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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
ツバキが里帰りする
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第320話―スーラン村に戻る―

 翌朝、飯を食った後、仕事の準備をするタクマとリンネを少しばかり手伝った後、グレンとサーラが来る昼までの間、マルドを散歩することにした。

 すると、ツバキがついていきたいと言うので、連れて行くことにした。


「リンネは良いのか?」

「うん! おねえちゃんのととさまと、かかさまのおてつだいしてる~!」

「お願いします、リンネちゃん」


 まかせといて! と、胸を張るリンネの頭を優しく撫でるツバキ。俺はタクマとメリアにリンネの事を任せて街に出ていった。


 二人で街中を歩いていると、ツバキに気付いたマルドの住民達……初日に会った者達が声をかけてくる。


「お、ツバキちゃん、二人で仲良くどこへ行くんだい?」

「普通の散歩です。ザンキ様のお仕事が昼からですので、それまでの時間潰しで……」

「なるほどね~。じゃあ、これ持って行って! お昼ご飯の代わりに、ね」


 女が出してきたのは、小麦を練って焼いたものに、野菜やら肉やらを挟んだものと、レイヴァンで飲んだコーヒーだった。

 ありがたく受け取り、異界の袋に収めて再び歩き出した。


「良いものを貰ったな」

「ですね。それで、ザンキ様。これからどちらに?」

「散歩だからそこまで深く考えていなかったな……お前のお勧めはあるか?」

「そうですね……」


 ツバキは、しばらく考え込んだ後、あ、と言って口を開いた。


「路地裏探索でもしますか?」


 ……何とも不気味な提案だ。色気も何も無い。


「それは……危険じゃないのか?」

「ザンキ様でしたら大丈夫です。それに、私は小さい頃にやっていましたよ?」

「ああ……お前はそう言う奴だったな」


 マルドの路地裏には、何があるかわからない。違法な商品を扱っている店や、その関係者達やならず者がたむろしている。危険だから寄らない方が良いと、何度も言われてきた。

 まして、人目につきやすいツバキと一緒に行くのは避けたい……と、思っていたが、当の本人が行きたいと提案してくる。


「故郷の治安を護る為にも、私としては少し興味が……」


 騎士団の首飾りを指しながら、俺に頼み込んでくる。怪しい奴が居たら捕まえることも出来るというわけか……。


「仕方ない。行くとするか。だが、俺も今日ばかりは無理はしないぞ。昼には村に戻るんだからな。面倒ごとは御免だ」

「分かっております。では、行きましょう!」


 ツバキに手を引かれて、俺達はマルドの路地裏に入っていった。


 大通りに比べると、レイヴァンと同じくここも薄暗く、人の姿はほとんどない。あまり、店の数も無いというのは、意外だなと思ったが、時間的にやっていないだけとツバキは語る。

 夜になれば開く店もあるので、昼間、特に今みたいな朝方は、比較的、安全な時間帯の様だ。

 だから、小さい頃のツバキでも遊べたんだなと納得し、更に進んでいった。


「迷路みたいだな……迷ってねえよな?」

「大丈夫です。この街の道は、全て頭の中に入っておりますので」


 自信満々なツバキの表情を見て、流石地元民だと感服した。それと同時に、何回ここで遊んでいたのだろうかと少々呆れる。タクマやメリアが心配していたのも頷けるという話だな。

 しかし、人が居ないので安全……とは言うものの、人の気配はしている。完全に安全というわけではないようだな。


 少しばかり警戒しながら、ツバキについていくと、道は建物の壁に囲まれた突き当りに行きつく。少しばかり広場になっているようだ。


「……ん? やっぱり迷ったのか?」

「いえ、そうではありません。少しやりたいことがあり、ここまで来ました」


 ツバキは、その場に立ち、大きく深呼吸をして目を閉じた。何かに集中しているような感じだ。


「何やってんだ?」

「……ザンキ様。一つ、ご確認したいことがございます」

「どうした?」

「この辺りに居る人間の数は……十二……いえ、十四ですか?」


 ツバキの言葉に驚きつつ、ああ、なるほどと納得し、俺は辺りの気配を探った。


「散歩中に特訓とはな。ここまで人間に会わなかったのは、狙ってか?」

「ええ。せっかく二人きりですので……それで、どうですか?」

「そうだな……正解は、十二だ。惜しかったな」

「え……そんな……」


 ツバキは目を開き、信じられないという顔をしていた。

 確かに、十四個の生き物の気配は感じる。俺達が通ってきた道の一区画向こうの道にそれぞれ三ずつ。これは動いているな。周りを囲む建物からも三ずつ。うち、一つは止まっている。

 そして、俺達が歩いてきた道から二つの気配が近づいて来る。時折、止まりながらも、ゆっくりと俺達の方に向かってきているようだ。

 俺に数が違うと指摘され、呆然としていたツバキだったが、その気配には気づいたようで、軽く身構えていたが、俺はそれを制した。


「大丈夫だ、ツバキ」

「大丈夫……とは?」

「見てれば分かる」


 フッと笑って、その道から現れる者を待つ俺達。

 そうしていると、俺達が歩いてきた道から、二匹の猫が顔を出した。


「ニャー」


 白い猫と灰色の猫は俺達に気が付くと、一瞬だけ体を固まらせた後、プイっとあさっての方向を見て、建物についている管を伝って屋根へと上り、この場から去っていった。


「な? 大丈夫だっただろ? 気配を探ることが出来るようになったのは上出来だが、その気配の元が何かはまだわからないようだな」


 何となく猫に手を振りながら振り返ると、ツバキは苦笑いしながら頷いている。


「はい……全ての気配には気付けましたが、まさか、うち二つが人間では無く猫だったとは……」

「猫くらいなら意外と分かりやすいぞ。人間のものよりは小さいからな。まあ、人間の子供と猫と言われると、本当に僅かな違いになるから、そこは経験になるがな。

 にしても、ずいぶんと上達したようだな」


 元々、俺しか出来なかった、この能力。屋敷ではリアが最も上手く、その他何人かが、リアに教わりながら、この能力を学んでいる。

 ツバキもその一人で、敵の気配とどこから攻撃が来るのかを察知することを主に学んでいた。グリドリで初めてこの能力を使ったあの頃と比べると、だいぶ上達したんだなと、感心していると、ツバキはクスっと微笑む。


「いえ……やはり、ザンキ様と比べられますと、まだまだ、ですね」

「その心意気は忘れるな。またすぐに、気配を区分して判断することも出来るようになるさ。

 ちなみに、俺の場合は、身近な人間とその他の人間、ということから始めたら感覚が掴めた」


 戦場で乱戦になったとき、もっとも必要なのは、誰が敵で、誰が味方なのかを判断することだ。

 まあ、俺の場合は、周りに居る奴らは全て斬っていたが、中には斬ってはいけない者が居る場合という戦いもあった。だから、誰を斬ってはいけないのか、誰を斬って良いのかという判断をするために、その区分を行うことから始まった。

 やがて、気配だけで個人を特定できるようになったのはもっと先の事だと説明すると、ツバキは気が遠くなりそうだと、頭を抱えていた。


「最初は、周りの人間と、リンネやタクマとメリア、それに俺の違いなんかを参考にすると良い。特にリンネは、神獣だからか、子供だからか、明らかに他の人間よりは気配が違うぞ」

「それは、どんな感じですか?」

「普段は、元気いっぱいそのものだな。いろんなことに興味を示す子供を表すかのように、リンネから出ている気配の向き先が、様々な方向に伸びている。

 逆に、何かに怯えている時は、いつにも増して、他の気配よりも小さくなっている。しっかり警戒している良い証拠だな。まるで身を隠すようにしながらも、神獣としての力を感じさせる、大きな気配でもあるから分かりやすいぞ」


 かくれんぼの時は、まさにそれだった。誰が探しても見つからなかったリンネは、しっかりと探していた者達がどのあたりに居るのかを、臭いなどで感じ取っていたが、その上で、しっかりと隠れようという意識が強くなり、そこから感じられる気配も大きかったので、俺にはすぐに見つけられることが出来た。

 身近に分かりやすい例が居ることを示すと、ツバキは、納得、といった感じに頷き、ニコッと笑った。


「分かりました。まずはリンネちゃんの気配をしっかりと観察することにします。目を離したら、すぐにどこかに行ってしまいそうですしね」

「昔のお前みたいにか?」

「ええ。お父さん達には、私の事を見つけることが出来なかったようですが、私はリンネちゃんがどこに行っても、必ず見つけ出せるように頑張ります」


 やる気に満ちたツバキに、そうかと頷いた。これでリンネもいろんな所に一人で行けるなと安心していた。

 どこに行っても、絶対に俺かツバキが探し出すと、笑い合い、俺達はその場を後にする。


◇◇◇


 路地裏を出た後は、港へと向かった。何をするわけでもなく、ボーっと海を眺め、行き交う船を眺めながら時間を潰すためだ。

 港へ着くと、そこらに置いてあった長椅子に座り、ツバキと二人で海を眺めていた。ここに居るツバキの知り合いは、ハンナを含めほとんどが漁師だ。そいつらは今、漁に出ているのか、声をかけられることは無い。

 ゆっくりと過ごすことが出来ている。昼近くになったので、貰った食い物をコーヒーと一緒に飲んでいた。


「む……やはり、俺には苦過ぎるな。ツバキは平気なのか?」

「ええ。良い豆だと思います」

「そうか……ツバキは違いの分かる人間なんだな」


 どう飲んでも、ただただ苦い飲み物だと項垂れると、ツバキはクスクスと笑いながら、コーヒーを飲んでいた。


「ジゲンさんは好きそうですね。お土産に買っておきましょうか?」

「だな。それはお前に任せるよ……そう言えば、皆へのお土産も買わないとな」

「そうですね。一応、海産ものと、手芸用のものを買おうと思うのですが……?」

「ああ、それは良いな。お前の家で買っても良いし、グレンの所でも買ってやるか」

「そうですね。たまちゃんやアザミさん達に気に入ってもらえると良いですね」

「あと、ロロやルイ、それにミズハとかも好きそうだな。色々と買っておこう」


 屋敷に居る奴らを思い出しながら、土産に何を買っていくか決めていく。手芸に使うものなどは女性陣やジゲンには喜ばれるが、男共には何を買っていけば良いのか悩んでしまう。

 まあ、あいつ等の場合は食い物と酒で充分だろうとツバキに提案すると、港町ならではということで、世界中の銘酒を揃えるのはどうかという意見が出た。

 俺も興味はあるのでそうしようと言うと、ツバキはかしこまりましたと頷く。


「しかし、こういうことなら、やはりリエンとは仲良くした方が良かったかも知れないな」

「そうですね。話を聞く限り、無理をされるような方でも無い感じですからね」

「時間が空いたら、尋ねてみるか。村の作業が終わったときになるがな」

「リエンさんの方が、お忙しいようでしたら、諦めるしか無いですけどね」


 モンクに来た時に比べると、リエンという男に対して、既に危機感などは抱いていない。寧ろ、人当たりの良い苦労人という思いしか無いので、帰る時、それこそ土産を買う時などは、もう一度レイヴァンの港を尋ねて、ついでにリエンと話をするくらいの時間は儲けたいと思っている。実現してくれると嬉しいなと思い、コーヒーをすすった。


「あ、そうだ。村の作業が終わって、ひとまず落ち着いたら、クレナに帰ろうと思うが、大丈夫か?」


 一応と思い、ツバキに伺ってみた。帰ったら、今度はクレナでシロウとナズナの祝言も控えているからな。準備などもあると思うし、いったんクレナに帰りたい旨を伝えると、ツバキはコクっと頷いた。


「はい。ここに帰ってきてから、今日まで、私も父や母と、たくさん過ごすことが出来ましたから、もう大丈夫ですよ」

「そうか。それを聞いて安心した。じゃあ、このことはツバキの方から二人に言っておいてくれ」

「かしこまりました」


 ツバキの方は、クレナに帰ることを了承しているので、ひとまずこれについては安心だ。


「ちなみに、ザンキ様はモンクに心残りなどはございますか?」

「ん? そうだな……」


 そう言われると結構あるかもと、考え込んでみた。先ほど出たが、リエンという男に会ってみたい、ジーゴ達と、最後にもう一度だけ依頼に取り組んでみたいと、幾つかやっておきたいことなどはある。

 そういや、ルオウが作る手芸品というのも見てみたいな。アイツの家とかは分からないが、これも何かの縁だ。あの爺さんが倒れる前に、見ておかないとな……。

 村の作業を終えても、心残りしそうなものはあるかとため息をつくと、ツバキはクスっと微笑んだ。


「ここに来てからも、ザンキ様は色んな所で沢山の方と親交を深めたようですね。心残りが無いように、ゆっくりとモンクでの生活を楽しまれてください」

「ああ、そうするよ。さて、そろそろ戻るか……」


 ツバキの言葉に頷いて、俺は立ち上がる。ツバキもそうですねと言って、立ち上がった。そろそろ昼になる頃だと思った俺達は、村への準備もあるので早めに港を後にした。


 ◇◇◇


 家へ帰った後は、グレンが来るまでに着替えて装備を整えたり、村で使う薬とは別に、ここでツバキ達が使う薬を分けていた。

 タクマの手伝いをしていたリンネは、お友達になったと言っていた子供たちと遊んでいた。

 俺達が帰ってくると、胸を張って俺達の事を紹介してくれた。リンネと一緒に子供たちは、俺の装備に興味を示している。流石に無間は危なかったので、鎧と手甲を磨いて貰った。

 ツバキの方は子供の親たちの相手をしている。いつまでマルドに居るのかという話が出た時は、先ほど話したことを、タクマやメリア含めて皆に伝えた。

 いきなりということで少々驚かれるが、帰りたいときはすぐに帰られるという距離なので、そこまで何も言われず、皆は俺達に承諾してくれた。次帰る時は、リュウガンも連れて来いと言われて、ツバキは困惑している。

 アイツも休みを見つけて、帰られると良いなあと思いながら、無間を磨いていた。リンネ達は、鎧を拭きながら、拭いた箇所を日の光に当てて、強く反射させるとキャッキャとはしゃいでいる。

 これも汚すわけにはいかないなあと苦笑いし、リンネ達の頭を撫でた。



……リンネ以外の子供と、その親に若干引かれたからすぐに辞めた……。


◇◇◇


 それからしばらくすると、グレンとサーラがやって来た。


「お~っす、待たせたなあ」

「おう。マルドは楽しめたか?」

「はい。村の皆へのお土産も買うことが出来ました」


 サーラは嬉しそうだが、グレンの方は値切るのが大変だったと苦笑いしていた。商人を旦那にすると、お得なんだなと笑っていると、タクマが自分の店の商品が入った箱をグレンの前に出す。


「こちらもすでに用意は出来ております。一応、昨日頼まれたものと、後、幾つか見繕って入れてあります。合計、銀貨200枚というところですね」

「銀貨200枚……もう少し、まけて貰えないっすか?」

「では、次回の運送費を差し引いて、銀貨130枚で手を打ちましょう」

「了解っす」


 タクマの提示した金額にグレンは納得し、金を支払った。そして、商品を異界の袋の中に入れる。


「やっぱり、異界の袋は便利ですね。僕も買った方が良いかな……」

「異界の袋だけで、半年分の生活が出来るくらいの金がかかりますからね。俺らみたいにあちこち行ったり、冒険者みたいに素材を運ぶって目的が無いんで、辞めた方が良いっすよ」


 やっぱり、異界の袋ってそれなりに高価なんだな。ギルドに登録するだけで貰えたあたり、もっと手軽なものかと思ったが、これからは大事に使って行こうと決めた。タクマも、そうですね、と頷いている。


「さて、じゃあ、村に帰るか」

「ああ。ツバキ、リンネ、また、しばらく会えないが、元気でおとなしくしているんだぞ」


 俺は荷物を纏めて立ち上がった。二人はコクっと頷き、リンネは俺に抱き着いてきた。


「うん! いってらっしゃい、おししょーさま!」

「こちらの事はお任せください。リンネちゃんの事も」


 ツバキの言葉に頷き、リンネの頭を撫でて、俺はグレン達と家を後にした。

 ツバキもリンネも、着実に強くなっている。クレナであんなことがって、以前は二人と離れるということが若干心配だったが、今はもう平気だ。二人を信じて、村に行くことが出来る。

 さっさと仕事を終わらせて、三人でトウショウの里の我が家に帰ろうと思い、俺達は、マルドを後にした。


◇◇◇


 さて、マルドを出た後は、来る時と同じように、御者台にはグレンとサーラが並び、俺は荷台の幌の上で辺りを警戒しながら街道を進んだ。

 森に入る時は、神人化して光葬針を展開させて進んでいく。未だに慣れない様子のサーラとグレンは、多少緊張感を持っていたが、二回目ということで、すぐに慣れたらしく、森の中でも何も気にしない様子で、二人で談笑していた。偶に俺も二人に混じって会話を楽しんでいる。


「商談も上手くいって良かった。ザンキのおかげだな」

「お前の口の上手さのおかげだろ。ちなみに、ずっと聞きたいことがあったんだが……?」

「ん? 何だ?」

「グレンとサーラさんは、どちらが求婚したんだ?」


 ニヤニヤ顔で聞いてみると、二人は顔を見合わせて顔を赤らめる。グレンはジトっと俺の方を見てきた。


「……何で、気になるんだよ?」

「何となくだ。で、どっちが?」

「……主人の方です」


 小さく微笑みながら、サーラがグレンを指す。聞けば、旅の途中で立ち寄ったスーラン村で、グレンがサーラに一目ぼれしたらしい。何度か村を訪れて行商していくうちに仲良くなり、必死に求婚して、二人は結ばれたという。


「サーラさんも、グレンの口の上手さに口説かれたってところか?」

「いいえ。私も主人のことを愛しておりましたので……」


 顔を赤らめながらグレンにすり寄るサーラ。ほとんど俺の所為なのだが、目の前でいちゃつかれると若干気まずい思いになる。

 グレンの方は固まりながらも、嬉しそうな顔をして、サーラの頭を撫でていた。

 グレンにしろ、シロウにしろ、何で皆、自分の思いを素直に打ち明けることが出来たのだろうか。俺との違いは何なのだろうか。

 皆、凄いなあと頭のどこかで感心しつつ馬車は進んでいく。


 そして、日が傾きだして、辺りがうっすらと暗くなってきた頃、スーラン村が見えてきた。作業の方は終わっているのか、周りに人はいない代わりに、村の中央から冒険者達の声が聞こえてくる。

 三人でそちらに向かうと、いつものように皆で料理を囲んで楽しそうに飯を食っていた。

 近づいていくと、フガクを始めとした冒険者達と盛り上がっていたジェイドと目が合う。


「お、帰って来たようだな、ザンキにグレンさんにサーラさん。無事で何よりだ」

「おう。道中平和で、何事も無かったよ」

「皆さん、留守を任せて申し訳ございません。お詫びに、お土産を買ってまいりました」

「明日からもよろしくな~」


 グレンとサーラは異界の袋から取り出した、マルドの酒や食べ物を冒険者達に配っていく。皆は、更に喜ぶがグレンからは受け取らない。また、金を取る気だろうと、こぞってサーラから受け取っていた。


「グレンさんが俺達にタダで何かくれるなんてありえない」

「サーラさん、ありがとうございます」

「あ、サーラさん! こっちにも!」


 グレンが酒瓶を目の前に出してきても、プイっと視線を逸らし、サーラから酒瓶を受け取ったフジミは、フフンと笑いながら、グレンの前で酒を呑み始める。


「お前らなあ~!」


 と、グレンが皆に怒鳴り、その場は盛り上がった。顔を真っ赤にするグレンの横で、サーラは楽しそうに笑い、俺も笑いながら、ツルギやジェイド達と晩飯を楽しんだ。


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