第32話―デーモンロードを斬る―
……ミサキが召喚した魔物たちがデーモンキングを蹂躙していくのがここらでも見えた。ふざけた名前の奥義だが、実際見ると、結構えげつないな。
……お、向こうの戦いは全て終わったみたいだ。ミサキとハクビは二人を救出できたみたいだな。
……なんか、ミサキがニヤニヤしながらウィズを見ているな。レイカの方も、問題ないみたいだ。ここからでもわかるくらい、穏やかな表情でスヤスヤと寝ている。
二人が無事でホッとしていると、
ガシャンッ!
ん? 後ろから音が聞こえた。見ると、ゼブルは四肢を再生させ、立ち上がり、足元に無間が転がっている。
……へえ、抜け出すの、早かったな。
だが、だいぶ弱らせたみたいだ。立っているのもやっとという感じで、肩で息をしている。
「はあ、はあ、はあ……」
「……最初の余裕はもう無えみたいだな」
俺が笑うと、ゼブルは歯を食いしばる。
「……るな」
なんか言ってるが、聞こえないな。
「あ?」
「図に乗るなよ!人間ごときがあああああああ!」
ゼブルは俺に吠えた、そして体に力を入れる。自身の魔力を高めるとともに、そこらの気も集めている。すると、奴の腹のあたりが怪しく光り出す。
「ガアアアアアアアアア!!!」
ゼブルが雄たけびを上げると、衝撃がこっちまで届く。……おっ、無間がこっちに飛んできた。
俺はそれを掴み、ゼブルに構える。
腹のあたりの輝きが増し、ゼブルを包みだす。すると、ゼブルの体に異変が起こる。
背中には新たに4枚の翼が現れる。それに合わせ体も一回り大きくなり、体中に紋様が浮かび上がる。頭の角も大きくいびつなものとなり、顔は禍々しい形相でこちらを見ていた。
「……本性を現したってところか」
「クフフフフ。覚醒した我はもう、人間ごときが止められるハズもない……」
体中についていた傷を完全に癒し、自信ありげに、笑みを浮かべるゼブル。
「……お前、そんなんになるまでにどれだけの命を喰らったんだ?」
俺は静かにそう聞いた。確かめたいことだったからな。
「クフフフフ、さあな、この山にいた者たちはすべて食ったからな。いちいち覚えてなどいるものか」
……やっぱりか。この山の魔物たちは全部こいつらに食われたのか。そして、人間たちも……。
……こいつらは自分が強くなるためだけに他のの命を奪ったんだ。ただ、生きるために奪うんじゃない。自分を満足させるためだけに……
無間を握る手に力がこもる。
「ムソウ! 待たせたな!」
ふいに、ハクビの声が聞こえた。振り返ると、ハクビ、ミサキ、ミサキが召喚した四神と大鷲、そして、でかい亀の上にウィズとレイカが居る。
「こっからは私たちも協力するよ~! あちらさんも本気みたいだからね!」
ミサキはそう言うと、特大の火炎弾を放った。火炎弾はゼブルに当たり、大爆発を起こす。
だが、ゼブルは無傷だ。
「フンッ! 魔法帝と言えどもこの程度か……」
ゼブルはせせら笑いながら、手を振った。手の先から、見えない斬撃を飛ばしたみたいだ。ミサキたちは気づいてねえな。
ガキンッ!
斬撃が当たる瞬間、ミサキの前に無間を出してそれを防いだ。ミサキは、わっと言って、後ずさる。
「……びっくりしたあ~。ムソウさんありがと!」
「……」
ミサキは俺に礼を言ったが、俺はそれを無視した。
……悪いな。今はそういう気分になれないだけだからな。
「……ムソウさん?」
だが、流石にミサキは心配になるか。そんな顔で見るなって。大丈夫だからな。
「……すまない、ミサキ、ハクビ。予定通り、ミサキは結界を張って、皆を守れ。奴は俺一人で相手をする」
俺がそう言うと、皆は反論する。四神に至っては、俺達にやらせろとうるさい。しかし、ミサキだけは何も言わず、コクっと頷いた。いつになく、物分かりが良い。
「断空障壁、城郭障壁、不落障壁、天岩戸」
ミサキは四重の結界を周りに張った。四重の魔法ってミサキでも、難しいんじゃなかったっけ?
「……これなら、大丈夫。どんな攻撃でも、皆を護れる。……ムソウさん、思いっきりやっちゃって!」
ミサキは、笑顔で俺にそう言った。……大した奴だな、全く。
俺は、ミサキの言葉にうなずき、ゼブルに向き直る。
「……おい、ゼブル。さっきも言ったが、命を奪うということは、命を奪われる覚悟があるって考えてもいいんだな?」
「クハハハハハハ! 我が殺される? 我は他の者に殺されない! ゆえに我らは他の者を殺し、喰らう!」
俺の問いにゼブルは笑いながら、そう答えた。
「じゃあ俺が、てめえに死の恐怖、殺される恐怖を味わわせてやる!」
「やってみろ!下等生物がああああああ!」
俺が飛び出すのに合わせ、向こうもどこから出してきたのか、大きな鎌を俺に向けてくる。俺は無間でそれを受け止める。
すると、ゼブルは尻尾を俺に振ってきた。尻尾は俺に当たり、吹っ飛ばされる。……が痛みはない。ヒュドラの鎧のおかげか? 前よりも俺は強くなってるな。
俺は態勢を立て直し、斬波を放つ。それを、ゼブルは飛んで躱す。すると今度は空中で、六枚の羽根から、光線を出してきた。
「ホーミング・レイッッッ!」
ルーシーがハクビにやった技みたいだが、あれよりも数が多い。俺は、無間を手元で回転させ、それらすべてを防ぎきる。
更に、無間を構えなおし、ゼブルに突き技を放つ。
「流星豪神突!!!」
俺の技はまっすぐゼブルに向かっていく。ゼブルは二枚の羽根でそれを受けようとするが、受け切れていないみたいだ。そのまま、後方へ受け流す。その隙に、俺は跳躍し、ゼブルの前へ行き、斬りかかる。……が、躱されてしまい、矛の攻撃を受ける。俺はそれを無間で防御したが、そのまま、下に叩き落されてしまった。
「クハハハハ! どうした!? 人間! 先ほどまでの威勢はどこへ――」
「しゃらくせえんだよ! 蠅がッッッ!」
余裕しゃくしゃくのゼブルに合わせ、死神の鬼迫をぶつける。
「ゔッ!」
ゼブルは顔色を悪くし、その場で硬直した。俺は高く跳躍し、無間を振り下ろす。あと少しで、ゼブルを両断出来ると思った瞬間、ハッと我に返ったゼブルが鎌を振るい、無間を弾くと共に、慌てて俺から距離を取った。
「ちっ! 生意気な下等生物がッ!」
「こっちの台詞だ、糞野郎がッ! おい! てめえが他の命を多く奪ってまで手に入れた力はそうやってパタパタと飛ぶためだったのか? 高い所からふわふわ攻撃してるだけじゃあ、俺を殺せねえぞ、ビビり野郎がッ!」
俺は無間をしまって、体中に溜めていた気を、手足に集中させる。次は、直接ぶっ叩くつもりで、ゼブルを見据えた。
ゼブルは、俺の言葉が気に入らなかったのか、プルプルと震えて、怒りの形相でこちらを睨んでくる。
「図に乗るなあああッッッ! 目にもの見せてくれる!」
ゼブルは翼を開くと、それぞれから魔力のようなものを胸の前に集める。
ん? あれはルーシーがハクビやっていた技に似ているな。よく見ると、魔力とは別物だ。ということは、あれが魂ってやつか?
「クハハハ!それぞれの翼から1000……合わせて6000の魂の力だ! 受けれるものなら、受けてみよッッッ!」
ゼブルは手を前に出し、それを打ち出してきた。
「魂球波!!!」
魂の塊は、俺めがけてすごい速さで飛んでくる。
……6000か。ルーシーの最後の技の3倍の量だな。
こんなもののために、奴らは……。
「危ない! 逃げるか刀を抜け! ムソウ!」
「ムソウさん!」
ミサキとハクビがなんか言ってるなあ……。
……俺を心配してくれてありがとうよ。俺は、掌に気を集中させた。
「……こんなもののために」
俺は、片手で奴の攻撃を受け止める。……これが魂そのものを使った攻撃ってものか。
……何やら攻撃から絶叫が聞こえる。これは……食われた奴らの……声?
―痛い……痛い……痛い……―
―助けて……もう……―
―嫌だ……傷つけたくない……―
声は、俺の手の先から、老若男女問わず、聞こえてくる。苦しみ、悲しみ、怒り……様々な負の感情が、言葉と共に、俺に伝わってきた。
「ぐぐっ! ……ぐっ!」
俺が受け止めるのをみて、ゼブルは最初驚くが、すぐさま、表情を元に戻し、
「クハハハハハ! 一人で6000の軍勢を受け切れるものか!そのまま死ねえええええ!!!」
ゼブルは、今度こそ俺を滅せられると自信満々だ。
だが、その声が、俺の耳には届かない。俺は別のことに集中していた。俺は攻撃を受けながら、魂に意識を集中している。
……なぜこんなことをしているのか自分でもわからない。だが、なんとなくできるかもしれないと思った……
攻撃からはなおも、絶叫が聞こえてくる。
……俺は声を上げ続けている魂たちに、語り掛けた……
―俺は……てめえらに何もできない。……だが、必ず奴を殺すことを誓おう。だから……安らかに……眠ってくれ―
俺がそう念じると、攻撃から聞こえていた、絶叫はピタッと止んだ。
今だッ!
「ガアアアアアアアアアッッッ!!!」
俺は受け止めていた攻撃を地面へと叩きつけた。地面に衝撃が走ったが、俺に痛みはなかった。
魂の塊は無数の光へと変わり、しばらく俺の周りをふわふわと飛び、漂い始めた。その光景を見ていた俺の耳に聞こえた気がした。
―……頼む―
―ごめん……なさい……―
―でも……―
―ありがとう……―
―必ず……奴を……―
「……任せろ」
俺が魂たちの声に返事すると、その光は、まるで俺に何かを託すように、俺の体をすり抜け、消えていった。
そして、驚愕と、恐怖の表情をしたゼブルを見据えた。
「……ゼブル。てめえが、どれだけの命を殺してきたのかは、もういい。なんにしろ俺は頼まれたからな……」
―すべてをきるもの発動―
「……てめえに殺される覚悟があるかどうかも、もうどうでもいい。そもそも、てめえは覚悟を持たない者を殺してきたのだからな。だから……」
―死神の鬼迫―
「俺がてめえをぶっ殺してやる!!!」
―おにごろし発動―
無間が輝き、光が俺を包んでいく……。
そして、俺の髪は腰まで伸び、背中には翼が生え、無間はそのまま、薄く輝きを帯びるようになった。そこから伝わってくる波動はとても暖かく、清らかなものだ。
……ふむ、これが神人化というやつか。無間の輝きは天界の波動といものだろうな。
そして、一番驚いた俺自身の変化である背中の翼。おもむろに動かそうとしてみたら、飛べそうだ。なんとなくできそうな気がする。
よく見ると、腕に何か文様が刻まれている。ひょっとしてと思い、無間の腹で、自分の顔を見てみた。髪が伸びている以外の変化と言えば、金目になっていることくらいだ。そして、予想通り、顔の半分にも、何らかの文様が入っている。
変化と言えば、そのくらいか。俺自身、特段変わったいうような感じはしない。
と、そんなことはどうでもいいか……。
「……さて、ゼブル……決着だ」
死神の鬼迫にあてられたゼブルはそのまま硬直していた。俺はそこに切れ目をめがけて、ゼブルを斬りつける。
「ギャッ!こ、これは……!」
ゼブルは斬られたところを見て驚いているみたいだ。そういや、再生しないな。……なるほど、天界の波動には魔物族の能力を大幅に下げる効果があるみたいだ。飛べることと、天界の波動。これは、良い変化だなと感じた。
「き、貴様!なんなんだ!?」
「……最初から言ってるだろう? てめえを殺しに来たただの人間だ」
「に、人間だと!? 馬鹿な! この気は……!」
「ぐだぐだ……うるせえな……!」
俺は奴に飛んで近づき、鎌を弾き飛ばし、がら空きになった腹を蹴り飛ばした。
「ガッ!」
ゼブルはそのまま地面に叩きつけられる。起き上がろうとするゼブルに俺は斬波の連撃を浴びせる。
「ギャッ……グッ……グハッ!」
斬波の雨を受けて、ゼブルはボロボロになっていく。
「クッ!……ガアアアアア!」
ゼブルが咆哮する。降らせていた斬波がかき消された。ふむ、まだ余力はあるみたいだな。
「くそがああああああ!!!」
ゼブルは再び羽ばたき、俺の方へ近づいてくる。直接、俺を攻撃するみたいだ。少し遅い気がするが、魔法での攻撃だと意味が無いと悟ったらしい。
俺は、真っ向からゼブルと闘う。ゼブルの繰り出す攻撃は、早い。狂人化したハクビの上を行く早さだった。だが、所詮は鎌。攻撃範囲は限られてくる。
「オオオォォォッ!」
大ぶりの鎌が俺めがけて振られてくる。俺はスッと近づき鎌の柄を無間で止めた。
大鎌は、見た目は強そうに見えるが、刺そうと思うと横からの攻撃になるし、斬ろうと思うと自分の方に引かなければ斬れない。俺は、背中に刀を回し、鎌の刃と、柄の間に無間を引っかけた。すると、鎌はピクリとも動かなくなる。そして、もう一方の手で、ゼブルの首を掴んだ。
「ッガ! く……くそ! 放せ!!!」
ゼブルは俺の腕をつかみじたばたとするが、俺は放さない。鎌を手放せばいいものを……。
ただ、こうなったら、俺にも攻撃する手段がほとんどないんだよなあ……。
「カッ!……アアーーーーーッ!!!!」
ん? ゼブルは口を開け、俺に攻撃するみたいだ。……さて、どうするかな。刀を引っかけている以上、俺も無間は振れないし、と、そうだ。
「ふんッ!!!」
俺は奴に頭突きをした。
「ガッ!」
ゼブルはクラっと後ろへ仰け反る。俺はさらに、ゼブルに頭突きを続ける。
ある程度やっていると、ずるりとゼブルの手が、鎌から離れる。俺はゼブルの腹を蹴り、地面へと叩き落した。そのまま奴の鎌を手に取り、奴めがけて、投げる。
ぐるぐると回った鎌は、そのままゼブルの腹を突き刺し、地面に固定させた。
「ギッ! ガアアアアアアアア!」
ゼブルは苦しみ悶えている。自らに刺さる鎌を掴もうとするが、刃が鋭いのか、上手く掴めず、指が切れたりしている。自分が作りだした武器に苦しめられるとは、本当に見苦しい奴だな。
「……さて、てめえを殺す前にやらないといけないことがある」
俺はゼブルの前へと降り立った。
「く! 貴様ァ! 何をする気だ!」
ゼブルは俺に吠え、腕を伸ばしてくる。が、鎌が突き刺さって、思うように動けないみたいだ。俺はゼブルの腕に無間を突き刺し、地面に固定させた。
「ガアアア!」
ゼブルは苦しみの声を上げるが、俺の攻撃は続く。
「光葬針!!!」
俺は、光で出来た棒を、ゼブルの両足と両手、首に突き刺した。さらにゼブルの絶叫があたりに響く。
……先ほど気付いたのだが、神人になって、使える技が増えたみたいだ。だが、神人を解くと、その技は消えるらしい。どうやら、おにごろしは一時的な強化スキルに過ぎないみたいだな。それでも十分だが……。
と、話がそれたな。これから、俺はゼブルに対して、あることをするのだが、どうして俺にできるのかも俺に分からない。だが、出来るのであれば、してやりたいと思っていたことだ。
俺はゼブルに告げる。
「……戦いの中でわかった。お前、先の6000の魂と合わせて、6660の魂を食ったな?」
「なっ!? なぜそれをっ!」
「何となくだ。まあ、それはどうでもいい……これから、未だお前の中にある、660の魂を解放する」
「……はあ? 何言ってるんだ? そんなこと、たかだか人間にできるわけがないだろう!」
俺の言葉にゼブルは笑う。だが……
「……信じなければ、それでいい。お前は、おとなしくしてろ」
俺はゼブルに向けて、手を出した。そして、光葬針に自分の気を送りながら、瞑想する。
「はあああああああああ!」
俺が祈ると、ゼブルに刺した光の棒が輝き、五芒星の陣を描く。
「がっ!? こ、これは! ち、力が、抜けていく!?」
ゼブルは自らに起こったことへの理解ができていないようだが、構うものか。俺は更に、瞑想し、力を込めていく。
すると、ゼブルに浮かんだ陣が輝きを強め、さらにゼブルの苦しむ声が響き渡る。
「っぐ!ガハアアア~~~ッッッ!!!!」
すると、ゼブルの口から、光が溢れ、漏れている。そして、そのまま、光の粒みたいなものが次々と、飛び出していく。
「アアアアアアアッ!? た、魂が!? 魂が、ぬ、抜けていくッ!!!」
光はまだまだ、飛び出してくる。それは、洞窟内を駆け回り、俺達の上空で、渦を巻いている。洞窟内は、まるで星空のようになっていった。呆気にとられるミサキ達の前で、その光はまるでゼブルと俺を見下ろすように、その場にとどまり続け、俺達の動向を窺っていた。
「はああああ!」
俺はさらに祈りを続ける。
……そういや、サヤも祈っていたな。俺たちが奪った命に対して。俺たちは、生きるために、命を奪っていた。俺は、いつでも死んでもいい、殺されてもいいと思っていた。だが、サヤが言ってくれた。
「ザンキ君は、いつでも私たちのために人を斬ってるんだよね。だからさ、私たちのために死んでいった人たちのためにも、私は祈らないといけないんだよ?」
その時、俺は自分がただの人斬りではなく、何かを護るために戦っていたんだと気づかされた。
そして、サヤを、カンナを、皆を、護っていきたいと思うようになった。
こっちの世界でもそれは変わらない。俺は、誰かが護ってくれと頼んできたら、護るために戦おうと思った……例え、それが死んだ奴でも……。
……俺が護りたいと思った奴らを、今度こそ、護りたいと思った。
……俺は……“死神”だからな……
……だから、俺は祈る。
目の前にいる、糞野郎に殺された、無念の魂のために……。
「はああああああッッッ!!!」
「ガアアアアアアアッッッッ!!!!」
俺が強く祈ると、最後の光がゼブルから飛び出た。そして、洞窟内の光は俺の周りをふわふわと、飛び始めた。
―ありがとう―
「……気にすんな」
どこからか聞こえてきた声に俺はそう呟く。光たちはそのまま、浮いていき、スっと消えていった……。
「安らかに眠ってくれ……」
俺はそう言って、ゼブルの方へと振り返る。……そこには、翼も減り、大きさも小さくなって、ボロボロになったただのデーモンが転がっていた。
「――よう、気分はどうだ?」
俺が声をかけると、息も絶え絶えに、デーモンは口を開く。
「キサマッ!……よくモぉぉぉぉ!!!」
「自業自得ってやつだ……本来なら、お前は殺した命の分、6660回殺してやらねえと、俺の気が済まねえが、もう、次で決めてやる……」
俺は無間を抜き、構えた。覚悟を決めたのか、狂ったのか知らないが、その瞬間、ゼブルはいやらしい笑みを浮かべ、笑い出した。
「ククク……我を滅したところで、我以上の魔物族は多い……。貴様はいずれ、我らの同胞に食われる運命なのだ……」
「あ? 同胞までも食ったお前が、最後は同胞頼みとは、因果なもんだな」
「抜かせ、人間。先に地獄で待っててやるか――」
減らず口は聞き飽きた。奴の喉元を斬った。ゼブルは声も出せずに喉を押さえ、もがいている
俺はゼブルの角を掴み、空中へと放り投げる。そして、奴に向かい、無間を振り上げる。
「奥義・浄炎破斬!!!」
無間に聖杯から生み出した炎を纏わせて、奴の切れ目すべてに無間を叩き込む。一つ一つ丁寧に。「燃える無斬」と言ったところだな……。
「~~~~~~~~!!!!」
斬られるたびに、ゼブルの体はこま切れとなっていく……。
そして、ゼブル全体を包み込むほど成長した巨大な斬撃を、奴に振り下ろした。
「ウオオオ~~~ッッッ!!!」
斬撃に飲み込まれ、そのままゼブルは断末魔すら許されず、肉片の一つも残さず、消滅していった……。
「……お前の同胞が俺を殺しに来る……か。
上等。その全てを斬ってやる」
俺は無間を払い、火を消した。無間を背負いながら、辺りを見渡す。玉座の間は、元通り、暗いままだ。魂の一つも残っていない。この世界にもそういう概念があるのかは知らないが、無事に天に召されたようだな。
―仇……とったぜ……―
依頼遂行の報告は、傭兵だった癖からか。何となく、苦笑いしながら、俺はミサキ達の居る方に、歩いていった。




