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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
ツバキが里帰りする
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第344話―謝罪を受ける―

 リエンは、その場でアマンに縄をかけ、口に布を巻き、耳と目を塞いだ後、その他、街の者達により拘束された冒険者や商人達と共にその場に放置した。


 すでに、アマンを追っている騎士団には、リエンがここに居ることを伝えているとのこと。騎士団が来る前に色々と話しておきたいというリエンの言葉に頷く。

 視線を送ると、メリアが俺とリエンの席を用意した。早速酒でも飲みながらと思っていると、リエンは首を横に振り、皆の前で正座する。


「お、おい……」


 何をしているのかと、近づこうとすると、リエンは手を前に出して俺の動きを止めた。


「けじめだ……」


 リエンはフッと笑みを浮かべて、改めて、皆の方に向き直った。皆、驚いた様子で、リエンの姿を見つめている。


「……今回の一件、全ては俺の監督不行きの結果だ。俺が、もう少し早くこいつらを見限っていれば、こんなことにはならなかったと思っている。

 特に、イーサンに協力してくれたそこの騎士の嬢ちゃんと、攫われた妖狐の嬢ちゃん、それから、攫われそうになった嬢ちゃん達……」


 リエンは、ツバキや、リンネ達を見据える。急に視線を向けられ、ツバキはキョトンとし、獣化したリンネと遊んでいたマナ達も、名前を呼ばれて動きを止めて、リエンの方を向いた。

 その場に居る全員の視線が注がれる中、リエンは地面に手をつき、その場で土下座した。


「今回は、本当にすまなかった! 許してくれとは言わない! アマンやルーザー達含めて、俺も相応の罰は受ける! 何でも言ってくれ!」


 大声で叫ぶものだから、少しだけ狼狽えた様子になる街の衆。正直な話、俺含めて、そんなこと言われてもなあ、という状態だ。

 そもそも、アマンやルーザー、その他、この街で違法な商売をしていた商人達や、競りに参加し、そのことを黙認していた貴族、騎士団はまだしも、リエンを恨んでいるという思いは全くと言って良い程無い。

 リンネ達子供達も、どうするべきかと、親たちに困ったような視線を向けているが、親も困っているようで、狼狽えていた。

 真っ先に、口を開いたのはツバキだ。慌てた様子で、頭を地面につけるリエンに駆け寄る。


「り、リエンさん! やめてください! 私……いいえ、私達は、貴方の事は恨んでおりませんから!」

「それでも、今回の事を引き起こした責任はある! 出来ることはやるつもりだ!」

「すでに、港の使用料や、品を卸す際の話は聞いております! 正直、それで充分だと皆さん仰っておりますので!」

「足りないだろ! それで本当に良いのか!? 俺に出来ることは何でも言ってくれ! 本当に、何でも、気の済むまでやるつもりだ!」


 額に泥をつけながら上げられた顔に、ツバキは更に困ったような顔をする。本気でこちらが更に条件を出さないと、俺は帰らないという気迫を感じる。正直、怖い……。

 やはり、商人だから貸し借りというのは嫌いなのかと頭を掻いていた。どうしたものかと思っていると、皆の中からつかつかと足音が聞こえてくる。

 人の群れを割って、リエンに近づいていくのは、メリアだった。メリアは、ツバキをどかせてリエンの前に立った。


「あのね、娘が言っているように、私達は貴方を恨んでも、憎んでいるわけでも無いから、そんなことされても、困るだけなの」

「ちょ、ちょっと、お母さん!」


 メリアの強気な一言に、ツバキと、街の連中は慌てる。謝りに来た人間に対する態度では無いということはもちろん、モンク最大の商会、その長に失礼なことをすれば、この先、面倒なことになるかも、という思いで、皆はメリアを止めようとするが、本人は気に留めず、更にリエンに対して語り掛ける。


「私達が貴方に望むのは一つだけ。もう、あんな人たちをこの街に入れないで。今後も私達の生活を脅かすようなら、私は貴方を許さない」


 メリアの目は本気だ。次またこういう事があったり、リエン商会の者がこの街に迷惑をかけることがあったら、今度こそは許さないという思いが伝わってくる。

 リエンは再び街の皆を眺め、最後にメリアの顔をまっすぐと見つめながら頷いた。


「心得た。今後、俺の商会の人間がこの街で俺の許可なしに勝手に活動するのは禁止する。リーマとターレン、それから、“大博徒”に全てを委ねる。その上で、この街の人間が今よりも良い生活を送れるように俺は支援だけする……約束しよう」


 結局、リエンはこの街の人間の暮らしを背負い、自分はマルドから完全に手を引くことを決めた。損ばかりの条件に、何となく不安な気持ちになるが、本人がそれで良いと言っている。

 そこまでの覚悟に納得したのか、メリアはニコッと笑って、リエンに頷いた。


「なら良いわ。そちらの用事は済んだわね? じゃあこっちに来て、これからの事について、話し合いましょうか。私の作った美味しいご飯でも食べながら、ね」


 メリアは用意した席にリエンを促す。リエンはキョトンとした後、フッと笑みを浮かべた。


「良い女だな、アンタ。さっきの契約が無ければ、うちの商会に欲しい人材だ。話を纏める気骨もあるし、終始堂々としている姿は、俺でも尊敬する」

「私は、店主じゃないわ。店主は、私の夫よ」

「知ってる。俺の情報網は神がかってるからな」

「はいはい」


 リエンは頭を掻きながら、料理と酒が置かれた席に向かう。


「おっと……待たせたな、ムソウ殿。俺の用事は終わったようだ。約束通り、会食といこう」

「あ、ああ……分かった」


 リエンに促され、俺も後に続いた。メリアとリエンを見守るだけだった街の衆の中から、ポツリと、


「流石、メリアちゃん」


 という言葉が聞こえてくる。親子似てるなあと思い、ツバキを見ると、どこか呆れながらも、僅かに嬉しそうで、誇らしげな顔で、メリアを眺めていた。


 ◇◇◇


 さて、俺とツバキはメリアの用意した席につき、リエンも隣に座って、お互いに酒を飲みながら、メリアの料理に舌鼓を打つ。

 街の者達も、段々と落ち着いていき、リエンの事を気にしながらも料理を楽しみ始める。

 リンネは未だ大きな魔獣の姿となっており、料理に満足したのか、今は子供達の楽しそうに遊んでいる。ふかふかのリンネの毛触りにシオリ達が喜ぶ度に、リンネは嬉しそうにして、尾で子供達を包み込んだりしている。

 偶に、子供達の母親がリンネに触れてうっとりしている光景が目に入り、ツバキと一緒に、笑っていた。リエンも大笑いしながら、その光景を眺めている。


「ムソウ殿の従魔は本当に可愛らしいな。あの子をあんな目に遭わせてしまい、本当に申し訳なかった」

「それはもう良いって。終わりが無くなる……」

「そうですよ。今回、悪いのはルーザーという男であって、貴方ではありません。寧ろ、イーさんにも手伝っていただきましたので、リエンさんが謝罪することは何も無いです」

「そう言ってくれるのは本当にありがたい。イーサンにも別に今回の件で褒賞金を出さねえとな……」


 改めて、ツバキと俺に頭を下げるリエン。見限ったとはいえ、自分が長を務める商会の部下のやったことについて、ここまで頭を下げるのは大したものだと感じた。

 俺は、ダイアン達が何かやらかした時に、関係各所にここまで謝ることが出来るのだろうか。その後の生活を護っていける気概を持てるだろうか。

同い年くらいに見えるだけに、余計にそんなことを思ってしまい苦笑いする。


「そういや、リエンはどうしてここに? というか、何時から居たんだ?」

「リーマとターレンとの会合が終わった後だ。知り合いに、アマンらしき奴がここに居るって聞いて、急いで来たってわけだ」

「知り合い? 商会の人間か?」

「そんなんじゃねえよ。さっきも言ったが、この街でうちが活動することに関しては手を引く……が、俺の友達が居るのは別に構わないだろ?」


 聞けば、リエンにはこの街だけでなく世界中至る所に商人や冒険者問わず友人が存在し、時折、情報を貰ったりもしているらしい。

 ここに来たのは、そんな数多く居る友人の一人からアマンの情報を聞き、何かしでかすのではと思って、来たという。目の前でアマンが何かすれば、問答無用で、アマンを罰することが出来るついでに、俺達への謝罪をしたかったとのことだ。

 まさか、実力行使で強引に復讐してくるとは流石に思ってはいなかったと笑った。


「もう少し穏便にするかと思ったら、この人数の人間が集まっていたから、予定を変えたってところだな。騎士殿は愛されてんだな~」

「嬉しい限りです」


 ツバキを心配する皆の思いが、この結果につながったと言うことで、色々と抱えていたリエンの肩の荷は少々軽くなったようだ。


「しかし、さっきの条件……良いのか? 俺にはお前が損ばかりしているようにしか見えないんだが……?」


 俺は、リエンがこれから、謝罪の意味も込めて行っていく事についての疑問をぶつけてみた。リエンは、酒を飲みながら、フッと笑う。


「良いんだ。この街が潤うのなら、それで良い。そうすれば、うちもわざわざ面倒なことに巻き込まれるってことは無くなるだろうからな」

「しかし、港の使用料については、私もやり過ぎだと思いますが……?」

「そんなことは無い。ここの漁師や港の運営が潤えば、レイヴァンや、レイン、コクロ、リヨク、シルバ、ゴルドの港も活気づくってことだ。そうなれば、うちの利益も大きくなるだろうからな。元々ターレンに対して出資する予定だったから、ついでだ、ついで」


 港が上手く回らないと、リエン商会としても、物流などの関係で不具合が出ることもあり、近々、マルドの港を運営するターレン商会に、リエン商会からかなりの額を提供する予定であったという。それも、これから毎年行うつもりだった。

 今回の会合ではその予定を前倒しして、漁師達の支援金のつもりでターレン商会に港の運営費を渡すつもりらしい。

 港の運営自体には、リエンもターレンに任せているとのこと。理由は、仕事が増えるからだと、苦笑いしていた。


「正直、これ以上面倒を見る場所が増えるのは勘弁してほしいな。今の所、レイヴァンとリヨク、それからゴルドの港とレインの港の一部の運営を任されているが、結構辛いからな。他の所の運営は他人に任せて、こちらから出資金を出した方が楽だ。これで、ターレン商会とは今後も上手くやっていけそうだし、漁師達からの信用も得られるので、ある意味、得をしたことになる。

 更に、ここの商会に与していない商人達の信頼を築くきっかけも出来たことだし言うことは無いな」


 意外と、色々と考え、更には商会の利益になるように話をつけていたリエン。この街に手は出さないが、付き合いとしては開拓したいようで、その目的は果たしたと、酒を飲んだ。

 ツバキは、呆気にとられた様子で、リエンの話を聞いている。


「では、カジノの権利をマルド商会に譲渡したのも、単なる謝罪の意味で行ったわけではないのですか?」

「マルド商会のリーマに迷惑をかけたことは事実だ。無論、“大博徒”にもな。だから、謝罪の意味でカジノを渡したというのは本心だが、嬢ちゃんの言うように、他にも目的はある」

「それは、どんな目的だ?」

「知っての通り、ここのカジノも、レイヴァンのカジノも、大きなところはそれぞれの商会主や領主が運営しているが、中規模以下のものは、今回、騎士団に捕まった者が運営していたものが多い。運営主が捕まった以上、カジノを潰すのは必然的だが、それは少しもったいない気がしたから、運営者不在のカジノを三商会で分け合ったってところだ。うちも人手不足になるからな」


 グレンから聞いていた話だと、カジノの中には、悪質なものもあり、そこを運営している者の中には、アマン側の人間だった件も結構多い状態となっている。

 今回の一件で、モンク領の多くのカジノが取り潰される結果となったが、そうなると、カジノを求める、例えばジーゴみたいな奴らが残ったカジノに押し寄せる結果となる。

 なので、余ったカジノはそのまま運営していくと決められたが、運営する人間をリエン商会だけから出すわけにはいかない。今回の事件で、三割以上の人間が去ることになったリエン商会だけではそもそも無理な話だ。

 そこで、リエンは、マルド商会とターレン商会に、余ったカジノの運営権を譲渡し、三商会でカジノを回していくと提案した。これにより、リエン商会にも、二つの商会からも文句の言えない結果に落ち着くことになったという。


「カジノは一日で莫大な利益を作る。そんなカジノを独占するってこと自体、間違いだ。また、余計な火種を作る結果になるからな。だから、これで良いんだ」


 俺達の心配をあっさりと払拭するリエン。何となく心配していたが、その必要は最初から無かったんだなと、ツバキと共に大きく息を吐いた。

 それなら、何の気兼ねなく、マルドの人間もリエンの計らいに応えることが出来るし、ギランに関しては「仕事が増える」と喜んでいたが、ほとんど仕事を押し付けられているなと、今度はアイツを心配した……少しだけど……。


 しかし、もう一つ気になることがあったので、リエンに確認してみた。


「ふむ……確かに、アンタの話を聞いていれば、アンタの事は気にしなくても良さそうだが、商会自体は大丈夫なのか? アマン側の人間が、結構いたこともあって、かなりの数の人間が商会を去るんだろ? イーサンも心配してたぜ?」


 リエン商会の利益よりも、そもそも商会自体が成り立つのかと言うことに関しては、未だに不安だ。これまでのようには行かないのではと、俺とツバキ、そして、いつの間にか居た、先ほどリエンに啖呵切ったメリアが不安に思っていると、リエンはニカっと笑った。


「アマン達が商会を去るんじゃねえ。俺が追い出すんだよ。かなりの数? 四割だろ? それくらいなんだ? 俺は、九割九分九厘を失ったところから這い上がった男だぜ? 余裕余裕」


 そのまま飯を口に運び続けるリエン。三割と聞いていたが、四割に増えているな。結構な事なのではないかと、少々慌てる。


「余裕って……そんな、軽々しい話なのか?」

「ああ。軽い話だろ」

「多くの商人が去るのですよ? 大丈夫なのですか?」

「大丈夫だって。少なくとも、リーマやターレンよりはまだまだ稼げる自信があるな」

「強がらなくても良いのよ? さっきの口約束なんて気にしないで、私も、知り合いを貴方に紹介しようかしら?」

「ハッハッハ! 冗談言うなって! 口約束と言えど、契約は契約だ。無理に、そんなことしなくて良いし、これからは、俺や俺が認めた奴らの紹介では商会に入れないって決めたんだ。アンタ達は何も気にしなくて良い」


 俺達の心配も何のその、と言った感じに、リエンは笑いながら酒を飲んでいる。

 豪快な笑い声は、周りにも聞こえたらしく、皆、話を辞めて、チラチラとこちらに視線を移してくる。

 その声は、家の中にも聞こえていたらしく、中から眠そうな目をこすりながら、タクマが顔を出した。


「ふわあ~……賑やかだね……何かあった……ん? あれ、貴方……リエンさん!?」


 タクマは家の前に居た俺達に近づき、リエンの姿を見ると、目を見開く。眠気も醒めたといった感じだ。呆気にとられるタクマに、周囲の人間とメリアが経緯を説明する。

 話を聞きながらうんうん、と頷くタクマや周囲の者達を見ながら、リエンはここの連中は面白いなと、相変わらず美味そうに料理と酒を味わっている。


 話を聞き終えたタクマは、なるほどとうなずき、リエンに近づいていった。


「わざわざありがとうございます。ですが、妻も言ったように、こちらから貴方に何か請求することは全くありませんので、そこはご理解してください」

「……感謝する」


 リエンはタクマに頭を下げて、その場で握手をした。


「それで、今は何の話をしていたのですか? 面白そうなので聞かせてください」


 先ほどの大笑いは何だったのかとワクワクした様子のタクマに、メリアは、私大変なことしちゃったと切り出して、リエンの事について説明していく。商会の現状について、一通りの説明を受けたタクマは、ふむ、と頷いた。


「なるほど……確かにそれは、大変そうだね」

「でしょ? タクマもそう思うよね! だから――」

「でも、リエンさんならそれくらいの損失は大丈夫だろうね……いや、この場合は更なる利益につながるのかな」


 ニコリと笑うタクマに、メリアを始め、俺達は一瞬、ぽかんとしたが、リエンだけは、だよな、という顔で笑っていた。


「その通りだぜ、タクマさん。その様子だと、全部知ってるって感じだな?」

「全部では無いですが、大体は……」

「ど、どういうことなの!?」


 慌てた様子のメリアや、話を聞いた他の者達にタクマは説明を始める。


 まず、リエン商会から多くの商人が去ることについて。これに関しては、リエンにとっては邪魔でしかなかったアマンと、その考えに賛同する者達が対象であるので、気にしないというのは当然で、寧ろ、その者達が行っていた、「違法な」奴隷商や魔物商を、「合法的」な奴隷商や魔物商に、引き継がせることになるので、商会全体の仕事が減ったところで利益が減るということには繋がらないという。


 それから、リエン商会の商品を卸す際の便宜については、そもそもマルドでそう言った者達から手数料や運搬費などを集めていたのはアマンだった。利益も、アマンとその部下に多くが支払われ、商会本部にはわずか分しか行き渡らなかったという。

 なので、アマン達が居なくなった分、他の商人達への分配金が増えることになったので、そこまで多くの手数料は必要ないという結論になったそうだ。


「更に言えば、リエンさんにとっての一番の上客は、王都の十二星天様や、果ては人界王様も居る。けど、リエンさんはその方々との交渉権についてはリーマさん、ターレンさんに譲渡していない。

 人界を救った偉人達と関わることが出来るリエンさんの商会から、規模が小さくなったからと言って出ていく人は居ないと思うよ」


 タクマの説明に、リエンは感心したような顔つきになる。


「ほう。タクマ殿はなかなか切れる男のようだな。そこに気付いているとは思わなかった。奥さん同様、うちに欲しい人材だな」

「あ、すみませんが、お断りします。今後もそちらとは、五分五分で助け合っていきましょう」

「ちぇ……まあ、良いや。タクマ殿の言ったように、治癒院、天宝館、魔獣宴、武王會館、旅行公司、他、十二星天が関わる機関とのやり取りは今後も継続するし、これに関してはうちだけの、文字通りの専売特許にすることにしている。それだけの信頼をあの方々から得るのはそれなりに苦労したからな。他の奴には絶対渡さない。

 無論、この薬も俺の所からしか販売しないから、利益は膨らむ一方だ。これに関しては、ムソウ殿に感謝だな」


 リエンは呪殺封の薬を出しながら、俺の肩をポンと叩く。

 要約すると、カジノの運営費や、その他こまごまとしたものの販売権利などはマルド商会とターレン商会に譲渡するが、リエン商会の他にはギルドくらいしか無いとされる十二星天たちが設立した機関からの商品の販売権利は譲渡しないということになる。

 呪殺封の薬など、俺が治癒院と作る薬も、他の商会や商人が取り扱うには、リエン商会を通さないといけないことになっている。なので、売り上げの一部はリエンの元に行くというわけだ。


 今までは商会内の商人の数も多く、仕事の取り合いなどの商会内で起こる問題で頭を抱えていたが、全体的な商人の数も減ることになるので、残る商会内全員、それも、リエンのやり方に賛同する者達に、十二星天との関りを繋げることが出来るので、今まで以上に世界各地からの要望に応えることが出来るようになり、更なる利益を生み出すことが出来ると、笑っている。

 早い話が、人員削減と、経営に関して少しだけ整理しただけだ。膨れ過ぎた商会の、多種多様な仕事、問題事に頭を抱えていたことに、リエンは辟易としていたらしい。


「俺も最初はこんなじゃなかったからな。タクマ殿のように、自分の店で、自分の作ったものや選んだものを売ったりするだけだった。

 だが、知らない間に大きくなって気付けばこうだ。莫大な金はもう良いから、やりてえようにやりたくなっただけさ」


 苦笑いしながら、リエンは自分の服に描かれた紋章をなぞる。


「……俺だけが曳いているだけの荷車だったが、仲間も出来て、大きくなったのは嬉しかった。

 だが、その仲間が変なところに俺の荷車を曳こうとしたりして、とうとう我慢が出来なくなった。俺も歳だし、これからは好きなように、好きなことをやって行きたいな……」


 色々あったにも関わらず、どこかすっきりとした顔のリエン。今回の一件が自分の部下が起こしたものということで、頭を抱えることにはなったが、寧ろそれは、先伸ばしにしていた決断をする機会を得たと考えることにしたようだ。

 何もかもを自分にとっての、利益を生み出す機会ととらえ、実際に損をしないように画策し、実行したリエンに、心配していた俺、ツバキ、メリアは、ただただ頷くしかなかった。


「まあ、そう言うことなら、俺達は本当に何も気にすることは無いんだな……」

「ムソウ殿はそもそも、この街の人間じゃないだろ。まあ、アンタが気にするのは、俺達がさばいていく呪殺封の薬やそのほか、治癒院で扱う薬が在庫切れしないようにすることと、これからも強力な魔物を倒していく事だけを考えてくれ。良い素材は、クレナのギルド支部を通して俺達が買い占めてやるからな」

「わ、わかった。善処する……」


 固まっていた俺にぐいぐいと来るリエンの様子に、ツバキ達もクスクスと笑い始めていた。回りまわって俺がリエンに対してできる支援もあるのだなという気持ちと、何だか言いくるめられているようなという複雑な気持ちとなり、俺は苦笑いした。


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