をかけてくる。中には不本意な言葉もあるが、俺とツバキは嬉しくて顔を見合わせ、クスっと笑った。


「もちろん、用意しているさ。いろんな思い出も出来たしな。飯の時にでも、また話すよ」

「ひとまず、これからお風呂に入って来ますね。最後まで色々あって、くたくたですから……」


 そう言って、俺達は風呂場へと向かった。風呂に入りながらも一緒に入った者達やジゲンとの話は終わらない。ツバキの方も盛り上がっているらしく、女湯からも賑やかな声が聞こえてくる。

 そして、風呂から出て飯の準備が整うと、今度はリンネ達も混じって、更に話が盛り上がる。たまの飯を食いながらリンネが嬉しそうな顔をしているのを見て、ようやく帰って来たんだなと言うことを感じ、その日は久々に賑やかな食卓を楽しむのであった。


 俺も箸をつけると、対面に頬杖をつきながらニコニコと笑っているたまがいる。


「おじちゃん、美味しい?」

「ああ。相変わらず美味くて安心する」

「モンクってとこの料理とどっちが美味しい?」

「あっちも美味かったが、やっぱりたまの料理が一番だな。向こうの食材も買ったから楽しみにしていてくれよ」

「わ~い! ありがと、おじちゃん!」


 両手を上げて喜ぶたまにほっこりする。皆への土産は明日から随時渡していくつもりだ。武具の素材用に買ったものは、明日天宝館に持って行ってヴァルナに渡すつもりである。ついでに髪飾りの効果付与も行ってもらおう。

 そう思いながら髪飾りに触れていると、たまがキラキラとした瞳で見つめていた。


「触ってみるか?」

「良いの!?」


 頷きながら、たまに渡すと、じっくりと見回した後、それをリンネの方に持って行く。


「これ、リンネちゃんが作ったの!?」

「うん! リンネと、おねえちゃんがつくった~!」

「リンネちゃん、凄い! 凄い綺麗だよ!」


 そう言いながら、たまはリンネの頭を優しく撫でた。リンネは嬉しそうな顔をして、ニコリと笑う。


「えへへ、たまちゃんにほめられた~。たまちゃんにも、リンネがなにかつくってあげる~!」

「ほんと!? じゃあ、リンネちゃんにも、私が作ってあげる! もちろん、おじいちゃんにもね~!」

「ほっほ、それは嬉しい事じゃな」


 たまの言葉に満悦なジゲン。たまに何か作ってもらえたら嬉しいよな。

 ツバキに視線を送ると、コクっと頷く。たまが行き詰ると助けてくれるとありがたい。


 さて、土産の話題が終わった後、皆が気にしていたのは、俺がカジノでどれだけ儲けたかという事だった。そんなに気になることかと頭を抱えたが、皆が、モンクと言えば、と言ったので、素直に話すことにした。


「まあ、結論から言えばかなり儲けたな。だが、一番は俺じゃなくてエンヤで、アイツを除けばリンネだ。次いで、ツバキ、俺って順番だな」


 そう言うと、一同目を丸くして、リンネとツバキに目を向ける。二人とも、照れ臭そうな笑みを浮かべていた。


「え……どれだけ行ったんすか?」

「正確な値段は言えないが……というか、それくらいだ」

「うわぁ……金銭感覚が壊滅的な頭領に、大金が……大変そうだ」

「あ、それはご心配なく。今後、ムソウ様のお金の管理は、私とジゲンさんで行いますと決めましたから」

「おかねはだいじなの~!」


 リンネの言葉に、それは分かってると、さも当然だと言った感じに頷くダイアン達。やはり、一度は花街でどん底に立たされた奴等は違うなと感じる。

 その後、ツバキとリンネの方に、結局どれくらい稼ぐことが出来たのかという質問が飛び交っていたが、二人は断固として口を割らなかった。

 とは言うものの、リアなど、一部の勘のいい奴は、何か知らに気付いたらしく、時折ニヤついたりもしている。目が合うとヤバそうなので、サッと外しておいた。

 ひとまず、屋敷の管理費とクレナの復興費、皆へと給金等はこれからも継続して続けていく事が出来ると説明すると、皆は安心したように頷く。


 そして、ひとしきり話しているうちに、料理は無くなり、俺達は片付けを行ったり、部屋に戻ったりと思い思いに過ごした。

 リンネは、久しぶりに家に帰ったので、今晩はたまと寝たいとのことだったので、リンネをジゲンに預け、俺とツバキは部屋に戻る。

 その後、明日の予定を確認しあって、灯りを消した。


「じゃあ、おやすみ、ツバキ。明日からまた、よろしくな」

「はい、ムソウ様。おやすみなさい……」


 疲れていたのか、俺達はすぐに寝息を立て始めた。明日からは当分、家で過ごすんだよな……体、鈍らないようにしないとな。


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