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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
ツバキが里帰りする
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第336話 ツバキ奮闘編 ―故郷の巨悪を斬る―

 通路を進んでいくツバキ。その先の二つ目の部屋からは、意識して気配を探らなくても、嫌な気配が伝わってくる。

 これほどまでに、自分は恨まれているのかと、先ほどの冒険者達を見てから、ツバキは感じていた。

 むしろ、故郷で友達や知り合いを巻き込むくらいの事件を引き起こされた自分の方こそ怒っていると、ツバキは呆れていた。

 先ほどの冒険者は、アマンや貴族にそこまでの忠誠心は無い、ここから先の者達は、強い忠誠心があると判断することにして、ツバキは深呼吸する。


 しかし、ツバキを取り巻くこの嫌な気配。こちらも、悪意に呑み込まれそうになり、冷や汗を掻く。

 尋常じゃない状況に、ツバキは違和感を覚える。


 ……それと同時に、感じていたことは妙な既視感。以前にも、こんな感じを受けたことがある。どこだったかと思い出しているうちに、思い当たることがあり、ツバキはハッとした。


―まさか……!―


 ツバキは、その場から駆け出し、先を急いだ。

 そして、次の部屋の扉まで来ると、間髪おかずに、斬波を放つ。


「ハアッ!」


 それと同時に、自身の周りに障壁を展開した。瓦礫と、中からの攻撃を防ぎながら、部屋へと到達する。

 先ほどと同じ様な造りの、大きな部屋に、ここにも冒険者のような恰好をした者達や、騎士の格好をした者達が十人以上控えていた。

 そして、その奥に怪しげな宝玉を持ち、長髪で片眼鏡を掛けている男と、路地裏に居た、人攫いに扮していた冒険者が立っている。


 ツバキを目にするや、冒険者の男が荒々しく口を開いた。


「チッ! 役立たず共が! まあ、良い。弟の仇は討たせてもらう!」


 冒険者の男は、短刀を振り上げながら、その場から飛び出す。ツバキはそれを受け止めたが、男は軽い身のこなしで、ツバキから距離をとった後、即座に詰め寄っては、短刀の連撃を繰り出してきた。


「くっ……!」


 路地裏で会った時以上の腕前と、強い殺気を孕んだ猛攻に、ツバキは、本気で対応していく。

 通常の短刀なら斬鬼にこれだけ触れているだけでボロボロになるところだが、男の手にする短刀は未だに衰えた様子もなく、むしろ振れば振るほど威力を増し、時折炎を吹き出しながら、ツバキに襲い掛かってくる。


「オラオラオラオラオラオラオラオラあああああ~~~ッッッ!!!」


 身のこなしは、素人同然の男の猛攻は苦にならない。だが、戦いが長引くにつれて、疲れを見せるどころか、一撃、一撃が強く荒々しくなってくる。男の攻撃を受けるわけにはいかないと、ツバキは抵抗していく。

 男は、一瞬の隙を見出し、交差させた短刀を振り上げ、全力でそれを振り下ろし、重い一撃をツバキに放つ。


「くぅっ!」


 男の攻撃を受け止め、鍔迫り合いの態勢になるツバキ。それを見るや、長髪の男は、魔石を掲げて、仰々しく口を開いた。


「今だ。行け、お前ら……!」


 長髪の男が手にした魔石が輝くと、それまで動かなかった護衛の冒険者達が武器を掲げ、大声を上げながらツバキに向かってくる。


 目の前に居る男と、護衛の冒険者達。その場に居る全員は、全身から嫌な気配を漂わせながら、目を赤く輝かせていた。


「ッ! ハアアアッッッ!!!」


 ツバキは、向かってくる冒険者達の前に、大きな障壁を展開させ、思いっきりぶつけた。

 壁に激突して、白目を向く護衛の者達も居るが、未だ多くは、よろよろと立ち上がる。

 しかし時間は稼ぐことが出来たと、ツバキは刀を振り抜き、短刀の男から距離を取る。


 そして、刀を鞘に収めて、地面を蹴った。


「うぅ……ウがああああああッッッ!!!」

「抜刀術・瞬華ッ!」


 大きく振り上げられ、勢いよく炎を吹き出す短刀を振り下ろされた瞬間、こちらも全力で降り抜いた斬鬼で男の短刀を破壊、そのまま、男の首に重たい一撃を入れた。


「うがっ……ガハッ……」


 男は地面に伏して意識を失った。それと同時に、男を取り巻く嫌な気配が霧散していく。

 刀を払ったツバキは、未だに意識のある者達を見据え、手を前に出した。


「仮もののとはいえ、その殺意は本物です……ご容赦ください」


 ツバキは、障壁を組み合わせて作った小さな立方体を大量に展開。それを、この部屋を護る者達の、特に首筋を狙って飛ばした。


「ぐぶっ!」

「おえッ!」


 喉を潰された者達は、呼吸が出来なくなり、バタバタと意識を失っていった。短刀の男と同じく、体中から漂っていた嫌な気配が消えていく。

 ツバキは懐から回復薬を取り出し、倒れている者達の傷だけを癒した。目を覚まして、また向かってこないように、全快とまではいかないようにしていた。


 一通りの処置を終えた後、ツバキは魔石を使用した長髪の男に向き直る。

 男は、ツバキの活躍が想定外だったのか、目を見開き、固まったまま動かなかった。

 そんな男に、ツバキは静かな怒りをたたえた、強く冷徹な眼差しを向けている。


「……これは、どういうことですか? 何故……呪いを発生させる魔道具を貴方が?」

「な……に……!?」


 ここで闘った者達は、全て呪いを受けた者達と同じ特徴をもっていた。そして、それを操っていたのは、魔石を手にしていた、長髪の男。

 呪いを発生させる魔道具は、マシロでの一件で、ツバキも目にしている。そんな代物がここにあるということが信じられなかったが、ここに来る途中にイーサンから聞いたアマンへの推測、「アマンと転界教は繋がっている可能性がある」ということを思い出し、ツバキは確信に近づくべく、長髪の男に詰め寄る。


「呪いを発生させる魔道具……そんな大層なものをお持ちということは、貴方がアマンさんということでよろしいですね? マナという娘を名乗り、リンネちゃんを攫った、今回の元凶……ということで良いですね?」

「チッ! な、何なんだ、テメエは!? 何で、テメエみたいな奴が、ここに居るんだ!? 俺の店をめちゃくちゃにしやがって……ふざける――」


 長髪の男、商人アマンは徐々に置かれた立場を理解し激高。ただの女騎士が、自分がマルドを掌握する足掛かりとして作った店をめちゃくちゃにされ、更には騒ぎにより、オークションも中止せざるを得なくなった。

 ツバキも気配を探ったが、次の部屋からの人の気配は確実に少なくなっている。すでに、避難行動は終わっていることを確認した。

 店に対する多大な被害と、貴族からや、裏社会の信用を失ったアマン。今回の損失は計り知れない。どう責任を取る気だと、ツバキの質問は無視し、自分の主張を押し通そうとするアマン。

 そんなアマンの言葉に、ツバキの怒りは爆発。その場から飛び出し、斬鬼をアマンの顔の横に突き立てた。


 表情を強張らせるアマンに、ツバキの怒号が放たれる。


「ふざけるな? それはこちらの台詞です! 貴方がどうなろうと知りません! 私がここに居る理由? 貴方が一番知っているでしょう!? 私は、リンネちゃんを……私の“家族”を助けるために、ここに来ました! 裏社会? 貴族? オークション? そんなのは、二の次です! 

 貴方……自分が何をしたのか、気付いておりますか? 私だけでなく、私以上に危険な方を怒らせたんですよ? そもそもリンネちゃんを攫った時点で、貴方は終わりです! さあ、リンネちゃんはどこですか!? 正直に言わなければ、この世に生まれて来たことを後悔するくらい貴方を斬り刻み、地獄を見せます!」


 そして、ツバキは、アマンの顔に思いっきり拳をぶつける。

 吹っ飛んだアマンは、その場で顔を抑えながら、痛みに悶絶していた。


 リンネが攫われた時から、目的を達するまでは冷静な態度で居ようと、意識して感情を抑えていたツバキ。

 しかし、アマンの態度に堪忍袋も切れた。普段は見せないような気迫を纏ったツバキの言葉に、アマンは、ただただ震えるだけだった。

 ツバキはゆっくりと斬鬼を握り、アマンに近寄っていく。


「さあ……話しなさい……リンネちゃんは……どこ……?」


 先ほどまでツバキが受けていたものと同じくらい強い殺気を受け、アマンは腰を抜かし、その場から動けず、正直に話さないと確実に斬られるという思いで頭がいっぱいになっていた。


「あ、あ、あ……」


 ツバキへの怒りは鳴りを潜め、頭の中は恐怖でいっぱいになる。アマンは観念し、オークション会場の方を指さした。


「あ、あの魔獣は……妖狐は……買い手がついた……今頃……港に……」

「くっ!」


 それを聞いたツバキは、即座にその場から離れる。

その後、大部屋を抜けて通路を走り抜け、オークション会場となっている部屋へ続く扉を斬って、中へ突入。


 すでに誰も居なくなり、リンネの気配も感じないことを確認したツバキは、急いで港へ続く通路を駆けていった。


◇◇◇


 ツバキが去った後、アマンは緊張も解かれて、その場で大きく息を吐く。

 辺りを見回しながら、とんでもない女を敵に回したと、後悔と共に、苛つきばかりが頭の中を駆け巡った。


「くそが! クソが! あの男をかくまったばかりに……言うことを聞いたばかりに……! クソッタレがッ!!!」


 アマンは怨嗟の声を上げながら、その場で地面を叩く。

 今回の妖狐を攫い、オークションの目玉とする計画は、アマン自身が立てた計画ではない。とある男の入れ知恵からだった。


 男は、アマンがマルドの店を建てていた際、アマンの部下である商人に迎えられ、大量の強力な魔道具と、強力な魔物を土産に、アマンに身を匿ってもらうよう頼み込んだ。

 男の用意したもので、更なる力と財を生むことに気付いたアマンは、そのまま男を自分の陣営に迎え入れる。

 男の正体は、クレナの一件で滅びることになった貴族、ケリス・ゴウン卿の家の従者頭で、世界をまたに掛けて暗躍する「転界教」という組織の一員であることを、アマンは男と、部下である商人から聞かされた。


 失敗したとはいえ、クレナやマシロなどの一件も、転界教によって引き起こされたもので、既に、その組織が強大な力と、財力、多くの貴族や実力者たちと繋がりを持っていることに着目したアマンは、自分の最終目的であるリエン商会の掌握を目指す為、転界教に加わることを決めた。


 そして、マルド掌握の計画を進めていた際、ケリスの従者の男から、今回のオークションを提案された。男が使役していた強大な力を持つ魔物と、ケリスの屋敷にあった大量の魔道具を競りに出せば、マルドの商人全てを掌握するには十分な量の金を得るとともに、各地の貴族たちに、アマンが持つ力の全てを主張できると、男はアマンを促す。

 それでも、目玉となる商品が無ければ、人も集まらないのでは、というアマンに、従者の男は、最近、街に、人間の少女に扮した、妖狐という魔物が出没していると提案。

 世界でも珍しい魔物が、自分の手が届く場所に居ることを知ったアマンはその日から、スキルの力で人間の少女に成りすまし、その妖狐を近づくことに成功。

 そのまま、妖狐を攫って、オークションを開くことは出来た。


 だと言うのに……


 妖狐の事を調べていくうちに見つけた先ほどの女騎士。妖狐を探しに来るだろうと踏んでいたアマンは、面倒なことにならないようにと、路地裏で女を待ち伏せた。あわよくば、従者の男から預かった呪いの魔道具で女を拘束し、そのまま奴隷オークションに出すつもりだった。

 その結果、今の状況となっている。


「あと少しで……あと少しで、マルドを……クソッ!」


 店を荒らされ、多大な損失を負ったアマン。もう少しで成就されるかも知れなかった、マルド掌握が水泡に帰し、リエン商会での立場も危うくなったということにただただ怒りを感じていた。

 幸い、商会本部にはまだバレていない。疑われていることは知っているが、確たる証拠をつかんでいないから、手を出せないでいることもアマンは知っている。

ここから逃げることが出来れば、まだチャンスはあると思い立ち上がる。


「まあ、いい……港にはアイツも居るし、あの女騎士がいくら強くても、アイツが暴れれば、問題ないだろう。

 それに、既にあの女の家は特定してある……ククク……俺を怒らせた罪は払ってもらうからな……」


 去っていたツバキを待つ災いと、未だ、自身の手の中に収まっている呪いの魔道具を眺め、喉を鳴らすアマン。

 そうしていると、店へと続く大部屋から、ガヤガヤと大勢の人間の声が聞こえてくる。


「奴の仲間か? ぞろぞろと来たものだ……まだ、捕まるわけにはいかない」


 アマンは、壁に設置した仕掛けを動かし、港へ続く道とは別の道を出現させ、地上へと続く、その道を悠々と歩いていった。


◇◇◇


 ツバキはリンネを助け出す為、港へ向かう通路を走って行く。アマンの店は、街の中心部ということもあり、それなりの距離はあった。

 まだ着かないのかと焦る気持ちを抑え、慎重に駆けていく。先ほど、怒りを発散させたからか、幾分か気分の方は楽だった。体の疲労も、それほど大きくはない。

 マシロに居た時に比べて、確実に強くなっていると確信したツバキは、あれからずっと一緒に居るリンネを思い、口元に笑みを浮かべる。


―待っててください……もうすぐ、助けます―


 リンネを助けるという目的の為、この数時間、走り続けたツバキ。早く一緒に帰って、お風呂に入って、メリアの作った美味しいご飯を食べようと決意する。

 その瞬間、ツバキの向かう先から、火の玉が飛んできた。


「ッと……まだまだ油断は出来ないということですか」


 慌てず、障壁を展開させて火の玉を防ぐ。そして、攻撃を放ってきた敵の正体を見て、目を見開く。


「魔物……ですか……」


 襲ってきたのは、冒険者では無く、ミニデーモンや、グレムリンなどの小型の魔物から、更に背後に居るトロールやオウガなどの中型の魔物たちまで居る。

 普段は大型の商品を通しているだけあって、通路はそれなりに大きいが、避けて通ることは出来ず、絶対に相手をしなければならない状況になっていた。


「あの魔物は……商品ですか……」


 恐らくは、オークションの為に用意された魔物達だろうが、これらを買った貴族や店側に、ツバキを足止めするために配置されたと推測した。

 少しだけ、魔物たちに憐れみを覚えたが、魔物から向けられるいつもの敵意に、そんな思いはすぐに吹き飛んだ。


「相手が人間では無い分、私も本気が出せます……どきなさい! 薄刃斬波ッッッ!!!」


 ツバキは、斬鬼を抜き、気を溜めて振り下ろす。なおも飛んできた火球を切り裂き、斬波はなおも飛び続け、ミニデーモンとグレムリンを切り裂き、更にその先に居るオウガとトロールに手傷を負わせた。

 あわよくば、あれでオウガとトロールも倒したかったところだが、やはり、距離があり過ぎるのと、威力自体が小さいため、一撃で倒すことは出来なかった。


 傷を負わされたオウガとトロール、更に奥から押し寄せる、ゴブリンとワイアームの群れ。思わぬ足止めに、ツバキは苦い顔をするが、その時、何もしなくても、手にした斬鬼が強い光を放った。


「これは……!」


 その中から感じられる圧倒的に強い気配と、圧迫感。輝きに包まれた魔物たちは、進軍を止める。

 ツバキは、呆気にとられて斬鬼を見つめていたが、フッと笑みを浮かべて、斬鬼を振り上げた。


「わかりました……ただ……リンネちゃん救出までの長い時間、私も共に戦えるように、先ほど申し上げたように、抑えた力での行使となります。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いします……」


 ツバキの言葉に頷くように、斬鬼の輝きは一層強くなった。ツバキは、駆け出しながら、斬鬼を構える。


「偶像術・奥義・闘鬼神ッッッ!!!」

―ウラあああああ~~~ッッッ!!!―


 斬鬼から聞こえる雄たけびと共に、姿を現したエンヤ。

 地面を蹴り、一気にトロールの前に立つと、その拳を思いっきり打ち付けた。


「オラアアアッッッ!!!」


 打撃に強いトロールといえど、エンヤの一撃を受けてそのまま背後から続くゴブリンの軍勢を押しのけながら吹っ飛んでいく。

 そして、周囲の敵を爪で切り裂いた後、ツバキに振り返った。


「ようやくか……ツバキ! お前の調子はどうだ!?」


 多大な力を用いる偶像術。切り札を使ったツバキの体調を伺うと、ツバキは笑みを浮かべながら気力回復薬を飲んでいた。


「少しクラっとしますが、大丈夫です!」

「やっぱり結構、後に響くんだな……」

「それよりも、エンヤ様はどうですか? 闘いづらいということは……?」

「ザンキと闘った時の三割くらいってところだな。さっきも貫くつもりが、吹っ飛ばすだけで終わった……」


 残念そうな顔で、吹っ飛んだトロールを見つめるエンヤ。その背中と、あっという間に切り伏せられたオウガやミニデーモンを見ながら、あれで三割かと、ツバキは苦笑いで応える。


「流石……ですね……」

「デけえ力が使えない分、長く居られるのはありがたいことだ。お前に感謝する」

「こちらこそです。ここから先は、共に行きましょう!」

「おう! じゃあ、俺に掴まれ! リンネの所まで突っ切るぞ! 気配は、感じているな?」


 ツバキはエンヤに掴まりながら、意識を集中させる。通路の先、いつの間にか近くになっていた港で、ドタバタする様子の大人たちと、この通路に居るような魔物たちの気配に混じり、弱々しく小さな子供の気配を感じられた。

 ツバキはコクっと頷き、エンヤに応える。


「はい、確かに感じます。ただ、明らかに、超級以上の魔物の気配も感じます……」


 リンネの気配は、ムソウから指摘されたあの日以来、他のものとの違いをじっくりと観察していて、察知する気配の中から見つけることはすぐに出来た。リンネは間違いなく港に居る。

 ただ、その他大勢の気配の中に、明らかに他よりも巨大な気配も感じていた。恐らくは超級から災害級の強さを持っている。リンネ以外の目玉商品か、自分を迎撃する為に用意されたものかは定かではないが、港でも大きな戦闘になることは明らかだった。

 上手く力を使えないエンヤを心配していると、エンヤはニカっと笑った。


「上等だ……リンネ助ける前に、ひと暴れしてやる……俺も、お前と同じく怒っているからな……」

「あ、そ、そうですか……」


 心配することなど何も無かったと、ツバキはエンヤに頷いた。エンヤは左手でツバキを抱え、右手に大刀を手にした。

 そして、宙に浮かぶとともに、その場から魔物たちの軍勢の中を突っ切っていく。


「オラオラオラオラ~~~ッッッ! どけえええッッッ! 雑魚どもがッッッ!!!」


 右手で大刀を振り回し、魔物たちを蹂躙していくエンヤ。振り落とされないようにしっかりとエンヤに掴まり、返り血を浴びないように、自らの前に障壁を展開させていたツバキは、エンヤを見ながら半ば呆れた気持ちになっていた。


―カエルの子はカエルとはよく言ったものですね……―


 ムソウよりも“戦闘狂”で“規格外”な一面を持つエンヤ。常日頃から、アイツは俺以上と言っていたムソウの言葉を身に染みて理解していたツバキだった。


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