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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
世界が動く
355/534

第354話―クレナに帰る―

今回から新章スタートです

 マルドの街を発ってからしばらくすると、領境の目印となっている霊亀の山が見えてくる。もうここまで来たのかと地図を開いた。


「この分だと、クレナに帰るのは昼頃か?」

「そうですね。先におうちに帰りましょうか、それともギルドに行きますか?」

「ギルドに行ったところで、今は天上の儀でアヤメも居ないだろう?」


 以前、シンキに聞いたところ、天上の儀が開かれるのは明日で、今日までに各領の領主やギルド支部長、騎士団の師団長が王都に入る手はずだ。

それぞれ、領ごとに決められた十二星天が担当することになっており、転送魔法で安全に、レインに向かうことが可能になっている。

 ちなみに、シンキはチャブラの新しい領主を陸路でゆっくりと送りたかったらしいのだが、今回の事件の所為で時間が無くなり、転送魔法で送ることになったと言っていたな。

 兎にも角にも、ギルドに行ったところで報告する相手も居ないのでは、行く意味も無いのではと言うと、ツバキは口を開く。


「一応、不在の支部長や領主の代わりとなる方も居らっしゃいますから、挨拶はしておきましょう。ムソウ様は、クレナの住民ですので」


 ツバキによると、支部長や領主が居なくなっても、ギルドや騎士団の業務が無くなるというわけではない。魔物にはこちらの事情など知ったことでは無いからな。

 なので、天上の儀が開かれている間は、代理の人間がそれぞれの業務をこなすことになっているらしい。それぞれの領によって、誰にするかは異なるが、ギルドは副支部長が任されることが多いので、恐らくクレナはショウブでも居るのではないかとのことだ。

 ツバキの言うように、俺はアヤメが治める土地の住民で冒険者なので、一言、戻ってきたという旨を伝えることにした。


「わかった。なら、帰ったらまずはギルドで報告、その後は、高天ヶ原にでも行って、土産を渡した後、家に帰るとするか」

「お土産の前にご飯、ですね」


 リンネの背中を撫でながらツバキがそう言うと、飛びながらこちらを向いて頷くリンネ。そうだな、と頷き、俺もリンネの背中を撫でた。


「というわけで、このまま安全に飛んでいてくれ。帰ったら、たくさん食べさせてやるからな」


 俺の言葉に、リンネは大きく頷き、再び前を向いた。

 来る時と同じく魔物の姿はそこまで感じない。気配は感じるから居るには居るのだろう。


 そういや、アティラから風帝龍という、空気と同化して世界中を飛び回る存在も居ると聞いたな。

 今は居ないよなと思いながら、更に集中して気配を探ったがそれらしい、というか、アティラやカドルが持つような強い気配を感知することは出来なかった。

 近くには居ないのだろうなと思いながら安堵していると、ツバキが話しかけてくる。


「しばらくは、クレナで一休みされますか?」

「そうだな。シロウとナズナの祝言までは今まで通り、クレナで依頼をこなしながらゆっくりしようと思っている。と言っても、祝言の手伝いとかもあるだろうがな」


 何せ、二人の育ての親が、俺の屋敷に居るからな。色々と、俺が出来ることもやっておこう。


「なるほど。私も頑張ります。そして、それが終われば、コクロで海賊退治でしたっけ?」

「ああ。リエンに頼まれたからな。まあ、貸しを作っておくというのも悪くないだろう」

「リオウ海賊団……ムソウ様や私達だけでどうにかなりますかね」


 存在するということが分かっているのに、未だに本拠地などが分からない敵に、ツバキは不安そうな顔をする。規模も大きく、三人でどうにかなるのだろうかと言った顔だ。


「まあ、それについてはじっくりと作戦を立てることにしよう。少し考えていることもあるしな」

「お考え、ですか? 一体、何を……?」

「まだ、考えがまとまっていない。決まったら、また伝えることにする。お前とも相談したいことだからな」


 首を傾げるツバキにそう頼むと、はあ、と言いながら頷いた。


 これについては、ツバキだけでなく、ジゲンや闘鬼神の皆とも相談したいことだ。出来れば祝言が終って、少し落ち着くまでは俺の心のうちに留めておこう。


「そういや、前にエンヤが無茶やった海賊はどうなったんだろうか……」

「あ、そんなこともありましたね。この前、インセン師団長が、王都に送還したと仰っていましたよ」


 モンクで色々とあって、遊びに行ったついでに海賊団の船を沈めたことなど忘れていた。リオウ海賊団の事を話していて思い出したが、既に王都にて取り調べを受けているそうだ。


「……ですが、なかなか進んでいない状態らしいですね」

「ほう。やはり簡単には口を割らないか」


 転界教と同じく、リオウ海賊団もそれなりに大きな規模の一団である。エンヤが簡単に撃退したとはいえ、あの女も部隊を率いる船長の一人だった。

 それなりの責任というものはあるようで、取り調べとかも難航しそうだと感じていると、ツバキが首を横に振る。


「あ、いえ、そういう感じでは無く、何か、殻に閉じこもっていると言いますか、常に何かに怯えていると言いますか、船長という雰囲気は無かったそうです。捕まえた時も、何かあったようですし……何があったのでしょうか……」


 首を傾げるツバキに、俺も一緒に首を傾げて、考え込むふりをする。

 ……そういや、無礼なことされて、怒ったエンヤが色々とやっていたな。あれについては俺も納得したから別に気にしていないが、エンヤに「お仕置き」されて、俺の殺意をモロに受けたということもあり、少々、錯乱しているようだな。

 内容が内容だけに、ツバキには説明しないつもりだ。分かってくれるとも思うが、エンヤがそんな人間だとは思って欲しくないからな。まあ、分かってくれるとは思うが……というか、既にわかっていそうな気もする。

 だが、俺からは言いたくないと思い、本当の事は黙っておこうと思った。


「……まあ、海賊共が口を割らなくても、転界教の奴らと同じ様に、ミサキに魔法を使って、頭の中を視てもらった方が早いだろうな」

「なるほど……そうですね」


 ツバキは納得しながら、王都に行っても、ミサキは大変そうだと苦笑いしていた。忙しくなるだけの力と能力を持っていると言って、


「現に俺も忙しい」


 と、言うと、そうですね、と再び頷いていた。


 地図を開くとハイグレの上空に入っている。もう少しでカキシに入り、クレナへと戻る。リンネには悪いと思いながら、俺ももう少し休んでおこうと、少しばかり気を楽にしていた。


 ◇◇◇


 しばらく飛び続けていくと、あっという間にハイグレ、カキシを抜けてクレナ領に入った。見覚えのある風景が見えると、俺もツバキも、何となくホッとし、リンネも少しばかり元気になった感じで更に速度を上げて飛び続けた。


「あ、ムソウ様、見えてきました」


 ツバキは、前方を指さしながら楽しそうにしている。その方向にはトウショウの里の山が見えた。

 ようやく帰って来たんだなと、ツバキに頷く。


「ああ。リンネ、じゃあ、ギルドの前に下りてくれ。直接で構わない」


 リンネはコクっと頷き、トウショウの里の正面に回り、ギルドの前に降り立った。

 辺りを行き交っていた者達はぎょっとした様子だったが、何人かは俺達が誰なのかと気づいたようで、納得した様子で離れていく。

 ずいぶんと有名になったものだと思っていると、リンネは変化を解いて、獣人の姿になり、背伸びをしていた。


「ん~! とうちゃく~!」

「おう。ここまでありがとう、リンネ」

「ここからは、私の背中にどうぞ」


 ツバキがリンネに背中を見せてしゃがむと、ニコッと笑って頷くリンネ。そのまま、ツバキの背中に飛びついた。


「らくちん~♪」

「ふぅ……さて、では、行きましょうか、ムソウ様」

「……ん? ああ」


 ギルドへと向かうツバキに続き、足を出そうとした時、俺の様子を不思議に思ったのか、ツバキは立ち止まる。


「どうかされましたか?」

「いや……ずいぶんと見慣れない人間が増えているなと思ってな」


 辺りを見ると、冒険者の数が多くなっていることに気付いた。俺達がモンクへ行く前と比べると、ギルドに行く冒険者など、闘鬼神くらいだったが、今ではそれなりの数の冒険者も居るし、それ以外の普通の旅人や商人風の格好の人間も居る。

 その者達は、急に降り立った俺達の事を、未だにひそひそと言いながら、チラチラと見ていた。


「依頼の報酬を相場の何倍も引き上げている効果でしょうか?」

「だろうな、多分。後はまあ、新しい妓楼ってのもあるだろうな……」


 よく見ると、少しばかり小奇麗な恰好をした者達が、護衛のような騎士や冒険者を連れている者も居る。恐らく貴族だろう。

 事件が起こった直後は、サネマサやジゲンが睨みを利かせていたということもあり、多く居たクレナの貴族達も戻ってくることは無かったが、ここ数日で遊びには訪れるようにはなったようだ。

 俺も居なかったことだし、今は天上の儀でアヤメも、サネマサも、コモンも居ない。遊ぶなら今だと言ったところだろう。

 そんな貴族達も、俺達の姿を見るなり、ギョッとしたような顔になり、そそくさと離れていった。クレナに住んでいた者だろうか。俺としては、知らない相手なので特に何をするということも無いのだがな。


「まあ、街が活気づくのは悪いことじゃない。取りあえず、ギルドに行くぞ」


 街の様子は後で確認するとして、俺達はギルドに入った。

 中もそれなりに賑わっている。モンクのギルドとまではいかないが、多くの冒険者達が依頼票の前に群がり、それぞれ依頼を選んで、受付で列を成していたり、酒場で飯を食ったりしている。


「こっちも結構居るな、やっぱり」

「これだけ居ますと、報酬を増額というのもすぐに解けそうですね」

「モンクで稼いで良かった。お前の言うことは正しかったな……」


 ツバキは、胸を張って、はい! と頷く。ずいぶんと満面の笑みに、やれやれと思ってしまう。

 リンネもニコ~と笑っている。エンヤの次に稼いだからな。二人のおかげで、これだけあればしばらく大丈夫だなと、金が入っている異界の袋に手を置いた。


 さて、しばらく様子を確認したが、闘鬼神の姿は見えない。ついでに言えば、バッカスの姿も見えなかった。妓楼で遊んでいるのだろうか。闘鬼神も、家で修行とかしていたり、未だ依頼でもこなしているのかも知れない。

 まあ、闘鬼神には家で会うし、バッカスとはどこかで会えるかも知れないし、あまり気にせず、俺達は依頼を受注するために受付に並んでいる者達の列に加わった。


 そして、前の奴らのやり取りが終わり、俺達の番がくる。前と同じく一生懸命仕事をしていた女に声をかける。


「よう、ミオン。忙しそうだな」

「はい! あ、ムソウさん! おかえりなさいませ!」


 机で書類に何かを書き込んでいたミオンはスッと立ち上がり、俺達の姿を見て一礼した。


「え……ムソウ……?」

「ムソウって……確か……?」


 それと同時に、周囲から視線と、ヒソヒソ話す声が聞こえてくる。自分で言うのもなんだが、クレナでは俺の名も、サネマサやジロウ並みに広まっているからな。何となくむず痒い気持ちになる。

 苦笑いしていると、ミオンが慌てて、小声で話し始めた。


「あの……すみません……」

「いや、良いって。実はこういうの、慣れているからな。それに、ここで隠していても意味無いし、覚悟の上だ」


 そう言うと、ミオンはちらっと隣に立つツバキに視線を移す。ツバキが小さく頷くと、ミオンもコクっと頷く。


「良かったです……怒られたら大変でしたから……」

「お前も俺を何だと思ってんだ……」


 よほどの事じゃない限り、俺はミオンを怒ることは無い。寧ろいつも、アクの強いアヤメの元でしっかりと仕事をしていて褒めたいくらいだ。

 俺がミオンを怒ることがあるとすれば……


「なあ、ムソウって冒険者があいつだったら、今ならこれ、いけるんじゃねえか?」

「報酬金貨1000枚……試してみるか……?」


 ケリスと一緒に、悪党みたいな冒険者も居ないというのに、何故か今も貼り出されている俺への挑戦を示した特別依頼の依頼票。


 何故まだ貼っているのかと以前聞いたところ、アヤメ曰く、


「面白そうだから」


 ミオン曰く、


「調子に乗られる冒険者の皆様への牽制」


 とのこと。アヤメはともかく、ミオンまでも件の依頼をあの場所から剥がさないあたり、また、あの依頼が起きた時などは、少しばかりのお仕置きも含めて、再びミオンに、結界を張る係をさせようと思っていた。

 俺がミオンに対して出来るのはそれくらいと思っていた時に聞こえてきた、冒険者達の言葉。それを聞きながらニヤニヤとしていると、不穏な気配を感じ取ったミオンが、慌て始める。


「そ、それで、ムソウさん! 今日は、どうされましたか? 依頼ですか? それとも、素材の査定売却金の受け取りですか?」

「何慌ててんだ? まあ良い。今日、モンクから帰って来たんでな。挨拶をと思って来ただけだ」

「そうですか……ですが、アヤメ様は今……」

「ああ、天上の儀で王都ってのは知っている。だから、代理の人間にだけでもと思ってな」


 そう言うと、ミオンはハッとした様子で目を見開き、少しばかり黙って思案を巡らせた。

 するとすぐに、ニコッと笑みを浮かべる。


「なるほど! かしこまりました。その方でしたら、執務室にいらっしゃいますので、どうぞ~!」


 二階の方に促すミオン。心なしか、すごく嬉しそうというか、ご馳走を前にしたリンネのように、ワクワクとした顔つきになっている。


「急に明るいな。まあ、良いや。どうせ、ショウブかナズナかだろ? 取りあえず行ってくる」

「はい! ごゆっくり!」


 そのまま俺達を送り出すミオンに、俺もツバキも、疑問は尽きなかった。


「何なんだろうな、一体……」

「さて……ひょっとして、ショウブさんではないとか?」

「あ、それで俺が驚くと思ってってか? ミオンめ……」

「ですが、ショウブさん以外ですと、思い当たらないですね……」

「だよな……まあ、考えても仕方ないから、とっとと開けるか」


 話しているうちに、執務室の前へと辿り着く。アヤメが居ないなら、開けた瞬間に斬りかかられることも無いと思い、戸を叩いた。


「冒険者のムソウだ。話がしたいんだが、誰か居るか?」


 一応と思い、声をかけると中から返事が返ってくる。


「お、おお、ムソウ殿か。戻られたようじゃの。ア、アヤメは不在じゃが、妾で良いなら話を聞こう……」


 部屋の中から聞こえて来たのは、ショウブの声だった。やはり、アヤメの代役はショウブだったようだな。

 なら、先ほどのミオンの様子は何だったのかとツバキを顔を見合わせて、首を傾げながら、戸を開けた。


 シュッ!


 刹那、小さく空を切る音と共に、迫りくる切っ先。


「「ッ!」」


 ツバキのスキルも間に合うことなく、俺はそれを紙一重で避ける。それと同時に、部屋の中に思いっきり突入し、刀を持っている者に対して当て身を食らわせる。

 攻撃してきた者を吹っ飛ばしたのは良いが、勢い余って俺も転んでしまった。


「むう! 今じゃ、ショウブ!」

「う、うむ! 衝風弾!」


 ショウブとは別の声が聞こえ、その指示でショウブは俺に風の塊を飛ばしてきた。


「させません! はあ!」

「て~い!」


 しかし、ツバキが俺の前に結界を張って俺を護り、その隙を突いたリンネがショウブと同じような魔法をやり返して、ショウブの手から鉄扇を落とさせる。


「くっ!」

「終わりです……」


 慌てて鉄扇を拾おうとするショウブの首先に、斬鬼の刃を突きつけるツバキ。ショウブはやれやれと観念したように両手を上げた。


「流石……ツバキ殿じゃの。モンクで腕を上げたのかの?」

「そんなところですね。さて……こちらは終わりましたよ、ムソウ様」

「俺も……終わった」


 俺の方は、突き飛ばした相手の腕を掴み、首筋にクナイを突きつけながら死神の鬼迫を少し強めにぶつけて黙らせていた。コイツにはこれだけやっておいた方が良いと思っているからだ。

 俺に斬りかかってきた相手も、刀を放し両手を上げながら、やれやれという顔をしていた。


「……ムソウ殿。参ったと言ったのじゃから、放してくれんかのう?」

「信用出来ねえ……」

「ただの戯れではないか……鬼迫だけでも……」

「結構紙一重だったぞ、最初の一撃。俺を殺す気だったか?」

「それくらいの気持ちでやれと、儂はアヤメに言っておったがの。ムソウ殿には毎回あしらわれておったではないか」

「お前と一般人を一緒にするな! “化け物”のくせによ!」

「むう……“規格外”には言われたくないのう」


 はあ~とため息をつく、アヤメをそそのかし、この部屋に入って来た者に斬りかかれと命令した張本人であるジゲンは、俺が殺気を解いてやると、俺の手を払い、むくりと起き上がる。刀を鞘に収めて、いつものようにニコッと笑みを浮かべた。


「よくぞ、戻ってきたのお、ムソウ殿。モンクへの旅は楽しかったのか?」

「最初からそれだけでいい……」

「ツバキ殿も、リンネちゃんもおかえり。ツバキ殿は里帰りは出来たかの?」

「はい。しっかりと親孝行出来ました」

「おじいちゃんたちに、おみやげあるよ~!」

「それは楽しみじゃ。まあ、積もる話も聞くとしようではないか」


 そう言って、ジゲンは俺達を長椅子へと促す。俺達が座ると、正面にジゲンとショウブも座った。

 俺がムスッとしているのを気にしてか、茶を淹れながら、ジゲンはやれやれとため息をつく。


「まだ怒っておるのかの? ムソウ殿なら喜ぶと思ったのじゃが……?」

「何度も言うが、喜ぶか! あんなの喜ぶのはサネマサか爺さんくらいだ! というか、何故、爺さんがここに?」

「む? 聞いておらんようじゃな。実はの……」


 ほっほと笑いながら、ジゲンはここに居る理由を話した。何でも、ギルド支部長としての代理はショウブというのは俺達の考えている通りだったが、領主としての代理というのは、ショウブにも無理だった。

 いつもはナズナかコスケが行っていたのだが、二人は最近増え始めた妓楼での仕事が忙しいとのことで、困ったアヤメが最終的に頼ったのがジゲンだったらしい。

 最初は戸惑ったジゲンも、かつてまだ幼かった頃のアヤメの補佐をしていたこともあり、コウシ達の説得もあって承諾した。

 家の事は牙の旅団やカドル、それにダイアン達に任せているから安心とのことで、たまも、普段と同じ様に過ごしているらしい。


「と言っても、まだ二日目じゃから分からんがの。アヤメとサネマサは一週間後に帰るそうじゃから、その間は儂が領主と言うことじゃな」

「なるほど……しかし、爺さんが領主代理とは恐れ入ったな。上手く出来てんのか?」


 まだ二日目だから分からないが、実際の所はどうなのかと聞くと、ジゲンよりもショウブの方が大きく頷いていた。


「まったく問題は無いのう。先代と違い、領地経営の学は無いと言っておったジロウが、アヤメよりも仕事が早いからのう。妾もギルドの仕事に専念できる」


 ちなみに、自警団の方はシロウに一任しているという。街の治安を維持しつつ、その他の業務もそつなくこなすとは、やはりジゲンに育てられた者達の絆は強く、固いようだと実感した。

 ともかく、ジゲンはかつての生家で、少しばかり忙しく生活しているようだ。正直な話、俺の屋敷の方が落ち着くと苦笑いしながら茶をすすっていた。


「さて、儂らの話は置いておいて……モンク領でも派手に立ち回ったそうじゃな。すでに話は届いておる。何があったのか、土産話でも聞かせてくれんか?」


 ジゲンは茶の入った器を置き、俺達に視線を移す。ショウブはどこか呆れている様子で、うっすら笑みを浮かべている。

 どうやら、俺達がモンクで事件に巻き込まれたことなどはすでに伝わっているらしい。

 俺とツバキ、そしてリンネは、自分達の周りで起きたことを二人に話していった。


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