第321話―堀が完成する―
翌日、俺達は作業の割り振りをするジェイドの前に集まる。今日も俺は堀の作業なんだが、これはフジミからの要請らしい。元々柵を作ったり、櫓を建てる作業はしないつもりだったので、俺もその気だったが、地面を掘る以外にやって欲しいことがあるという。何だろうかと気になったが、後で伝えるということなので気にしなかった。
作業の方は、予定通りに進んでいる。柵の方も、支柱に丸太を組んでいっているが、それも半分以上は終わっているらしい。残りを片付けて、東西と村の正面の入り口に櫓を建てれば完成だ。予定では、後五日くらいで終わるとのことだ。
土塁に関してはすでに終わっているとのこと。これに関しては、少数ではあるが、地属性の魔法を使う者達を中心にして、予定よりも早く終わった。
今日から、その者達は主に見張りや柵の作業の手伝いを行うことになっている。これまで頑張ったのだから、少しばかりの休息の意味も込められているらしく、土塁の作業に当たっていた者達は喜んでいた。
村の住民たちの手伝いに割り当てられているツルギ達も、村民たちと親交を深めていることに関しては順調らしい。このまま、村の手伝いをしながら、今日からツルギ達が共同で住む家を作っていくとのことだ。
「街で大きな家を買うという手もあるが、どうする?」
「金がもったいない気がするな……今の依頼の報酬がほとんど吹っ飛んでしまう」
ツルギの言葉に、ムソウ一派の者達は頷く。旅用の家というものも、家は家なので、値は張る。幸い、資材もあるので一から作った方が良いということで話は落ち着いた。
こんな時にコモンが居ればあっという間なんだがなと思ってしまうが、それは贅沢過ぎる考えなので諦めよう。
さて、各々やることは決まり、その場で解散する。俺は、堀の作業を行う皆と一緒に、現場へと向かっていった。
「この作業はどこまで進んでいるんだ?」
現場の指揮を担っているフジミに尋ねると、フジミは、集落の方を指した。
「まあ、昨日、ザンキさんが帰った時とそこまで変わっていないわ。集落を抜けて、村の外に行きついた当たりよ。今日からは、近くの川まで掘り進めて行くつもり」
「了解だ。それはいつまでかかりそうだ?」
「そうね……五日くらいかしら。ちょうど、ジェイドやフガク達の作業が終わった辺りで完成するはずよ」
「あいつ等よりも早く終わらせて、驚かせてやりたいな。気合入れていくか」
道具を手に取りながら、気合を入れていると、フジミに肩を叩かれる。
「あ、いや、今日はザンキさんに、皆とは別にやってもらいたいことがあるの」
そう言って、フジミは俺について来いと促してきた。そう言えば、そんな話だったなと、道具を置いて、フジミについていく。
そこは、堀を流れる水の原水地なる池だった。
「こんなところで何をしろと?」
首を傾げていると、フジミは説明を始める。
実はこの池、雨などで水が溜まったわけではなく、地面からわずかに水が湧き出るちょっとした泉だという。
なので、常に堀には水が流れるのだが、池の水質はそこまで良いというわけでは無いらしい。一応、村の中も流すことになっているので、変な病気などが蔓延しないように、ここを浄化してほしいとのことだ。
「ザンキさんの力は、私達も聞いていたし、この眼で見たからね。クレナの湖もアナタの力でしょ?」
「ああ、あそこか。まあ、そうだな」
「今回はその力をここに使って欲しいわけだけど、お願いできるかな?」
フジミの申し出を聞き、池の水をよく見てみた。確かに濁っているようだし、少しばかり、悪臭もしている。湧き出ていても、流れるということが無く、何年もここに溜まっているだけなので、水が腐り、こういうことになっているというわけか。これは、水だけでなく、周囲の浄化もした方が良いかも知れないな。
それに、俺が浄化した聖なる水がこの村を流れ、村の周りを流れるということになれば、魔物たちも一層近寄らなくなることも考えられる。
フジミの言葉に、俺は頷いた。
「了解だ。ただ、この作業は他の人間には見せられない。一人で行うからな」
「ありがとう、ザンキさん。一応、ここには人が来ないようにしてあるから、そのあたりは心配なく。じゃあ、私は皆の所に戻るね。ザンキさんもここが終わったら、私達の所に来てね」
そう言って、フジミはこの場を後にした。
俺は言われたようにまずはこの池を浄化しようと、神人化する。
そして、光葬針をいくつか池の中に放ち、水を浄化し、更に光葬雨を降らせて辺りの浄化も行った。
ただ、以前アティラから聞いたように、このままだと、池の周囲の環境は、表面だけが綺麗になっただけだ。地面の中までは浄化できない。
なので、光葬針を何本か生み出し、手に取って直接地面の中に埋め込んでいった。やり方があっているのか分からないが、ひとまず辺りに漂っていたカビや、植物が腐った匂いのようなものはしなくなった気がする。
ひとまず、池の周りだけでもこの方法で浄化していき、最後に池の中に入って、今度は底の地面を浄化していった。
そうやって全ての浄化を終えると、池の水は透き通り、辺りの景色も心なしか綺麗になっていったような気がする。浄化を終えたので、フジミ達の元へ行こうとしたのだが、ここまで綺麗な水辺だと、何か置きたくなってくる。
俺は、しばらく考えて、近くにあった岩を地面に置いた。そして、無間を振るって、その岩を削っていく。何か石像のようなものがあれば良いと思い、何度も無間を振った。
細かい所は、クナイなどを使っていく。刃こぼれしないように、気を纏わせたり、すべてをきるものを使ったりしながら、頭に思い浮かべた完成品に近づけていった。
相変わらず、こういうのは上手く出来るんだよなあと、自分で苦笑いしながらなおも続ける。
そうして出来上がった石像は、とある生き物。四つん這いになり、首を長くしたトカゲのようなもの……俺が思い描いていたのは、以前、この下の洞窟で出会った、地帝龍アティラだ。
なかなか上手く出来たんじゃないかと、その石像を池の隅に置き、その石像にも天界の波動を込めた。アティラの石像はぼおっと輝き、波動を纏うようになる。
ああ、こんなことも出来るんだなと思いながら、これでこの辺りが汚れることは無いだろうと思い、そっとその場を後にしようとした時だった。
―何じゃ、ムソウ殿じゃったか……―
「ッ!?」
突然、頭の中に響く声。俺はその場に立ち止まり、無間の柄を握りながら辺りを見回す。声の主らしきものの姿は見えなかった。
しかし、今度は、同じ声の笑い声が聞こえてくる。
―ここじゃ。後ろじゃよ―
「ん!? あ……」
声が示す方向を向くと、地面からにょきっと頭だけを出した本物のアティラの姿があった。
「驚かすなよ……」
「おお、すまんのう。また、この辺りを巡っておったら、天界の波動を感じてのう。つい、ここに来てみれば……」
こないだ別れたと思ったら、まだこんなところに居たのかと思い、頭を掻いた。
アティラは、フッと微笑みながら、辺りを見回す。
「ふむ……あたりの浄化でもしておったのか? 初めて見るが本当に“規格外”の様じゃな。じゃが、地面の中もしっかりと浄化出来ておる。居心地が良いのお~……ん?」
アティラは、池のほとりに置いた石像を見て、目を丸くする。
「これは……妾かの?」
「ああ。この辺りを綺麗にしたら、何か置きたくなってな。んで、丁度こないだここで会ったお前を思い浮かべて作ったんだが……嫌だったか?」
アティラには、自身を象った石像をこんな池の側に置かれても困ると思われたか、嫌ならどかすと思っていたが、アティラは首を横に振る。
「構わぬよ。妾も自分の祠が出来たような感じで気分が良い。ここにおったら、この集落の者達に、崇められるかも知れんのう」
得意げに笑っているアティラ。喜んでいるのなら良かったと感じた。
「出来ればそうしてくれるとありがたいな。一応、俺の仲間がこの村を護っていく話にはなっているが、そこにお前も加わると、何の心配も無いからな」
「そうじゃのお……では、週に一度はこの辺りを回るとするか。これほどまでに天界の波動に満ち溢れておる場所は、この辺りでは少ないからの。妾にとっても良い気晴らしになる」
「あまり、ここの波動を食って行くなよ」
「それは大丈夫じゃ。前にお主に会ってから、妾の状態も回復しきっておるからのう。ここに来るのは、体をゆっくり休める為じゃからな」
うっとりとした様子で、その場に首を下ろすアティラ。天界の波動を浴びるだけで満足している様子だった。
とにかく、これでこの村の守りは更に安全になったと安心する。礼も兼ねて、アティラに光葬雨を降らせてやると、アティラは更に気持ちよさそうにしていた。
さて、そろそろフジミ達の所に合流しようかと思い、俺はその場を後にしようとした。
アティラはもう少しここで休んだ後に、また、移動すると言って動かなかった。
「しっかり、休息をとっておけよ~」
「お主はしっかりと働くのじゃぞ~」
ハイハイと頷きながら、アティラと別れる。皆が掘り進めた跡を伝って、村の中を歩いていった。
途中、耐魔羊の世話をしているツルギとレミアを見かけた。しっかりと餌を与えているツルギと、恐る恐る毛づくろいをしているレミア。そんなじゃ、駄目だとツルギは説教している。
「良いか? お前が怖がるから、羊も怖がるんだ。堂々としていれば、羊も安心して、お前に身を委ねる。やってみろ」
「で、でも、舐められると、く、くすぐったいんだよ~」
「馬鹿。それは懐かれてるってことなんだよ。お~よしよし、良い子だな~」
元は羊飼いだったのかと思うほど手際も良く、この牧場の主であろうか、そばで作業をしている爺さんと婆さんは、そんな二人を微笑ましげに眺めていた。
何か、意外だなあと思いながら、仕事の邪魔をしても悪いので、その場から去っていった。
そして、皆に追いつき声をかけるとフジミはこちらに視線を移した。
「あら、早かったわね、ザンキさん。無事に終わった?」
「ばっちりだ。さ~てと、ここから、俺も手伝うぞ」
「あ、ザンキのオッサン、髪飾り取っとけよ」
円匙を手に取り、地面の中に入ると、冒険者の男に、髪飾りを指さされる。忘れてたと思い、髪飾りを外して異界の袋の中に収めた。
「よ~し、オッサンも加わったことだし、これから遅れていた分も取り戻すぞ!」
「別に遅れてないわよ。それに、今のままだと遅いって感じるなら、また、五月雨でも撃ったら? 少しは、作業も進むわ」
フジミの言葉に、がってんだ! と返事する冒険者。ああ、こないだの奴かと思い、俺を含めた残りの冒険者は一歩下がる。
男は、円匙に気を送りこんで技を放った。勢いよく地面が掘られていき、俺達の目の前には真っ直ぐな通路が完成される。
「はあ、はあ、どうっすか!?」
「まあまあよ、お疲れさま。え~と、ここからは村の入り口に向けてまた真っすぐ掘っていくから、皆、頑張ってね」
荒く息をしている男とは裏腹にあっさりとした返事のフジミ。俺達への指示を終えると、魔法で地面を均している奴らへの指示と自分の作業を始める。
男は、役に立てた! と立ち上がり、再び地面を掘っていった。
「上手く飼い慣らされるようになったもんだな」
「ああ。もう、ぞっこんだよ」
俺達は、上手いことフジミの手の上で転がされている男の背中を見ながら、何となく悲しい気持ちになりやれやれと肩をすくめていた。
さて、男の働きもあってか、昼前には村の外へ出ることが出来た。ここから、村を一周するように掘っていく。大変そうな作業だが、一直線に掘ることを五回行うだけなので、意外と楽だということを聞いた辺りで、村から昼休憩の合図が聞こえてくる。
俺達はそれに従い、村の中央へと集まった。すでに何人かの冒険者達が飯を食っているが、ツルギ達の姿が見えなかった。そこにいたサーラに話を聞くと、手伝っている家に招かれて住民と一緒に飯を食っているらしい。
あの老夫婦も息子が居たのだが、既に街の方へ出ているということで、ツルギとレミアを本当の家族のように扱い、楽しんでいるとのことだ。ならば、村で過ごすことになっても、羊たちの世話をしていかないといけないなとフジミと一緒に笑っていた。
すると、先ほどの男の冒険者が、両手に料理の盛られた皿を持ってきて、フジミの前に差し出す。
「フジミ姉さん! 料理をお持ちしました! しっかり召し上がってください!」
犬みたいだなあと思ったのを黙りながら笑いを押し殺していると、フジミはため息をつく。
「それは、アナタのでしょ? しっかり食べて、また昼からも頑張ってよ」
「うっす!」
男は素直にフジミに応じて、近くで飯を食い始めた。
ツルギとレミアの一件から、この村でも何か起こるかと思っていたが、あの男はフジミに首ったけらしい。フジミの方は相手にしていないが、事あるごとにフジミに良くしてくれていたりと、一緒に作業をしていた冒険者達が言っていたように、いわば、分かりやすい性格の様だ。
「良い奴じゃねえか」
「まあ、悪い人じゃないから良いんだけどね。それに、腕も良いみたいだし……」
話を聞くと、男の名前はリドル。幾度も地面に向けて技を使って、その度に力を誇示しているのにふさわしく、槍使いの冒険者としての腕もそこそこ上の部類だという。腕輪の情報を見ると、今までで討伐した一番の魔物は、リドルの仲間達と合同で倒したということではあったが、超級のオウガキングだという。
手傷は負ったが、最終的に誰一人欠けることなく、オウガのどてっ腹に風穴を開けたと胸を張って語っていた。
「強くて、お前に優しいなんて最高じゃねえか。相手してやれば?」
「それがね、結構複雑なの」
何が? と首を傾げていると、俺達の会話を聞いていたリドルの仲間が、口を挟んでくる。
「アイツが、フジミさんに首ったけなのは、べつに俺達は気にしないが、実はアイツ、妻子持ちなんだ」
「はあ!? じゃあ、何で……」
「リドル、家族と上手くいっていないらしい。家族ほったらかして旅に出ることが多いからな。実は、今回俺達がこの仕事を受注したのも、それが要因の一つでもある」
その冒険者達によると、リドルが冒険者になったのは、家族を養う為だったが、腕が上がり、強くなっていくうちに連れて、より強い魔物を相手するようになっていった。
しかし、強い魔物というのは、人里離れた場所に居ることが多い。リドルも依頼を受注する度に、家に居ないことが多くなっていく。
家族の相手も出来ない日が増えることに、妻の方がついに怒り、リドルを家から追い出したらしい。当面の間は、反省してほしいみたいだ。
泊まる場所も無くなったリドルは、この村の依頼を仲間達と受注し、金を貯めて家に帰ることを目的にしているらしい。
ちなみに、この仲間達は未婚だ。ツルギ達を見ながら、更にリドルの様子を見て、出来れば、この依頼の間に、冒険者の嫁を見つけられたらとは思っているが、男の様子を見るに、家族って何だろうなと、何となくその気も薄くなっているらしい。
「今日まででそれなりの稼ぎにはなって、アイツも大手を振って家に帰ることが出来ると思ったんだが……」
「まさか、フジミさんに首ったけになるとは……」
「私の所為にしないでよ……ねえ、ザンキさん。どうにかしてよ……」
「……勝手にやっててくれ」
流石に人の家庭にまで口を出したくない俺は、フジミの頼みを断る。いや、まあ、フジミもリドルの家からは完全に無関係なんだがな。
取り敢えず、村での仕事が終わるまでに、きっちりはっきりと男を振っておけと一応の助言をしていた。
「あれ……? だが、複雑な問題とお前が言うってことは、お前もそれなりに気があるって――」
「何か言った? ムソウ……ザンキさん?」
「いや、何も……」
若干耳が赤くなりつつも、ギロッとこちらを睨んでくるフジミ。はっきりと俺の本名を言ってくるんじゃねえと思いながら、俺は顔をそむけた。
……怖い。怒らせるのは辞めておこうと思いながらも、なるほど、複雑だと空を仰いだ。
―ツバキ、リンネ……こっちは楽しいぞ―
マルドに帰ったら、二人ともう一回、クレナに帰る前にしっかりと遊ぼうと決めた俺だった。
◇◇◇
さて、昼からの作業はただひたすらまっすぐと掘るだけということで、またしてもフジミに良い所を見せようと円匙を構えようとするリドル。俺とリドルの仲間達は顔を見合わせ、肩を叩いた。
「お前は休んでろ。ここは俺に任せな」
「は? 何言ってんだ、おっさ――」
「フジミ、ここなら俺がやっても大丈夫だよな?」
「ええ。ただ、やり過ぎて、この幅を越えないようにね」
これ以上堀が広くならないようにと指示するフジミ。周りに影響が出ないようにするってことは、一点集中の技を使えば良いわけか……。
「おい、オッサン、ここは俺に――」
前に出ようとするリドル。俺はそれを止めて、リドルに笑ってやった。
「だからお前は休んでいてくれって。一応、俺が失敗した時の為にな。気力回復薬だって安くねえんだ。しっかりと稼いだままにしておかないとな」
そう言うと、どこかギクッとした様子のリドル。コイツの家庭事情を知っているということは、リドルは知らない。困惑した表情で突っ立っているリドルの肩を仲間達が掴む。
「そうだぜ、お前は今のうちに休んでおきな」
「午後も始まったばかりなんだからよ」
「お、おう……」
取りあえず、仲間達の言葉に従う様子のリドル。俺よりも下がって、様子を見ていた。
俺は円匙を構えて先を見ながら、気を込めていく。
無間と同じ感覚ですると、多分思ったよりも威力は出ないだろうな。もう少し込めておこう。
そして、円匙の先端に気を集中させて、準備が整ったと同時に踏み出し、円匙を思いっきり前に突いた。
「豪神突・啄ッッッ!!!」
一点集中型の豪神突、固い外殻を持つ魔物対策で編み出した技だ。無間や魔刀級の刀で行うと、外殻に穴を開けて敵を倒すのだが、円匙の性能の所為か、出てきたのはちょっと先が尖った豪神突だ。
掘っきた堀の幅と、そこまで変わらない幅で、俺が放った斬撃はそのまま地面を掘り進めていく。
そして、ある程度の所まで進んでいくと、攻撃は止んで、俺達の目の前には一直線の道が完成した。
「え~と……やり過ぎたか?」
出来上がった堀を見ながら呆然としているリドルたちをよそに、フジミに確認してみた。遠くを見るように、進行方向を見つめ、手元の地図を確認したフジミは、フッと微笑む。
「ちょっと行き過ぎているけど、すぐに修復は出来そうだし、問題ないわ」
「それなら良いか。先、行くか?」
「そうね。まだ余裕だったらさ、これからの直線、全部お願いできる?」
ということは村の周りを囲むように後四回か……。出来なくは無いが……。
「均すのが大変にならないか?」
「魔法を使わなくても出来るから、それが終わったら、ザンキさんも、それから貴方たちもよろしくね」
ああ、魔法が使えない俺達は、道具を使えば良いのか。納得と思い、フジミに頷いた。
「分かった。じゃあ、俺達は先に行く。ほら、行くぞ」
固まっているリドルたちに声をかけるとハッとした様子でこちらを向いてくる。
「お、オッサン、な、何した!?」
「何って、技使っただけだろ? お前を習ってな。さ、行くぞ」
「お、おう……分かった」
円匙を担ぎ、俺が掘った地面を歩いていく。フジミが持っていた作業工程表は、リドルの仲間が受け取っていた。受け取る際に、俺のことを指さしながら色々と聞かれているが、無視し、地面を均す作業に入っている。
そこでも、色々と話しかけられるが、そんなことは良いからと、フジミは魔法を使って行った。
釈然としない感じだが、リドルの仲間の冒険者は、まあ、これでリドルが落ち着くのなら良いかと納得した様子で俺達に追いついてきた。
「この分だと、四日も掛からねえよな?」
「うん? まあ、そうだな。というか、掘り進める作業に関してはすぐに終わるだろうな。もっとも、ザンキさんがさっきのやってくれれば、の話だが……」
「昨日の分もあるし、やってやるよ」
「疲れとかは大丈夫か?」
「あの技は俺が使える技の中でも、そこまでのものじゃないからな。大丈夫だ」
男は、目を見開きながらも、そうか、と頷いた。この調子だと、自分の正体を隠す気あるのかとグレン達に言われそうだな。まあ、作業の進捗が上がるのならと気にせず、俺はその後も、技を使って地面を掘り進めていった。
近くで作業をしていた奴らはもちろん、リドルは更に驚いた顔つきになり、夕方になり、いったん村の周りを掘り進める段階を終わらせるまで、特に何も言わずに作業を行っていた。
そして、翌日の午前中には土を掘る作業は終わり、近くの川に行きついた。後はフジミの指示に従いながら、土を均していく作業を行い、その二日後、池から水を引いて堀の作業は終了した。
見ると、柵の作業はまだ終わっていない。ジェイド達よりも早く終わらせることが出来たと、皆で喜び合い、ジェイドやフガク達からは若干の嫉妬に満ちた視線を浴びながら晩飯を食っていた。
まあ、その翌日には俺達も柵や櫓の作業に加わって、全ての作業が終わったんだがな。完成した土塁、堀、柵の状態を確認した村人たちは大層喜んでいた。これで村の守りは俺から見ても言うことは無い。
後は、ツルギ達の家だけだなと、次の日から冒険者達総出で、家の建設を始める。
まあ、俺は、そのあたりの草むしりと整地、掃除だけを一日中やっていたがな……。




